許されざる者の紹介:2013年日本映画。第65回アカデミー賞作品賞受賞作品。クリント・イーストウッド監督・主演の西部劇『許されざる者』(1992年)をリメイクした日本映画。キャッチコピーは「人は、どこまで許されるのか」。時代設定は原作の設定と同時期の明治時代初期、舞台は蝦夷地で、江戸幕府の残党・「人斬り・釜田十兵衛」の生き様を描いています。監督・脚本は李相日。この作品で、主演・渡辺謙は第37回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、忽那汐里は新人俳優賞を受賞。
監督:李相日 出演:渡辺謙(釜田十兵衛)、柄本明(馬場金吾)、柳楽優弥(沢田五郎)、忽那汐里(なつめ)、三浦貴大(堀田卯之助)、佐藤浩市(大石一蔵)、小池栄子(お梶)ほか
映画「許されざる者(2013渡辺謙)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「許されざる者(2013渡辺謙)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
許されざる者の予告編 動画
映画「許されざる者(2013渡辺謙)」解説
この解説記事には映画「許されざる者(2013渡辺謙)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
許されざる者のネタバレあらすじ:追われる1人の男。娼館で事件起きる
江戸から明治へ、侍の時代が終わろうとしていた。新政府による幕府の残党狩りは執拗で、蝦夷と呼ばれた北の未開地まで及んでいました。時は1869年(明治2年)、雪原の上を十数騎の新政府征討軍がある男を追っていました。白馬が一頭、死んでいました。征討軍は林の中に入り、男を追いますが、1人、また1人と殺されていきます。その男は屍から食い物を貪り、水を飲み、傷だらけになりながらも最期の1人を刺し殺すと、倒れ込みました。北海道の鷲路村、ある夜、警察署長の大石一蔵が部下たちに語ります。「どんな獣だって避けられるものなら、争いは避けたい。それが本能って奴だ。…死にたくない。もう片方の本能がそう訴えるんだ。…不思議なことに未開の地というものは、野心をもった鼠どもを引きつけるんだ。鼠は小さいうちに潰すに限る。鼠が熊になる前にな」と。その時、娼館で事件が起こりました。一蔵が娼館に行って見ると、女郎のなつめの顔が傷だらけに切られていました。年長の女郎・お梶は「あそこが小さいから、ちょっと笑ったら、この仕打ちさ。あの二人、打ち首にしておくれよ」と一蔵に訴えました。二人の男が縛られていました。一蔵は、「このままじゃ、うちは大損だ。もう客がつかねえ。」と嘆く娼館の亭主・喜八と話し、二人の男に「馬6頭、冬までに持ってこい。いいな」と言い、示談で済ませました。それを聞いたお梶は「そんな裁きがあるもんか!うちら、馬や牛と同じかい」と怒ります。お梶はナイフを取りました。一蔵はお梶のその手を握り、「まだ血が見たいか」と囁き、お梶はナイフを落とします。2階に行ったお梶は悔しがる女郎たちを見て、「許さねえ。…もう飽き飽きだ。死んだふりして生きるのは」と呟きました。
許されざる者のネタバレあらすじ:生きていた人斬り・釜田十兵衛
1880年(明治13年)、荒涼とした平原の古びた一軒家で、1人の男が子供たちと農作業をしていました。そこに1人の男が馬に乗り、現れました。男は「久しぶりだな、釜田十兵衛。官軍の連中がその名を聞いて震え上がる…人斬り十兵衛。生きていたとはな。戦友の顔も忘れたか、俺だ十兵衛、馬場金吾だ。…これから鷲尾に向かう。開拓民を二人殺す。女郎を切り刻んだ。その野郎どもに賞金がかかった。なんと千円だ。女郎たちの金だ。…賞金はきっちり折半でどうだ。頼む、十兵衛。…五百円あれば、こんな貧乏暮らしともおさらばだ」と十兵衛を誘いました。十兵衛は断りました。それは3年前に亡くしたアイヌ人の愛妻との「二度と刀は抜かない」という約束したからでした。金吾は去り際に十兵衛に「人はそう簡単に変わらんぞ。いくら捨てたつもりでも過去があんたを忘れない。…気が変わったら来てくれ」と言い、行き方と告げで、鷲尾に向かって行きました。十兵衛は思案します。そして、夕方、土中に埋めていた刀と妻の遺品の首飾りを掘り起こします。刀は錆びついて、なかなか抜けませんでした。翌日、息子がジャガイモを掘り起こすと、実がありません。「父ちゃん、食うところがない」と言う息子に、十兵衛は申し訳なく思いました。亡き妻との間に産まれた一男一女と十兵衛はきれいな夕陽を眺めました。十兵衛は決意します。その翌日、十兵衛は亡き妻の墓に花を生けると、錆びた刀と妻の形見を持ち、旅立つ準備をします。子供たちに「どうしても困ったら、アイヌ村に行け」と告げ、馬に乗ろうとしますが、落馬してしまいます。「暫く人、乗せてないからな、こいつ…心配するな、半月で帰る」と言い、馬に乗り、金吾の跡を追い、旅立ちました。
許されざる者のネタバレあらすじ:3人の賞金稼ぎ
鷲路村に女郎の顔を切り刻んだ男とその弟が、馬6頭を持ってきました。女郎たちは二人に石を投げました。弟は女郎たちに鹿の毛皮を差し出し、「詫びの印だ」と渡そうとしますが、お梶は受け取らず、「そんなもので済まそうっていうのかい。…二度と来るんじゃないよ」と言い放ち、追い返しました。1人の髭面の青年が十兵衛を見つけました。十兵衛は亡き妻のアイヌの村に行き、村長に「もう過ちは繰り返しません。…子供たちを頼みます。困ったときはここに来るよう言ってます」とアイヌ語でお願いし、金吾を追い、追いつきます。十兵衛と金吾は野宿をします。十兵衛は金吾に「何の躊躇いもなく殺してた。…あれから酒を飲んでない。一滴もだ」と語りました。すると闇夜から「人斬り十兵衛さんよ」と叫びながら、酔っぱらった若い男が白馬に乗って、現れました。「俺は、沢田五郎ってんだ」と言うと「俺だってな、5人殺してるんだ。いい相棒になるぜ」と言い、銃をちらつかせ、酒を飲み、銃を何発か天空に撃つと、バタンと倒れて寝てしまいました。翌朝、五郎が起きると、十兵衛たちは旅立ったあとでした。金吾と十兵衛は馬に乗り、鷲尾を目指していました。金吾は十兵衛に「女房も逃げた。石炭を掘ってた。何年間もな。…十兵衛、そっちの方はご無沙汰なんだろ」と言うと、十兵衛は「上から女房が見張ってるぞ」と答えました。そこに1発の銃声がしました。急いで草むらに隠れる二人に、五郎が木の上で笑いながら「遅いな、爺さんたち」と言いました。金吾が五郎にライフルで撃つと、五郎は木から落ちました。五郎は「俺、この辺り詳しいんだぜ。あの山、突っ切れば2日は早く着ける」と二人に言いました。仕方なく、十兵衛と金吾は、五郎も仲間に加えます。
許されざる者のネタバレあらすじ:鷲路村、大石一蔵の力
鷲路村に馬車に乗って、1人の侍と文士がやって来ました。村の入り口には「一切ノ、刀、銃器、持ち込み禁止」と書かれた立て札が立っていました。侍は長州の北大路正春、文士は北大路の伝記を書こうとしていた姫路弥三郎という男でした。二人は居酒屋に入り、長州出身を誇りにしていた北大路は「いい時代じゃないか。こうして公に肉が食える。それに加えて…」と言い、2年前の大久保卿暗殺事件の記事を姫路に見せました。すると、北大路は薩摩出身の二人の男に喧嘩を売られました。「いるもんだね。こんな所にも、薩摩が…」言うと、女中を使って、細工をした刀を薩摩の男に渡しました。居酒屋の前で北大路と薩摩の男の喧嘩が始まりました。「こちらから行こうか」と北大路は、刀が抜けない薩摩の男の袴を斬り落とします。薩摩の男たちは土下座して謝りました。北大路が居酒屋に入ると、そこには大石一蔵がいました。北大路は、溺れ死んだと聞いた一蔵に驚きます。一蔵は「あいにくしぶといもんでね。…高札に書いてあっただろう。…武器の持ち込みは俺が許さない」と言いました。北大路が外に出ると、警官たちがライフルを持って待ちかまえていました。一蔵は北大路に刀を渡せと命じました。北大路は刀を「丁重に扱え」と言って、警官に渡しました。北大路は「刀は武士の魂だぞ」と言うと、一蔵は「俺は侍崩れが一番嫌いなんだよ」と言い、北大路を殴り倒し、「ここには賞金なんかないぞ。…」と叫び、何度も殴り、蹴りして、半殺しにしました。一蔵は北大路を一晩拘留しました。警察署で姫路は一蔵に「勝敗の分かれ目は剣の腕前ではないと」と訊くと、一蔵は「間合いだ。…結局、鉛の玉が歴史を決める。…刀の前に命をさせば、臆した方が死ぬ」と語りました。一蔵は姫路に刀を渡し、俺を斬り殺したら北大路を連れて出ていってもいいと言いましたが、姫路にはできませんでした。姫路は机の上の銃に気がつき、それを手にしました。一蔵は姫路に北大路に「渡せ」と命じ、牢から出た北大路は銃を一蔵に向け、「どうせ空じゃ」と言って、銃を投げました。一蔵はその銃を拾い、北大路に向けて1発撃ちました。銃は空じゃなかったのです。翌朝、一蔵は曲げて使い物にならなくした北大路の刀を、北大路に渡し、釈放します。北大路は、姫路と一蔵たちに「地獄へ行って本を書け。…道徳心の欠片もねえ。…」などと罵倒しながら、馬車で去っていきました。「もうこれで誰も、来やしないね」とお梶は呟きました。
許されざる者のネタバレあらすじ:沢田五郎の嘆き
十兵衛たちは森の中の近道を通っていました。途中、休憩しているときに、五郎が十兵衛に「あんた、今まで何人殺した」と訊くと、十兵衛は「忘れた」と答えました。それを聞いた五郎は、どこかに行ってしまいました。五郎が草むらからおい、屯田兵だ」と言って出てきました。3人は様子を見に行きました。屯田兵がアイヌ部落の1人の男に銃を突き付けていました。家を放火した訳を訊いていました。金吾は「関わり合いになると面倒だ」と言いましたが、五郎が「あの家の母親が死んだんだ」と言うと、十兵衛が「アイヌでは女が死ぬと家を焼く。あの世で持たせてやるんだ」とアイヌの風習を金吾に教えました。五郎は古い慣習を強引に辞めさせようとする屯田兵に怒りを覚え、1人でその騒ぎの中に駆け込んで行きました。五郎はアイヌ語で屯田兵に逆らうなと通訳をします。しかし、そのアイヌの男は聞きません。屯田兵の1人が、その男の耳輪を強引に引き抜きました。十兵衛は見かねて出ていきました。そして、十兵衛はそのアイヌの男にアイヌ語で「無駄に強がって、母親を泣かせるな」と言い、五郎を連れ出します。屯田兵は「貴様ら、イヌと同類か」と言いました。十兵衛は「俺は今、機嫌が悪いんだ」と言い、去ろうとすると、屯田兵は銃で撃とうしました。金吾はそれを阻止するため、空中に向かって数発撃ちました。難を逃れた3人は先を急ぎます。雨の降る中、金吾は五郎に「お前、アイヌか」と訊くと、五郎は目に涙をためて「…和人と、…アイヌの血が混じって、クソみたいな俺は生まれたのさ。…」と語りました。金吾は五郎に「ひき返せ。アイヌの血が混じったお前が和人を殺してみろ、死ぬまで追われる…」と諭しましたが、五郎は聞きませんでした。
許されざる者のネタバレあらすじ:十兵衛、半殺しになる
雨の中、3人は目的の村・鷲路村にようやく到着しました。十兵衛たちは村の娼館に入りました。若い五郎は2階に上がり、斬られた女郎・なつめに会います。金吾は震える十兵衛に酒を薦めますが、十兵衛は飲みません。金吾は五郎が心配になり、2階に上がります。ひとり、十兵衛だけが、1階の居酒屋にいました。そこに巡回に来た警官隊が来ました。そして、一蔵が入ってきました。震える十兵衛の刀を取り、抜くと錆びだらけでした。「こっちを向け」と一蔵は命令します。おもむろに十兵衛は立ち、一蔵に顔を見せます。一蔵は笑いながら「おめおめと生きていたか。…この男は元幕府軍の人斬り十兵衛だ」と姫路に教えました。姫路は驚きました。十兵衛は「俺は唯の百姓だ」と言いますが、一蔵は「いいや、釜田十兵衛。お前は根っからの人斬り野郎だ。…本性を見せてみろ」と言い、半殺しにすると、一蔵は酒瓶を割り、「悪党には目印が必要だよな」と言い、十兵衛の頬をゆっくりと深く切りました。そして、うめき声を上げながら這って雨の降る外に出ようとする十兵衛を見ながら、一蔵は部下たちに「ほっとけ。そいつはもう唯の屍だ」と言い放ちました。十兵衛は這って娼館の雨の降る外に出ました。その頃、2階の娼婦たちは、金吾と五郎を山腹の山小屋に行けと言って、窓から逃がしました。瀕死の十兵衛を金吾と五郎は、山腹の山小屋に連れて行きました。金吾は、十兵衛の顔の傷を縫いました。十兵衛は痛みにこらえながら「死にたくない。恐い。…子供には絶対に言うな。頼む」と金吾に言うと気を失いました。次の日、お梶が小屋に来ました。十兵衛はまだ寝ていました。「明日にでもやろうぜ」とはやる五郎を、金吾が「やるとき十兵衛も一緒だ」と制しました。金吾はお梶に「薬を頼む」と言うと、お梶は「賞金、使いきる前に、どうにか片をつけておくれよ」と言い残して、村に帰っていきました。3日目、十兵衛が目を開けると、傷だらけの顔のなつめがいました。3日間、十兵衛を懸命に看病したのが、なつめだったのです。見渡す限りの銀世界のある日、傷が癒えた十兵衛が、小屋の前の倒木に腰掛けて握り飯を食っていると、なつめがやってきました。十兵衛は「不思議なもんだ。まだこうして生きている。…」と呟くと、なつめは十兵衛の刀を持ってきて渡しました。なつめは十兵衛の背中を見て、「最後に見た父も、そんな背中でした。死ぬまで罪を背負って生きていく人の背中」と呟くと、十兵衛は懐から妻の形見の首飾りを出し、「女房にも似たようなことを言われた。…違う生き方を知るのに何十年もかかった」と語りました。なつめは十兵衛に「本当に殺すつもりですか。そうやってお金のために、女、子供も殺したんですか」と訊くと、十兵衛はなつめをちらっと見て、俯きました。小屋の中では、五郎が自分の人相書きを見ていました。
許されざる者のネタバレあらすじ:まず一人目。金吾の告白
十兵衛の傷も回復し、懸賞首をとる日が来ました。まずは開拓民の弟の方でした。弟が仲間2人と鹿狩りをしているところを、金吾がライフルで狙撃しましたが、馬に当たり、馬の下敷きになり、弟は脚を骨折してしまいます。五郎が銃を撃つと、仲間は逃げていきました。苦しみ、「俺はやってない」と言う弟を、十兵衛は「楽にしてやれ」と金吾に促しました。しかし、金吾は涙を流しながら「石炭の話、あれは嘘だ。…もうどこにも行き場がないんだ」と嘆き、止めをさせませんでした。十兵衛は仕方なく、弟を刺し殺しました。その様子を見て、金吾は泣き崩れました。殺しを終え、3人は馬に乗り逃げました。金吾は、十兵衛に自分のライフルを渡し、「許してくれ。十兵衛。俺は終わりだ。…あんたのお陰で自分がどんな人間かよく分かった。…俺はあんたの事が恐くて、妬ましくて、それでも離れられなかった。…」と十兵衛に言うと、十兵衛は金吾に「あとは俺たちがやる」と答えました。金吾は「あばよ。十兵衛。最後ぐらい笑えよ」と言い残し、去っていきました。
許されざる者のネタバレあらすじ:五郎、2人目を殺す
その夜、開拓民の弟の遺体が村に運ばれて来ました。一蔵の指示で、村の男たちと警官を集め、弟を殺した者の捜索が始まりました。一蔵は「殺さずに捕まえて来い」と命令しました。村の男たちは、女郎たちがいる娼館の2階に石を投げつけ、捜索に行きました。なつめの顔を切った兄の方は、警察署の留置所内で保護していました。一蔵は側にいた姫路に「勝って生き残った者が正義で、負けて死んだ者が悪になる。記録ってのはそういうもんだろ」と言いました。十兵衛と五郎は、その警察署の留置所裏の草むらに潜んでいました。五郎は「俺は女を痛めつける奴は許せないんだ」と言いました。留置所から開拓民の兄が出てきて、厠に入っていきました。十兵衛は五郎に「お前の仕事だ」と言い、中に入れと指示します。五郎は意を決して、厠の方に向かいました。五郎は開拓民の兄が厠の扉を開け、まず銃で一発撃ちました。玉は兄の右肩に当たりました。命乞いをする兄と五郎は、狭い厠の中で格闘になりました。兄の叫びを聞いた警察署員が数人出てきました。十兵衛はその男たちが厠に行かないように、ライフルで援護射撃をしました。五郎は自分のアイヌの短剣を兄の心臓に刺し、殺しました。五郎と十兵衛は、馬に乗り必死で逃げました。一蔵も、所内の2階から十兵衛と五郎を狙撃しましたが、当たらず、二人を取り逃がしました。
許されざる者のネタバレあらすじ:馬場金吾の死
この日から、警官、村の男たちでの捜索が日夜、続きました。そして、ある日、金吾が捕まってしまいました。金吾は裸にされ、一蔵に拷問されます。しかし、金吾は2人の居場所を吐きませんでした。お梶も連れて来られ、一蔵は十兵衛との金の受け渡しを訊きましたが、お梶は「もう渡した」と答えました。一蔵は金吾にさらにきつい拷問をしました。村中に金吾の叫びが響きました。その頃、十兵衛と五郎はある木の下にいました。五郎は酒を飲み、半分酔っぱらいながら、「…それでもぶっ殺してやったけど…」と呟きました。そして五郎は、泣きながら震える手を見て「初めて…殺した。…」と告白しました。そんな五郎を見て、十兵衛は「死ぬほど酔って、今は忘れろ」と慰めました。そこになつめが懸賞金を持ってやってきました。なつめの表情を見て、十兵衛はなつめに尋ねると、なつめは「殺されました。仲間の人が、…署長に折檻されて、あの人のうめき声が町中に聞こえるぐらい。…アイヌなんか知らないって。そして最期に、お前は十兵衛の本当の怖さを知らない。十兵衛は必ずお前たちを皆殺しにする」と言いました。十兵衛は五郎の酒を一気に飲みほし、仇を取る決意をします。五郎は「無茶だよ…」と十兵衛に言いますが、十兵衛は「殺されて当然なのは、俺とお前だ。…」と言い返しました。五郎は「俺は嫌だ。…俺はあんたみたいになれないし、なりたくもない。金もいらない。全部、あんたのもんだ。…」と言い出しました。十兵衛は金吾のライフルを持ち、馬に乗りました。そして、金を渡し、五郎に「俺の家はわかるな。金を頼む」と言い、なつめには妻の形見を渡し「俺に…気づかせてくれた女房の形見だ。子供たちに届けてくれ」と言い、単身、署長を殺しにいきました。
許されざる者のネタバレあらすじ:人斬り十兵衛、復活
夜、十兵衛は金吾のライフルと錆びた刀を持ち、娼館に向かいました。金吾は、娼館の門柱に裸で吊るされ、さらし者にされていました。娼館の中では、一蔵と二十数人の警官、村の男たちが十兵衛捕縛の打ち合わせをしていました。静かに娼館の玄関の扉が開き、入ってきたのは、十兵衛でした。十兵衛はまず、娼館の主人・喜八を撃ち殺しました。同様する男たちに、十兵衛は「邪魔する奴は殺す。…あとはお前を殺すだけだ」と言い、剣を抜いた一蔵に十兵衛はライフルを向けました。一蔵は「いいか、俺が撃たれたら、蜂の巣にしろ」と皆に命じました。十兵衛はライフルの引き金を引きますが、玉切れでした。一蔵が刀で十兵衛を斬ろうとしましたが、十兵衛は一蔵の懐に飛び込み、錆びた刀で一蔵の腹を刺しました。十兵衛の錆びた刀は折れ、一蔵の腹に刺さったまま、一蔵は倒れました。十兵衛は向かってくる奴は躊躇い無く斬って、斬って、斬りまくりました。「俺に構うな」と言いますが、かかってくる奴は容赦なく斬り殺しました。2,3人、生き残った者に、十兵衛は「行け!」と言うと、彼らは逃げ出しました。十兵衛の背後から姫路が出てきました。十兵衛は、姫路が物書きだと言ったので、彼に「ここで見たことを有りのまま書け。但し、女郎とアイヌのことを書いたら、どこまでも追いかけて、殺す」と言いました。姫路は出ていきました。一蔵は十兵衛の折れた刀が腹に突き刺さったまま、片手で剣を上げようとしますが、「重てえ」と呟き、剣を落としました。一蔵の最期でした。娼館に火がどんどん回っていき、娼館は火だるまになりました。そこから出てきたのは、返り血を浴び、自らも刺された十兵衛でした。外では、お梶たち娼婦が金吾の屍を降ろしていました。十兵衛は「地獄で待ってろ」と金吾の屍に言い残し、馬に乗って立ち去っていきました。
許されざる者の結末:なつめの十兵衛への思い
五郎は、白馬になつめを乗せて、十兵衛の家に向かいました。十兵衛の家から2人の子供が出てきました。なつめは「十兵衛を見たのはあの日が最後だった。あの人は大切なものを私と五郎に託して行ってしまった。登る朝日に背中を押され、私は思った。この場所で生きていこうと。十兵衛が妻を愛し、子供たちを愛し、一度は希望を手に入れたこの場所で、いつかあの人が戻るのを信じて…」と決意しました。十兵衛は雪原の中をひとり、家に向かって歩いていました。
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