人生フルーツの紹介:2016年日本映画。東海テレビの製作によるヒューマン・ドキュメンタリーのシリーズ第10弾です。今回は愛知県春日井市で自然と共生する暮らしを送っている、高度経済成長期より数々の都市計画に関わってきた建築家・津端修一と妻・英子の2年間に密着しています。
監督:伏原健之 出演者:津端修一、津端英子、樹木希林(ナレーション)ほか
映画「人生フルーツ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人生フルーツ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
人生フルーツの予告編 動画
映画「人生フルーツ」解説
この解説記事には映画「人生フルーツ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人生フルーツのネタバレあらすじ:起
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン。その一角の雑木林と菜園に囲まれた一軒家に建築家の津端修一さん(当時90歳)と妻の英子さん(当時87歳)が寄り添いながら暮らしています。修一さんが師と仰ぐ建築家アントニン・レーモンドの自宅を参考にしたモダン造りの母屋を中心に、四季折々の70種類の野菜と50種類の果実を育てている菜園があり、修一さんは英子さんが採れた野菜や果物などで作った料理に舌鼓を打ち、二人寄り添いながらささやかで温かい毎日を過ごしています。
人生フルーツのネタバレあらすじ:承
1945年、厚木の飛行場で終戦を迎えた修一さんはアントニン・レーモンドの事務所で働いた後、1955年に創設間もない日本住宅公団に入社しました。英子さんと出会ったのは1950年、当時東京大学のヨット部員だった修一さんが国体出場のため愛知県半田市にある英子さんの実家の造り酒屋に宿泊したことがきっかけで知り合い、5年の交際を経て結婚しました。それ以来、夫婦は互いのやりたいことを尊重しあいながら支え合って生きてきました。その後、数々の都市計画に携わっていた修一さんは1960年に高蔵寺ニュータウン計画の設計を一任され、ニュータウンの中に雑木林を残して風の通り道とし、自然との共生をテーマにしたプランを打ち立てました。しかし、当時は高度経済成長期の真っ只中、公団は修一さんの思惑とはかけ離れた経済優先主義の無機質な大規模団地プランを取り、挫折を味わった修一さんはそれ以来、都市計画の第一線から次第に距離を置くようになりました。そして1970年、修一さんは自ら計画に参加した高蔵寺ニュータウンの賃貸住宅を借り、5年かけて土地を買い、家を建て、50年もの歳月をかけて理想の環境を育んできたのです。
人生フルーツのネタバレあらすじ:転
修一さんと英子さんの本が台湾でも発売されることが決まり、夫婦は台湾でサイン会を開きました。修一さんは25年前に新北市の淡海ニュータウンを手掛けたことがあるのですが、そこも修一さんの構想とは全くかけ離れたものになっていました。その後、夫婦は、太平洋戦争時代に戦闘機の設計技師をしていた修一さんが親しくしていた台湾人の元工員の墓参りに向かいました。陳清順という名の少年工を修一さんは弟のように可愛がり、友情の証として判子をもらったのですが、終戦後に台湾に帰国した陳さんは1950年に政治犯として処刑されていたのです。修一さんは陳さんからもらった判子を墓に埋め、涙を流しながら歌を捧げました。帰国した夫婦はいつもの日常に戻り、大学生の孫娘はなこさんを可愛がっては体にやさしい食材で作った自慢の総菜を送り届けたり、かつてはハゲ山だったのを修一さんの呼びかけにより地元住民が植樹して豊かな緑を取り戻した裏山の高森山を眺めたりとゆったり過ごしていました。ところが…。
人生フルーツの結末
2015年6月2日、修一さんは自宅で昼寝をしたまま静かに息を引き取りました。「待ってて。私がそっちへ行ったら一緒に南太平洋に散骨してもらおうね。また会えるのを楽しみにしています、それまで一生懸命やりますから」涙ながらに夫を弔った英子さんは、夫と50年を過ごした住み慣れた我が家を一人で守る決心を固め、草木の手入れをしたり家の修繕をするなど一生懸命に働きました。そんなある日、佐賀県の伊万里市から、修一さんが生前に人生最後の仕事として引き受けていた療養施設「山のサナーレ・クリニック」のスタッフが訪れてきました。修一さんの遺した図面には「できるものから小さくコツコツ、ときをためて、ゆっくり」という修一さんのメッセージとともに、修一さんが生涯のモットーとしてきた自然との共生というコンセプトが織り込まれていました。英子さんは今日も、修一さんの大好物だったコロッケを遺影の前に供えながら、一日一日を大切に生きています。
夫婦ふたりの穏やかで充実した暮らしぶりにぐっと来ました。
「こんな風に年をとりたいな」と中盤まではゆったりした気持ちで見ていたのですが、突然の展開に言葉を失ってしまいました。
樹木希林さんのナレーションも何とも言えない良い味を出していてこの映画にピッタリだと思いました。
「人生フルーツ」映画のタイトルであるこの言葉の意味を何度も噛みしめたくなる、そんな映画でした。