13階段の紹介:2003年日本映画。江戸川乱歩賞を受賞した高野和明の同名小説を映画化したサスペンス作品です。それぞれ過去に深い傷を持つ仮釈放中の青年と定年間近の刑務官が、冤罪の死刑囚を救うために10年前の殺人事件の真相に迫っていきます。
監督:長澤雅彦 出演者:反町隆史(三上純一)、山崎努(南郷正二)、木内晶子(木下友里)、笑福亭鶴瓶(杉浦弁護士)、田中麗奈(南郷杏子)、井川比佐志(佐村光男)、大杉漣(安藤紀夫)、大滝秀治(久保)、石橋蓮司(阿部所長)、別所哲也(中森検事)、寺島進(岡崎刑務官)、宮藤官九郎(樹原亮)ほか
映画「13階段」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「13階段」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「13階段」解説
この解説記事には映画「13階段」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
13階段のネタバレあらすじ:起
松山刑務所に勤務する、定年間近の刑務官・南郷正二(山崎努)三上純一は、杉浦(笑福亭鶴瓶)という弁護士からある冤罪事件についての調査を依頼されました。報酬は1000万円。南郷は先日仮釈放されたばかりの三上純一(反町隆史)という青年に目を付け、助手として調査の手伝いを依頼しました。三上はかつてある人物を死に追いやったことから傷害致死罪で逮捕され、懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けて松山刑務所に服役、刑期が残り4ヶ月となったところで仮釈放されていたのです。
南郷が依頼された調査とは、既に死刑が確定している樹原亮(宮藤官九郎)に冤罪の疑いがあり、事件の真相を突き止めてほしいというものでした。三上は最初のうちは難色を示すも、自らの起こした事件の民事裁判で多額の賠償責任を負い、家族が困窮した生活を送っていることから金の為にと引き受けることにしました
13階段のネタバレあらすじ:承
樹原は10年前、千葉県中湊郡で発生した「宇津木夫妻殺人事件」の容疑者として逮捕され、7年前に死刑が確定、死刑執行まであと3ヶ月に迫っていました。被害者の宇津木耕平(伊藤幸純)とその妻はベテランの保護司として元受刑者たちの面倒を見てきており、樹原のそのうちの一人でした。しかし事件当日、樹原は現場付近でバイク事故を起こし、頭を強打したことから当時の記憶を失ってしまっており、唯一覚えているのは「階段を上っていた」ということだけでした。
奇しくも事件現場の近くには、三上が死に追いやった佐村恭介(水橋研二)の父・光男(井川比佐志)の自宅がありました。三上は光男のもとへ謝罪に向かいましたが、光男は「死んで償え」と突き放しました。
三上は南郷とともに唯一の手掛かりである“階段”を探しながら、自らの過去を語り始めました。10年前の事件当日、三上は恋人・木下友里(木内晶子)と共に旅行でこの町を訪れており、その際に友里は恭介にレイプされていたのです。それから7年後に三上は偶然にも恭介と再会、揉み合いの末に恭介を殺したのです。三上には恭介への殺意はあったものの、現場の状況から“事故”と処理され、殺人罪ではなく傷害致死罪が適用されていたのです。
13階段のネタバレあらすじ:転
南郷は三上に“殺意”と“殺人”とは違うと答え、人を“殺した”ことを話しました。かつて東京拘置所で勤務していた南郷は、死刑執行官として死刑囚の寺田実(宮迫博之)の処刑に立ち会っていたのですが、部下が処刑台のボタンを押せなかったことから南郷が代わりに押したのです。寺田は処刑直前にすっかり改心しており、それ以来南郷もまた罪の意識に苛まれていたのです。
やがて土砂に埋まった廃寺・満願寺から“階段”と凶器が発見されました。しかし、その凶器には何と三上の指紋が付着していました。これにより三上は事件の真犯人として疑われてしまい、南郷の前から姿を消しました。一方、南郷は、宇津木夫妻の知人で地元ホテルのオーナー・安藤紀夫(大杉漣)に接触を図っていました。
13階段の結末
宇津木夫妻殺人事件の真犯人は予想外の安藤でした。安藤は過去に犯した罪をネタに宇津木から強請られており、思い余って宇津木夫妻を殺害していたのです。南郷の問いに対し、安藤は素直に罪を認めましたが、二人は揉み合いとなりました。
一方、満願寺跡にいた三上の前に光男が現れました。恭介の行いを知らない光男は、恭介を死に追いやった三上の裁判結果に全く納得がいかず、あの手この手を使って三上を真犯人に仕立て、極刑に追いやろうと図っていたのです。もちろん指紋も光男が仕組んだものであり、杉浦を通じて匿名で南郷に依頼したのも光男でした。光男は三上を殺そうとしましたが、失敗、そこへ南郷も駆け付けて事件はようやく解決しました。樹原は再審請求が下って無罪判決を勝ち取り、三上と南郷はそれぞれの生活へと戻っていきました。
死刑囚の無実を証明しようとする刑務官と元受刑者。死刑執行のタイムリミットが迫る中で、複雑に絡み合う思惑—-。
高野和明の江戸川乱歩賞受賞のベストセラー小説を映画化した「13階段」は、人間の”心の闇”が生む行為に焦点を当てた重厚なサスペンス映画だ。
主人公の刑務所主任、南郷を山崎努、喧嘩相手を死なせ、三年間服役した若者三上を反町隆史が演じている。
十年前、保護司夫妻が惨殺された事件で、記憶喪失のまま逮捕された樹原(宮藤官九郎)は、死刑判決が確定し、刑の執行を待つばかりだった。
その事件の再調査を匿名の依頼主から高額の報酬を条件に引き受けた南郷は、出所したばかりの三上を誘うのだ。
南郷には、かつて罪を悔いて改心した死刑囚(宮迫博之)の刑を自ら執行したという苦い思いがあり、三上も死なせた相手の父親(井川比佐志)から激しい憎しみを受け、苦しんでいたのだ。
「階段を上った」という樹原のわずかな記憶を頼りに、事件現場の周辺を徹底的に探る二人。
刑の執行が迫る中、手掛かりをつかみかけた南郷は、事件当日に三上が事件のあった町へ来ていたことを知ってしまう—-。
登場人物たちがそれぞれ抱える”心の闇”を丁寧に描くことで、ドラマ全体に重層的な厚味が生まれたと思う。
特にそれまでのイメージにはなかった反町隆史の強く抑制した演技が、なかなかいい。
そして、リアリティーを追求した死刑執行シーンも、宮迫博之の好演もあって、死刑制度の矛盾を我々観る者に鋭く突きつけてくる。
ただし、最後の回想シーンが長過ぎて、せっかくの息詰まるサスペンスに水を差したのではないかと思う。
そして、原作と違うラストの都合のよい展開も、観る者によって評価が分かれるところだろう。