梟の城(ふくろうのしろ)の紹介:1999年日本映画。織田信長に滅ぼされた伊賀の手練れであった重蔵は「秀吉の暗殺」の仕事をもちかけられる。仕事をもちかけた豪商の養女小萩と出会い二人は惹かれあうが小萩はくノ一であり重蔵を見張っていたのだった。今は役人となり伊賀を裏切った五平が立ちはだかる中、重蔵は忍者としての己を全うする為に秀吉の首を狙うこととなる。
監督:篠田正浩 出演:中井貴一(葛籠重蔵)、鶴田真由(小萩)、葉月里緒菜(木さる)、上川隆也(風間五平)、永澤俊矢(摩利支天洞玄)、根津甚八(服部半蔵)、山本學(下柘植次郎左衛門)、火野正平(黒阿弥)、津村鷹志(前田玄以)、マコ(豊臣秀吉)、筧利夫(雲兵衛)、花柳錦之輔(石田三成)、若松武史(上野弥兵衛)、馬渕晴子(老女楠)、田中伸子(淀君)、小沢昭一(今井宗久)、中尾彬(徳川家康)、中村敦夫(葛籠太郎兵衛)、岩下志麻(北政所)、ほか
映画「梟の城」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「梟の城」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「梟の城」解説
この解説記事には映画「梟の城」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
梟の城のネタバレあらすじ:起
伊賀は昔から隠し里と呼ばれ、特定の主に仕えることを拒絶してきました。天下統一の妨げになると織田信長は考え、伊賀を恐れ憎悪し伊賀全土を焼き払う大虐殺を行いました。伊賀が滅んでから10年がたち、世は豊臣の時代となりました。豊臣秀吉の嫡男鶴松が死亡した際の豊臣秀吉の悲嘆ぶりをみた徳川家康は「自らを律することができずに天下など。これから先何をしでかすか」とこぼし、かつて伊賀の忍者であった服部半蔵を呼び寄せます。ほどなくして秀吉は全国の大名を集め、突如、朝鮮出兵を決めたのでした。
一人の男が険しい山道を登り、山奥に隠れた伊賀屈指の使い手であった重蔵に会いに来ます。重蔵の師匠であるその男は「格別の仕事をもってきた」と言い、その内容は「秀吉を殺す」ことだと告げます。そして重蔵は“金を持っているものが伊賀に秀吉を殺害させようとしている”こと“重蔵と同じくらい腕がたつ五平は伊賀を捨て裏切ったこと”を知ります。
最初は仕事を断った重蔵でしたが伊賀での地獄絵図を思い出し、山奥の隠れ家から旅立つのでした。
京へと向かう途中の宿で、美しい女、小萩に酌をしてもらい一夜を共にします。そして鉄砲商人の宗久を訪ね仕事の内容を尋ねます。今は秀吉の寵愛を受けている宗久ですが、朝鮮出兵により交易が途絶え窓口となっている博多が栄えはじめていることを危惧しており、世継ぎのない秀吉を殺害すれば再び天下を争う戦がはじまり商売が活気づくと考えていました。重蔵は宗久と組んで新しい天下をとろうとする者の名を聞きますが、叱咤されます。そして、宗久の養女だと引き合わせられた女性は小萩でした。小萩はもとは大名の娘であり、今後、重蔵への指示は小萩を通して告げられることとなります。
梟の城のネタバレあらすじ:承
京都の街は賑わっており、“黒阿弥・木さる“をはじめかつての伊賀の残党達は、昼は鍛冶屋や軽業の興行をしながら夜は太閤の権威を傷つけ民衆に動揺を与える為大名や貴族の宝を盗んでいました。しかし新しい京都奉行盗賊改めがやり手で、黒阿弥達を先回りして手口を読み失敗することもありました。
重蔵は伊賀の黒阿弥が営む鍛冶屋に向かい、小萩から預かった手紙を受け取ります。黒阿弥は小萩がくノ一であると見破りますが、重蔵は意に介してはいません。小萩の手紙には「10日後に秀吉の館の屋根の上で待っている」と書かれていました。
その帰り街で五平の姿をみかけた重蔵はそれを追い、奉行所に入っていくのを見届けました。その途中で出会った木さるは五平と兄妹のように育った仲ですが重蔵に好意を持っており重蔵に「いつかは妻にしてください」と思いを告げます。
10日後、屋根の上にいくとそこには同じように呼び出された五平がいました。五平は新しい京都奉行盗賊改めは自分で「金輪際伊賀には戻らず侍になり自分を鬼にした技を使ってまっとうな人間になる。それを邪魔するなら伊賀者でも容赦はしない」と重蔵に伝えます。五平は前田家に仕えており、既に伊賀者であると知られています。しかし用心深い前田は甲賀の洞玄にも声をかけ備えるのでした。
軽業小屋にいる木さるに五平が会いにきます。木さるは五平に伊賀を裏切った怒りをぶつけますが、幼い頃の思いが溢れ二人は抱き合います。深い仲になった木さると五平ですが木さるが本心では重蔵のことが好きだと五平に見破られ「京を離れて、生き残り、別の男と添い遂げろ」と五平は去っていきます。
そして、黒阿弥の営む店の従業員が甲賀の洞玄の手によって皆殺しにされてしまいます。
梟の城のネタバレあらすじ:転
秀吉は名護屋(九州)に向かい朝鮮出兵がはじまります。当初は鉄砲の威力と圧政の民衆蜂起も手伝い前線を押し上げましたが、やがて膠着状態となりました。その頃、家康は秀吉との会食の席で淀君の妊娠を知り、時を逃したと感じた家康は秀吉の殺害から手を引くことにします。それを宗久に伝えた半蔵は、その場で宗久を殺害するのでした。
重蔵のいる山奥の隠れ家に小萩が訪ねてきます。仕事は終わりだと小萩が言い、重蔵は宗久が亡くなったのに誰の指示で動いているのか、と核心に触れます。小萩は重蔵に一緒に逃げて欲しいと頼みますが重蔵は頷かず、小萩と一緒に来た共の者に襲われるが返り討ちにします。朝鮮はその頃明の参戦により一進一退の攻防となっていました。秀吉には後継ぎが生まれ、子を産めなかった北政所の機嫌をとるための花見が催されることとなりました。高野山まで足をのばし秀吉自作の能を上演するというのです。その能の舞台ではいつしか演者や周囲が黒阿弥や重蔵などの伊賀者が入れ替わり、時をうかがっていました。しかし突然、暴風雨となり暗殺計画は中止に終わります。
重蔵は五平と出会い語りかけますが五平は「退屈な極楽より地獄がすきだ」と応じません。去ろうとする伊賀者に甲賀の洞玄達も襲いかかり、黒阿弥・木さるが命を落とします。重蔵は洞玄を討つために館に出向き、術の掛け合いの末洞玄に勝利します。そこに五平が重蔵を狙いにやってきますが、毒をうけながらも重蔵は小萩の屋敷に逃げ込むことができました。
小萩の元で2日寝て回復した重蔵は小萩に「わしの命はそなたのものじゃ。好きにいたせ。」と言います。「本心からですか?」との小萩の問いに重蔵は「様々な人に化けて、どれが真の思いかわからない」と答えます。小萩は自分はくノ一ではなく、佐々木家の娘で甲賀に育てられ宗久に養女にされたと言いますが、重蔵に佐々木家に遺児などいないと教えられ、自分の記憶が嘘だと知ります。
五平は、洞玄を殺され怒る前田に家康のこれまでの動きを話します。そして前田に重蔵を捕えるまで姿を現すなと放逐されてしまいます。
小萩と重蔵は、小萩の周囲の者にも襲われるも気配を察し二人で逃げ、重蔵は“仕事”の準備をはじめます。小萩は止めますが重蔵は「わしはわしの仕事をする」と形見となると仏像を渡し「生きていたら必ず戻る」と小萩に告げます。
梟の城の結末
京に入った重蔵は五平に見張られており、重蔵もそれを知っています。五平は重蔵を追う途中でならず者にからまれ喧嘩をしているところを役人に腕を見込まれます。五平はそこで「石川五右衛門」と名乗って去ることにします。
重蔵はなんなく秀吉の城に忍び込み、秀吉の寝室までたどり着きます。そして秀吉の顔を見て「ひどく老いぼれている」と笑います。秀吉は重蔵に朝鮮出兵も自分の意思ではなく出兵をほのめかしただけで戦争になったと言います。「わしというものが本当の誰だかわからない。自分が一人死んでも何も変わらない。」と自分を殺す意味がないことを重蔵に語りますが、重蔵は「わしは秀吉を追うことで数年間楽しめた。しかし、秀吉が得たのはわしに藪から棒に殴られるだけだったことになる」と秀吉を殴りつけ「よい面の皮であった」と寝所を後にします。
重蔵は城から脱出する際に五平につかまりますが、五平との激しい一騎打ちを経て逃げることに成功します。一方、五平は見回りの者に自分は前田の家臣だと告げますが信じてもらえず捕まってしまいます。そして五平は前田にも見捨てられ「天下の大悪党、石川五右衛門」として以前に役人に対し名乗った名で処刑されることになるのでした。
石川五右衛門こと五平の処刑の日。見物人が集まった河原には重蔵と小萩の姿もありました。重蔵は師匠から、小萩は服部半蔵のくノ一であり、最後は事の次第を知る重蔵を殺すかそれが叶わぬなら自害するように仕込まれていると聞かされます。しかし重蔵は「承知のこと」と答え、師匠が半蔵の手にかかり命を落とし、また、石川五右衛門が窯ゆでになる中、小萩と共に旅立つのでした。
時が過ぎ、ある山奥に穏やかに暮らす重蔵と小萩の姿がありました。石川五右衛門が処刑された4年後に秀吉が死去し、重蔵と小萩を監視してきた半蔵の役目も終わったのです。
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