俺は、君のためにこそ死ににいくの紹介:2007年日本映画。石原慎太郎が脚本・制作総指揮を務め、巨額の制作費を投じて作られた戦争映画です。太平洋戦争末期、鹿児島・知覧飛行場から飛び立つ特攻隊員の短い青春を、彼らから母親のように慕われていた女性の視点から描いた群像劇です。
監督:新城卓 出演者:岸惠子(鳥濱トメ)、窪塚洋介(板東勝次)、徳重聡(中西正也)、中村倫也(河合惣一)、筒井道隆(田端絋一)、前川泰之(金山)、勝野雅奈恵(鳥濱美阿子)、多部未華子(鳥濱礼子)、遠藤憲一(川口)、勝野洋(東)、的場浩司(関行男)、伊武雅刀(大西瀧治郎)、中越典子(鶴田一枝)、石橋蓮司(鶴田正造)、桜井幸子(坂東寿子)、寺田農(坂東真太次)、戸田菜穂(田端良子)、江守徹(田端由蔵)、宮崎美子(河合惣一の母)、長門裕之(大島の祖父)ほか
映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」の予告編 動画
映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」解説
この解説記事には映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」のネタバレあらすじ:起
映画は脚本・石原慎太郎からのメッセージから始まります。「私は縁あって、特攻隊の母といわれた鳥濱トメさんから、隊員たちの秘められた、悲しくも美しい話を聞くことができました。雄々しく美しかった、かつての日本人の姿を伝えて残したいと思います…」
1943年(昭和18年)春。知覧では召集された若者たちが厳しい飛行訓練を受けていました。そんな彼らの心の拠り所となったのは、女将・鳥濱トメ(岸惠子)の営む富屋食堂でした。
翌1944年(昭和19年)、フィリピン・マバラカットでは、第1航空艦隊司令長官・大西瀧治郎海軍中将(伊武雅刀)は幹部たちを招集、敵軍の空母を封じるため特攻作戦を命じました。元々特攻には反対していた太西ですが、そのことを幹部から指摘された太西はこの戦争は負け戦であり、負けた後も“国体”は守らなければならないとして理解を求めました。かくして戦斗第301飛行分隊長の関行男大尉(的場浩司)は最初の特攻を引き受けるよう命じられ、苦悩しながらも特攻機に乗り込みました。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」のネタバレあらすじ:承
1945年(昭和20年)になると戦況は悪化の一途を辿り、トメの次女・礼子(多部未華子)は奉仕隊として知覧の飛行場で働くことになりました。知覧の飛行場は特攻隊の基地となったのです。
知覧には各地から特攻隊が集結、トメはその中のひとつ第47振武隊・荒木隊の隊員・金山少尉(前川泰之)と交流を持っていました。朝鮮人である金山は、トメから優しく受け入れてもたったことに深く感謝しており、トメは金山のために卵丼を用意してあげました。
トメを訪ねた板東勝次少尉(窪塚洋介)は自ら特攻に志願したことを告げ、男手一つで育ててくれた父・真太次(寺田農)にそのことを告げられなかったことを明かすと、自分が出撃したら父に伝えてほしいと頼みました。
やがて荒木隊と安部隊は明朝の出撃を命じられ、隊員たちは家族や恋人に向けた手紙をしたためました。翌朝の彼らの出撃を目撃した近隣住民の鶴田正造(石橋蓮司)は娘の一枝(中越典子)に挺身隊に入って隊員たちの世話をするよう命じました。
第71振武隊・中西隊の中西正也隊長(徳重聡)らが知覧入りしました。富屋食堂には田端絋一少尉(筒井道隆)の婚約者・良子(戸田菜穂)が現れましたが、田端は既に出撃した後でした。その後、荒木隊は悪天候のため知覧に引き返し、荒木隊長(田中伸一)は第6航空軍参謀の川口少佐(遠藤憲一)から信念が足りないと怒鳴られ、明朝に改めて出撃するよう命じられました。その夜、中西は親友の荒木たちのために富屋食堂で宴を催し、田端が戻って来たことを知った良子はせめて籍を入れてほしいと懇願しました。しかし、田端の父・由蔵(江守徹)は明日死にに行くとわかっている我が子との入籍には反対しました。
金山はトメに母は半年前に亡くなったこと、せめて母親に日本陸軍の士官の姿を見せてやりたかったことを明かし、祖国の歌「アリラン」を歌いました。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」のネタバレあらすじ:転
翌朝、荒木隊は体調不良の加藤伍長(渡辺大)を残し、先に靖国神社で待っていると告げて出撃しました。ところが、田端はエンジンの不調により出撃を断念、川口は「女に未練を残しているからだ。恥知らずが」と激怒、軍法会議にかけるとまで通告しました。その後、トメのもとを訪れていた田端の前に中西が現れ、田端は「日本は負けるのだから生き抜くべきだ」と主張して口論となりました。翌朝、田端は出撃の直後に自らエンジンを切って墜落していきました。
特攻に失敗し、奇跡的に生き残った坂東は知覧に戻ってきました。川口は坂東を独断で中西隊に編入させることにし、一枝の提案で挺身隊は指を切って鉢巻きに血を垂らし、日の丸を描きました。
ある日、トメは軍の検閲を通さず密かに特攻隊員から預かった手紙を送ったとして憲兵隊に捕まりました。トメは憲兵に「明日死ににいく若者が門限だの検閲だのが必要ですか?」と問いかけましたが激しい暴行を受けてしまいます。その後解放されたトメに、中西は隊員から取りまとめた手紙などを改めて託し、家族に届けるよう依頼しました。そして中西隊は翌朝の出撃が決定しました。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」の結末
中西隊の河合惣一軍曹(中村倫也)はトメのもとを訪れ、「俺は蛍になってまたここに戻ってくるよ」と約束しました。自分が死んだらみんな存在を忘れてしまうのだろうと言う河合に、トメは家族や兄弟、そして自分は決して忘れないと涙を浮かべて語りました。
再出撃を控える坂東のもとに父・真太次(寺田農)、妹・寿子(桜井幸子)、弟・秀次(大嶋捷稔)が訪れました。坂東は隊員たちが靖国神社の鳥居の前で待っているから行かねばならないと告げますが、秀次はなぜ死ななければならないのか、お国のためでも家族のためでも死ぬのは嫌だと叫びました。
中西は一枝の家を訪れ、先日の鉢巻きの礼を述べると、正造から酒を勧められ、一枝の酌を受けました。中西が立ち去ろうとすると一枝は思わず泣き出してしまい、追いかけてきた一枝を中西は強く抱きしめました。
中西隊の隊員たちはそれぞれ家族や恋人と別れを告げ、翌朝に戦場へと飛び立っていきました。しかし、坂東は特攻する間もなく敵機に撃墜され、無人島に不時着して命拾いしました。中西も特攻に失敗して生き残りましたが、仲間たちは次々と命を落としていきました・・・。
やがて終戦を迎え、坂東は家族と再会を果たしましたが、中西は自分だけ生き残ってしまったことを後々まで悔いていました。時は流れ、年老いた中西とトメは、桜並木の下で手を振る、死んでいった特攻隊員たちの幻を目の当たりにしていました。
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