i-新聞記者ドキュメント-の紹介:2019年日本映画。『A』『FAKE』の森達也監督が、官邸記者会見での菅官房長官との攻防で度々話題となる東京新聞記者、望月衣塑子を追ったドキュメンタリー映画。取材の中で望月と森が直面する困難が、日本ジャーナリズムの問題を浮かび上がらせる。プロデューサーは『新聞記者』の河村光庸。
監督:森達也 出演者:望月衣塑子、ほか
映画「i-新聞記者ドキュメント」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「i-新聞記者ドキュメント」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
i-新聞記者ドキュメント-の予告編 動画
映画「i-新聞記者ドキュメント」解説
この解説記事には映画「i-新聞記者ドキュメント」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
i-新聞記者ドキュメント-のネタバレあらすじ:起【日本中を駆け回る女性記者】
映画は辺野古から始まります。埋め立てで海中投入する土砂に大量の赤土が使われているという疑いを取材すべく、船に乗ってる女性記者。彼女が東京新聞社会部記者、望月衣塑子です。
2013年に沖縄防衛局は、自然環境に悪影響を及ぼす赤土の割合を、10%前後にすると約束したのですが、現場で望月は大量の赤土を目にします。その後の報告会で望月は、赤土の量に関して政治家たちに、ただひたすら真実を追求します。そして責任の所在を問い続けます。
ここから大きな荷物を持ち、常にワイヤレスイヤホンで電話しながら、日本中を駆け回る一記者を追うドキュメンタリーが始まります。
i-新聞記者ドキュメント-のネタバレあらすじ:承【事件の数々】
ドキュメンタリー内で望月は、〈辺野古新基地建設問題〉〈伊藤詩織さん 準強姦問題〉〈森友学園問題〉〈加計学園問題〉といった案件を取材します。当事者、関係者へのインタビュー、会見での政治家への質問を何度も繰り返します。
彼女を追う監督・森達也は、記者クラブに登録されているメディアの記者しか入れない官邸記者会見の撮影を試みます。そして事件の真実、責任を追求する望月と彼女を追う森のカメラが、日本のジャーナリズムの問題を映し出します。
i-新聞記者ドキュメント-のネタバレあらすじ:転【記者会見】
記者会見において、望月が何度も質問し、菅官房長官がまともに取り合わないという構図は有名でした。望月のアグレッシブな姿勢は不正を隠す政治家から鬱陶しがられ、彼女は「質問制限」と「質問妨害」を受けます。沖縄県辺野古の埋め立て工事を巡り、菅官房長官は“事実誤認”の質問があったという、記者会への異例の通達をしました。すると、以降の会見において、質問は望月のみ2問までしか許されず、質問開始から20秒経つと「質問に移ってください」という圧力をかけられたのです。それでも繰り返し質問を続ける望月に対し、2019年2月26日には、菅官房長官による「あなたに答える必要ない」発言がされます。
このような政治家による数々の不正とその隠蔽の原因に、“記者クラブ”という海外にはない制度があることが示されます。事前に質問を告知しておかなければ官邸から拒否され、有耶無耶な回答で逃げられる。その事実は圧力により報じられない。記者たちが権力者たちに近づきすぎた結果、「権力の監視役」であるメディアが機能していない状況を森のカメラは映し出します。
東京新聞の留守番電話に、ある男からの「あんなもん朝鮮人。あんな女殺しといたる」という、かつて望月へ向けられた殺害予告が流されます。それでも望月は真実を追求する姿勢を貫きます。
i-新聞記者ドキュメント-の結末【望月衣塑子という存在】
「記者イジメやめろ」と官邸前でのデモの様子が流れます。権力者からは厄介がられ、一部の国民からは正義のジャーナリストとして支持される望月。ここで森は問います。「なぜ望月衣塑子がこんなに注目されるのか。なぜ彼女だけが異質な存在として目立つのか」望月は、本来記者にとって当たり前の行動をしているだけなのです。取材し、浮かび上がった事実を直接当事者にぶつける。納得できる答えが得られなければ、何度でも繰り返すという記者にとって当たり前の使命を全うしているだけなのです。つまり、望月衣塑子だけが浮いた存在となっていること自体が日本のジャーナリズムの問題であると。
そして、結局会見取材のための正式手続きをしても、回答を先延ばしにされ、官邸内に入れない森監督。政府にとって都合の悪いジャーナリストである森は排除されます。挙げ句の果てに、警察から官邸前の公道すら通してもらえなくなります。
その後、突然挿入されるのは、パリ解放時の写真です。その写真は、ドイツ兵と恋に落ちたフランス人女性の頭を刈り、罵声を浴びせながらパリ中を歩かせている写真です。“集団になったとき、人は異物に対してとんでもなく残虐になりうる”ということを森は語ります。
ラストには、自分は右だとか左だとか、保守だとかリベラルだとか以前に、一人称で考えること。つまり「i=自分・個」として考えること。それだけで世界は変わるという森監督のメッセージでドキュメンタリーは幕を閉じます。
以上、映画「i-新聞記者ドキュメント-」のあらすじと結末でした。
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