朝が来るの紹介:2020年日本映画。1997年、『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞した河瀨直美監督の最新作。『家族』『故郷・奈良』にこだわり続ける河瀬が選んだ題材は、「特別養子縁組」を描いた直木賞作家・辻村深月の『朝が来る』。養子を受け入れる側の夫婦の状況と、実母の事情が前半と後半に分かれて描かれている。夫婦を演じるのは『八日目の蝉』の永作博美と『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』の井浦新。実母のひかりは是枝作品に多く出演している蒔田彩珠が繊細に演じている。
監督・脚本・撮影:河瀨直美 原作:辻村深月 キャスト:永作博美(栗原佐都子)、井浦新(栗原清和)、蒔田彩珠(片倉ひかり)、浅田美代子(浅見静恵)、佐藤令旺(栗原朝斗)、田中偉登(麻生巧)、中島ひろ子(片倉貴子)、平原テツ(片倉勝)、駒井蓮(片倉美咲)、利重剛(浜野剛)ほか
映画「朝が来る」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「朝が来る」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
朝が来るの予告編 動画
映画「朝が来る」解説
この解説記事には映画「朝が来る」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
朝が来るのネタバレあらすじ:起
都会のタワーマンションに暮らす栗原清和(井浦新)と佐都子(永作博美)夫妻には、幼稚園に通う一人息子・朝斗(佐藤令旺)がいます。来年から小学生になる朝斗のため、今朝はバスではなく親子三人で歩いて登園します。
日中佐都子が家に一人でいると無言電話がかかってきました。その電話を切ったあと、しばらくして再びかかってきた電話は朝斗の幼稚園からで、朝斗がお友だちのそら君を遊具から突き落としてケガをさせたというのです。
佐都子は幼稚園で先生方に話を聞きますが、朝斗本人はやってないと言います。帰宅後、佐都子がそら君ママに電話をすると早速相手は治療費や謝罪を求めてきました。朝斗を信じたい佐都子が戸惑っていると相手は怒って電話を切ってしまいます。
翌日マンションのロビーで佐都子はそら君ママに無視され、謝ってしまった方がいいのかと悩みます。夫の清和は憔悴した佐都子を心配し、たいしたことないよと励まします。
かつて2人は中々子供ができず、2人揃って病院で検査をしました。清和が無精子症であることが判明し、子供を欲しがっていた夫の気持ちを思い佐都子は涙ぐみます。
やがて清和は、佐都子を母親にしてあげられないことを気にして離婚を切り出しますが、佐都子にその選択肢はありませんでした。
2人は顕微授精を試みるため、毎月休みを合わせて北海道まで通いました。
あるとき、大雪のため飛行機が欠航になり、佐都子は「もうやめよう」と言いました。不妊治療に疲れ、もっと早くにやめればよかったと泣く清和に佐都子は、「ふたりで一緒に生きていこう」と答えるのでした。
2人でテレビをみていると、たまたま子供に恵まれない夫婦のドキュメンタリー番組が放送されていました。その番組では養子縁組について紹介していて、清和はそれをじっと見ています。
後日、家のパソコンの検索履歴から、清和が養子について調べていることを知った佐都子は思い切って本人に聞いてみました。清和は、「執着しているわけじゃないし佐都子のためというわけでもない。ただ、この家には親になれる人がいて、親を必要としている子供のために行動を起こしてもいいじゃないかと思っている」と言います。
2人はテレビで紹介されていた団体「ベビーバトン」の説明会にやってきました。代表の浅見(浅田美代子)はやさしく落ち着いた声音で、結婚して3年以上経っていること、どちらかは育児に専念すること、名前は決められるが性別は選べないなど条件を説明します。そして最も大切な約束は、その子供本人が理解できる年齢になったら養子である事実を伝えるというものでした。実際にこの制度を利用して養子縁組をした家族が登場して体験談を話し、参加者たちは興味深く耳を傾けていました。
帰り道、清和は興奮気味に「今日来て良かった!」と笑顔を見せるのでした。
朝が来るのネタバレあらすじ:承
ある日、浅見から電話が。栗原家にやってくる赤ちゃんが誕生したのです。
清和と佐都子は広島へ向かいます。船で「ベビーバトン」のある島へ渡り、念願の赤ちゃんに対面します。「この子のお母さんに会ってみます?」という浅見の言葉に驚きながらも2人は会うことにしました。
両親に付き添われたまだ幼さの残るその女性に佐都子は礼を言い、「朝斗と名付けます」と伝えました。女性は佐都子の手に封筒に入った手紙を握らせ、「ごめんなさい…。お願いします」と弱々しく言い、2人を見送ると泣き崩れました。
現在の栗原家。
朝斗はそら君のことを、「ぼくが押したって言った方がいい?」と言い、佐都子は胸が締め付けられるような思いになります。でもその後そら君が、自分がウソをついていたと母親に話したと幼稚園からの電話で知らされ佐都子は放心します。
とりあえず仲直りしてそら君といっしょにお出かけすることになった朝斗。お弁当を持たせて送り出すと、家の電話が鳴ります。
(まだ無言電話かも)そう思いながら佐都子が電話に出ると、相手は「片倉ひかり」と朝斗の実母の名前を名乗りました。子供を返してください、それがダメならお金をください、さもないと朝斗や周りに養子であることをバラしますと脅迫してきました。佐都子は会って話しましょうと提案し相手を自宅へと招きます。
仕事中の清和を呼び戻し2人で待っているとその女はやってきました。ボサボサの金髪に黄色のスカジャンを着た化粧の濃いその女は、2人が記憶している片倉ひかりではありませんでした。佐都子は聞きます。「あなたは誰ですか?」
佐都子は女が朝斗の年齢を間違えていたこと、ベビーバトンでは養子のことを子供に話すことになっていて朝斗も周りの人たちも養子のことを知っているので脅迫は的外れであることを告げます。すると女は苦しまぎれに「あなたのできないことを私はした。私は産んだ」と言うのでした。
朝が来るのネタバレあらすじ:転
奈良県のとある山あいの町。中学三年生の片倉ひかり(蒔田彩珠)はバスケ部の男子・麻生巧(田中偉登)に告白され交際を始めます。ひかりの両親は娘たちの行動に厳しく、ひかりの姉・美咲(駒井蓮)はスマホのパスワードを変更しないと中を見られるよとひかりに忠告します。母(中島ひろ子)はひかりに、姉と同じ高校に進むためにしっかり勉強しなさいと言い、父(平原テツ)もスマホばかりいじっている娘たちを叱ります。
そんな中、ひかりと巧はお互いへの思いを募らせどんどん仲は深まっていき、ついに巧の部屋で2人は結ばれてしまいます。「好き」と言うひかりの涙をぬぐい、巧はこんなに好きになった人はいないと言います。そして2人はお揃いのミサンガを巻きました。
ある日、体調不良のひかりが母に付き添われて病院に行くとそこで妊娠が発覚します。しかも既に中絶のできない時期になっていました。母は取り乱して泣いています。
巧はひかりに対し泣いて謝るだけで走り去ってしまいました。
両親はひかりに特別養子縁組を使うことに決めたと言い、しばらく病気療養ということで学校を休んで寮に入り、産んでから戻って高校受験しなさいと命令します。ひかりは反発しますが選択の余地はありませんでした。
ひとり広島にやってきたひかりを浅見はやさしく受け入れてくれました。船で島に渡り、海辺の一軒家で出産まで過ごすということで、先輩のこのみ(山下リオ)を紹介されたひかり。黄色いジャージを着たちょっと不良っぽいこのみに戸惑っていたひかりですが、次第に打ち解け仲良くなっていきます。
ある日近所の人も集まってバーベキューをしていると、妊婦の一人が誕生日ということで浅見がケーキを出してきました。彼女は感激して涙を流し、人生で今がピークかもしれないと言うのでした。彼女は性風俗に身を落とし、望まぬ妊娠をしたのです。このみもまた、誰の子かわからない赤ちゃんを宿していました。
現在の栗原家。
朝斗は実母の記憶があるのか、それともただの夢なのか。ただ、「広島のお母さん」と呼ぶ実母に思いを馳せることがあります。佐都子といっしょに窓から海を見て、広島と海でつながってると話しをするのでした。
するとそこへ警察がやってきます。行方不明者の捜索ということで見せられた写真は、あの黄色のスカジャンの女でした。
出産後、奈良に戻ったひかりはすっかり心がすさんでいました。体裁を気にする親、世間知らずの姉…。親戚の態度に苛立ち暴力をふるってしまったひかりに母は感情をぶつけ、家族の亀裂は決定的になってしまいます。道で見かけた巧は何事もなかったような様子でひかりは声をかけることもできません。居場所をなくしたひかりは再び島へと向かいます。
あたたかく迎えてくれた浅見にひかりは、ここで働かせてほしいと頭を下げます。しかし浅見はベビーバトンを終わりにする、今いる一人の妊婦が最後のお母さんだと言います。
その妊婦が産気づき、浅見は彼女を連れて病院へ行くのでひかりが一人で留守番をすることに。片付け中の室内をみていると、今までの赤ちゃんの記録ファイルがあることに気づきひかりは自分のファイルをさがして取り出しました。そこには自分の子供「朝斗」の住所や電話番号などが記載されていました。
戻ってきた浅見にひかりはいろいろ質問します。浅見は、自分に子供はいないけど、ここから巣立った子やお母さんたちがみんな自分の子供のような感じで幸せだと語り、海をながめながら「海が守ってくれてる感じしない?」と微笑みます。そして、元気で頑張って、とひかりを励ますのでした。
朝が来るの結末
三人で幼稚園に向かう朝斗、佐都子、清和。
その頃、ひかりは公衆電話からメモを見ながら電話をかけています。
ひかりは朝斗が住むこの街で新聞配達をしています。その販売店にともか(森田想)という新しい女の子が入ってきました。黄色いスカジャンを着たともかと、寮になっているひかりの住むアパートでの同居生活が始まりました。会話はあまり噛み合わないものの、ともかはひかりに濃いアイメイクを施したりして距離を詰めてきます。仕事には身の入っていないともかですが、帰りに化粧品を買ってひかりにプレゼントします。ひかりはともかに自分の境遇を告白し、ともかは「言ってくれてありがと」と返します。
翌日ともかは無断欠勤し、販売店にはひかりをたずねて強面の借金取り(青木崇高)がやってきます。彼はひかりの印が押された借用書を持っていました。勝手に保証人にされていたのです。
ひかりがアパートに戻ると外にともかが倒れていました。殴られたようで顔にアザができています。ひかりはともかを抱き起こして部屋に入れます。やさしいひかりにともかは「お母さんみたい」と笑います。
配達を終えてひかりが帰宅すると、ともかの姿がありません。テーブルの上に「バイバイ、ひかり」というメモと、数枚の千円札と小銭が。そして、ともかがこれを着てるとなんでもできる気がする、と言っていた黄色いスカジャンがハンガーにかかったまま残されていました。
濃いアイメイクをしたひかりに、店長の浜野(利重剛)が心配して話しかけます。かつて恋人に何も相談されないまま自殺されてしまった過去を持つ浜野は、お気に入りのひかりに何かあったら後悔してもし足りないとばかり、泣きそうになりながら相談してほしいと訴えます。
ひかりは借金取りにお金を返済しました。そのお金をどうやって作ったのか、それには興味のなさそうな彼にひかりは「なんで私がこんな目に?」と問いかけますが、その返事は「バカだからじゃね?」でした。
そしてひかりは栗原家に電話をし、部屋を訪れました。
清和と佐都子と対峙したひかりは「片倉ひかり」だと名乗りますが、佐都子はひかりと会ったとき渡された手紙を取り出し、これを毎年朝斗に読んで聞かせていると伝えます。私たちが知っているひかりさんは全然ちがう、あなたは誰ですかと問われ、ひかりは土下座して謝ります。そこへチャイムが鳴り、朝斗が帰ってきました。思わぬ対面の予感にあわてたひかりと会うか会わないか選択を迫る佐都子。結局ひかりは隠れ、朝斗に気づかれないように出ていきますが、朝斗は何かを感じ取っていたようです。
ひかりは足早に歩き、やがて走りだします。
栗原家には警察がやってきて、佐都子は片倉ひかりの写真を見せられます。
「私はこのひとを知っています」
佐都子はあの手紙を取り出します。便箋の下半分には何も書かれていません。
佐都子はハッとして余白の部分を鉛筆でこすり始めました。するとそこに、「なかったことにしないで。」という文字が現れたのです。
佐都子はひかりをさがして歩きまわります。
翌朝、ひとり佇むひかりを佐都子は見つけました。ひかりの背中に向かって佐都子は、「ごめんなさい。わかってあげられなくて」と何度も謝ります。
すると「何でそんなに謝ってんの?」と朝斗の声。
佐都子は朝斗に「広島のお母さんだよ」とひかりを紹介しました。
(劇中、なんどもひかりや佐都子が歌っていた歌「アサトヒカリ」が流れます。
そしてエンドクレジットが流れ、黒い画面のまま朝斗の声が聞こえます)
「会いたかった」
以上、映画「朝が来る」のあらすじと結末でした。
「朝が来る」感想・レビュー
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同じ疑問から来ました
ひかりがたずねてきたとき、佐都子は「ないこと」にして知らないといったのか?
なんでひかりが追及されたようなバレバレ嘘みたいな脅迫したのかも
アサトの年齢をまちがえるとか、、それこと「ないこと」にしてたのはひかりのほうだし、なんか結末がわからない映画でした -
中学生ガ無責任に子供を産むこといけないことをもっと表現すべき。やくざに脅されたら金を払って終わりにすべきじゃない。弁護士、警察等の方法もあったはず主人公がばかとしか思えない、
借金取りに渡したお金は販売所から盗んだから警察が訪ねて来たのでしょうか⁉️結末もイマイチスッキリしませんでした。