姑獲鳥の夏の紹介:2005年日本映画。映像化不可能と言われてきた直木賞作家・京極夏彦の同名小説が原作である。疑惑、妄執、愛憎が複雑に絡み合う呪いの真実を、拝み屋京極堂が暴き出す。謎が謎を呼ぶ本格派ミステリー。
監督:実相寺照雄 出演者:堤真一(京極堂(中禅寺秋彦))、永瀬正敏(関口巽)、阿部寛(榎木津礼二郎)、宮迫博之(木場修太郎)、原田知世(久遠寺涼子/梗子)、田中麗奈(中禅寺敦子)、恵俊彰(久遠寺牧朗)、いしだあゆみ(久遠寺菊乃)ほか
映画「姑獲鳥の夏」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「姑獲鳥の夏」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「姑獲鳥の夏」解説
この解説記事には映画「姑獲鳥の夏」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
姑獲鳥の夏のネタバレあらすじ:怪事件の始まり
昭和27年、夏。雑司ヶ谷の久遠寺医院には、奇怪な噂がありました。娘の久遠寺梗子が20ヶ月もの間妊娠状態にあること。その夫久遠寺牧朗の失踪。そして度々赤ん坊が院内から消えること。噂を聞いた作家関口巽は、友人中禅寺秋彦(通称京極堂)を訪ねます。京極堂は脳のはたらき、量子力学、そして妖怪「姑獲鳥(うぶめ)」の話を聞かせます。元来「うぶめ」は子をおぶってくれと頼む日本の妖怪で、「姑獲鳥(こかくちょう)」は子をさらう中国の妖怪でした。それが何故か混同されてしまったと言います。久遠寺医院を気にする関口に、京極堂は榎木津礼二郎の名を出します。榎木津は二人の学生時代の先輩で、他人の記憶を見る左目を持っていました。関口は榎木津が営む探偵事務所を訪ねますが、彼は不在でした。そこへ梗子の姉久遠寺涼子が依頼に訪れます。依頼内容は牧朗の行方を調べること。翌日久遠寺邸に向かうことになった関口に、京極堂は誤った関わり方をすれば悲劇が起きると忠告します。
姑獲鳥の夏のネタバレあらすじ:牧朗の失踪と恋文
関口と榎木津、そして京極堂の妹中禅寺敦子の3人が久遠寺邸を訪れます。姉妹の父親によると、牧朗は学生のころ梗子と交際し、結婚の許しを得るためドイツに留学し医師免許を取得。晴れて結婚した二人でしたが、夫婦仲は順風満帆とはいかなかったようで、梗子は度々ヒステリーを起こしていたそうです。そして1年半前の冬の日、書庫に入ったまま牧朗は煙のように消えてしまったのでした。涼子の案内で3人は書庫へ向かいます。まず榎木津が入ろうとしますが、何かを見て腰を抜かしてしまいます。代わりに入室した関口。書庫では妊娠中の梗子がベッドに横たわっていました。彼女を見て関口は目を見開きます。学生時代、牧朗の恋文を彼女に届けたことを思い出したのです。しかし梗子は知らないと怒り、混乱した関口は部屋を飛び出してしまいました。一方、敦子の調査で書庫に通じるドアは2つあると判明します。第1のドアは関口たちが使ったもの。第2のドアは奥の小部屋に通じており、その小部屋にはさらに外につながる第3のドアがあります。しかし第2のドアは小部屋側から施錠されており、第3のドアは南京錠で閉ざされしかも鍵は行方不明。つまり書庫は密室状態で、牧朗がどうやって書庫から姿を消したのか、まるで分からないのでした。
姑獲鳥の夏のネタバレあらすじ:連綿と続く呪い
別の日、京極堂は12年前の話を関口に語ります。関口が恋文を渡したあと牧朗は梗子と交際を始めました。しかし梗子を妊娠させてしまい、その子がどうなったかは分からないそうです。そこへ友人で刑事の木場修太郎が京極堂を訪ねて来ました。木場によると、久遠寺の娘が赤ん坊をさらって殺害しているという証言があり、さらに久遠寺は憑物筋の家系だと判明したのです。久遠寺の祖先は昔、ある修験者を蛙の毒で殺害しました。修験者は一族に蛙の呪いをかけ絶命。それ以来、久遠寺家に生まれる男の赤ん坊は、皆蛙の顔をしているのだといいます。一方、久遠寺医院には恨みをもつ暴徒が集まり始めていました。そこで関口は「拝み屋」京極堂に久遠寺の呪いを解いてほしいと頼みます。京極堂は渋々憑物落としに動き出します。久遠寺邸を訪れる京極堂と関口。書庫で憑物落としが始まりますが、同席していた姉妹の母久遠寺菊乃が突然悲鳴をあげ、さらに涼子は人が変わったように鋭い声で菊乃を責めます。梗子の腹が裂け飛び散る大量の血液。狂乱の中倒れた衝立の裏、そこには小さく丸まった牧朗の遺体がありました。
姑獲鳥の夏の結末:多重人格共同殺人
京極堂は説明を始めます。牧朗は崇拝していた母の教えから、子を成すことに執着していました。しかし彼はドイツ留学中に戦火に巻き込まれ下腹部を負傷、自然な生殖が不可能になってしまいました。そこで彼は体外受精の研究を始めます。そして失踪の日、ついに研究は完成。もう一度二人の子をつくれると喜ぶ牧朗でしたが、梗子は妊娠の覚えなど無いとヒステリーを起こし、彼をナイフで刺してしまいます。牧朗は書庫へと逃げ込みました。しかし、梗子は本当に妊娠していなかったのです。12年前関口が牧朗の恋文を渡した相手は、梗子ではなく涼子でした。牧朗が梗子の字を「京子」と勘違いしていたのです。その後牧朗と交際し、妊娠したのも涼子でした。涼子が産んだ赤ん坊はやはり蛙の顔をした男児。菊乃は久遠寺のしきたりに則り、赤ん坊を石で打って殺害します。涼子は錯乱し、子を求めて病院の赤ん坊をさらい始めます。涼子は昔、久遠寺医院で働いていた医師から性的虐待を受けていました。精神的に不安定だった涼子に関口が「京子」宛の手紙を渡したことから、涼子の中に「京子」という人格が生まれます。さらに我が子を奪われた苦しみから「久遠寺の母」という別人格も生まれました。赤ん坊を求める「京子」と、殺害する「久遠寺の母」。紛失したと思われていた鍵は「京子」が持っていました。そして牧朗失踪の日、「京子」が小部屋から書庫に入ると、梗子に刺され苦しむ牧朗の姿がありました。そこで人格が切り替わり、「久遠寺の母」が出て来ます。体を丸めた牧朗は、「久遠寺の母」には巨大な赤ん坊に見えたのでしょう。牧朗は「久遠寺の母」によって殺害され、書庫の中で屍蝋化していたのでした。ずっと書庫にあった牧朗の遺体を、姉妹と関口は見ることが出来ませんでした。遺体を見たくないがために、脳が現実を捻じ曲げていたのです。梗子は想像妊娠でした。そこへ部屋で臥せっていたはずの涼子が消えたと連絡が入り、院内の赤ん坊も行方不明だと判明します。皆が探しに出る中、久遠寺医院に押しかけていた暴徒の一人が火を放ちました。赤ん坊を抱いている涼子を発見し、屋上に出る関口たち。涼子はとても穏やかな笑顔で、関口にゆっくりと赤ん坊を手渡しました。関口は彼女にも手を伸ばしますが、その手は届くことなく、涼子は屋上から身を投げてしまいました。火は燃え広がり、病院も家ものみ込みます。後日、関口は京極堂に、涼子は子を奪う「姑獲鳥(こかくちょう)」から子を託す「うぶめ」になったのだと語りました。焼け焦げた久遠寺医院を背景にエンドクレジットが流れ、この映画も終幕を迎えます。
以上、映画姑獲鳥の夏のあらすじと結末でした。
京極夏彦作品を実写化させるのはまず不可能である。登場人物たちが日本人とはかけ離れたルックスをしている為である。と、ラジオドラマを展開された時に著者京極夏彦が述べたのだけど、ファンとしてはどのように映像化してもらえたのだろうかとワクワクしてDVDを借りて見たが、著者が述べた通り難しかった。いい意味で原作通りなのだけど、それだけといった感じである。