スティルライフオブメモリーズの紹介:2018年日本映画。フランスの画家で写真家のアンリ・マッケローニの写真集『とある女性の性器写真集成百枚ただし、二千枚より厳選したる』をモチーフに、舞台を日本に置き換えて描かれたアートムービーです。新進気鋭の写真家の作品に魅せられ、自らの性器を撮るよう要求する女性の姿を、写真家の恋人を交えて描きます。
監督:矢崎仁司 出演者:安藤政信(鈴木春馬)、永夏子(怜)、松田リマ(夏生)、伊藤清美(怜の母)、ヴィヴィアン佐藤(瑶子)ほか
映画「スティルライフオブメモリーズ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スティルライフオブメモリーズ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「スティルライフオブメモリーズ」解説
この解説記事には映画「スティルライフオブメモリーズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スティルライフオブメモリーズのネタバレあらすじ:起
新進気鋭の写真家・鈴木春馬(安藤政信)が個展を開きました。そこにやって来た女性・怜(永夏子)は鈴木の写真に魅せられて、すっかり虜になってしまいました。その帰り際、怜は偶然にも螺旋階段で鈴木とすれ違い、鈴木は自分の個展に来てくれたことを感謝しましたが、怜は何も応えることなく立ち去っていきました。
インタビューが苦手な鈴木は、有名な専門誌からのインタビュー依頼を断っていました。そんな時、鈴木の元に1本の依頼の電話がかかってきました。それは個展で展示した写真のようなモノクロの写真を撮って欲しいという依頼であり、鈴木はその依頼者と後日会う約束をしました。
その依頼者とは、個展ですれ違った怜のことでした。怜と落ち合った鈴木は、山梨県の山間にある彼女のアトリエに招かれました。そこで怜は2つの約束をしてほしいと鈴木に言ってきました。ひとつは「質問はしないこと」、もうひとつは「撮ったフィルムは怜に渡すこと」でした。
鈴木が撮影の準備を始めると、怜は突然服を脱ぎ始めました。鈴木が何を撮ればいいのか尋ねると、怜はパンティをも脱ぎ捨て、股間を指差して「ここを撮ってください」と告げてきました。鈴木は「いきなり撮ってと言われても、どう撮っていいものか」と頭を悩ませながらも、怜を椅子に座らせると足を開かせ、シャッターを切り始めました。
撮影を終えた鈴木は、フィルムをよこすよう言う怜に「自分で現像できるんですか?」と聞こうとしましたが、質問してはいけないという約束を思い出してフィルムを渡しました。ところが、怜はそのフィルムに火をつけると暖炉に投げ入れ、手鏡を取り出すと自分の性器を見始めました。
スティルライフオブメモリーズのネタバレあらすじ:承
鈴木には夏生(松田リマ)という恋人がいました。ある日、鈴木は夏生から自分との子を身籠ったことを知らされました。鈴木は驚きながらも、「産むよ」という夏生に微笑みました。
そんなある日、怜からまた鈴木に依頼がありました。再び山梨に向かった鈴木は、今度は自分のやり方で撮りたいと願い出ると、自ら怜の服を次々と剥ぎ取っていきました。鈴木は全てを脱ぎ捨てた怜の体に手を這わせ、彼女を椅子に座らせたり、次は椅子から降ろして床に座らせたうえで様々なポーズをとらせながら、彼女の性器の写真を撮り続けました。
桜の花が満開を迎えた頃、鈴木の元にまた怜から撮影の依頼がありました。怜のアトリエにはキャンパスに描きかけの彼女の母(伊藤清美)の油絵がありました。
怜はアトリエに向かう車中で、鈴木に撮影はどうして夕暮れなのかと問いかけてみました。鈴木は光から少しずつ闇に近づいていき、最後には完全な闇に溶けていく変化を写真に取り込みたいと語りました。鈴木は怜に、「自分で撮ったものを見たいので撮った写真をプリントさせてほしい」と頼みました。怜はそんな鈴木に、シャッターを切る時の鈴木の指が、そしてシャッターの音が好きだと語り、シャッターの音は自分の“生”を刻む音に聞こえているのだと語りました。
二人は木立の中を歩き、やがて朽ちた小さな小屋に辿り着きました。鈴木の目には、怜が開いた扉の向こうに足を広げた彼女がまるで枯葉の上に寝転んでいる姿が見えたような気がしました。ところが、鈴木のその表情を見た怜は突然走り出し、鈴木は彼女の後を追うと、怜は転んで膝を怪我してしまいました。鈴木は怜をアトリエに連れていくと彼女の怪我の応急手当をしました。
このアトリエは怜の母親のアトリエであり、画家である母は自画像を描きかけたまま現在は入院中ということでした。画家はなぜ自画像を描くのだろうという鈴木の問いに、怜は「写真家は?」と返しました。鈴木は怜に、作品として完成させたいから改めて写真を見せてほしいと頼みましたが聞き入れられませんでした。
スティルライフオブメモリーズのネタバレあらすじ:転
怜の元から戻ってきた鈴木は、夏生がつわりに苦しんでいるのを目の当たりにしました。どこへ行っていたのかと問う夏生に、鈴木は“ブツ撮り”に行っていたとはぐらかしました。
鈴木は山梨の美術館で行われた比較文学者の四方田犬彦(本人)の講演会を訪れました。そこで四方田は、自分が最後に見る女性性器は誰のものであるか考えたことがあるのかを問いかけ、洞窟絵画からピカソまで人間の絵画の歴史の根底には必ずと言っていいほど女性性器が関わっていると述べました。
そのうえで四方田は精神分析の第一人者だったフロイトの言葉を引用し、全ての人間が生まれてくる場所である女性性器は母親の肉体そのものであり、本来は懐かしいものであるがゆえに心理的に恐ろしいものにもなりうるとの考えを示しました。そこで鈴木は、この講演会でスタッフとして働いている怜と偶然にも遭遇しました。
鈴木は、今のままでは怜の母の自画像みたいに描きかけのままになってしまうとして、金はいらないから引き続き写真を撮らせてほしいと頼みました。怜からフィルムを受け取った鈴木はそれを現像して彼女に見せ、その際に怜が自分の性器を写真に残そうとしたきっかけとなった1冊の写真集を見せてきました。
それはフランスの画家で写真家のアンリ・マッケローニの写真集であり、マッケローニは自らの生涯をかけて女性器を撮り続けていたのです。
スティルライフオブメモリーズの結末
帰宅した鈴木は夏生に撮りたいテーマが見つかったと告げ、怜の性器が写った写真を見せました。“ブツ撮り”とはこれのことだったのかと呆れる夏生に、鈴木は怜とは何の関係もないと付け加えたうえで、自分でも何を撮っているのかわからないが何かを感じると語りました。
納得はしないものの鈴木の言葉を受け止めた夏生は、鈴木のアシスタントとして怜の撮影に同行しました。撮影を続けるうち、鈴木は「大事なのは時間であり、一緒に過ごす時間の中で撮り続けたい」という境地に達しました。
やがて夏生は女の赤ん坊を出産しました。出産祝いに病院を訪れた怜は、夏生が赤ん坊に授乳しているのを見るや自分にも飲ませてほしいと夏生の乳首を吸い出しました。時を同じくして、怜の母が他界しました。怜は母の唇に絵筆で紅を塗り、母の描きかけの自画像を燃やしました。
その後も鈴木は度々怜の写真を撮っていたのですが、ある時の撮影中に怜がよろめき、助けようとした瞬間に怜と重なり合ってしまった鈴木は、思わず一線を超えて彼女を抱きそうになりました。あくまでも被写体とカメラマンとの関係を維持したい怜はそれを必死に拒み、撮影を続行するよう迫りました。
やがて時は流れ、鈴木は夏生と成長した娘を車に乗せてドライブに出かけました。車は長いトンネルの中へと入り、それはあたかも女性の産道の中を進んでいるようでした。
以上、映画「スティルライフオブメモリーズ」のあらすじと結末でした。
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