太陽は動かないの紹介:2020年日本映画。『怒り』『悪人』などの著者・吉田修一のスパイアクション小説『太陽は動かない』『森は知っている』を藤原竜也と竹内涼真のダブル主演で映画化したサスペンス・アクション作品です。産業スパイ組織の2人の日本人諜報員が機密情報を巡って各国の裏組織や権力者たちとの頭脳戦に挑む様を描きます。
監督:羽住英一郎 出演者:藤原竜也(鷹野一彦)、竹内涼真(田岡亮一)、ハン・ヒョジュ(AYAKO)、ピョン・ヨハン(デイビッド・キム)、市原隼人(山下竜二)、南沙良(菊池詩織)、日向亘(鷹野一彦(高校時代))、加藤清史郎(柳勇次)、横田栄司(ジミー・オハラ)、翁華栄(アンディ・黄)、醍醐虎汰朗(デイビッド・キム(少年期))、八木アリサ(小田部奈々)、勝野洋(小田部教授)、宮崎美子(河上麻子)、鶴見辰吾(河上満太郎)、佐藤浩市(風間武)ほか
映画「太陽は動かない」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「太陽は動かない」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
太陽は動かないの予告編 動画
映画「太陽は動かない」解説
この解説記事には映画「太陽は動かない」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
太陽は動かないのネタバレあらすじ:起
1982年。日本の放送法が改正されたことを機に、アジアを含む世界各地のワールドニュースを世界に発信する「GMN(Global Media Network)」構想が立ち上がりました。しかし、それは昭和の終わりと共に立ち消えとなり、GMN構想も立ち消えとなりました。GMN事業に投入する予定だった膨大な国家予算は、同時に設立された通信会社「AN通信」の海外の隠し口座に横流しされていました。
AN通信は表向きは一般的な通信社ですが、その実態は世界を股にかけて様々な企業の機密情報を入手し、その情報を他社に高値で売り捌くことを目的とする企業スパイ組織でした。AN通信に所属する諜報員の胸には超小型爆弾を仕組んだチップが埋め込まれており、24時間ごとに義務付けられている本部への報告を怠った場合は組織を裏切ったとみなされ、5分以内に解除コードを使わないとチップが爆発して諜報員を死に至らしめるというものでした。GMN事業の裏側を調査していた新聞記者はその際に行方不明となり、死んだものと思われていました…。
…そして現代、ブルガリア・ソフィア。AN通信諜報員の山下竜二(市原隼人)はとある裏組織に拘束され、組織の一員であるジミー・オハラ(横田栄司)から拷問を受けていました。山下のタイムリミットである24時間が迫るなか、同じAN通信諜報員の鷹野一彦(藤原竜也)は裏組織のアジトに突入して山下を救出、相棒の田岡亮一(竹内涼真)が運転するトラックに乗って逃走しました。
鷹野たちは裏組織の追っ手とカーチェイスを繰り広げ、山下は鷹野のスマホを借りて本部に連絡しようとしましたが中々上手くいかず、スマホを落として壊してしまいました。そこに鷹野のライバルであるフリーの産業スパイのデイビッド・キム(ピョン・ヨハン)が現れ、裏組織の車をロケットランチャーで吹き飛ばしました。その間に山下は公衆電話から本部に連絡しようとしましたが、タイムリミットに間に合わずに山下は爆死してしまいました。
山下の最期に居合わせた鷹野と田岡は、香港で活動していたはずの山下がなぜブルガリアに来ていたのかを探るため彼の隠れ家に向かいました。しかし、既に山下のパソコンからはデータが何者かによって抜き取られていました。鷹野は部屋に残されていた1枚の破かれた写真に何か手がかりがあると考え、AN通信情報部部長で鷹野らの上司である風間武(佐藤浩市)に転送しました。その結果、山下は中国の巨大エネルギー企業CNOX会長アンディ・黄(翁華栄)を追っていたことが判明しました。
鷹野と田岡は風間の指令を受け、オーストリア・ウィーンで黄が主催するチャリティパーティーに潜入しました。黄は謎の美女AYAKO(ハン・ヒョジュ)を同伴しており、会場にはキムも潜入していました。キムに接触されたAYAKOは「あなたには興味ない」とあしらい、続いて鷹野に接触すると「あなたの事を知っている」と告げました。鷹野はAYAKOの発言に困惑し、キムは鷹野に「黄に近づきすぎるな」と警告しました。田岡は隠しカメラでAYAKOや会場にいる人々の顔写真を撮り、本部に送りました。
太陽は動かないのネタバレあらすじ:承
高校時代の鷹野(日向亘)は同級生の柳勇次(加藤清史郎)と共に、沖縄県石垣島の南西60kmに位置する南蘭島でAN通信の諜報員になるための訓練を受けていました。ある日、鷹野、柳は柳の弟と共に、女子更衣室で女子たちの着替えを覗いていました。その中には訳ありで転校して来た女子・菊池詩織(南沙良)の姿があり、柳は「詩織のケツは見ていない」と言いました。
鷹野や柳は観光客をバイクに乗せて島の観光地を案内するアルバイトをしていました。鷹野はバイクで詩織を家まで送り、その際に二人は「この島が好き」と会話を交わしました。その一方、柳はもし自分が諜報員になったらダウン症を抱える弟がこの先一人で生きていけるのか不安になり、高く売れそうな資料を持って島とAN通信から抜け出すことを考えていました。
ある日、鷹野は柳が急に転校したことを知りました。柳は鷹野宛てに「あの子のケツは見ていないからな、絶対」との手紙を残していました。AN通信の者の話では、柳は試験のために受け取った極秘資料を持って弟と共に島から逃走したということでした。鷹野は柳が受ける予定だった試験を受けることにしました。それは東京の不動産会社「和倉地所」に侵入し、「済州島日韓合同開発事業計画」に関する資料を盗み出すというものでした。試験の準備をしていた鷹野は詩織から「柳君が転校して寂しい?」と尋ねられ、「別に」と返しました。
鷹野は修学旅行を利用して和倉地所に忍び込み、資料を盗み出すことには成功しましたが、そこに現れた若き日のキム(醍醐虎汰朗)に資料を横取りされました。鷹野は宿舎のホテルを抜け出すところを詩織に目撃されており、詩織からそのことを問われた鷹野は言葉を濁しました。
南蘭島に戻った鷹野は、詩織を誘って島の観光地・青龍瀑布に行きました。詩織は鷹野にこの島に転校してきた経緯を打ち明けました。東京に住んでいた詩織は好きだった先輩とその仲間にレイプされ、学校に行けなくなり、一時自殺を考えるほど追い詰められていたのです。鷹野はかつてある人物から教えられた言葉「一日だけ生きる事を考えろ。それを続けろ」を伝えて詩織を励ましました。鷹野は「壁の向こうに行きたかった」と話すと、詩織は「きっとここよりもいい場所がある」と答え、鷹野は「俺の事を覚えてほしい」と伝えました。その後、鷹野は詩織を家まで送り、また明日会う約束をして別れました。帰宅した鷹野の前に風間が現れ、明日にも島を離れることを告げられました…。
太陽は動かないのネタバレあらすじ:転
現代。AN通信本部の分析の結果、黄は日本の大手電機メーカー「MET」と合同で最新鋭の太陽光発電システムの実用化を目指していること、霞ヶ浦にそのための用地を入手していたことを知りました。AYAKOの正体は産業スパイであり、黄に経営コンサルタントとして雇われていたのです。
鷹野はMET取締役の河上満太郎(鶴見辰吾)の自宅を訪れ、山下からCNOXの件を引き継いだことを伝えました。河上は山下の胸のチップの存在を聞いているほど親密な関係を築いていたのです。河上の妻・麻子(宮崎美子)は鷹野にオムライスを振る舞いました。それは河上がマニラに赴任していた時、身代金目的で誘拐されたまま行方不明となった河上夫妻の当時4歳の息子が好きな料理だったのですが、鷹野は「私には関係ない」と語りました。河上は鷹野に、METとCNOXの合同プロジェクトを守ってくれるよう以来しました。
鷹野と田岡は風間にそれぞれが掴んだCNOXの情報を報告しました。AN通信はCNOXの狙いがMETの有する革新的な蓄電池技術にあると睨んでおり、CNOXの真の計画を掴んだうえでその情報をMETに売りつけることを決定していました。風間は鷹野と田岡に、CNOX本社のある香港に向かうよう指示しました。
香港入りした鷹野と田岡はCNOX本社に潜入し、田岡がセキュリティシステムをハッキングしている間に鷹野はCNOXのサーバールームから情報を抜き出しました。目的を果たして逃亡しようとする鷹野の前にキムが立ちはだかり、データをよこすよう迫りましたが、鷹野は何とかキムからデータを守り抜くことに成功しました。その際、キムは“鷹野の知っている人物”から依頼を受けていることを明かしました。
鷹野が入手したデータには、中国・タクラマカン砂漠のとある地点の座標が示されていました。鷹野と田岡はヘリコプターで現地に向かうと、そこには次世代の太陽光発電施設であるCNOXの「レクテナ基地」がありました。次世代型太陽光発電システムの概要は、太陽光パネルを搭載した人工衛星で太陽エネルギーを集め、それをマイクロ波に変換してレクテナ基地に送るというものでした。霞ヶ浦の件はダミーであり、CNOXはMETから蓄電池技術だけを奪ってレクテナ基地に導入しようと目論んでいるのです。
人工衛星は既に打ち上げられており、後は蓄電池技術の他にもマイクロ波技術が必要となっていました。マイクロ波技術研究の第一人者である小田部教授(勝野洋)は、日本の学界で異端視されたことを機にブルガリアに渡り、ソフィア大学で教鞭を執りながら研究を続けていました。山下がブルガリアにいたのは小田部教授に接近するためでした。キムはソフィア大学に学生として通う小田部教授の娘・奈々(八木アリサ)に接近し、小田部教授に自分の依頼主と組むことを提案していましたが、キムらの動きはAYAKOに監視されていました。
一方、レクテナ基地上空の鷹野と田岡は、CNOX傘下の裏組織のロケットランチャーによってヘリを撃墜されました。鷹野と田岡はパラシュートで脱出しましたが、鷹野は裏組織に捕まってしまい、黄の部下であるジミー・オハラに拘束されました。鷹野の胸のチップは起動まで5分を切り、鷹野は絶体絶命の危機に陥りましたが、間一髪で突入した田岡に助けられました。鷹野は田岡の携帯電話でチップ起動を解除、「今日も生き延びられた」と感じました。田岡が突入に使った車は爆発し、ジミーは爆死したかのように見えましたが、実はジミーは片足を切り落として脱出していました。その後の風間の調査により、山下が残した写真はインドのジャイブルで撮ったことが判明しました。
その頃、キムはAYAKOに手を組むよう持ちかけられ、依頼主から得た情報を元にジャイブルへ向かいました。キムはAYAKOに15歳の少年・ラジーヴを紹介しました。ラジーヴは兄の大学の研究所で、従来の10倍の電力量を生み出す太陽光パネルの新原料を発明しており、それはレクテナ基地にとって決して欠かすことのできない重要なものでした。
タクラマカン砂漠から脱出した鷹野はロシア・ナホトカまで逃れ、貨物の箱に紛れて日本の河上家に配送されました。鷹野は麻子から出されたオムライスを食べながら、河上にCNOXとのプロジェクトはフェイクであり、計画を白紙に戻すよう説得しました。河上は鷹野の言葉を信用することにしました。
AYAKOはCNOXを裏切り、今まで得た情報をロシアに売り渡すことにしました。ソフィアに到着した鷹野はAYAKOとキムの会話を盗聴し、AYAKOらが小田部教授をロシアに売り渡そうとしていることを知りました。鷹野は胸のチップの起動に怯える田岡を「明日のことは考えなくていい。今日一日を生きているだけだ」と励ましました。
キムは小田部教授を連れ、ソフィア中央駅からロシア・モスクワ行きの列車に乗ろうとしていました。その時、キムの携帯に黄の裏組織から電話があり、「教授の娘は預かった。ロシアとの取引を中止しろ」と脅してきました。
鷹野と田岡は小田部教授奪還の命を受け、小田部教授らが乗る列車に飛び乗りました。列車には小田部教授とキム、AYAKOの他にも黄の裏組織の者たちが乗り込んでいました。鷹野は小田部教授の太腿に埋め込み式のGPSを打ち込み、田岡は裏組織の者たちと拳を交えました。その際、鷹野と田岡は裏組織の者たちがガスマスクを持っていることを知り、それを被りました。裏組織の者たちは列車にに催涙ガスを噴射し、眠った小田部教授を拉致して車に乗せました。田岡も裏組織の車に潜り込みましたが、生き延びていたジミーに捕らえられてしまいました。一方の鷹野はAYAKOに手を組むことを持ちかけましたが拒否されました。鷹野はAYAKOの車を奪い、連れ去られた小田部教授の後を追いました。
太陽は動かないの結末
小田部教授、奈々、そして田岡は黒海に浮かぶ巨大貨物船内部の倉庫に監禁されていました。黄はキムがCNOXの情報を中国当局に流したことにより危機を迎えており、貨物船には当局に見つかるとマズい積み荷が積まれていました。黄はジミーに、船の積み荷を貨物船・田岡・小田部教授親子ごと海に沈めるよう命じました。
時を同じくして、日本の風間の元を河上が訪れていました。風間は河上に、自分の役目はAN通信本部からの命令を鷹野ら諜報員に伝えるだけであり、自分もAN通信本部のことは知らないと言葉を濁しました。河上は風間こそがかつてGMN事業の裏側を追っているうちに行方不明になった新聞記者であることを知っていました。風間は鷹野の過去を語り始めました。
AN通信は親に捨てられ、あるいは虐待を受けた子供たちを引き取り、諜報員として養成していました。当時4歳だった鷹野は弟と共に育児放棄の母によってアパートの一室に閉じ込められ、外に逃げられないよう部屋はガムテープなどで塞がれていました。近所のボヤ騒ぎで鷹野は何とか助け出されましたが、弟は既に餓死していました。鷹野は風間に引き取られ、南蘭島に送られるまでの間は風間の家で過ごすことになりました。
ある日、鷹野は自分の部屋をガムテープで塞ぎ、部屋に火を放ちました。風間は燃え盛る炎の中から鷹野を助け出しましたが、その際に梁の下敷きになり、車椅子が必要な体になってしまいました。風間は鷹野に「いつ死んでもいい。一日だけ生きれば、また一日生きればいい」と言い聞かせ、その言葉は鷹野の胸に深く刻まれることとなりました…。
鷹野は沈みかけた貨物船に乗り込み、裏組織の者たちを倒して小田部教授親子を救出しました。しかし、田岡の胸のチップは起動を始めており、鷹野は絶望する田岡を救い出すと、沈み行く貨物船から海に飛び込みました。
海上にいた鷹野、田岡、小田部教授親子を救出したのはキムのヘリでした。田岡はキムから携帯を借りて胸の起爆装置を間一髪で解除しました。鷹野がキムになぜ助けたのか尋ねると、キムは依頼主から鷹野を生かすよう指示されたと答え、依頼主から鷹野に託された伝言「本当はあの時、あの娘のケツを見た」を伝えました。それを聞いた鷹野は、依頼主が生き延びていた柳であることを悟りました。
その後、キムが中国当局に密告したことにより黄は逮捕され、CNOXは解体されました。AN通信は小田部教授の持つ技術をMETに高値で売り、METは小田部教授と提携して本格的に太陽光発電ビジネスを展開することを発表しました。METはAYAKOがラジーヴのために用意した新たな研究所とも提携しており、キムはAYAKOが太陽光発電の利権に上手くありついたことをしって苦笑いを浮かべました。
鷹野と田岡はMETのパーティーに出席しました。鷹野は河上から「今のままでいいのか」と問われ、「一日一日を生きているだけでいい」と返しました。鷹野はパーティー参加者の中に詩織がいることに気付きました。鷹野の後ろ姿を見かけた詩織は「鷹野くん?」と呼びかけましたが、鷹野は振り返ることなくホテルを後にしました。
以上、映画「太陽は動かない」のあらすじと結末でした。
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