プールの紹介:2009年日本映画。卒業旅行で母・京子の住むタイの古都、チェンマイを訪れたさよ。日本の喧騒から離れゲストハウスで静かに過ごすさよは、少しずつ京子の行動に振り回されたわだかまりをほぐしていく。事情を抱えた5人の男女それぞれの6日間の人間模様を描く。
監督:大森美香 出演:小林聡美(京子)、加瀬亮(市尾)、伽奈(さよ)、シッテイチャイ・コンピラ(ビー)、もたいまさこ(菊子)、ほか
映画「プール」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「プール」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
プールの予告編 動画
映画「プール」解説
この解説記事には映画「プール」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
プールのネタバレあらすじ:起・母と娘の再会
タイ北部の都市チェンマイでゲストハウスを経営している京子(小林聡美)は、近くに住む菊子(もたいまさこ)、身寄りのないタイ人の少年ビー(シッテイチャイ・コンピラ)と暮らす市尾(加瀬亮)と、小さなコミュニティを形成していた。
ビーはゲストハウスのプールの掃除をし、京子はこれからゲストルームの準備をし、市尾は空港に旅行者のさよ(伽奈)を迎えに行った。ゲストハウスへ向かう途中、菊子に誘われて寺院へ行くと、さよは涅槃仏(ねはんぶつ:寝仏、寝釈迦像)を見るのは初めてだと言った。
卒業旅行で初めてタイを訪れたさよは、夕食に招待された二人と共にゲストハウスに到着すると、母親・京子との再会を素直に喜べないさよは、食卓に着くことなくゲストルームへ行ってしまった。
プールのネタバレあらすじ:承・願いを掛けるコムロイ
翌朝、庭にプールを見つけたさよが足だけ水に浸けていると、買い物から帰って来た京子は、市尾は働きに、菊子は散歩、ビーは小学校へ行っていると話した。市尾は仕事で共用リビングの近くを通りかかる度に、話をする二人を気にかけた。
京子はさよと市場で買い物をした後、フードコートで食事しながら、学校が終わるとゲストハウスの手伝いをしてくれるビーはさよが来るのを楽しみにしていたと言うが、さよはビーの存在は知らなかったと言い捨て、一人でゲストハウスへ帰った。
プールサイドでは市尾がさよのために、タイで祭り事がある時に願いを込めて飛ばコムロイ(ランタン)を作っていた。価値観の違う母親とうまく話せないと愚痴をこぼすさよに市尾は、親子だからといって価値観が合わないのに30年一緒に暮らし続けた自分には二人の距離感が羨ましいと言って励まし、ビーの存在を納得できていないさよに、コムロイのための願い事を考えておくように言った。
プールのネタバレあらすじ:転・胸に抱える事情
動物の鳴き声で目を覚ましたさよが庭に出ると、菊子が豚に餌をやっており、猫や犬も飼っているのだと言った。そして、ビーをここに連れて来たのは実は自分だと明かし、菊子は気持ちの良い朝の空気に「死ぬ気がしない」と言った。菊子は余命半年と宣告されたが、三年もここで生きていた。
菊子がさよと街へ出るから車を出して欲しいと市尾に頼むと、彼は役所に行くついでだと快く引き受け、ビーの母親が見つかりそうだと喜んでいた。菊子とさよは町のブンソンさんの店で食事をとり、京子からのピクルスのお裾分けをブンソンさんに渡した。
ゲストハウスに帰り、さよは自分の部屋の庭にある花を摘んで置いていたビーに、プールサイドでお礼に歌を歌った、そこへギターを持った京子がやって来て、さらに市尾も観客として加わった。
翌日、市尾に鍋を作るからと夕飯に誘われたさよは、彼と連れ立って市場へ行き、拙いタイ語で買い物をした。帰りに寄ったブンソンさんの店で食事をしながら、興味がある事にすぐ飛んで行ってしまう母親についてさよがこぼすと、市尾は母親を、しょっちゅう疎ましく思っていたけれど離れると懐かしいと言った。
その夜、鍋を食べようとすると、市尾の携帯に、ビーの母親に会えると言う連絡が入り、食卓には京子とさよだけが残された。
プールの結末:わだかまりは溶けるのか
ビーが母親の元へ行ったら寂しいのではないかとさよが訊ねると、「ビーが選べばいい」と言う京子に対し、さよは「何を選べばいいかなんて子供には決められない」と反発。タイに来たいからとタイに移り住むなど、常に好き嫌いで選択し生きて来た京子は、さよにとっては自分勝手で自分と祖母を置いていったようにしか思えなかった。
自分を置いてビーと暮らす京子に納得がいっていないさよは、「なぜ自分が産んだ子供と暮らせないのか、放っておかれた側の気持ちを考えた事はあるのか」と捲し立て、「人と人はいつも一緒にいればいいとは限らない」と返す京子に、さよは「一緒に暮らしたかった」と本心を告げた
翌日、庭で市尾は「昨夜会った母親が、ビーは自分の子供に間違いない」と答えたがそれ以上は言い淀み、ビーは帰りに「あの人はお母さんじゃない」と言って一緒に帰ってきた顛末をさよに話し、ビーに辛い思いをさせたと悔やんだ。さよは「ビーはたぶん大丈夫」だと市尾を励ました。
その夜、市尾とさよ、ビー、京子、菊子はプールサイドでコムロイを飛ばして願いを掛けた。ビーは高く上っていくコムロイを魂みたいだと言った。
帰国の朝、荷づくりをするさよに、京子は刺繍をしたストールを土産に渡した。ビーとプールサイドで眠っていた菊子に挨拶をして、市尾の車で空港に向かう途中、さよは街中のカフェテラスに菊子に似た人がいるのを見つけた。そして、托鉢僧が列をなして歩く間を空港に向かうのだった。
以上、映画「プール」のあらすじと結末でした。
プールのレビュー・考察:共有リビング
作中に描かれるゲストハウスには共有リビングと呼ばれる一画がある。京子を始めとした登場人物たちが入れ替わり立ち替わり、そこで過ごしている。京子とさよが親子であることを除けば、ゲストハウスの辺りに住まう登場人物たちはビーも含めそれぞれ自立し、干渉しすぎない絶妙で緩やかな関係を保っている。大きな東屋状のリビングは見通しも風通しも良く、彼らの関係の象徴のようにも見えた。また、おそらくさよが空港に向かう途中の町で見た幻や、道を歩く僧侶の風景が、菊子に死が訪れたことを暗示しているようだった。
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