おしゃれ泥棒の紹介:1966年アメリカ映画。ある夜、屋敷に忍び込んだ泥棒シモン・デルモットと知り合った富豪の娘ニコル・ボネ。彼女は彼に、美術館に貸し出しているボネ家所有のヴィーナス像を盗んで欲しいと頼み込む。2人は無事ヴィーナス像を盗み出すことが出来るのか。オードリー・ヘプバーンの可憐さが光るロマンティック・コメディ。
監督:ウィリアム・ワイラー 出演者:オードリー・ヘプバーン(ニコル・ボネ)、ピーター・オトゥール(シモン・デルモット)、イーライ・ウォラック(デイヴィス・リーランド)、ヒュー・グリフィス(シャルル・ボネ)ほか
映画「おしゃれ泥棒」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「おしゃれ泥棒」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「おしゃれ泥棒」解説
この解説記事には映画「おしゃれ泥棒」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
おしゃれ泥棒のネタバレあらすじ:偽物のヴィーナス
舞台は60年代のフランス、パリ。富豪の一人娘ニコル・ボネは、父シャルルの美術コレクションがオークションで高値を叩き出したと聞き大急ぎで帰宅しました。隠し扉をくぐり秘密のアトリエに入ると、そこには作業中のシャルルの姿が。世間では美術品収集家として名が通っているシャルルですが、実は天才的な贋作画家で、偽物を描いては高値で売りさばいていたのです。ニコルはシャルルの身を案じ止めるよう頼みますが、いつも説得出来ないでいました。その上、祖父が作ったヴィーナス像を「チェリーニのヴィーナス」として美術館に貸し出すと聞き驚きます。ニコルのささやかな妨害も虚しく、ヴィーナス像は美術館に展示されてしまいました。ある夜、ボネ邸に1人の男が侵入します。彼の名はシモン・デルモット。シモンが屋敷内の絵画を念入りに調べていると、物音を聞きつけたニコルが現れます。偽物の絵がある以上警察を呼ぶ訳にもいかず、ニコルはシモンを見逃すことにしました。ところが威嚇のために向けていた銃が暴発し、銃弾がシモンの腕をかすります。仕方なく彼をホテルまで送ったニコル。飄々としたシモンの態度に腹を立てるニコルでしたが、別れ際に熱烈なキスをされ呆然としてしまいます。ホテルの部屋に戻ったシモンは絵から採取した絵の具を取り出し慎重に調べ始めました。
おしゃれ泥棒のネタバレあらすじ:盗みの依頼
後日、ニコルはアメリカの美術品収集家デイヴィス・リーランドから食事の招待を受けます。誘われる理由に心当たりの無いニコルが問いただすと、リーランドはヴィーナス像の虜になってしまったからだと打ち明けます。彼は美術館でヴィーナス像を見て以来、ニコルを誘惑してでも手に入れたいと思いつめるほど夢中になっていました。翌朝、ボネ親子はヴィーナス像が科学鑑定にかけられると知り顔を真っ青にします。鑑定を受ければヴィーナス像はおろか、今まで売った絵もたちまち贋作だと知られてしまうでしょう。焦ったニコルはシモンを呼び出し、ヴィーナス像を盗んで欲しいと頼みます。詳しい事情を話さないニコルにシモンは無理だと断りますが、必死な彼女の姿についつい承諾してしまうのでした。
おしゃれ泥棒のネタバレあらすじ:偵察
翌日、ニコルとシモンは下見のため美術館を訪れます。巧みに人目を避け、掃除用具室の場所、鍵置き場、守衛の交代時間、掃除の時間をチェックするシモン。更に公園でブーメランを購入します。緊張感の無いシモンに、ニコルの不安はどんどん大きくなります。そしてついに泥棒決行の時。出かける間際、ニコルはボネ邸に乗り込んで来たリーランドから強引に求婚されます。シモンとの待ち合わせに遅刻しそうだったこともあり、適当に婚約してしまうのでした。
おしゃれ泥棒のネタバレあらすじ:初めての泥棒
閉館間際の美術館へ入るニコルとシモン。閉園ベルが鳴り響き、出口へ向かう客に紛れ2人は暖炉に身を潜めます。その後、シモンが予め開けておいた掃除用具室にこっそり移動します。聞き耳を立て、守衛の見回りが1時間ごとに行われることを確認。思わぬトラブルがあっても鮮やかに解決するシモンの手腕に、ニコルはうっとりしてしまいます。用具室を出たシモンは、ヴィーナス像を守る赤外線センサーに引っかかるようにブーメランを投げます。けたたましいベルが鳴り響きます。ブーメランをキャッチし再び用具室に身を潜める2人。守衛達が現れ警察がパトカーで駆けつけます。しかし館内に異常は見つからず、守衛達は守衛室へ、警察は撤収して館内には静寂が戻りました。その頃掃除用具室では、シモンがヴィーナス像を偽物と知りながらニコルに協力していたと判明します。驚いて理由を問うニコルに、シモンはこれが答えとばかりにキスをしました。惹かれ合っていた2人は熱い抱擁とキスを交わします。その後もう一度同じ騒動を起こした結果、シモンの目論見通り守衛長は警報装置の電源を切ります。シモンは掃除婦に変装したニコルにバケツを渡し、守衛が隠していた酒瓶を手にゆっくりとヴィーナス像に近づきます。ヴィーナス像と酒瓶を入れ替えたシモン。バケツの中にヴィーナス像を隠し、ニコルは掃除の時間まで暖炉に隠れます。やがてやって来た掃除婦達に紛れ、じりじりと守衛室を目指すニコル。守衛の1人がヴィーナス像の盗難に気づき館内はパニックに陥ります。その隙にニコルは守衛室に入り、先に侵入していたシモンと裏口から脱出。泥棒は見事成功しました。
おしゃれ泥棒の結末:ハッピーエンド?
ヴィーナス像の盗難にリーランドは大きなショックを受けていました。どうしてもヴィーナス像を手に入れたい彼は、偶然知人から紹介されたシモンにヴィーナス像を入手するよう依頼します。シモンは依頼を受ける代わりにニコルと別れることを約束させます。その後ホテルにやって来たニコルは初めての泥棒体験に興奮しきりでした。するとシモンも泥棒は初めてだと言い出します。実はシモンは泥棒ではなく、美術品専門の私立探偵だったのです。彼はシャルルのコレクションを怪しんだ美術商からの依頼でボネ邸に侵入し、絵を調べていたのでした。真実を知ったニコルは仰天します。後日、ヴィーナス像を手に入れたリーランドはアメリカに帰国し、シモンはボネ邸でシャルルと顔を合わせていました。贋作画家を引退するよう言われたシャルルは渋々ながらも約束します。ところが、ゴッホの絵を買いたいという客が現れるとシャルルは性懲りもなく大喜びで迎え入れます。呆気に取られるニコルとシモン。シャルルに急き立てられるように車を発進させた2人はハネムーンへ向かい、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画おしゃれ泥棒のあらすじと結末でした。
「おしゃれ泥棒」感想・レビュー
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“永遠の妖精・オードリー・ヘップバーンが名優ピーター・オトゥールを共演に迎え、名匠ウィリアム・ワイラー監督と3度目のコンビを組んだロマンティック・コメディ「おしゃれ泥棒」”
この映画「おしゃれ泥棒」は、主演のオードリー・ヘップバーンとウィリアム・ワイラー監督が「ローマの休日」「噂の二人」に続いて3度目のコンビを組んだ、ロマンティック・コメディで相手役に「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールを迎えての作品です。
贋作をテーマにしたオーソン・ウェルズの「フェイク」という映画には、いとも簡単にモジリアニやマチスやピカソの偽物名画を描きあげてしまう実在の贋作画家エルミア・ド・ホーリーが実に魅力的に描かれていましたが、この「おしゃれ泥棒」でも、一番愉快なのはヒュー・グリフィス扮する贋作画家です。
彼はパリの邸宅の一家でセザンヌやゴッホの偽物を描きあげ、世の中の”美術愛好家”を見事にだまして楽しむという、悪人なのに憎めないし、彼自身、それなりに超一流の芸術家でプライドも持っていて、娘のオードリー・ヘップバーンに、「パパったらそんな事ばかりしてはだめよ」と怒られると、彼は憤然としてこんな名セリフを吐くのです。
「俺はゴッホより遥かに苦労してゴッホの絵を描いてるんだぞ!」とか「ゴッホは生涯に1枚しか絵を売らなかったが、俺はもう2枚もゴッホの絵を売った」と——-。
この贋作画家はセザンヌの”ネモアギスの肖像”という絵を贋作して成功しますが、これは実は、贋作作家としては超一流の腕前を示しているのです。
なぜならば、私の大好きなミステリー作家ギャビン・ライアルの「拳銃を持つヴィーナス」の中に、ユトリロやピカソは目録が不備なので、例え贋作が登場しても簡単に見破れない可能性があるが、セザンヌは目録が完璧に出来上がっているので、”セザンヌを贋作するやつなんていない”からなのです。この映画のお話は、そのプロが作ったチェリーニの彫刻”ヴィーナス像”を美術展に出品したまではよかったが、贋作がバレそうになったので、娘のオードリーが恋人のピーター・オトゥールの手を借りて、この”ヴィーナス像”を盗み出すというロマンティック・コメディで、自分で作った物を自分で盗み出すというところがミソなのですが、この盗みのテクニックは例えばジュールス・ダッシン監督の盗みのプロを描いた傑作「トプカピ」に比べると少々あっけなく、物足りなさを感じます。
それと当時、オードリーは流産をした後だったらしく、やや精彩がなく、オードリーの一ファンとして、正直なところ、”永遠の妖精”オードリーも37歳になって、少し年齢を感じさせるようになって寂しい気持ちがしましたが、しかし、ベッドの中でヒッチコック・マガジンか何か読んでいるところは、相変わらずお茶目でよかったと思います。
また、共演のピーター・オトゥールもいつもの芝居くささを封印して、軽快で肩の力を抜いたコミカルな演技に徹していて、さすがに名優は何を演じさせてもうまいなと感心させられました。
もうとにかくオードリーが可愛い。おてんばだけれど父親思いで、一生懸命な姿が本当に可憐。そりゃ皆すぐ惚れちゃうわ、という感じですね。そしてピーター・オトゥールのブルーアイズの美しさ!ひょうひょうとした雰囲気の中にも漂う、洒脱な魅力。登場人物がみんな魅力的で、ストーリーにも文句のつけどころがありません。邦題もかわいいですよね。最近の洋画はひどい邦題が多いですが…