ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎の紹介:1985年アメリカ映画。ロンドンの寄宿学校に入学したジョン・ワトソンはシャーロック・ホームズと出会い、巷を騒がしている怪しげな事故の裏に連続殺人の匂いを嗅ぎ付ける。それは、ロンドン裏社会に根を張りつつある邪心教集団、そしてホームズの恩師の過去に関連していた。ホームズとワトソンの名コンビ誕生を描いた少年探偵映画。当時、スピルバーグのSFXがふんだんに盛り込まれた事で話題になった。
監督:バリー・レヴィンソン 出演:ニコラス・ロウ(シャーロック・ホームズ)、アラン・コックス(ジョン・ワトソン)、ソフィー・ウォード(エリザベス・ハーディ)、アンソニー・ヒギンズ(レイス教授)、スーザン・フリートウッド(ドリブ夫人)、フレディ・ジョーンズ(チェスター・クレイグウィッチ)、ナイジェル・ストック(ワックスフラッター教授)、ほか
映画「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」解説
この解説記事には映画「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎のネタバレあらすじ:序幕
クリスマスも近いある雪の夜、一人の老会計士は事務所を出ると首筋に虫に刺されたような痛みを感じます。そして、深いフード着きのローブを着込んだ人物が鈴の音と共に立ち去りました。老会計士はディナーの為にレストランを訪れると、出された鳥の丸焼きが飛び掛ってきました。慌てて飛び退くと、鳥は丸焼きで飛び掛ってきていません。老会計士は自分がおかしくなったのかと食事も取らずに家に帰ります。メイドが声を掛けるのも無視して自室に飛び込み帽子掛けに帽子を掛けようとしますが、今度はその帽子掛けが襲ってきました。更にはガス灯が火を噴き、家が火の海に変わって行きます。老紳士はそこから逃げる為に窓から飛び降りますが、石畳に全身を打ち付け、そのまま亡くなってしまいました。家から火は上がっていませんた。
ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎のネタバレあらすじ:第1幕
ロンドンの寄宿学校に少年ジョン・H・ワトソンはやってきました。そこで彼は、自分で引いていながら下手なバイオリンに腹を立てる少年、シャーロック・ホームズに出会います。ホームズは出し抜けに、ワトソンの服装、持ち物、仕草から彼の素性と名前を推理し、その推理力の高さを披露します。そしてワトソンを試すように一つの謎々を出しました。そんな唯我独尊とも取れる彼にも尊敬する恩師が居ます。ワックスフラター教授は人力飛行機の研究をライフワークにする元教官で、学内では変人として名の通っていた人でした。彼は、姪でホームズの恋人のエリザベスと共に学園内に住んで居ます。そんな彼に不審な人物が面会に現れます。教授は老会計士の怪死にも気を配っていました。その怪死の翌日夜、ある牧師が教会の礼拝堂でろうそくに火を灯していると、鈴の音と共に首筋に小さな痛みを感じます。すると彼の眼前、ステンドグラスに描かれていた騎士が飛び出し、襲い掛かってきました。彼はそれから逃れる為に慌てて通りに出て馬車に轢かれしまいました。
更に翌日、ホームズが教授のホームズが訪れると、教授はその神父の事故の記事も気に留めていることに気付きました。その事を知ったホームズは、その二つの事件に関連がある事に気付きレストレード警部補に連続殺人だと進言しますが取り合って貰えません。教授の周りに不穏な陰を感じつつもホームズは試験に挑みます、しかし彼に不満を抱く同級生の罠に掛かり、カンニングの嫌疑を掛けられて放校処分になりました。彼を庇ってくれたのは、フェンシングの教官で一番弟子のように可愛がってくれたレイス教授だけでした。放校の決まっていたホームズは、心残りを解消したいと彼とフェンシングの決闘をします。しかしその決闘は、レイスの指輪が光を反射、その光が目晦ましになってホームズを負けに導いてしまいます。それを卑怯としたレイスは負けを口にしますが、ホームズは引き分けだとします。
ホームズが学校を去る日になりました。その日骨董商を尋ねていたワックススラッターは首筋に痛みを感じ、鈴の音が去るのを聞きます。すると、動物の形をした骨董が彼に襲い掛かってきます。しかし、他の人からは一人で暴れて居るようにしか見えません。教授は商品のナイフを振り翳し、自分の胸を刺し貫いたのです。その騒ぎを聞きつけたホームズは事件現場に駆け付けます。そして事切れる教授から「エ・タール」という謎の言葉を聞きました。また一緒に駆け付けたワトソンは、ローブの人物とぶつかります。ローブの人物はその拍子に白亜の素材で不気味な彫刻の施された吹き矢を落し、それを拾い上げたワトソンから逃げるように離れて行きます。
ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎のネタバレあらすじ:第2幕
葬儀を陰から見守っていたホームズは、先日面会に来た男が同じように葬儀を見守っている事に気付きます。彼はその男を追いますが、見失ってしまいました。不審死が続いたホームズは学園にこっそり戻り、教授の死の真相を含めた事件の全貌を暴く決意をするのです。エリザベスはホームズに感謝を現し、教授の雉撃ち帽を形見分けに上げるのでした。
ホームズは、現場から去って行った不審なローブの人物を怪しいを睨みます。その人物の落し物、エジプト製の吹き矢を調べて行くと、謎の邪教集団「ラメ・タップ」に辿り着きます。ラメ・タップの暗殺者は吹き矢に毒を使い、その毒は悪夢のような幻覚症状を引き起こします。そんな話をエリザベスに報告すると彼女は犯人が学内に居ると言い出します。実は鈴の音はワトソンが転入初日、図書室で聞いていましたが、その同じ音色を彼女も学内で聞いていたのです。その際、飼い犬のアンガスが追いかけ、ローブの人物を見付けその裾をかじり取っていました。ホームズはその布を解析して、それに付いていたパラフィンからロンドンで唯一の製造元に辿り着き、その会社倉庫に向かいます。
その倉庫に忍び込むと、地下に怪しいピラミッドを見つけます。そのピラミッド内部では邪教徒が神殿を作り、少女を生贄を捧げている所でした。その場に遭遇してしまったホームズは思わず声を上げてしまいました。儀式を見られた事に気付いた邪教徒達は、殺そうと逃げるホームズ達を追います。邪教徒達の吹き矢を受け、幻覚に苦しめられるホームズ達ですが、何とか追っ手から逃げる事ができました。ホームズはレストレードに、邪教徒から奪った吹き矢と証拠にピラミッドの話をしますが、彼は子供のたわ言として聞き入れてくれませんでした。
捜査に行き詰まっていたホームズ達ですが、ワトソンがたまたま見付けた絵に手掛かりある事に気付きます。その絵には、教授の他に、死んだ3人の人物も描かれていました。そして、その絵に描かれて唯一生きている人物が居る事に気付きます。その人物は、最近頻繁に教授を訪ね、葬式を陰から見ていた男でした。そこにレイスが突然現れます。放校になっている人物が学内をうろついている事を問題視、教授の死に関連してると言うのなら、彼の遺品を全て処分すると言い出します。そしてホームズとワトソンを監禁してしまいました。
ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎のネタバレあらすじ:第3幕
諦め切れないホームズは抜け出し、絵の中で最後に生き残っている人物、銀行家のクラグウィッチに会いに行きます。クラグウィッチは最初、ホームズ達をラメ・タップの手先として銃撃しますが彼等の熱意にほだされます。彼はラメ・テップの紋章が付いた脅迫状を出し、真相を話し始めます。過去にワックスフラター達は、そのホテル事業を起業しようとエジプトに行きます。建設予定地で彼等は、隠された地下ピラミッドを発掘します。発掘物を本国に持ちかえろうとすると現地村人達の反感を買い鎮圧に軍隊が動員され、村人達は皆殺しにされました。その村の縁者であるエ・タールは、村が滅んだ理由をワックスフラター等にあるとして、復讐を誓っていました。
その頃、学内で待つエリザベスは、背後に鈴の音を聞きます。振り返ると学校で雇われているメイドが居ました。実はそのメイドはラメ・テップの一人でした。エリザベスは逃げようとしますが、更にそれをレイスが阻みます。レイスこそが、エ・タールだったのです。彼はエリザベスを5人目の生贄にしようと攫います。真相を知り学校への帰路に着くホームズとワトソン。他愛ない世間話に出会って早々に出された謎々の話をし始めます。答えに近付きつつあるワトソンと話していたその時、レイスの指輪が思い浮かびます。その指輪の紋章と手紙の紋章の一致に気付いたホームズは、レイスがエ・タールだと気付きます。学校に走り戻るホームズですが、すでにレイスが馬車で逃走した所でした。ホームズはワックスフラターの人力飛行機でレイスを追います。ピラミッドまで追いましたが既に儀式は始まっていました。
エリザベスのピンチにホームズは、ピラミッドを崩す方法を思いつき、見事成功させました。大混乱のピラミッド内部で邪教団と剣や棒切れで大立ち回りを演じつつ、ホームズとワトソンはエリザベスの救出に成功します。しかし、後一歩という所でレイスが立ち塞がり、エリザベスを再び奪われてしまうのでした。ガレキが当たり気を失ったホームズと、馬車で逃げようとするレイスを足止めしなければいけないワトソンは、一石二鳥の方法を思いつき、それでホームズをエリザベスを救いました。
全ての計画を邪魔されたレイスは、逆恨みにホームズに銃を向けます。しかし銃弾は、ホームズを庇ったエリザベスに当たってしまいました。怒りに逆上したホームズは、レイスに最後の対決を挑みます。決闘は互角の勝負でしたが、その場は凍った河の上で次第に氷が割れて行き、バランスを崩したレイスは割れ目に落ちてしまい、そのまま沈んでしまいました。決闘が終わり、エリザベスの下に駆け寄るホームズですが銃弾は彼女の急所を貫いており、ホームズはエリザベスとの別れに溢れる涙が止まらないのでした。
ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎の結末:終幕
本当に学校を去る日、ホームズはレイスが身に付けていた2重巻きのコートを戦利品として身に纏い、馬車に向かいます。ワトソンは彼が語る事件の真相を聞きながら彼を見送ります。選別として、以前情報と引き換えに購入したパイプをプレゼントし、別れを惜しみます。別れ際、謎々の答えに辿り着いたワトソンにホームズは、彼の推理力を褒め称え、馬車は走り出しました。馬車の中には、将来名探偵としてを名を馳せるシャーロック・ホームズの姿がありました。
雪閉ざされた森の宿に一人の男がやってきます。その男は顔に剣で作った深い傷跡を持ち、宿帖に名前の記載を求められると、ある一つの名を書き記しました。その名は「モリアーティー」、彼はそう記入しました。
この映画「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」は、探偵小説史上、最も有名な名探偵シャーロック・ホームズの若き日の大冒険を描いた映画です。
もちろん、原作にはない映画用のオリジナルで、製作総指揮がスティーヴン・スピルバーグ、監督が「レインマン」「ナチュラル」のバリー・レヴィンソン監督、脚本が「ホーム・アローン」「ハリー・ポッターと賢者の石」の監督でもあるクリス・コロンバスによる作品です。
霧に覆われた、暗く陰鬱な都市ロンドン。そのロンドンで、謎の吹き矢で名士たちが次々と狂死してしまう事件が起こります。
連続殺人事件、そして、その犯人はいったい誰なのか? そして、何が目的なのか?。
ロンドン市中に隠されたピラミッドの恐怖を、若きシャーロック・ホームズが追いかけ、その謎を解明していくというストーリーだと聞いただけで、ワクワクしてくる映画です。
この映画は、まずホームズの生涯の友となるワトソンとのパブリック・スクールでのめぐり合いの場面から始まります。
そして、ホームズの推理が、決して超人的な飛躍を見せるのではなく、かなり理詰めで現実的であったという事を、ワトソンとの交流と日常生活上の小さな謎解きの中で語っていきます。
そのホームズが初めて遭遇した大事件。
シャーロック・ホームズの原作者のコナン・ドイルが書かなかったホームズの若き日の事件を、ホームズならこういうように謎を解明しただろうという、いわば、ホームズの行動原理を推理しながら謎解きをさせるという二重構造の面白さが、この映画の最大の見どころなのです。
この映画が成功したのは、オリジナル脚本の、人間への優しく、温かいまなざしにあったのだと思います。
我々の知るホームズは、いささか完璧すぎて、人間としてエキセントリックで、とっつきにくい面がありますが、この映画での若きホームズは、激しく、美しい恋もするというような人間らしさを持っています。
この事が、作品全体をより人間らしさに包まれた優しく、明るい雰囲気を醸し出しているのだと思います。
また、この映画のもつスピーディなテンポの良さは、何と言ってもバリー・レヴィンソン監督の演出の腕だと思います。
ホームズとワトソンが手製の飛行機で飛ぶ、クライマックスの胸がワクワクするような快調なテンポは、まさしくヤング・シャーロックにふさわしい楽しさに満ち溢れています。