名探偵再登場の紹介:1978年アメリカ映画。「名探偵登場(1976年)」の姉妹編となるハードボイルド・コメディ作品。製作陣と出演者の一部は続投しているが、内容は全くの別物となっている。相棒が殺害された事件をきっかけに、私立探偵ルー・ペキンポーの前に奇妙な依頼人が次々現れる。やがて彼はある美術品の争奪戦に巻き込まれ、その上美女達からの誘惑も受け、事態は混乱を極めていく。
監督:ロバート・ムーア 出演:ピーター・フォーク(ルー・ペキンポー)、アイリーン・ブレナン(ベティ・ド・ブープ)、シド・シーザー(エズラ・デザイア)、ジェームズ・ココ(マルセル)ほか
映画「名探偵再登場」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「名探偵再登場」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「名探偵再登場」解説
この解説記事には映画「名探偵再登場」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
名探偵再登場のネタバレあらすじ:相棒の死
舞台は1939年、架空の街「サンフランシスコ」。ある夜、探偵社を営むフロイド・マークルが何者かによって射殺されます。マークルの相棒ルー・ペキンポーは、マークルの妻ジョージアとの不倫関係がバレて警察から疑われる羽目に。そんなペキンポーの元に、謎の女から電話がかかってきます。今回の事件について情報を持っているという女の指示に従い、オフィスで会うことにしたペキンポー。彼が到着した時には、既に電話の女モンテネグロ夫人は合鍵で侵入していました。彼女はマークルに失踪した姪の捜索を依頼していました。それが原因でマークルは殺害されたのでは、と匂わせるモンテネグロ夫人。一旦彼女をホテルに帰したペキンポーが自宅に戻ると、今度は謎の男から波止場のクラブ「ニックス」に来いと電話があります。
名探偵再登場のネタバレあらすじ:思わぬ再会
「ニックス」にはゲシュタポのシュリセル大佐とその部下数人、亡命者で歌手のベティ・ド・ブープなど濃い顔ぶれが揃っています。電話の男ペペ・ダマスカスは奥の個室でペキンポーを待っていました。彼はモンテネグロ夫人の話は嘘だと暴露し、本当の目的はある美術品の入手だと言います。そこへダマスカスの知人ジャスパー・ブラバーが十字軍ホテルに到着したと連絡が入り、ダマスカスは店を後にします。入れ違いにやって来たのはペキンポーのかつての恋人マルレーヌ・デュシャールとその夫ポール。レジスタンス運動をしている夫妻はシュリセル大佐達と一触即発の空気になります。ポールは生きてこの街を出るためオークランドで店を開く計画を立て、そのために必要な書類は今夜「ニックス」に届く手はずになっていました。協力者は店の経営者マルセルです。しかし書類はシュリセル大佐に奪われてしまいました。
名探偵再登場のネタバレあらすじ:卵ダイヤと恋の行方
翌日、ブラバーから電話で十字軍ホテルのバーに呼び出されたペキンポー。ブラバーの話によると、彼とモンテネグロ夫人とダマスカスは、特大の卵サイズのダイヤ12個を探しているそうです。しかし卵ダイヤは1924年に盗まれて以来行方が分かりません。犯人は持ち主と自身の相棒を殺害したルーマニアの船乗り、ウラジミール。そしてウラジミールは本名をアナグラムした偽名を使い、この街に潜伏しているらしいのです。ペキンポーはアナグラムの紙を預かり、秘書ベスに解読を頼みました。彼女はクロスワードパズルが大の得意なのです。オフィスではマルレーヌがペキンポーの帰りを待っていました。彼女はシュリセル大佐から書類を奪還して欲しいと頼み、その暁にはよりを戻したいと訴えます。マルレーヌに未練たっぷりのペキンポーは依頼を引き受けました。室内に潜んでいたベティにシュリセル大佐から書類を盗むよう指示し、別室で泣き喚くジョージアを抱きしめ落ち着かせます。そして全員に明日の夜12時、フェリー乗り場で会おうと約束するのでした。
名探偵再登場のネタバレあらすじ:ウラジミールと元相棒の正体
マルレーヌ達が退室したところで、アナグラムを解読したベスがやって来ました。ウラジミールの偽名はエズラ・デザイア。そこへデザイア本人から電話があり、明朝デザイア邸に来るよう指示されます。出向いたペキンポーを迎えたのは車椅子に座った老人デザイアと、その妻で肉感的な美女ジュゼベルです。ジュゼベルの発音から彼女がルーマニア人であること、そしてデザイアの正体がウラジミールであることを確信するペキンポー。ウラジミールは昨夜卵ダイヤが盗まれたと話します。犯人は死亡したと思っていたかつての相棒でした。するとカーテンの裏から銃口が覗き、ウラジミールは射殺されます。床には犯人の血液が落ちていました。ベスからの電話で慌てて探偵社に戻ったペキンポーを待っていたのは、血を流し続け虫の息になっているマルセルでした。ウラジミールを射殺した彼の元相棒はマルセルだったのです。彼はダイヤが入っていると思われる箱を持っていました。そこにベティが現れ、書類をブラバーの手下に奪われたと報告します。そのブラバーから電話が入り、ペキンポーはダイヤと書類を交換しようと提案します。電話の間にマルセルは死亡していました。ペキンポーはダイヤの箱を入手し、ベスに警察に連絡するよう指示して外に出ていきます。
名探偵再登場の結末:卵の中身
夜。ペキンポーの呼び出しに応じたのはブラバーとその手下、ダマスカス、モンテネグロ夫人の4人でした。書類とダイヤの箱を交換し、感動に震えるブラバー達。箱の中には12個の大きな卵が収められています。ところが卵から出て来たのはダイヤではなくヒヨコでした。驚愕するブラバー達を笑ったペキンポーは警察を部屋に招き入れ、ブラバー達を連行させました。しかしマークル殺害の犯人は別にいると言います。そして12時2分前、デュシャール夫妻はフェリー乗り場でペキンポーの到着を今か今かと待っていました。オークランド行きの船は出港寸前です。そこへ現れたペキンポーは、書類とマルレーヌの交換を提案。あっさり承諾したポールが船に乗り込もうとすると、シュリセル大佐達が現れました。マルレーヌがシュリセル大佐を押しとどめていると、銃弾が大佐の頭を撃ち抜きます。警察が到着し、ペキンポーは静かに「終わりだ、出てこい」と言いました。物陰から現れたのは銃を持ったジョージアです。マークル殺害も認めた彼女は、警察に連行されました。やっと2人きりになったペキンポーとマルレーヌ。そこへタクシーが迎えに来ます。車内にはベスやベティなど、ペキンポーに惹かれた女達が待っていました。新しい愛人達に囲まれたペキンポーは笑顔で祝杯を上げ、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画名探偵再登場のあらすじと結末でした。
“ニール・サイモン(脚本)、ロバート・ムーア(監督)のコンビが放つ「カサブランカ」へのオマージュを捧げたパロディ映画「名探偵再登場」”
この映画「名探偵再登場」は、前作の「名探偵登場」というミステリーのパロディ映画をアメリカで大ヒットさせた、ニール・サイモン(脚本)とロバート・ムーア(監督)のブロードウェイ出身のコンビが取り組んだパロディ・シリーズの第2弾となる作品です。
主役には、前作に引き続き、「刑事コロンボ」のピーター・フォークを起用し、有名な「カサブランカ」へのオマージュを捧げた、徹底的なボガート・パロディに仕上がっています。
いつものむさ苦しいヘア・スタイルまでボガート風にきっちりと刈り上げたピーター・フォークが、しゃがれた声色までそっくりに再現するのは、「カサブランカ」のリック・ブレーン、「マルタの鷹」のサム・スペード、「三つ数えろ(大いなる眠り)」のフィリップ・マーロウ、そして「脱出」のハリー・モーガン等のハンフリー・ボガートの当たり役をひとりの人間に詰め込んだような人物、その名もルー・ペキンポーなる冴えない私立探偵をコミカルに演じています。
「1939年、カサブランカから7千マイルも離れたサンフランシスコで」というクレジットと共に、謎の連続殺人事件が発生するところから、結局、何が何だかさっぱりわからないうちに、更に殺人事件が何件も起こり、突然、ルー・ペキンポーがその真犯人を捕まえるラストまで、多彩な人物たちが、舞台劇さながらに、めまぐるしく出入りするのです。
「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」ならぬ、「ジーパーズ・クリーパーズ」を弾いて、ペキンポーにどなられる黒人ピアニストのいるバー、ニックスでペキンポーと再会するカップルのルイーズ・フレッチャーとフェルナンド・ラマスは、もう明らかにイングリッド・バーグマンとクロード・レインズの「カサブランカ」の再現——-。
その他、このバーの歌姫アイリーン・ブレナンはローレン・バコール、謎の美女で名無し女のマデリン・カーンはメアリー・アスター、ペキンポーの相棒で死体となって登場する探偵の色情狂の未亡人マーシャ・メイスンはグラディス・ジョージ、ペキンポーの秘書のストッカード・チャニングや、大富豪夫人のアン・マーグレットをそれに加えて、女優陣が演じているのも全て、かつてのボガート映画のヒロインたちのパロディなのです。
ドル・デイルスがピーター・ローレ、ジョン・ハウスマンがシドニー・グリーン・ストリート、ポール・ウィリアムスがイーライシャ・クック・ジュニア、ニコル・ウィリアムスンがコンラット・ヴェイトと、男優陣もこれまた、ボガート映画の悪漢たちを再現するのに加えて、シド・シーザー、ジェームズ・ココ、そしてエイブ・ビゴダ等のベテランたちも、やっぱり同様にかつてのボガート映画を彩ったキャラクターを再現してみせるのです。
私を含む我々、ボガート・マニアにとって、こうした男女優たちが、いかにもそれらしき雰囲気で画面に登場するだけで十分、と見たのでもないでしょうが、ニール・サイモンのパロディは前作の「名探偵登場」もそうでしたが、マニア向けのみが狙いのような感じがして、今一つ味気なく、ドラマとしての盛り上がりにも欠けていたように思います。
ニール・サイモンという劇作家は、やはりパロディよりも、「グッバイガール」のような、きっちりとした舞台劇的なコメディやドラマの方が本領を発揮出来るのではないかと思います。