東京日和(とうきょうびより)の紹介:1997年日本映画。写真家荒木経惟と妻陽子のフォトエッセイを原作とした竹中直人監督、主演の作品。第21回日本アカデミー賞で、優秀作品賞を始め、数々の賞を受賞している。写真家が亡き妻との日々のエピソードを振り返る内容になっている。コメディを得意とする竹中のひと味違った演技が見られ、ヒロイン中山美穂の素の美しさが光る作品である。
監督:竹中直人 出演:竹中直人(島津巳喜男)、中山美穂(島津ヨーコ)、松たか子(水谷)、三浦友和(外岡)、鈴木砂羽(宮本)、ほか
映画「東京日和」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「東京日和」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「東京日和」解説
この解説記事には映画「東京日和」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
東京日和のネタバレあらすじ:起
一人暮らしの写真家の島津の家に、数年ぶりに昔の仕事仲間、水谷が訪ねてくることになりました。最寄りの駅までたどり着いた水谷に、軽食と、撮影用のひまわりの花を買ってきてくれるように頼んだ島津。以前に水谷ら同僚が遊びに来た時には、主人公の妻ヨーコはまだ元気で家にいました。水谷の名前を間違えて「谷口さん」と連呼してしまったヨーコ。間違いを指摘されると、恥ずかしさで台所から出てきません。突然飛び出していった妻はそれから3日間帰ってきませんでした。水谷の訪問をきっかけに、亡き妻との日々を思い出していく島津。ここから回顧録という形で、いくつかのストーリーが描かれます。
東京日和のネタバレあらすじ:承
写真集を出したり、個展も開催している島津は、街をぶらつき、気の向くままに写真を撮り歩く毎日。特に好きなのが、電車内の風景でした。フィルムを手で巻き取るタイプの、愛用のカメラをさりげなく膝の上に乗せ、人々の自然な表情を撮っていきます。ある日の事件。向かいの席の男の寝顔をそっと撮影していた島津に、隣りの席の中年女が物言いをつけます。無許可での撮影行為が気に入らなかった女は、男を無理矢理巻き込んで、ものすごい剣幕で駅の出口まで追いかけてきました。警察で事情聴取を受ける3人。釈放されます。寝顔の男は劇団の舞台俳優でした。「面白そうね。舞台見に行ってみましょ。せっかくお友達になったんだから」「お友達ってオマエ」天真爛漫な妻はあっけらかんとして言うのでした。
東京日和のネタバレあらすじ:転
天真爛漫が度を超してしまった、こんなエピソードもあります。旅行代理店に勤めているヨーコですが、家にいる時に、同じアパートのに住む小学生テツオの面倒を見てあげています。テツオの両親は共働きで、いつも一人でいることを不憫に思ったのです。テツオはヨーコと一緒にいるのを好みますが、ヨーコはテツオに女の子用の玩具を与え、無理矢理ワンピースを着せようとします。ある朝、線路脇にたたずむテツオと出会ったヨーコ。学校とは真逆の方向です。ヨーコは、学校を休ませ、テツオを家で遊ばせたり、外へ連れ出して勉強を教えたりしていました。夜になって、テツオがいないことでアパート中大騒ぎに。帰宅した島津は、心当たりの場所に2人の姿を見つけます。テツオは、あれほど嫌がっていたワンピースを着せられて、立ち尽くしています。「おまえなんかいらないって言って」島津の胸で泣きじゃくる妻。妻の行動は、島津には理解できない部分もあり、いつも自分の手の届かないところにいるような、漠然とした不安がありました。出勤途中の妻の後をつけてみると、公園での若い男とのささやかな交流など、小さいながら自分の知らない妻の世界があります。
東京日和の結末
7月7日の結婚記念日に、新婚旅行で行った思い出の柳川を再訪する2人。「日本のヴェニスだな」「それ前も言ったわよ」渡し船に乗り、ゆっくり流れる時間の中で、島津はカメラを妻に向かってシャッターを切ります。むせかえるような夏の匂い。揺れるひまわりの花。その後、ヨーコは会社を辞め、猫を飼って家にいたのですが、病気のため亡くなったことがナレーションで語られます。時は現在に戻り、水谷がアパートに到着。島津の新しい写真集「東京日和」の打ち合わせを始めます。お茶を沸かそうとする島津は、台所の壁に貼られた小さなシールに目をとめます。何の変哲もないガス会社のお知らせの隅に、担当者の「谷口」という印鑑が押されています。以前水谷が訪れたあの時、ヨーコが名前を間違えたのは、この「谷口」という名前を毎日無意識に眺めていたからか。嗚咽する島津。空へのびるひまわりの映像とともに、エンドロールへと続きます。
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