フラガールの紹介:2006年日本映画。常盤ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生の軌跡を描いた、実話をもとにした感動作。男性優位の炭鉱の町で、フラダンスを通じて女性の自己実現を成し遂げたフラガール達の若い生命力と希望に満ち溢れる姿は、新しい時代の幕開けを感じさせ、観るものに爽やかな感動を与えます。第30回日本アカデミー賞最優秀賞作品賞受賞作品。
監督:李相日 出演:蒼井優(紀美子)、松雪泰子(まどか)、山崎静代(小百合)、豊川悦司(紀美子の兄)、岸部一徳(吉本)、富司純子(紀美子の母)ほか
映画「フラガール」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「フラガール」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「フラガール」解説
この解説記事には映画「フラガール」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
フラガールのネタバレあらすじ:起・町の再起をかけた取り組みとは
時は昭和40年。かつては炭鉱の町として栄えた福島県の常磐町では、エネルギー革命による石炭の需要の減少により、町は危機に陥っていました。
炭鉱会社の部長である吉本(岸部一徳)は、町の生き残りをかけて「常盤ハワイアンセンター」というレジャー施設を作ることを決意します。
わざわざ、東京からフラダンスの講師を呼びよせ、ハワイアンダンサーを募集するという熱の入れようでしたが、周囲の目は冷ややかなものでした。
フラガールのネタバレあらすじ:承・ハワイアンダンスの魅力に取りつかれた少女たち
紀美子(蒼井優)は、募集を見た親友の早苗(徳永えり)に誘われて、ハワイアンダンサーになることを志願します。
会場に集まった応募者に見せられたのは、田舎で生活するものにとっては刺激の強い、露出度の高いダンスでした。それを見た応募者の大半は帰ってしまい、残ったのは紀美子を含めたったの4人となりました。
一方、フラダンスの講師として呼ばれたまどか(松雪泰子)は、紀美子達にダンスを教える気などさらさらありませんでした。しかし、まどかの踊る姿に魅了された4人は、自分達にダンスを教えて欲しいとまどかに懇願します。
フラガールのネタバレあらすじ:転・周囲の反対を押し切り、練習に励む日々
紀美子達の熱意にほだされ、まどかも真剣にダンスを教えるようになります。猛特訓と努力の成果が実り、ダンスも上達します。メンバーも増え、ダンス教室は徐々に軌道に乗り始めます。
ある日、紀美子は、ダンスを習っていることを母親(富司純子)に知られてしまいます。母親の反対に反発した紀美子は、家を飛び出し、教室で寝泊まりしながらダンスを学びます。
そんな中、親友の早苗が北海道に引っ越すという悲しい出来事もおこります。早苗は紀美子に思いを託し、教室を去ります。
フラガールの結末:苦難の末、少女たちが手にした栄光
紀美子のダンスをする姿を見た紀美子の母は、娘のダンスにかける情熱を理解します。
いよいよ、ダンスの地方巡回が始まりました。新聞社の取材などもあり、地方巡回は好評を博します。公演を続けている中で、突然、メンバーの小百合(山崎静代)の父が事故に巻き込まれ、危篤となります。
しかし、小百合が公演を続けたことで、周囲の非難が殺到し、責任を問われたまどかは町を去ることを決意します。紀美子らが必死で止める中、周囲を説得してくれたのは紀美子の母でした。
ついに常盤ハワイアンセンターが完成し、紀美子達はダンスを披露します。紀美子の母も見守る中、素晴らしいダンスを披露したフラガールたちに、観客たちは惜しみない拍手を送るのでした。
以上、映画「フラガール」のあらすじと結末でした。
「フラガール」感想・レビュー
-
福島いわきの炭鉱町。町の人々は皆、炭鉱で働いて生活しているのですが、ちょうどエネルギーが石炭から石油へと移行する過渡期で、現場も次々と閉山してゆく所から物語が始まります。次第に町の活気は失われてゆき、どうにか人々に夢を持たせられないか、と町おこしとしてハワイアンセンターを作る話が出ます。寒い北国の地に常夏のハワイ、一見相反する要素であり、それでは採算が取れないと町中が反対する中、呼び込み要員としてフラダンサーを育てようという事になり、町の娘が集められます。露出度の高い踊りについてゆけず、残った娘たちは数人のみ。それでも東京からダンスの先生を呼び、レッスンが始まります。借金返済の為だけに仕事を引き受けた先生は始めこそやる気ゼロだったのですが、娘たちの思いを汲み取り、次第に心を通わせてゆく様が胸にじんと染み渡ります。やがて評判を呼び、ダンサー志望の娘たちも増え、益々レッスンに熱が入るのですが、そんな中ハワイアンセンター建設に反対する父親が、仕事を求めて夕張へ行く為、ダンスを辞めざるを得ない娘が出てきます。この娘の乗った引っ越しのトラックを、蒼井優が追っかけるシーンは涙無くしては見られません。もうひとつ、しずちゃん演じる、シャイで不器用な娘の将来を案じて彼女をレッスンに連れてきた父親が落盤事故で命を落としてしまう、その場面もリアルで辛い心地がしました。それでも生きがいを求めて懸命に踊り続ける娘たちの姿に、いつしか町の人々も心を動かされ、支える側に変わってゆくところが、やはりこの物語の一番の見どころです。そして娘役の蒼井優やしずちゃんの熱演もさることながら、娘たちとの交流により、やさぐれていた状態から自分を取り戻してゆくダンス教師を演じた、松雪泰子のハッとするような凛とした佇まいの美しさが印象的です。
蒼井優や松雪泰子、豊悦の演技が光っていて、昔の時代に女性たちが活躍していく様子が素晴らしく、見終わった時に、ああいい映画だったなと思わせてくれる映画です。この映画を観た後に、ハワイアンズに行ってしまいました。
田舎ならではの、新しいものを拒み、昔の考え方に執着する中で、若い女性たちが活躍し、周囲を認めさせていくこの映画は、私たちに新たなことを挑戦する勇気を与えてくれると思います。