阿修羅城の瞳の紹介:2005年日本映画。原作・劇団☆新感線の“中島かずき”、演出・“いのうえひでのり”で「いのうえ歌舞伎」と呼ばれるシリーズの演目名で、正式名称『阿修羅城の瞳 BLOOD GETS IN YOUR EYES』という舞台劇を映画化したものです。キャッチコピーは「宿命の恋が、最強の敵か」で、SFXを駆使して描いた絢爛豪華な映像美の中で、“鬼”と“鬼殺し”との悲恋と壮烈な戦いを描いたファンタジー・アクション・ホラー映画です。
監督:滝田洋二郎 出演:市川染五郎(病葉出門)、宮沢りえ(つばき)、大倉孝二(俵蔵)、皆川猿時(滝次)、二反田雅澄(奥田庄兵衛)、桑原和生(伊藤喜四郎)、内藤剛志(国成延行)、渡部篤郎(安倍邪空)、ほか
映画「阿修羅城の瞳」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「阿修羅城の瞳」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「阿修羅城の瞳」解説
この解説記事には映画「阿修羅城の瞳」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:1.プロローグ:鬼と鬼御門
江戸時代、町人文化が爛熟した文化文政、人の姿をした鬼が跳梁跋扈していました。その存在を恐れた幕府は、鬼を一掃すべく特殊な能力を持った精鋭部隊『鬼御門』を組織し、江戸の街にはびこる鬼退治を命じました。隊長・国成延行は、副長・病葉出門、安倍邪空らを従えて、日夜、鬼退治をしていました。しかし、副長・出門はある夜の鬼退治後から、一人、鬼御門から脱退してしまいました。その後、副長となったのは、出門をライバル視していた邪空でした。そしてある夜、国成は邪空を従え、鬼の世界と人の世界とをつなぐ「結界の橋」があるとされる場所に行きました。その時、突如、童女の姿をした鬼・笑死と、鬼たちを率いる美しき尼僧姿をした鬼・美惨が現れました。邪空は美惨に「いい度胸だ」と挑発しましたが、美惨は笑みを浮かべ、国成たちに言いました。「この江戸に…鬼が目覚めて幾星霜、跳梁跋扈はもはや止まらぬ。この戦い、そろそろ決着をつける時が来たと思うまで」と。それを聞いた国成は「さては阿修羅か…」と呟くと、美惨を斬りました。邪空もまた、笑死を斬りました。しかし、美惨、笑死は笑い声を残して、幻のように消え去りました。国成は邪空に「阿修羅、…鬼の王。いよいよ、復活が近い」と言うと、天空の赤い月を見上げ、笑いました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:2.その5年前、鬼の不夜城
「異界からの来訪者は千年の昔から人と同じ姿をして存在する。江戸の人はそれを『鬼』と呼び、恐れていた。恐れは憎しみを生み、鬼殺しの闇奉行『鬼御門』との暗闘が終わることはなかった。」江戸の町に、人の姿をした鬼が人を喰らうための、不夜城がありました。いつものように人の姿をした鬼たちが人を連れ込み、その不夜城は賑わっていました。するとそこに向かって3人の馬にのった黒装束の侍が駆け込んで来ました。「鬼御門だ~!」と誰かが叫び、街の人々は悲鳴をあげて逃げました。3人は鬼御門の隊長・国成、副長・出門、邪空でした。邪空は長い愛用の槍刀を振り回し、楽しそうに鬼たちを次々に斬り殺していきました。「鬼殺しの出門」と異名を持つ凄腕の出門も、鬼たちを見つけると次々に愛刀で切り殺していきました。普段は普通の人の姿をしている鬼たちですが、鬼の感情が露わになると、目は鮮やかな緑色の猫の目のようになり、歯は鋭く尖った緑色に光る牙になり、襲ってきました。しかし、国成、出門、邪空たちの前に、次々に斬られ、鮮やかな緑色の血を流し、退治されていきました。邪空はそんな鬼たちの緑色の返り血を浴び、狂気乱舞しました。邪空は斬り殺すこと自体に快感を覚えていました。出門はそんな邪空とは違い、好きで斬り殺している訳ではありませんでした。あらかた鬼退治が一段落ついたかと思われたとき、出門の前に赤い椿の花びらが舞い落ちてきました。出門はその花びらに導かれるように、ある古い寺に入りました。そこで出門は1人の幼い女児に遭いました。その女児は鬼でしたが、出門は彼女を斬れませんでした。女児は微笑みながら、出門の脳裏に「鬼は、お前だ。…殺して、殺して…殺さねば、お前…早く…早く…」と囁きました。出門は額から汗をだらだらと流し、衝動的にその女児を斬ってしまいました。この事を契機に、出門は鬼御門から一人、脱退しました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:3.「闇のつばき」の置き土産
時は過ぎ、出門は、中村座の歌舞伎役者として生きていました。出門は、その容姿と出で立ちから、千両役者となっていました。その頃、江戸の街を、「罪はすれども非道はせず」と呼ばれた盗賊団「闇のつばき」が賑わせていました。ある夜、出門は贔屓の花魁のところで一杯やり、小舟に乗り、隅田川をゆらりゆらりといい気分で帰っていました。すると、「闇のつばき」を追う奉行所たちの笛の音が鳴り響いていました。また、「闇のつばき」が現れたのです。そんな事に関心がない出門は、川に手を入れ「隅田川、水面に映りし、逆しまの…」と一句詠おうとしましたが、いい下の句が浮かびませんでした。その時、ふと出門が橋の下を見ると、「闇のつばき」の一味と思われる者が隠れていました。出門とその者との距離が次第に近付いてきました。そして、二人の目が合ったそのとき、二人は同時に何か衝動を受けました。驚いた「闇のつばき」の者は逃げようとしましたが、橋に覆面を引っかけてしまい素顔を晒してしまいました。それは美しい顔立ちの娘でした。その容姿を見た出門は、「いい女だ~」と思わず呟きました。その娘は逃げようとしましたが、慌てていたため、簪を落としてしまいました。隅田川の中に落ちようとした簪を、出門は瞬間的に拾い取りました。そして、詩の下の句を「闇のつばきの、置き土産かな」と詠い終えると、その娘に「預かっとくぜ」と言い、去っていきました。その娘は橋から逃げ、ある河辺に行きました。その娘は痛む右肩を川の水面に映し見ると、真紅の椿のような痣が赤く燃えるように光っていました。娘は驚きました。ちょうどそのとき、一人の町人が娘に近付いてきました。その町人は鬼でした。その鬼が娘を喰らおうとしたそのとき、娘の体から赤いオーラが出現、その鬼は一瞬のうちに下半身を溶かされて死んでしまいました。ちょうど偶然にも夜回りをしていた邪空は、それを目撃し、その娘に駆け寄りました。娘は戸惑いながら、とにかくそこから直ぐに逃げ出しました。水面に映った真紅の痣、それは「鬼宿の痣」でした。鬼の城でその痣を見た美惨と笑死、美惨は「阿修羅の蘇りが始まる」と呟きました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:4.妖術「緋の糸しばり」
その次の日、いつものように、出門は中村座で歌舞伎を演じ、観客たちを喜ばせました。しかし、座付け作家の四世鶴屋南北は「おもしろくねえ!」と言い放ちました。南北は「この目で見たものしか書かねえ」と言い、弟子の滝次と俵蔵に「お前ら、鬼御門にくっついて、鬼に喰われて、鬼になれ!鬼になったお前」と無茶苦茶なことを命じてきました。滝次と俵蔵は「勘弁して下せえ」と言いながら、逃げました。南北は傑作を書くためなら、どんな犠牲もいとわない貪欲な作家魂を持っていました。その頃、江戸に身軽でアクロバットな演技を見せ、見物人からお金を貰って生活する「渡り巫女」が来ていました。その中に、あの娘がいました。そうです。この「渡り巫女」が「闇のつばき」なのでした。そして、その娘はその一員でした。その娘はふと見た浮世絵で、昨夜、愛用の簪を拾った男が歌舞伎役者・病葉出門だと知り、その夜、出門の芝居小屋に潜入しました。そこで待っていたのは、簪を持った出門でした。出門とつばき、二人は暫し見つめ合うと、出門は「おめえとはどこかで会ったことがあるな」と呟きましたが、つばきはそれを否定し、簪を奪って、窓から逃げ出そうとしました。その時、出門はその娘を逃がすまいと、娘の右肩に手を当てました。すると、そこから赤い光が放たれ、出門は吹き飛ばされました。娘は驚きつつも、簪を持ち、逃げようとしました。しかし、出門は右手小指から赤く光る糸を出し、その娘の右手小指を縛り、娘の動きを封じました。驚く娘に、出門は「妖術、『緋の糸しばり』!見えねえ縁(えにし)の赤い糸!俺とお前が結ばれたっていう寸法だ!」と言い放ちました。出門は「緋の糸しばり」でその娘を強引にたぐり寄せ、「おめえとはどこかで会った。それを聞くまで、解かねえ」と小指を重ねました。その娘は「私は何も覚えちゃいない」と出門に呟きました。出門は真剣なその娘の瞳とその言葉で、妖術を解きました。その娘は窓から立ち去っていきました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:5.外道に落ちた邪空
その翌朝、邪空はあの娘が瞬殺した鬼の遺骸を、鬼御門の城に運び、隊長・国成に見せました。それを見た国成は「これは阿修羅復活の兆しに他ならぬ。阿修羅、目覚めるとき、逆しまの天空に浮落の城が…」と呟き、笑いました。その言葉を聞いた邪空は「阿修羅か…」と不気味な笑みを浮かべ、呟きました。そして、その夜、国成は邪空ら鬼御門全隊員を引き連れて、結界の橋の場に行きました。国成は妖術で、結界の橋を燃やし尽くし、鬼を一掃しようとしました。しかし、そこに現れたのは、美惨とその配下の鬼・阿餓羅と吽餓羅でした。美惨は、阿餓羅、吽餓羅に鬼御門隊員の一掃を命じました。国成、邪空、鬼御門隊員たちは、阿餓羅、吽餓羅と戦いますが、この二匹の鬼は強靱で、次々に隊員たちは斬り殺されてしまいました。美惨は「阿修羅はもうこの世に放たれておる。阿修羅を手に入れる者は人の世で最も強き男。それはそなたかも知れぬ。殺すつもりが目覚めを誘う」と語りました。それを聞いた邪空は、隊長・国成を背後から刺し殺しました。美惨は驚き、詰め寄ってくる邪空に「主殺しは外道の所行。…その身を外道に落として何を求める」と囁きました。邪空は美惨に国成の血のついた刀を向け、「阿修羅の力は俺のものだ」と言い放ちました。美惨はそんな外道に落ちた邪空の手助けをするため、斬り殺された鬼御門の二人を鬼として生き返らせ、邪空の配下とさせました。邪空は美惨から「鬼宿の痣」を見せられました。邪空にはその痣に見覚えがありました。それは鬼を瞬殺したあの娘が持っていたからでした。邪空は笑みを浮かべ、配下の二人の鬼を引き連れ、その娘を探しに行きました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:6.鬼殺しの出門と邪空
翌日、その娘は簪を取り返しましたが、5年より前の記憶は思い出せませんでした。娘はうずく右肩の痣を鏡で見ると、そこに笑死が突如現れ、「見~つけた。鬼だよ。あんたと同じ」と言いました。娘は驚き、逃げましたが、その行く手には、邪空たちが待っていました。邪空は娘を我が者にしようとしましたが、娘は必死で逃げ、出門の芝居小屋の奈落に逃げ込みました。ちょうどその時、出門は舞台上で南北の指導を受けながら、『東海道四谷怪談』の稽古をしていました。南北は出門の刀を持っての立ち回りを見て、「人、斬ったことがねえな」と不満を漏らしました。南北の指導のもと、出門は掛け軸の句を詠みました。「瀬をはやみ、岩にせかるる瀧川の、われても末に…」と出門が詠むと、奈落から赤ん坊の人形を抱いた娘がせり上がり、「逢はむとぞ思ふ…」と詠いました。出門は娘との再会に驚きつつも喜びました。しかし、それも束の間、追ってきた邪空たちが舞台にやって来ました。邪空は出門に「久しぶりだな。病葉出門。いや、鬼殺しの出門」と言いました。邪空はその娘が国成殺しの下手人と言いましたが、出門はその言葉を信じず、それを否定する娘のほうを信じました。出門は娘を守るため、邪空たちと一戦交えることになりました。出門は模擬刀で応戦、すぐに刀は折れてしまいましたが、「邪空!お前が相手となるとお芝居ってわけにはいかねえな」と言い、本気を出しました。出門は配下の鬼の刀を奪いました。凄まじい殺気を放ちながら邪空は、自らの配下の二人の鬼を斬り殺し、出門に斬りかかりました。出門と邪空、宿敵のライバル同士の壮烈な斬り合いが始まりました。その隙に娘はどこかに逃げ去りました。娘がいなくなったことを知った邪空は、出門との対決を止め、「いずれ、お前は俺の手で斬らねばなるまい」と言い残し、娘を探しに行きました。その一部始終を見聞きしていた南北は驚きました。出門の正体を知った南北は、出門とあの謎の娘との関係を物語にする決意をしました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:7.逆しまの縁
ただ阿修羅の持つ強大な力への野心を持つ邪空は、美惨に教えを請いました。美惨は邪空に「ただ強いだけではダメです。恋をしたことがありますか」と尋ね、邪空を誘惑、体を交えました。その頃、出門はその娘と偶然、出会いました。出門はその娘に名を聞くと、娘は「つばき…かな」と答えました。つばきは自分が5年より前の記憶がないことを出門にあかし、「自分で自分のことがわからないのは嫌だ」と言いました。出門はそれを聞き、つばきに「逆しまだ。…お前は5年より前を取り戻したい。俺は5年より前の自分を消し去りたい」と語りました。つばきは出門に「あんたと会ったときからできちまった」と言い、右肩の痣を見せました。出門には見覚えはありませんでした。出門がその痣に触ると、つばきは痛がりました。何かに脅えているようなつばきを見た出門は、「俺とお前は逆しまの縁だ。…俺が引き受けてやるよ。お前とこの痣の一切合切をな」と言い、抱きしめました。つばきが出門に心を開き始めると、痣はより紅く、より鮮明に大きくなり、つばきは痛がりました。つばきは何かを思い出してきました。するとつばきの体から紅い炎のようなオーラが浮き上がり、消えました。それを見た出門は驚きました。つばきが鬼でした。つばきは出門のもとから、逃げました。出門はつばきを追いました。つばきは途中、笑死と遭遇し、逃げますが、笑死は執拗に追いかけ、つばきを結界の橋まで誘いました。そこで待っていたのは、邪空でした。邪空はつばきのみぞおちを打ち、眠らせ、鬼の城に連れて行きました。つばきは気がつくと、美惨と邪空がいました。美惨からつばきは自分が阿修羅という鬼であることを聞かされました。つばきを追い、出門は鬼の城に乗り込みました。待っていたとばかりに邪空は、出門に斬りかかりました。つばきを取り戻すべく、素手の出門は邪空の刀をたくみに交わしつつ、応戦しました。するとそこに南北が駆け込んで来ました。南北の姿を見た出門は驚き、一瞬隙ができました。邪空はその隙を逃さず、出門の背中を斬りました。深手を負った出門に、邪空は止めを刺そうとしました。しかしそのとき、つばきが出門を命をかけて守ろうとしました。そんなつばきの姿を見た美惨は、邪空を制しました。美惨は駆け込んできた南北に、つばきと出門を帰し、一夜を共にさせよと命じました。南北は美惨の言われた通り、つばきと出門を芝居小屋に連れて帰りました。邪空は欲求不満のまま、刀を収めました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:8.つばき、覚醒
傷ついた出門をつばきは献身的に看病しました。つばきは気がついた出門に「私は鬼?」と尋ねました。出門は「戯れ言に惑わされるな」とつばきを慰めました。出門も鬼御門の時代の自分を呪い、「お前が鬼なら、俺も鬼だ」とつばきに語りました。二人の心の距離は一気に縮まり、二人は一夜を共にし、結ばれようとしました。その中で、つばきは、過去の記憶が蘇ってこようとしてきました。恐ろしくなったつばきは、自分でも聞いたことのない呪文を唱えだし、出門から逃げるように去って行きました。作家魂に燃える南北は、その一部始終をこっそりと見ていました。にわかに不気味な暗雲が立ちこめる江戸の街を、つばきは呪文を唱えながら彷徨い歩きました。そして、その声を頼りに、傷を負いながらも出門はつばきの跡を追いました。つばきが向かった先は、5年前の鬼の不夜城跡でした。つばきは5年前、出門が童女を斬った古寺に入っていきました。出門もそこに辿り着きました。出門は5年前の鬼御門時代の自分を語り明かしました。それを聞いたつばきは、失っていた記憶を鮮明に思い出しました。つばきは自分は鬼で、5年前に自分を斬り殺した男が出門であったこと思い出しました。出門は、つばきがあの鬼の童女だと悟りました。出門はにわかには信じられませんでした。しかし、つばきは全身から紅い炎のようなオーラを放ち始めました。つばきの鬼宿の痣に出門が手を触れると、出門の掌がまた熱く燃え、つばきも痛がりました。つばきは「鬼になんてなりたくない」と言い、出門の胸に飛び込みました。出門はつばきに「一人にはさせない」と抱きましたが、つばきは紅い炎のオーラの中、覚醒し、突如として姿を消しました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:9.阿修羅王、誕生
出門の右掌にはつばきの鬼宿の痣の痕が火傷のように残りました。出門はつばきを追い、結界の橋のたもとに行きました。つばきは「恨みまするぞ。出門殿。…すべては運命。すべてはあなたに恋したがゆえ」と出門に淋しそうに語ると、初めて出現した結界の橋を渡り、鬼の世へ去って行きました。傷ついた出門は、その場で見守るしかできませんでした。そんな出門の前に現れたのは、美惨と配下の阿餓羅と吽餓羅でした。美惨はつばきが阿修羅であること、阿修羅にしたのは出門であることを語りました。そして、転生した阿修羅は恋心が強ければ強いほど、その力が強くなると美惨は語りました。怒りに燃える出門は、美惨を斬り殺そうとしますが、阿餓羅と吽餓羅に阻まれました。そのとき、阿修羅王となったつばきが、現れました。必死に「つばき」と呼ぶ出門に、阿修羅王となったつばきは、やって来た邪空に出門を斬り殺すように命じました。噛ませ犬扱いされた邪空は、憤る出門に斬りかかりましたが、憤怒する出門の刃はさえ渡り、邪空は一刀のもとに切り倒されました。出門はつばきに叫びました。「今の一太刀で俺も鬼だ。…お前が阿修羅になろうと、俺とお前の赤い糸は切れねえんだよ!」と。するとつばきは「あなたを恋する想いが、我が身を鬼に変えたなら、…出門殿を呪おう。人も鬼も地獄に堕ちるがよい!あなたのことを恨みますぞ」と出門に言い返し、出門を挑発しました。出門は阿修羅王となったつばきに、「首が飛んでも~。動いて、見せ~りゃ~!」と大見得を切りました。阿修羅王となったつばきはそんな出門の姿を見て、消えていきました。深手を負った出門はその見得のあと、意識を失い倒れてしまいました。こっそりと跡をつけ一部始終を見ていた南北は「おもしれえ!」と言いながら、江戸の空に目を向けると、暗雲の中から浮落の城「阿修羅城」が出現してきました。南北は傷を負った出門を連れて帰り、傷の手当てをしました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:10.壊滅する江戸
阿修羅城の中、美惨は切り倒された邪空を連れ帰りました。邪空は死んではいませんでした。宿敵・出門に倒され、虫けら扱いされ憤る邪空は、阿修羅に出門を倒す力をくれと懇願しました。阿修羅はそんな邪空にあやかしの生を与えました。阿修羅王となったつばきは、美惨にすべての鬼に号令をかけ、江戸を火の海にせよと命じました。阿修羅王の念で、阿修羅城から江戸の街に火の玉が次々に撃ち込まれました。江戸の街は火の海と化し、人々は逃げ惑いました。そこに人に化けていた鬼たちが、正体を現し、人々を襲っていきました。江戸は魔の都に陥ろうとしていました。そんな中、南北だけが「おもしれえ」と言い、逃げようとしませんでした。炎に包まれる江戸の街を見ながら、出門は阿修羅王となったつばきを倒すべく、身支度を整え、結界の橋のたもとへ行きました。そこで待っていたのは、作家魂に燃える南北でした。南北は事の顛末を見ようとしましたが、出門は「これは奴との秘め事」と言い、笑死の誘いで、単身、真紅の椿の花びらで彩られた結界の橋を渡り、阿修羅城へと乗り込みました。南北は出門の背中を見送り、出門の名を後生まで残す大作品を書くと叫びました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:11.阿修羅城での死闘
不気味な阿修羅城に入った出門は、次々に襲いかかってくる鬼たちを斬り殺して、中へ中へと入って行きました。阿修羅王となったつばきは、それを見ていました。奥の間に入った出門を待っていたのは、美惨と阿餓羅と吽餓羅でした。出門は阿餓羅と吽餓羅と刃を交え、二匹を斬り殺しました。出門は美惨を追いましたが、その前に立ちはだかったのは、切り倒したはずの邪空でした。あやかしの生を受けた邪空と、出門は再び、死闘となりました。邪空の腕は不思議と上がっていました。出門は邪空を切り倒しましたが、執念の鬼となった邪空の口車に乗せられ、美惨に刺し殺されそうになりました。そのとき、突然、阿修羅王が出現しました。一瞬、隙を見せた邪空と美惨を、出門は斬り殺しました。邪空は「所詮、あやかしの生よ」と言い残し、息絶えました。阿修羅王は美惨の道連れに邪空を蘇らせたのでした。美惨はそれを悟り、笑いながら邪空の元に行き、「救いとは滅びの道。鬼は滅びなければ救われぬと言うのか…」と阿修羅王に言うと、自ら命を絶ちました。
阿修羅城の瞳のネタバレあらすじ:12.阿修羅の最期
阿修羅王のいる部屋に入った出門は、「つばき」と呼び、美惨を殺したのはどういうつもりだと聞きました。阿修羅王となったつばきは「つもりがあるとするならば、積もりに積もったあなたへの恨み。…殺したいほど」と出門に語ると、その姿を現しました。阿修羅王となったつばきは、出門に刃を向け、出門を斬り殺そうとしました。出門はそんなつばきに「手練手管で逝かせてやるぜ!あの世へな!」と言うと、阿修羅王となったつばきと死闘となりました。阿修羅王となったつばきは超人的な強さで、出門は苦戦を強いられました。そして、出門は阿修羅王に刀を奪われ、それで腹を刺されてしまいました。出門は「鬼殺し」と異名ととった意地で、立ち上がり、阿修羅王に立ち向かいました。出門は妖術「緋の糸しばり」で、阿修羅王の右肩の痣を縛りましました。出門の右手の平についた痣が赤く光を放ちました。出門は阿修羅王となったつばきに「俺も逆しまの阿修羅だ。…逆しまの縁でしっかと結ばれているのさ!」と見得を切りました。しかし、阿修羅王となったつばきは簡単にこの妖術を解き、出門を吹き飛ばしました。出門はつばきがさしていた簪を最後の武器にして、必死で阿修羅王の中のつばきに語りかけました。奇跡的に阿修羅王の中のつばきが蘇り、「瀬をはやみ、岩にせかるる瀧川の、われても末に、逢はむとぞ思ふ」と出門と二人で呟くと、出門は簪でつばきの背中を刺しました。背中から赤い炎のようなオーラが放出し、二人はそのオーラの中で、心中するかのように、息絶えました。そして、同時に天空の阿修羅城も崩壊していきました。
阿修羅城の瞳の結末:「生きてるところが極楽だ」
江戸の街に立ちこめた暗雲が晴れ、鬼たちがいなくなり、江戸の街にまた平穏が訪れたある春の日、結界の橋のたもとで、鶴屋南北は筆を走らせていました。南北は、「生きてるところが極楽だ」と呟きました。その横には生き残った笑死がいました。南北は、出門たちと鬼との死闘の物語『鬼殺逆屍魔浮城』を執筆しました。
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