カラーパープルの紹介:1985年アメリカ映画。アリス・ウォーカーのピュリツアー賞受賞作となった同名小説をスティーヴン・スピルバーグが映画化したヒューマンドラマです。20世紀前半を舞台に、父により引き裂かれ数奇な運命を歩んだ黒人姉妹の40年を描きます。
監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演者:ウーピー・ゴールデンバーグ(セリー・H・ジョンソン)、ダニー・グローヴァー(アルバート・“ミスター”・ジョンソン)、マーガレット・エブリー(シャグ・エブリー)、オプラ・ウィンフレイ(ソフィア)、ウィラード・プーフ(ハーポ)、アコーシア・ブシア(ネティ)ほか
映画「カラーパープル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カラーパープル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「カラーパープル」解説
この解説記事には映画「カラーパープル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
カラーパープルのネタバレあらすじ:起
1909年、アメリカ・テネシー州の田舎町。14歳の少女セリー(デスリタ・ジャクソン)は父から性的暴力を受け、望まぬ妊娠をしてしまいます。やがてセリーは女の子を出産しますが、セリーは我が子を一度も抱くことなく父は赤ん坊を他の家に売り飛ばしてしまいました。この事に衝撃を受けたセリーの母は程なく亡くなり、父は新しい妻を迎えました。父の結婚式に参加したミスター(ダニー・グローヴァー)はセリーの妹ネティ(アコーシア・ブシア)に惚れていましたが、姉妹の父はネティの代わりにセリーをミスターの元に強制的に嫁がせます。ミスターは亡くなった先妻との間に3人の子がおり、高圧的なミスターはセリーや子供たちに当たり散らしては奴隷のようにこき使っていました。そんなある日、父に襲われそうになったネティがセリーの元に逃げ込んできました。ミスターがネティに手を出すことを恐れたセリーは逃げるように忠告します。そしてセリーの不安が的中し、ミスターはネティを襲おうとしますが抵抗され、激昂したミスターはネティを追い出してしまいます。姉妹は手紙を書くことを約束して引き裂かれていきました。
カラーパープルのネタバレあらすじ:承
1916年。成人したセリー(ウーピー・ゴールデンバーグ)は精神的にも強くなっていました。ミスターの連れ子ハーポ(ウィラード・プーフ)はソフィア(オプラ・ウィンフレイ)と付き合っており、彼女が妊娠したのを機に結婚しました。やがてソフィアの尻に敷かれるようになったハーポはミスターに相談すると、ミスターは自分がそうしたようにソフィアにも暴力を振るえと言い出しました。ハーポはミスターの言う通りにし、嫌がったソフィアは子供を連れてハーポの元から去っていきました。一方、セリーはネティからの手紙を待ち望んでいましたが一向に届きません。そんなある日、ミスターの元恋人でR&Bシンガーのシャグ(マーガレット・エブリー)がミスター家に転がり込んできました。しばらくミスター家に居候することになったシャグはセリーと打ち解けていきました。
カラーパープルのネタバレあらすじ:転
1922年。ジャズの虜になったハーポは音楽仲間たちと酒場を開業、すっかり体調の良くなったシャグは酒場のステージに立ち、面倒を見てくれたセリーのために「セリーのブルース」を捧げました。セリーは深い喜びに包まれたその時、ソフィアが新恋人と共に酒場に来店、ハーポの新恋人と口論になったことから大騒動になってしまいます。その後、家に戻ったセリーはシャグに自らの過去を打ち明け、シャグはセリーに沢山の愛情を注ぎました。やがてセリーはシャグについてミスター家を出ようとしましたがミスターに阻まれ、シャグはミスターの家から出ていきました。月日が流れた1936年、セリーはグラディ(ベン・ギロリ)という男と結婚したシャグと再会を果たしました。シャグはミスターの目を盗んで郵便物を受け取ります。それはネティからの手紙でした。やがてミスター家の廊下の床下からは、ミスターがネリーに渡さず隠していた、ネティからの手紙が大量に発見され、セリーは笑顔を浮かべました。ネティはセリーの最初の子供を引き取った裕福な夫妻の援助を受けて教師となり、結婚して子供も生まれていました。その後ネティは夫妻と共にアフリカへ渡っていたのでした。
カラーパープルの結末
ネティの生存に救われたネリーはこれまで自分を抑圧し続けていたミスターへの恨みが重なり、ミスターを殺そうとしましたが駆け付けたシャグに制止されました。セリーの苦しみを見かねたシャグは彼女を都会に連れていくことを決意、セリーは初めてミスターに怒りをぶつけました。セリーはミスターに別れを告げ、シャグと共に田舎町を去っていきました。数年後、セリーとネティの父が亡くなり、亡き母の遺言により実家の権利を得たセリーは再びテネシー州に舞い戻って店を開きました。シャグもセリーの住む町に移住、ソフィアと復縁を果たしたハーポの酒場で歌う傍ら、長年疎遠になっていた父とも和解を果たしていました。そしてある日、シャグたちと共に暮らすセリーの元に、アフリカから帰ってきたネティが家族を連れて訪ねてきました。約20年ぶりに再会を果たした姉妹は夕陽を背に、いつかのように戯れ合っていました。
この映画「カラーパープル」は、黒人女流作家アリス・ウォーカーのピュリッツァー賞を受賞した原作に忠実に、黒人女性セリーの40年にわたる”苛酷な生”を、美しい映像の中に描き出した、スティーヴン・スピルバーグ監督の名作です。
この映画の公開当時のスピルバーグ監督は、「ジョーズ」や「E・T」等の作品でエンターテインメント系作品のヒットメーカーでしたので、意外な感じで受け止められていました。
確かに彼の作品は、映画の楽しさに満ちていますが、現代文明に対する”鋭い風刺”があることを忘れてはいけないと思います。
それは理不尽な暴力や抑圧への嫌悪、戦いであり、この現実とは違った別の世界への夢想であり、人間の救済です。
この映画は、ある黒人姉妹の強い絆と不滅の愛で彩られた40年の歴史を、一大叙事詩として描きながら、人間が自分自身に目覚める、精神的な成長の道程を深く追求した、いつまでも心の奥に残り続ける作品です。
この映画での主人公セリーをみまうのも、理不尽な暴力です。
“父”の子を二人も産み、暴君としかいいようのない男と結婚させられ、召使のごとき人生を送るセリーに苦難をもたらすのは、白人による差別ではなく、横暴な黒人男性です。
苦しみの中から人間として目覚めていくセリー。
そして、セリーを初めとする黒人女性たちは男たちに反逆し、自立を獲得するのです。
この物語を、”白人で男”のスピルバーグ監督が作ったのです。
そこに浮かび上がるのは、人種とか性の違いを超越しうる人間の苦しみに対する、繊細な感受性であり、怒りであり、人間の善意への信頼なのです。
そして、その精神は、原作と映画の両方に通底しているのです。
もちろん、黒人の苦しみの底にある、白人による差別も告発されています。
特に、猛烈な女性ソフィアの、白人の市長をなぐって10年近い監獄暮らしになるというエピソードは鮮烈で、彼女をメイドにする市長夫人の偽善者ぶりも痛烈に批判されています。