草原の輝きの紹介:1961年アメリカ映画。世界恐慌の嵐が吹き荒れる20世紀前半を舞台に、愛し合いながらも翻弄されて引き裂かれていく若い男女の悲恋を描いた作品です。
監督:エリア・カザン 出演者:ナタリー・ウッド(ウィルマ・ディーン・“ディーニー”・ルーミス)、ウォーレン・ベイティ(バット・スタンパー)、パット・ヒングル(エース・スタンパー)、ゾーラ・ランパート(アンジェリーナ)、サンディ・デニス(ケイ)ほか
映画「草原の輝き」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「草原の輝き」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「草原の輝き」解説
この解説記事には映画「草原の輝き」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
草原の輝きのネタバレあらすじ:起
1928年、カンサス。高校3年生のディーン(ナタリー・ウッド)とバット(ウォーレン・ベイティ)は滝の見える丘に車を停めて愛し合っていましたが、どうしてもキス以上のことに踏み切れませんでした。ディーンの母親は「男は尻軽な女を軽蔑するものだ。そういう女とは結婚したがらない」とまで言い切る程の保守的な人物であり、セックスに嫌悪感を示していることからどうしてもディーンはあと一歩踏み切れないのです。一方、バットの父で石油業者のエース(パット・ヒングル)は我が子がフットボールの選手であることを誇りに思っており、バットを名門エール大学に進学させようと考えているのですが、このことはバットにとって精神的な重みになっていました。
草原の輝きのネタバレあらすじ:承
バットは、姉ジェニー(バーバラ・ローデン)が家出して町の男たちに振り回されるようになったきっかけである父エースを快く思ってはおらず、どうしてもディーンの愛が欲しいのですが彼女はなかなかそれを受け止めてはくれないのです。元々ディーンとの交際に反対していたエースはバットに「女というものは時々気晴らしに遊ぶ女と、結婚する女の2種類がいるんだ。感情に任せて、責任取らされるようなことはするなよ」とアドバイスを送ります。ディーンも母に反発するかのように自らバットに身を捧げようとしましたが、その頃、鬱積した気持ちを抑えきれないバットは遂に同級生ファニタ(ジャン・ノーリス)の誘惑に負けてしまいました。
草原の輝きのネタバレあらすじ:転
バットとファニタの噂は瞬く間に学校中に広まり、彼氏を寝取られた形となったディーンは同情と好奇の視線に晒されることになったのです。学校の授業でワーズワースの詩「草原の輝き」を朗読することになったディーンはもはや感情を堪えきれず、泣きながら教室を飛び出し、滝に身を投げてしまいます。駆け付けたバットに助けられて何とか九死に一生を得たディーンでしたが、精神的なダメージは強く、精神病院に入院することになります。やがてディーンは病院で知り合った若き医者ジョニー(チャールズ・ロビンソン)と知り合い、打ち解けていきます。
草原の輝きの結末
一方、父エースの望み通りエール大学に入学したバットでしたが、学業には全く身が入らず退学寸前までに追い込まれ、酒に溺れていたところに行きずりのレストランで働くイタリア人女性のアンジェリーナ(ゾーラ・ランパート)と恋に落ち、そのまま結婚します。いうイタリア娘と結ばれてしまう。父エースは1929年に勃発した世界大恐慌の煽りを受けて会社の経営も傾き、遂には心身を病んで自殺してしまいます。その後、心の傷も癒え、来月にジョニーと結婚することが決まったディーンは、バットが大学を辞めて田舎で牧場を営んでいることを知り、訪ねることにしました。バットはアンジェリーナとの間に子供をもうけており、つつましく幸せに暮らしていました。ディーンとバットは静かな気持ちで再会を果たし、交わす言葉もなく静かに別れました。
草原の輝き」は、名匠エリア・カザン監督が、1920年代のアメリカ中西部を舞台に、青春の愛と性の苦悩を描いた作品ですね。
恋人に捨てられ精神錯乱になった彼女が、鏡の前で髪を切る。
教室でワーズワースの詩を読まされた彼女が、詩の途中で泣き崩れる。
いつも白い清潔な服を好んでいた彼女が、恋人に捨てられた後、急に赤い服と赤いネックレスを身につける。
そして、大人になって幸福な結婚をしてからは、再び白いドレスと白い帽子に戻っていく——–。
この映画の公開当時、23歳だったナタリー・ウッドは、本当に綺麗でした。
決して幸福なヒロインとは言えなかったが、それが逆に彼女の美しさを引き立てていたと思います。
同じ子役出身の美人スター、エリザベス・テイラーも「愛情の花咲く樹」で精神異常になるヒロインを演じて、演技開眼したと言われていますが、それはこの映画のナタリー・ウッドにも言えると思います。
ジェームズ・ディーンと共演した「理由なき反抗」に出演した時のナタリー・ウッドは、高校生の可愛らしさだけでしだが、この「草原の輝き」では、10代から20代への大人の成長を瑞々しく演じて、それまでの可愛らしさに、落ち着いた美しさが加わって、惚れ惚れする程の魅力に溢れていると思います。
このイギリスの詩人ワーズワースの詩句からとった「草原の輝き」という映画は、1920年代後半のカンサス州の田舎町を舞台にして始まります。
高校生のナタリー・ウッドとウォーレン・ベイティは、愛しあっていますが、小さな田舎町の古い因習や厳格な家庭のモラルに縛られ、自由に自分たちの気持ちをぶつけ合う事が出来ません。
「欲望という名の電車」「エデンの東」のエリア・カザン監督は、この1920年代の不幸なラブ・ストーリーを重たく、重たく撮っているような気がします。
エリア・カザン監督は、「欲望という名の電車」や「ベビイドール」を見てもわかるように、人間のアブノーマルな関係を重視する監督だけに、この映画でも、石油事業にしか関心のない俗物の父親や、フラッパーな姉、窓からいつも隣人たちの生活を盗み見ている老嬢など、”屈折した人間”を主人公の周りに配して、”重苦しい田舎町の青春”を描いています。
しかし、そうした重苦しさを若いナタリー・ウッドの肉体が、見事に裏切り、より”健康的な青春映画”になっているのが、我々観る者にとっての救いになっているような気がします。
アメリカ中西部の田園風景が美しいのと、大恐慌の打撃が描かれるなど、アメリカ現代史の一断面がうかがえるのも見どころになっていると思います。
この映画の原作は、「ピクニック」「バス停留所」のウィリアム・インジ。
映画ファンとしては、主人公二人の同級生役でサンディ・デニスが、そしてウェイター役であの「レイジング・ブル」のモデルとなったジェイク・ラモッタが出演していたのが懐かしく感じましたね。