ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区の紹介:2012年ポルトガル映画。ポルトガル、ギマランイス地区を舞台に、四人の巨匠たちがそれぞれに繰り広げるショートフィルムのオムニバス。
監督:アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラ 出演:イルッカ・コイヴラ、ヴェントゥーラ、リカルド・トレパ、ほか
映画「ポルトガル、ここに誕生す」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ポルトガル、ここに誕生す」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区の予告編 動画
映画「ポルトガル、ここに誕生す」解説
この解説記事には映画「ポルトガル、ここに誕生す」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のネタバレあらすじ:バーテンダー
ギマランイス地区の古いカフェのバーテンダーは、今日もフロアのタイルを磨き、調理をし、テーブルを整えお客を待つ。客の入りの芳しくないことが気になるのか、近くに出来た新しいカフェテリアの看板を見て、自分のカフェの看板にメニューを書き足してみるが、客足は変わらず、そのカフェテリアに足を運び、そこで出すスープを飲んでみることにした。夜、身支度を整えた彼は、花束を用意して、バス停へ。しかし降りて来る人の中に待ち人はいなかった。帰宅した彼は、隣から聞えて来るサッカーの実況を聞きながら、明け方、戸口に皿を置いた。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のネタバレあらすじ:スウィート・エクソシスト
街を見下ろす丘に、黒人たちが思い思いに集まっている。その中にいるヴェントゥーラは、気がつくと病院の中にいて、黒塗りの兵士と一緒にエレベータに乗り込んだ。そんな彼に、ポルトガルのカーテーション革命の時の記憶がよみがえってくる。リスボンは閉鎖され、クーデターで仕事は休みになった。あれは黒人同士の戦いだったと、同じ時期に起こったポルトガルの植民地、カーポヴェルデの独立の話がオーバーラップする。弾を込める兵士に、黒人を撃っていたら出世だったのにと零すヴェントゥーラ。そんな彼に、諦めないでと呼びかける声が聞こえた。エレベーターから出てきた彼は、医者に行ってきたと、元いた丘の岩場に戻った。ヴェントゥーラ、諦めないでと呼びかける声。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のネタバレあらすじ:割れたガラス
1845年創業のリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場、20世紀初頭に欧州で第二の工場に成長た物の1990年経営危機に陥り、2002に閉鎖した。現在は割れた窓ガラス工場と呼ばれている。賑わっていた当時の写真を飾る食堂で、映画のテストと称して、インタビューが行われた。 工場の機械で何度も手指を汚した男性、ここで働く母が弟に授乳するために負ぶって通っていた女性、事務の仕事に就きたかったが親に反対され実家の畑ではなくこの工場へ来た女性、ここで馬車馬のように働かされたが神を信じているからあの世で報われるだろうと言う男性、結婚をすっぽかしフランスへ渡りここへ戻って来た女性、仕事中に工場の騒音で鼓膜を壊した女性、工場が手作業から電子制御に変わり、リストラが行われ、工場は安い労働力を求めアジアに行ってしまい、これからの自分達労働者の行き場に絶望する男性、ここで働いた後従軍しフランスのルノーの工場で定職に就いたものの、故郷に戻って来た男性、仕事中ずっと夢想をしていた女性は幸せが何なのか77歳にもうすぐなる今も分からないと語る。食堂に飾られた写真については、悲しみや貧困、当時の労働環境の劣悪さに言及する者もいたがそれと同時に、生きるための仕事がある喜びや、彼らの目に品性を見出す者もいた。ヴァルデマール・サントスは、今すべての仕事はヴァーチャル、仮想で、経済も貨幣もすべてが仮想、今の時代はインターネットが全て行っていると語った。最後のアコーディオン奏者は祖父母と両親がこの工場で働いていてたおかげで、自分は大学まで行けたうえ、音楽家になれた。悲しみが去るまでアコーディオンを弾くと言って写真に向かってアコーディオンを弾いた。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のネタバレあらすじ:征服者、征服さる
とある観光バスのツアー。城壁を見ながらこの街の歴史を語るアナウンスが流れる。ポルトガルは1140年に独立し、初代ポルトガル王はここで生まれた。ガイドは銅像が見下ろす最古の広場へ観光客を案内し、広場にある最古の物や、この広場を囲む古い家並みの説明をし、ポルトガルの覇者アルフォンソ・エンリケスの像へ案内していった。観光客が写真を撮っていると、騎兵隊が城内から出てくる。彼らが像を破壊するのが目的ではなく、写真を撮っているだけだとわかると戻って行くと説明するガイドは、写真を撮っている間、征服者が征服されると皮肉を言って、ガイドは肩を竦めた。
以上、映画「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」のあらすじと結末でした。
ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のレビュー・考察:過去の栄華の残る場所
四つの物語は、それぞれの視点と角度から、このギマランイス地区の風景を通して過去について語る。カフェテリアのバーテンの物語も、古めかしい昔かたぎの店もかつては賑わっていたのだろうと思わせる。かつて大航海時代の先駆けとなったポルトガルは交易や植民地を持つことで栄華を極めた。しかし時代は変わり、植民地は失い、生産の拠点は労働力の安いアジアへ流れ出し、ポルトガルには現在失業率など問題が山積し、未来の陰りに不安が渦巻く。そんなポルトガルの最古の地、ギマランイス地区を映すことは、過去の栄華に縋るのではなく、過去の誇りをもう一度取り戻そうとしているのではないだろうか。
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