質屋の紹介:1964年アメリカ映画。強制収容所で妻子を殺され、心を閉ざして生きてきた質屋の店主がある事件に遭遇し、人間らしい感情を取り戻していくまでを描いた社会派ドラマ。監督は「十二人の怒れる男」のシドニー・ルメット、主演のロッド・スタイガーが第14回ベルリン国際映画祭において男優賞を獲得しています。
監督:シドニー・ルメット 出演者:ロッド・スタイガー(ソル・ナザーマン)、ジェラルディン・フィッツジェラルド(マリリン・バーチフィールド)、 ハイメ・サンチェス(ヘズス・オルティス)、マルケータ・キンブレル(テッシー)、バルーク・ルメット(メンデル)ほか
映画「質屋」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「質屋」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「質屋」解説
この解説記事には映画「質屋」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
質屋のネタバレあらすじ:起
亡き妻の妹家族ともに暮らしているユダヤ人の中年男性ソル・ナザーマンはニューヨークの片隅で質屋を営んでます。スラム街の黒人ボス、ロドリゲスの出資で成り立っている質屋でナザーマンは仕事に生き甲斐を見い出すわけでもなく、ただひたすら金儲けに徹しています。店には様々な事情を抱えた客がやってきて、持ち込んだ品をなんとか高く買ってもらおうと掛け合いますが、ナザーマンは情に流されることもなく極めて機械的に対応します。
質屋にはオルティスというプエルトリコ出身の青年が働いています。オルティスは元大学教授だったナザーマンを心から尊敬し、彼から商売について学びたいと考えています。しかしナザーマンは商売を成功させる秘訣は自分の欲望さえ捨て、ひたすら金を増やすことに執着することだと助言します。オルティスはナザーマンの腕に彫られた数字が何を意味するのか分かりませんでしたが、ナザーマンはユダヤ人であるが故に強制収容所での生活を強いられた過去を背負っていました。そしてこの経験がトラウマとなり、感情を押し殺して生きるようになってしまったのでした。
質屋のネタバレあらすじ:承
仕事からの帰り道、黒人達の喧嘩の現場を目撃したナザーマンはある光景を思い出します。それは収容所で親友だった男が脱走に失敗し、殺害されたという忌まわしい過去の記憶でした。亡き親友の妻テッシーを金銭面で援助しているナザーマンは彼女の家を度々訪ねていますが、親友の父メンデルは死んでいった仲間達のことを忘れ、金儲けに走るナザーマンを事あるごとに批判します。
ナザーマンの質屋を訪ねてきた社会学者の中年女性バーチフィールドは彼が強制収容所に入っていたことを知り、ナザーマンに関心を寄せ始めます。彼が抱える孤独を理解しようと歩み寄るバーチフィールドに対して、ナザーマンは収容所で起きたことの何を知っているのだと食って掛かります。ナザーマンは自分の人生には関わらないで欲しいとバーチフィールドを拒絶するのでした。さらにオルティスから人生で大切なものは何かと尋ねられたナザーマンはこの世で信じられるものは金だけだと言い放ち、オルティスを失望させるのでした。
質屋のネタバレあらすじ:転
ある日黒人の娼婦が閉店間際の店にやってきて、品物とともに身体を売ろうとナザーマンを誘惑し始めます。娼婦の裸体を見たナザーマンは収容所でドイツ兵に凌辱され死んでいった妻の姿を思い出し、苦痛に襲われます。娼婦からロドリゲスが売春宿の経営にも関わっていることを知ったナザーマンは彼と手を切ろうと考え、ロドリゲスの自宅に乗り込みます。しかし家のローンやテッシーの生活費までもロドリゲスに頼ってきたナザーマンは結局彼に背くことはできないのでした。
街を彷徨っていたナザーマンは気が付けばバーチフィールドの自宅の前に来ていました。そしてナザーマンは愛する家族を奪われ、自分だけが生き延びてしまったことに罪悪感を感じてきたと打ち明けます。ナザーマンは妻を失っただけではなく、強制収容所に向かう車の中で愛息デイヴィッドを圧死により亡くしていたのでした。それからのナザーマンは金儲けにすら興味を失い、一層投げやりな生活を送るようになります。オルティスはそんな彼を心配しますが、ナザーマンはオルティスを鬱陶しがり、他の黒人同様にクズだと吐き捨ててしまいます。ナザーマンの言葉に傷ついたオルティスは町のチンピラ達に唆され、質屋を襲う計画を企ててしまうのでした。
質屋の結末
ナザーマンが一人で店に立っているとオルティスやチンピラ達が店にやってきます。そして銃を突きつけて金庫を開けるようナザーマンを脅しますが、生きる意味を見失っているナザーマンは死を恐れる気配すら見せません。ナザーマンの人を食ったような態度に苛立ったチンピラの一人が銃を暴発しますが、咄嗟にナザーマンを庇おうとしたオルティスの腹に弾が命中してしまうのでした。ナザーマンは命を投げ出し自分を救ってくれたオルティスの思いをようやく知りますが、やがてオルティスはナザーマンの腕の中で息を引き取るのでした。
ナザーマンの頭の中には救えなかった家族の顔や困っているにも関わらず情けをかけようともしなかった客の顔が次々と浮かんできます。彼の心は行き場のない怒りと悲しみで打ち震えていました。そして絶望感を抱きながらニューヨークの街を彷徨い続けるのでした。
以上、映画「質屋」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する