上海から来た女の紹介:1947年アメリカ映画。鬼才オーソン・ウェルズが製作・監督・脚本・主演を務めたサスペンス映画。共演は撮影当時ウェルズの妻であった40年代を代表するセックス・シンボル、リタ・ヘイワース。フィルム・ノワールの代表的作品の一つとして数えられ、特にミラーハウスのシーンは後に多くの映画でオマージュされるなど様々な作品に影響を与えています。
監督:オーソン・ウェルズ 出演者:リタ・ヘイワース(エルザ・ロザリー・バニスター)、オーソン・ウェルズ(マイケル・オハラ)、エヴェレット・スローン(アーサー・バニスター)、グレン・アンダース(ジョージ・グリズビー)、テッド・デ・コルシア(シドニー・ブルーム)、ほか
映画「上海から来た女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「上海から来た女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
上海から来た女の予告編 動画
映画「上海から来た女」解説
この解説記事には映画「上海から来た女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
上海から来た女のネタバレあらすじ:起
舞台はニューヨーク。アイルランド人の船員マイケルは、ある夜、馬車に乗った美しい女エルザと遭遇します。マイケルがタバコを手渡すと、エルザはそれを受け取って通り過ぎていきます。その後、エルザが暴漢に襲われて、マイケルが救出、二人は親しくなります。マイケルが船乗りだと知ったエルザは、船員として雇いたいと申し出ます。
エルザは弁護士の夫アーサーの所有するヨットで近いうちにカリブ海を周遊して西海岸へ行く船旅をする予定なのだと言います。エルザが人妻であることにショックを受けたマイケルは気乗りしませんでしたが、アーサーの強い勧めもあって、旅に同行することになりました。旅には夫妻や召使のほかにアーサーの知人ジョージも加わることになりました。
上海から来た女のネタバレあらすじ:承
エルザとマイケルは一緒に船旅をしているうちに恋仲に陥っていきます。しかしその姿はジョージに目撃されていました。エルザは嫉妬深い夫から浮気を疑われており、監視のために探偵のジョージを雇ったのだとマイケルに明かします。そんな中マイケルはジョージから偽装殺人の協力を持ち掛けられます。ジョージは現在の生活を捨て、別人として生まれ変りたいのだと打ち明け、そのために自分を殺したと見せかけて欲しいのだとマイケルに語ります。さらに偽装殺人が上手くいけば5000ドルを渡してもいいと続けます。
アカプルコを経由し、10月にヨットはサンフランシスコへと到着しました。金に目が眩んだマイケルはジョージの依頼を受けることにしました。そしてジョージに言われるまま、殺人を告白する告白書にサインをします。ある夜、マイケルは水族館でエルザとデートし、偽装殺人で得た報酬で駆け落ちをしようと誘います。エルザは何か裏があるはずだと警戒を強めます。
上海から来た女のネタバレあらすじ:転
偽装殺人を決行する日がやってきました。ところがジョージが執事のブルームからアーサーを殺してその罪をマイケルに被せようとしているのではないかと迫られ、ブルームを撃ってしまいます。その後、マイケルとジョージが海へとやってきて、偽装殺人を実行します。ジョージがボートで海へと出ていくと、マイケルは指示通り銃を暴発させ、ジョージを射殺したかのように見せかけます。
その後、マイケルがエルザと連絡を取ろうと電話を掛けると、瀕死のブルームが出て、マイケルはアリバイ作りのために君を利用していると聞かされます。マイケルが慌てて屋敷に戻ってみると、待ち構えていた警察に取り押さえられます。ジョージの死体がヨットで発見されたのです。結局持っていた告白書が決め手となり、マイケルはジョージ殺しの嫌疑をかけられます。
アーサーがマイケルの弁護を担当することになりました。こうしてマイケルの裁判が始まりますが、マイケルとエルザが不倫関係にあったことが明るみになり、元々マイケルを擁護するつもりなどなかったアーサーは、弁護を放棄してしまいます。
上海から来た女の結末
やがて評決が言い渡される時がやってきます。マイケルはアーサーの持っていた鎮痛薬を過剰に摂取して、法廷を混乱に陥れ、どさくさに紛れて逃亡します。町へ飛び出したマイケルは、チャイナタウンにある芝居小屋に潜り込みました。そこへマイケルを追ってきたエルザも合流しますが、マイケルはエルザが銃を隠し持っていることに気づいてしまいます。
ジョージを殺したのはエルザでした。エルザはヤクザを使って薬の作用で意識を失ったマイケルを休園中の遊園地へと連行します。気が付けばマイケルはミラーハウスの中にいました。エルザはジョージの殺害を告白します。金と自由を手に入れるためジョージを使ってアーサーを殺害させようとしたエルザでしたが、ジョージがブルームを殺害するというドジを踏んだため、結局ジョージを射殺してしまったのでした。
マイケルが「自分のことも騙すつもりだったのか」とエルザに迫ると、そこにアーサーが現れます。妻の陰謀を知ったアーサーが鏡に映るエルザに向かって発砲、すぐさまエルザも撃ち返します。結局相撃ちとなり二人は息絶えました。妻の犯罪を告発するアーサーの手紙が見つかったことで、マイケルは晴れて自由の身となるのでした。
以上、映画「上海から来た女」のあらすじと結末でした。
“ミラーフォーカスという映像技法を駆使して、鬼才オーソン・ウェルズが人間の愛憎劇を描いたフィルム・ノワールの佳作「上海から来た女」”
このオーソン・ウェルズ監督の「上海から来た女」は鏡というものを、映像として効果的に使った映画の古典とも言えるフィルム・ノワールの掘り出し物的な作品です。
資産家バニスターの美しい妻エルザが暴漢に襲われそうになったところを、偶然、救ったマイクは、ヨット航海で夫婦と同行する事になります。
航海中にエルザと親密な仲になったマイクは、彼女と駆け落ちをする資金を作るために、夫婦の弁護士に持ちかけられた奇妙な殺人事件に巻き込まれる事になりますが——。
この映画は、ニューヨークの闇夜、サンフランシスコのチャイナタウン、そして、映画史上あまりにも有名な鏡張りの部屋での撃ち合いのシーンなど、いかにも鬼才オーソン・ウェルズらしい意匠に富んだサスペンス・スリラーを堪能出来るのです。
謎の女エルザ(リタ・ヘイワース)に恋してしまったマイク(オーソン・ウェルズ)。
全ての愛憎を絡めて、映画のクライマックスは遊園地のビックリハウスへと収束していきます。
四周が鏡の部屋。ウェルズとヘイワースと、そして彼女の夫。
三人の姿が、幾重にも重なり合って写ります。人間の愛憎の果てしなさを象徴するかのように——。
やがて誰かが誰かを撃ちます。
崩れる鏡と共に、三人の重なりあった像も崩れ落ちます。崩れ去った愛の象徴——。
ミラーフォーカスという映画史に残る素晴らしい映像技法。
この技法をマネしたのが、あのブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」でのラストの鏡張りの部屋のシーン。
鏡とは、人を写すだけではなく、”人生そのもの”を写し続ける存在なのかも知れません。