イーダの紹介:2013年ポーランド映画。1960年代初頭、ソ連の影響下にあったポーランドを舞台に、修道院で孤児として育てられた若い修道女が出生の秘密を探る旅に出る様を当時のポーランドが抱えていた負の側面を交えて描いた作品です。本作はワルシャワ国際映画祭でグランプリを、ヨーロッパ映画賞で作品・監督・脚本・撮影の4冠を、アカデミー賞で外国語映画賞を受賞しています。
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ 出演者:アガタ・チュシェブホフスカ(イーダ・レベンシュタイン/アンナ)、アガタ・クレシャ(ヴァンダ・グルーズ)、ダヴィット・オグロドニック(リス)、イェジー・トレラ(シモン・スキバ)、アダム・シシュコフスキ(フェリクス・スキバ)、ハリナ・スコチンスカ(修道院長)、ヨアンナ・クーリク(歌手)ほか
映画「イーダ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イーダ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イーダの予告編 動画
映画「イーダ」解説
この解説記事には映画「イーダ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イーダのネタバレあらすじ:起
1962年、ポーランド。18歳になる少女アンナ(アガタ・チュシェブホフスカ)は孤児としてこの修道院で育てられてきました。修道院で修行に励んできたアンナは間もなく修道女の誓いを立てる『修道誓願の日』を迎えようとしていました。
そんなある日、アンナは修道院長(ハリナ・スコチンスカ)から、唯一の肉親である叔母ヴァンダ・グルーズ(アガタ・クレシャ)の存在を明かされました。ヴァンダはこれまで一度もアンナに面会に来たことはなく、修道院側は何度もヴァンダにアンナを引き取るよう説得しましたが、拒絶されてきました。
神に仕える修道女になるということは、俗世と完全に切り離されることであり、修道院長は修道誓願の前に一度ヴァンダに会っておくようアンナに勧めました。
アンナは今まで一度も会ったことのない叔母に興味を示し、都会に出てバスに乗るとヴァンダが住む町に向かいました。ヴァンダは一目でアンナが自分の姪であることに気付き、アンナの本名は「イーダ・レベンシュタイン」であると告げました。(以下はアンナのことを“イーダ”と表記します)
イーダはユダヤ系であり、父・ハイムと母・ルージャは第二次世界大戦の最中にナチスドイツのホロコーストで命を落としていました。ヴァンダはイーダに1枚の写真を見せました。それはルージャが生まれて間もないイーダと一緒に写っている写真であり、初めて見るルージャは今のイーダと瓜二つでした。
イーダは修道院に戻ることにし、バスで駅へと向かいました。その後、裁判所で検察官として働くヴァンダは、仕事を終えると駅に向かい、列車を待っていたイーダを家へ連れて帰りました。ヴァンダが持っていた写真には、幼いイーダと一緒にまだ幼い一人の少年が写っていました。
イーダのネタバレあらすじ:承
イーダの両親の墓はなく、どこに埋葬されているかもわからない状況でした。イーダはヴァンダの車に乗り、自らのルーツと両親の埋葬場所を巡る旅に出ました。
イーダの両親の故郷ピャスキにある生家には、かつて両親や迫害されていたユダヤ人たちを匿っていたシモン・スキバ(イェジー・トレラ)の息子フェリクス(アダム・シシュコフスキ)が住んでいました。
フェリクスが戻って来るまでの間、イーダは教会に行き、ヴァンダは地元のカフェでイーダの両親に関する情報を求めて聞き込みをしましたが、誰もユダヤ人について話そうとはしませんでした。
やがて戻ってきたフェリクスは、イーダの両親に関する証言こそ避けたものの、シモンは他の町に移り住んだことを明かしました。
イーダとヴァンダはシモンの住む町へ向かうことにしましたが、途中でヴァンダはスピード違反をしたとして警察に連行されていきました。イーダは近くの教会で夜を明かすことにしました。翌朝、釈放されたヴァンダは、自分はかつてポーランド人民軍の一員であり、戦後に多数の反体制派の人間に死刑を宣告してきたことをイーダに打ち明けました。
イーダとヴァンダは旅の途中、ヒッチハイクをしていたサックス奏者のリス(ダヴィット・オグロドニック)という男を車に乗せました。リスはイーダたちが泊まるホテルで開かれる、ある歌手(ヨアンナ・クーリク)の公演で演奏する予定であり、リスはイーダとヴァンダを公演に招待しました。
ヴァンダはホテルの従業員からシモンの住所を聞き出し、イーダと共に向かいましたが、当のシモンは数日前から町の病院に入院しており不在でした。その夜、イーダは部屋で聖書を読んでいる間、ヴァンダは町のレストランに行き、行きずりの男と踊り明かしました。
ヴァンダは夜更けにイーダの待つ部屋に戻り、イーダは修道の身では決してありえないヴァンダの乱れた振る舞いに戸惑いを覚えましたが、ヴァンダが亡き姉ルージャを心の底から慕っていたことは理解できました。寝付けないイーダはホテルのレストランにいたリスに会い、言葉を交わしました。イーダはリスにほのかな想いを抱き始めていました。
イーダのネタバレあらすじ:転
翌日、イーダとヴァンダはシモンが入院している病院を訪れました。シモンは二人に、実は匿いきれなくなったユダヤ人をやむなく殺して埋めたことを打ち明けました。ヴァンダはシモンに息子も殺したのかと詰め寄りました。実は写真に写っていた少年はヴァンダの息子であり、ルージャの元に預けられたもののルージャたちと共に殺されて埋められていたのです。
その夜、ホテルに戻ったイーダとヴァンダの元にフェリクスが訪ねてきました。フェリクスは老い先短いシモンをそっとしてあげてほしいと頼み、その代わりとしてルージャらを埋葬した場所を教えると約束しました。
イーダはホテルのレストランで一人物思いに耽っていました。そこにリスが現れて声をかけ、互いの将来の夢について語り合いました。イーダは素直に、修道女になると伝え、リスは兵役から逃れるために各地を転々としていることを打ち明けました。イーダのリスへの想いはより一層強くなっていきました。
翌日、フェリクスはイーダとヴァンダを町外れの森に案内しました。そこがイーダの両親やヴァンダの息子が埋葬された場所であり、二人は掘り起こされた遺骨を受け取りました。
フェリクスは実はイーダの両親とヴァンダの息子を殺したのはシモンではなく自分であり、ただひとり生まれたばかりでユダヤ人とは判断されないであろうイーダだけを密かに修道院に預けたことを打ち明けました。
イーダとヴァンダは一族の墓があるルブリンへ向かい、イーダの両親の遺骨とヴァンダの息子の遺骨を一族の墓に埋葬しました。
イーダの結末
修道院に戻り、元の生活に戻ったはずのイーダでしたが、彼女の心の中では修道女になるという意思が揺らぎつつありました。一方のヴァンダは暴飲暴食に走り、男と逢瀬を重ね、亡くなった親族の写真を見つめる空虚な日々を過ごしていました。
そんなある日、ヴァンダは自宅アパートの窓から飛び降り、自らの命を絶ちました。
イーダは遺品整理のためヴァンダのアパートを訪れました。イーダはヴァンダのドレスを着て生まれて初めて酒を飲み、生まれて初めて煙草を吸いました。
イーダはヴァンダの葬儀に参列しました。他に参列したのはヴァンダの職場関係者のみでした。その後、イーダはリスと再会を果たし、リスに誘われるがままバーで踊り明かしました。そしてイーダはリスをヴァンダのアパートに招き、二人は肌を重ねました。リスはイーダに結婚を申し込みました。
翌朝、イーダは眠ったままのリスを残し、修道服をまとうと修道院へと戻っていきました。
以上、映画「イーダ」のあらすじと結末でした。
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