明日の食卓の紹介:2021年日本映画。小説家・椰月美智子が2016年に発表した同名小説を『楽園』『糸』の瀬々敬久監督が映画化、本作が10年ぶりの映画主演作となる菅野美穂が高畑充希や尾野真千子と共にトリプル主演を務めたヒューマン・サスペンスです。「石橋ユウ」という名の少年が母親に殺害される事件が発生。少年と同姓同名の息子がいることだけが唯一の共通点である、住む場所も境遇も異なる3人の母親は息子を愛しながらもそれぞれの事情により追い詰められていきます。果たして「ユウ」を殺したのは…。
監督:瀬々敬久 出演者:菅野美穂(石橋留美子)、高畑充希(石橋加奈)、尾野真千子(石橋あすみ)、外川燎(石橋悠宇)、柴崎楓雅(石橋優)、阿久津慶人(石橋勇)、和田聰宏(石橋豊)、大東駿介(石橋太一)、山口紗弥加(若杉菜々)、山田真歩(西山明奈)、水崎綾女(竹内かおり)、藤原季節(石橋正樹)、宇野祥平(安田)、真行寺君枝(石橋雪絵)、渡辺真起子(成田依子)、菅田俊(藤崎恒雄)、烏丸せつこ(石橋よしえ)、大島優子(耀子)ほか
映画「明日の食卓」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「明日の食卓」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
明日の食卓の予告編 動画
映画「明日の食卓」解説
この解説記事には映画「明日の食卓」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
明日の食卓のネタバレあらすじ:起
とある場所で、ひとりの母親が息子に暴力を振るっていました。母親は息子を殴り、壁に激しく打ち付けました。息子はそのままぐったりと動かなくなりました。息子の名前は「石橋ユウ」といいました…。
静岡県に住む36歳の専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)は東京に通い勤務するサラリーマンの年下の夫・太一(大東駿介)と小学5年生になる息子の優(ユウ)(柴崎楓雅)と共に幸せな日々を送っていました。あすみ一家の自宅は姑(太一の母)・雪絵(真行寺君枝)が暮らす実家の敷地内に建てられており、あすみは雪絵とはつかず離れずの適度な関係を維持していました。あすみのささやかな愉しみといえば、書道教室で知り合った若杉菜々(山口紗弥加)と過ごすランチやティータイムでした。
優は学校では成績優秀であり、家でも素直な子でした。そんなある日、あすみの父・藤崎恒雄(菅田俊)が田舎から訪ねてきました。恒雄は東日本大震災の被災地で除染作業に従事しており、福島の原発事故の放射能について「悪いものが目に見えればいいのに」とぼやいていました。
そんなある日、あすみの元に優の同級生・レオンの母である竹内かおり(水崎綾女)から電話がかかってきました。何と優がレオンをいじめているというのです。あすみは優に確認を取りましたが、泣きながら否定する優を信じることにしました。その後、レオンをいじめていたのは同級生の光一であることが判明しました。
あすみはいつものカフェで奈々にそのことを話していると、突然現れたかおりから「あんたの息子は悪魔だ!」と罵られました。学校に呼び出されたあすみは、担任から思いもよらぬ事実を突きつけられました。それは優が、自分の言うことを聞く光一を使ってレオンをいじめていたということでした。
優はあっけらかんといじめの事実を認め、「他人を操る実験をしていた」と笑いながら語り出しました。優は「ママだってパパの言う通りに動いているだろ」とあすみを嘲笑い、あすみは太一に相談しましたがまともに取り合ってもらえませんでした。それでもようやく優の悪だくみに気付いた太一が手を上げようとしましたが、優は「これは虐待だから、きちんと記録を取っておく」と太一を恫喝してきました。
太一から育て方が悪いと責められたあすみは、このことを奈々に相談しました。しかし、奈々の様子はどこかおかしく、奈々はこれは“試練”であり、もうすぐ“救世主”が現れるから一緒に“先生”のお言葉を聞きに行こうと誘いかけてきました。実は奈々は新興宗教団体の信者であり、あすみを宗教に勧誘するために友人を装って近づいていたのです。
奈々の正体に気付き、怒って帰宅したあすみでしたが、優のことで精神的にまいっていたあすみは奈々から渡された宗教団体のリーフレットについ心を揺さぶられそうになりました。その時、あすみは優が雪絵に暴力を振るっている様を目の当たりにしました。かねてから認知症を患っていた雪絵は庭で失禁することが多くなっていましたが、あすみも太一もそれには気付いておらず、優だけがそのことを知っていたのです。あすみは雪絵を「汚い」と足蹴にする優に迫り、優の首を掴んで力いっぱい締め上げていきました…。
明日の食卓のネタバレあらすじ:承
東京に住む43歳の石橋留美子(菅野美穂)は、フリーランスのカメラマンである夫・豊(和田聰宏)、小学5年生になる長男・悠宇(ユウ)(外川燎)、次男・巧巳の4人家族です。
悠宇と巧巳はやんちゃ盛りで、留美子はしょっちゅう暴れ回ったり喧嘩したりの息子二人に振り回されてばかりでしたが、未だに“大人”にも“父親”にもなり切れていない豊は仕事の多忙を理由に家事や育児には一切協力せず、まるで“3人目の息子”であるかのように振る舞っていました。
留美子は元々は雑誌ライターの仕事をしていましたが育児を優先するために辞めており、ドタバタな育児の日々をブログ「鬼ハハ&アホ男児Diary」に綴っていました。このブログは子育て世代を中心にそこそこの人気を集めており、静岡のあすみや後述する大阪のシングルマザーも読者となっていました。
留美子はブログの人気もあり、少しずつフリーライターとしての仕事も増やしていきました。そんなある日、豊は契約していた雑誌から切られてしまい、次の仕事を探すこともなく昼間から家で酒を飲むなどだらしない日々を送るようになっていきました。一家の家計は留美子が一人で支えることとなりましたが、豊は家庭の事情を顧みることはなく、息子たちが言うことを聞かないとブチ切れて暴力を振るい出すようになりました。
更に豊は留美子にも暴力を振るうようになり、留美子は豊に出ていけと言い放ちました。留美子は気を取り直して仕事に打ち込もうとしましたが、自宅の仕事場でさえも息子たちに荒らされて滅茶苦茶になっていきました。とうとう限界を迎えた留美子は激昂し、悠宇に馬乗りになって殴りかかりました…。
明日の食卓のネタバレあらすじ:転
大阪に住む30歳のシングルマザー・石橋加奈(高畑充希)は一人息子の勇(ユウ)(阿久津慶人)を女手ひとつで育てています。離婚した前夫の借金を背負ってしまった加奈は、昼はクリーニング工場、夜はコンビニと休む間もなく働き続けていました。家計は常に苦しく、母の苦労を誰よりも理解している勇は決してわがままを言うことはありませんでした。
加奈がコツコツと返済してきた借金もあと1回の返済でようやく完済を迎えようとしていました。加奈は勇のため、少し貯金に余裕ができたら一緒に旅行にでも行こうかと考えていました。
そんなある日、加奈は勇の担任教師・安田(宇野祥平)に呼び出されました。なんでも学級で集めていた給食費が無くなり、後で勇の机の中から見つかったのだそうです。しかし、安田は犯人は勇ではなく、同級生の西山であることを見抜いていました。勇は西山から度々嫌がらせを受けていたのですが、加奈を気遣うあまりどうしても言い出せなかったのです。安田は加奈が忙しいのは分かるけども、もう少し勇に寄り添ってあげるべきだと諭しました。
西山の母・明奈(山田真歩)も加奈と同様にシングルマザーであり、デリヘル嬢として働いていました。加奈はコンビニで働いている歳、明奈がよく若い男と一緒に買い物をしているところを目撃していました。
あと一歩で借金完済という時、加奈は不景気の煽りを受けてクリーニング工場をリストラされてしまいました。更には加奈が留守の間、加奈の弟・正樹(藤原季節)が家を訪れ、勇から全財産の通帳と印鑑の場所を聞き出すとそれを盗んで逃げて行ってしまいました。帰宅した加奈はそのことを問い詰めると、優は「オカンは僕のことなんか嫌いなんだろ」とつい言い放ってしまいました。カッとなった加奈は思わず勇に馬乗りになりました…。
明日の食卓の結末
…しかし、加奈は勇を殺しませんでした。その翌日、加奈の母・よしえ(烏丸せつこ)が加奈の元を訪ねてきました。どうやら正樹はよしえからも通帳を奪おうとしたようで、通帳の場所を教えなかったよしえに暴力を振るって去っていったということでした。よしえは立派に子育てをしている加奈を労わり、生前贈与として自分の通帳を加奈に渡しました。加奈は登校中の勇を追いかけ、強く抱きしめました。
「ユウ」を殺したのはあすみでも留美子でもなく、石橋耀子(大島優子)という女性でした。耀子には留美子・加奈・あすみと同じく「石橋ユウ」という名の小学5年生になる息子がいたのですが、ある日耀子はユウに暴力を振るい、死なせてしまったのです。
ある日、刑務所で服役中の耀子に留美子が面会に訪れました。かねてから留美子のブログのファンだった耀子は獄中から留美子に手紙を書いており、それには自分が殺めてしまったユウへの愛と懺悔の気持ちが綴られていました。留美子は耀子の取材をしました。
あすみのお腹の中には新たな命が宿っていました。奈々の勧誘に負けたあすみは宗教に入信してしまい、これから奈々と共に教祖の話を聞きに行こうとしていました。その時、あすみは下校途中の優の姿を見つけました。あすみは慌てて奈々の車から降り、優を追いかけましたが途中で転んで怪我をしてしまいました。あすみは自分の元に駆け寄った優に「実験してみてどうだった?」と問いかけ、泣き出した優を抱きしめました。
加奈は勇と二人で海を訪れていました。留美子は正式に豊と離婚し、二人の息子の親権は留美子が持つことになりました。この日は豊が月に一度息子たちに会う日。留美子が耀子と「ユウ」に想いを馳せていると、空を見上げていた悠宇が「飛行機雲だ!」と叫びました。留美子、あすみと優、加奈と勇はそれぞれの場所で同じ空を見上げていました。
以上、映画「明日の食卓」のあらすじと結末でした。
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