パーフェクト・ケアの紹介:2020年アメリカ映画。判断能力が不十分と判決された高齢者を保護し支援する制度、法定後見人。完璧なケアで裁判所からの信頼も厚い法定後見人マーラの正体は、合法的に高齢者の資産を搾り取る悪徳後見人だった。そんなマーラが次のターゲットに狙ったのは資産家の老女ジェニファー。身寄りがなく格好の餌食となるはずが、彼女の背後にはロシアン・マフィアの存在があった…。
監督:J・ブレイクソン 出演:オザムンド・パイク(マーラ・グレイソン)、ピーター・ディンクレイジ(ローマン)、エイザ・ゴンザレス(フラン)、ダイアン・ウィースト(ジェニファー・ピーターソン)ほか
映画「パーフェクト・ケア」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パーフェクト・ケア」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パーフェクト・ケアの予告編 動画
映画「パーフェクト・ケア」解説
この解説記事には映画「パーフェクト・ケア」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パーフェクト・ケアのネタバレあらすじ:起
家庭裁判所から判断能力が不十分と決定された高齢者を守り、完璧なケアを行う法定後見人のマーラ。彼女は裁判長からの信頼も厚く、優秀な後継人に見えましたが、その正体は合法的に高齢者の資産を搾り取る悪徳後見人でした。
マーラによって母親との面会を禁止された男に罵倒されても、冷ややかに嫌味でかわします。彼女に怖いものはありませんでした。
ある日のこと。あと5年は利益を搾取できると見ていた上客の老人が亡くなった知らせを受けたマーラは、次の獲物を探すためにビジネスパートナーである女医カレンを訪ね、ジェニファーという資産家の老女の情報を入手。身辺調査を行った結果、ジェニファーは途方もない額の資産の持ち主で、身寄りはなく天涯孤独という最高の獲物だということが分かりました。
マーラは再びカレンのもとを訪れ、ジェニファーの認知症を認めた虚偽の診断書を作成してもらうと、ジェニファー不在のまま家庭裁判所で自身を後見人へと選定させました。
こうして法定後見人となったマーラは、公私共にパートナーであるフランを伴って、早速ジェニファー宅を訪れます。そして訳が分からずにいるジェニファーの言い分に一切耳を貸さずに強引に施設へ入所させてしまいました。
パーフェクト・ケアのネタバレあらすじ:承
ジェニファーを追い払ったあとに残された家や資産は全て後見人が管理することになっています。マーラとフランは金目のものを隅々まで調べ、ひとつ残らず売却しました。ジェニファーが所有する銀行の貸金庫まで見つけたマーラは、その中にわざわざ本の間に隠された両手いっぱいのダイヤモンドを見つけました。
しかしこれらのダイヤモンドを調べると、不可解なことが分かります。
全ての私財には保険が掛けられているにも関わらず、ダイヤモンドには保険が掛けられていませんでした。マーラはこのダイヤモンドを世の中に流通していないダイヤモンド、つまり盗品だと考えました。
その頃、ジェニファー宅で家の売却の準備をすすめていたフランは、ジェニファーを訪ねてきたタクシー運転手に遭遇しました。フランがすでにここは空き家になっていることを告げると運転手は去って行きました。
この運転手の正体はアレクシーというロシアン・マフィアでした。彼からジェニファーの自宅が売却されたことを聞かされたボスのローマンは怒り狂いました。
パーフェクト・ケアのネタバレあらすじ:転
その翌日。マーラのオフィスにローマンから雇われた弁護士ディーンがやってきました。ディーンはマーラの悪事を指摘し、ただちにジェニファーを解放するよう求めました。
頑として首を縦に振らないマーラに対しディーンは現金を見せましたが、提示額よりはるかに多い500万ドルを要求されこれを拒否。ディーンは「命の保証はしない」と言い放ち去りました。ディーンから報告を受けたローマンの怒りは頂点に達していました。
ジェニファーは一体何者なのか、直接本人に聞くために、マーラは施設を訪れました。薬漬けにされ意識が朦朧としていたジェニファーでしたが、身元についての情報は一切言いません。そしてひとこと「あの子が来る」とだけつぶやきました。
フランは驚きの事実を突き止めました。
ジェニファー・ピーターソンという人物は1949年に亡くなっており、この老女はIDを盗んだなりすましだったのです。
その後、女医のカレンが何者かに殺害され、身の危険を感じたマーラはフランと共に身を隠しましたが、マーラはジムの帰りに近寄ってきた男に薬を撃たれ連れ去られてしまいました。
マーラが意識を取り戻すと目の前にローマンの姿が。しかし、ローマンもすでに死亡した男のなりすましであるため、実名は分かりません。ジェニファーと名乗る老女は、この男の母親で、母親とダイヤモンドを引き渡すよう要求しました。
しかしマーラの要求は1000万ドル。強気の姿勢を崩さない彼女は眠らされた状態で車ごと湖へ落とされてしまいました。
パーフェクト・ケアの結末
しかし、車が沈んでいく中で意識を取り戻したマーラは、水中から脱出することができました。すぐさまフランの元へ飛んで行くと、彼女は流血し倒れていました。かろうじて息があるフランを助け出すと、記憶していたロシアン・マフィアの車のナンバーからローマンの居所を突き止め、薬で眠らせ山道に放置しました。
ローマンが目を覚ましたのは病院、そして目の前にはマーラがいました。
マーラはローマンを名乗る身元不明者の法定後見人となったのでした。自らの命や財産をマーラに握られていることを知ったローマンは、1000万ドルで取引を成立させ、母親とダイヤモンドを取り戻しました。
しかしそれだけでは終わりませんでした。
ローマンは、マーラの能力を見込んで一緒にビジネスをやろうとオファーし、後見人ビジネスをさらに拡大。短期間で莫大な資産を生み出したマーラは一躍時の人となりました。
ところがそんなマーラを突然の悲劇が襲います。
テレビの出演が終わり、車に乗り込もうとしたマーラの前に、かつてマーラにより母親との面会を禁止された男が現れ発砲。マーラはかけつけたフランの腕の中で、銃弾に倒れたのでした。
以上、映画「パーフェクト・ケア」のあらすじと結末でした。
「パーフェクト・ケア」感想・レビュー
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冒頭のシーンとラストシーンでマーラの同じ独白が流れる「私は子羊ではない、私は雌ライオンなのだ」と。つまり狩る者と狩られる者、「loser」か「winner」かの二択しかないのが「米国社会」の実情なのである。このように「一神教」の国家では概ね「二元論」が支配的なのだ。そしてこの作品ではマーラの「人間像」が緻密に描写されていて、とてもリアルで説得力に富んで中々秀逸だった。マーラは今より、もっと上質の生活がしたいなどの、「上昇志向」という名の「強迫観念」に日々苛まれいる。そしてマーラは、私は「出来る女」、私は「イケてる女」、私は「時代の最先端をひた走るキャリアウーマン」、という「仮面」をつけることでしか満足ができない女性なのである。これは世の男性が「マッチョな」鎧(よろい)で武装して「見栄」を張るのと似た構図だ。身の丈にあった等身大の自分というものがそもそも眼中にないのである。極端なブランド志向は時として悲劇を生むことがある。高級スーツ(プレタポルテ)で身を包み、分刻みで「BMW」を駆って「マーラ劇場(詐欺の現場)」へと急行する。かつての「ヨーロッパ楽壇の帝王カラヤン」のように颯爽として格好いい。マーラは恰も音楽監督(コンダクター)のようにタクトを振って、「ビシビシ」と的確に老人施設(マーラの為のオーケストラ)に次から次へと詐欺の指示を下してゆく。挙句の果てにはロシアン・マフィアを敵に回して丁々発止での報酬のやり取り。マーラの要求額は10万ドルから100万ドルに跳ね上がり、最終的には1000万ドルで手を打とうとなる。人間はいったいどこまで行けば満足できるのか。この作品は、物欲のみに囚われて最も大切なものを失った「凡夫」の悲劇を描いた一種の「エピグラム」(警句:或いはアンチテーゼ)である。つまり上部(うわべ)ばかりを重視して、人間の内面を蔑ろにする現代社会へのアンチテーゼなのである。もう一つの教訓としては、弱者に寄り添うふりをして「美辞麗句ばかり」を並べる輩こそが実は「極悪人」だということ。「パーフェクト・ケア」はエンタテインメントとしては、とても良く出来ていて最高に面白かった。何と言ってもマーラを演じた、ロザムンド・パイクの容姿・演技・存在感などが抜群なのである。何しろ彼女はスラリとした長身であり、見るからに(いかにも)スタイリッシュな美女である。マーラを地でゆく?ロザムンド・パイクのパフォーマンスこそが、正に「パーフェクト!」なのである。マーラはとても美意識が高いので、「醜い男」などには「ピクリ」とも反応せず、同性である女性にこそ「美」を求めると言う設定がこれまた絶妙である。人間性を犠牲にしてでも、自分の欲望のみに忠実に生きようとする、悲しき「エピキュリアン」の性(さが)を活写。「パーフェクト・ケア」はサディスティックでスリリングでスタイリッシュ。マーラもパイクも並みの日本人男性には御しきれない難物。しかし私は野生的な駿馬が大好物なので、是非とも一度はチャレンジしてみたいと思った。
悪い事は、できない。愛情をお金で買う事しかできないおろかな人間の結末。高齢化社会の映画。必見です