護られなかった者たちへの紹介:2021年日本映画。『さよならドビュッシー』『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』などの中山七里による同名長編推理小説を佐藤健の主演で映画化した社会派ミステリーです。東日本大震災から10年後の仙台で発生した連続殺人事件の真相を、容疑がかけられた元受刑者と震災で妻子を失った刑事の視点から描いていきます。
監督:瀬々敬久 出演者:佐藤健(利根泰久)、阿部寛(笘篠誠一郎)、清原果耶(円山幹子)、林遣都(蓮田智彦)、永山瑛太(三雲忠勝)、緒形直人(城之内猛)、岩松了(楢崎肇)、波岡一喜(鈴木将)、奥貫薫(笘篠紀子)、井之脇海(菅野健)、宇野祥平(宮原)、黒田大輔(支倉)、西田尚美(宮園真琴)、千原せいじ(国枝恵二)、原日出子(円山春子)、石井心咲(カンちゃん)、鶴見辰吾(東雲)、三宅裕司(櫛谷貞三)、吉岡秀隆(上崎岳大)、倍賞美津子(遠島けい)ほか
映画「護られなかった者たちへ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「護られなかった者たちへ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
護られなかった者たちへの予告編 動画
映画「護られなかった者たちへ」解説
この解説記事には映画「護られなかった者たちへ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
護られなかった者たちへのネタバレあらすじ:起
2011年3月11日、東日本大震災が日本列島を襲いました。施設育ちで身寄りのない若者・利根泰久は住処のアパートも働き先の水産加工工場も失い、避難所となった小学校に身を寄せました。利根はそこで親を失った“カンちゃん”という少女、そして老女・遠島けいと知り合い、打ち解け合いました。
時を同じくして、宮城県警捜査第一課の笘篠誠一郎刑事は行方不明になった妻・紀子と11歳になる息子の行方を探していました。程なくして紀子は遺体で発見されましたが、息子は結局発見されることはありませんでした。息子は黄色いジャケットを着ており、偶然にも同じような黄色のパーカーを着ていたカンちゃんが気になりました。
程なくして利根とカンちゃんは、自宅に戻っていたけいの元を訪れました。互いに身寄りのない利根とカンちゃん、けいはいつしか家族のような絆を結んでいたのです。けいは利根に「笑顔でいなさい。そしたらみんながあなたに優しくしてくれる」と励ましました。
けいは震災以降、自分が生き延びた意味について悩んでいましたが、やがて自分の存在は利根やカンちゃんを励ますためにあるのだと思い直しました。それを聞いた利根はつい「俺も生きててよかったのか」と呟き、けいはそんな利根を優しく励ましました。
やがて利根は栃木の宇都宮製鉄に就職し、カンちゃんは新たな里親となった民宿経営者の円山春子に引き取られました。利根は休暇を利用して度々カンちゃんやけいのもとを訪れていました。やがてカンちゃんこと幹子は中学生、高校生へと育っていきました―――。
護られなかった者たちへのネタバレあらすじ:承
―――震災から9年後。利根はある罪で刑務所に服役していました。模範囚として認められた利根は刑期を2年早めて出所し、保護司の櫛谷貞三の手引きで前科者も受け入れてくれる坂巻という男の経営する工場で働くことになりました。利根は工場の事務所で寝泊まりしながら黙々と働き始めましたが、周囲になかなか打ち解けられませんでした。
一方、笘篠は相棒の若手刑事・蓮田智彦と共に働いていました。東京出身で、震災当時も東京の大学に通っていた蓮田は震災の惨状をリアルで感じたことがありません。そんなある日、仙台市内の廃アパートの一室から男性の遺体が発見され、笘篠と蓮田は捜査に乗り出しました。
遺体の男は仙台市若葉区保健福祉センター課長の三雲忠勝で、両手を拘束され口などにガムテープを貼られた状態で発見され、死後1週間が経過していました。遺体に目立った外傷などはなく、死因は餓死と判断されました。
アパート付近には監視カメラはなく、不審な人物などは見当たりませんでした。三雲の妻の証言によると、三雲は超のつくお人好しであり、殺されるような恨みを買った覚えはないとのことでした。
笘篠と蓮田は生活保護の窓口業務を担っていた三雲が生活保護受給者の恨みを買っていたのではないかと考え、三雲の職場の部下である円山幹子という若い女に話を聞いてみました。幹子は受給者は三雲の名を知る機会などなく、みんな生きていくだけで必死なので仮に三雲に恨みを抱いても殺す余裕などないと語りました。
幹子は生活保護家庭の訪問に向かい、笘篠と蓮田も同行しました。最初に訪れた渡嘉敷という女性は生活保護を受給しながらスーパーで働いて稼ぎを得ており、幹子は一定以上の収入がある場合には保護費を返金してもらうと渡嘉敷に通告しました。
渡嘉敷は家庭環境のせいでいじめを受けている娘のために塾の費用を工面しようと働いており、全部我慢しろというのかと幹子に切実に訴えかけました。
続いて訪れた国枝恵二という男は、生活保護受給者は所持できないはずの車、しかも高級外車を所持していました。国枝はふてぶてしい表情で、他人の車を預かっているなどと嘘をつきました。国枝の不自由なはずの利き腕が動いているのを見逃さなかった幹子は、就労指導に切り替えると強い口調で言い放ちました。
そんな時、第2の事件が発生しました。発見された遺体は元・杜浦市福祉保険事務所所長の城之内猛で、死後1週間以上が経過していました。城之内もまた周囲から人格者と言われており、先の三雲の事件と状況が似ていました。
笘篠は三雲と城之内がかつて同じ杜浦市福祉保険事務所に勤めていたことを突き止め、現所長の支倉から資料を押収しました。笘篠はさらに調べを勧め、役所側が所長の指示でトラブルをいくつも隠蔽していたこと、そして2015年に三雲と城之内が携わっていた生活保護申請のトラブルで利根が放火事件を起こしていたことを知りました。
警察は利根を連続殺人事件の容疑者として指名手配しました。
護られなかった者たちへのネタバレあらすじ:転
その頃、幹子は笹木という老女のもとを訪問し、生活保護を受給するよう勧めました。笹木はみっともないと断りましたが、生活保護は権利だから声をあげるべきだという幹子の説得を受けて役所に申請に出向きました。
そのことを知った上司の楢崎肇は勝手なことをするな、申請は本人からの要請でなければだめだと幹子を注意しました。同僚の菅野健ははたして自分たちのしていることに意味はあるのだろうかと幹子に問いかけ、幹子は絶対あると答えました―――。
―――数年前。けいの家を訪れた利根は彼女がろくに食事もとらずに衰弱しきっているのを発見しました。通帳には貯金がほとんどありませんでした。利根は通帳の下に、宮園真琴のという人物が経営する学習塾のパンフレットを見つけました。けいが年金をもらっていないことを知った利根はけいに生きていてほしいと訴え、生活保護を受けるよう説得しました。
社浦市福祉保険事務所の窓口でけいの応対をしたのは三雲と同僚の上崎岳大でした。三雲は利根や幹子からけいとの関係を聞き、保護の申請には本人の意思が必要だと言います。けいは生活保護受給の意思を示し、上崎が応対しました。
それからしばらくして、利根はけいが餓死したことを知りました。利根は三雲に会いに行き、けいの申請の件について問いただすと、三雲はけいが申請を辞退していたことを明らかにしました。城之内は三雲に食って掛かる利根に、人間は死ぬときはひとりだと諭しました。
その後、利根と幹子はふたりだけでけいの葬式をあげていると、そこに上崎が現れ、涙ながらに人間は死んだらおしまいだと話しました。その直後、利根は火炎瓶を持って事務所に放火し、逮捕されました―――。
―――三雲の事件の少し前、出所した利根はその足で幹子に会いに行きました。幹子が生活保護関連の仕事をしていると聞いた利根は「誰も救えない」と語りました―――。
―――先日幹子が訪問した渡嘉敷が母子で無理心中を図りました。幸いにも渡嘉敷親子は一命を取り留めましたが、幹子はやりきれない思いを抱えました。そんな時、幹子が利根と知り合いであることを知った笘篠が彼女のもとを訪れ、利根の居場所について尋ねてきました。幹子は利根は本当は心の優しい人物であり、人を殺す人間ではないと語りました。
護られなかった者たちへの結末
かつて三雲や城之内と共にけいを担当していた上崎は今や衆議院議員にまで出世していました。笘篠らは利根が上崎の講演会に姿を現すだろうと読み、読み通りに現れた利根を逮捕しました。利根は素直に犯行を認めましたが、笘篠は利根が何かを隠しているのではないかと感じました。
笘篠は上崎からけいの件について尋ねてみました。上崎はけいが保護申請を取り下げた理由について話し始めました。かつてけいは結婚して娘をもうけていましたが、娘がまだ幼い頃に離婚していました。
元夫に引き取られた娘は父の再婚相手を実の母のように思い、けいの存在については気付きもしませんでした。けいが申請を取り下げたのは、もし申請が通ったら自分の存在が娘に知られてしまうことを恐れてのことでした。そしてその娘とは今や学習塾を経営している宮園真琴その人だったのです。
利根はけいの娘の話を笘篠から聞かされました。笘篠はけいは利根や幹子というもうひとつの“家族”を作れて幸せだったのだろうと語ると、利根は自分たちのためにもけいには生きていてほしかったと呟きました。
その直後、上崎が行方不明になったとの知らせが入りました。笘篠は利根が一連の事件の真相を知っていると確信し、蓮田と共に利根を連れてあるところに向かいました。そこはかつてけいが住んでいた家でした。
家の中では幹子がスタンガンとナイフを持ち、上崎を拘束していました。利根は幹子にもうやめようと説得しましたが、幹子はこれが最後の仕事だからと上崎を殺すつもりでいました。利根は家の中にけいの遺言があると告げました。ボロボロになったふすまにはけいの字で「おかえりなさい」と書かれていました。笘篠が突入し、幹子はナイフで自殺を図りましたが取り押さえられました。
三雲と城之内を殺した真犯人は幹子でした。蓮田は笘篠に、幹子が上崎を拉致する直前にSNSでメッセージを残していたことを明かしました。「護られなかった者たちへ」と題されたメッセージには、一身上の都合により職を辞すること、「生活保護に声をあげてください。悩んでいると一人のような気がするが、この世界は捨てた物じゃない。誰かが必ず気づいてくれる。もっと大きく、もっと図太く声をあげてください」とのメッセージが込められていました。
上崎は記者会見を開き、幹子のしたことは許されることではないけれども彼女の気持ちをわかってあげてほしいと訴えました。
後日。笘篠は利根を連れて妻の遺体が発見された海岸を訪れていました。笘篠は自分は家族を守ることができなかったけれども利根は幹子を守ろうとしたんだと話しましたが、利根は彼女を守ることができなかったことを語り、震災の当時の出来事について語り始めました。
あの日、利根は目の前で黄色いジャケットを着た少年が沈みゆく光景を目撃しながらも、恐怖のあまり助けることができなかったのです。そのことを深く後悔した利根は同じ黄色い服を着ていた幹子だけは絶対に守ろうと決心したのです。
その話を聞いた笘篠は沈んだ少年こそが我が子だと確信し、利根に「ありがとう」と言いました。「助けようとしてくれて、声に出してくれてありがとう」と伝えました。笘篠と利根は海を見つめていました。
以上、映画「護られなかった者たちへ」のあらすじと結末でした。
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