セイント・フランシスの紹介:2019年アメリカ映画。SXSWフィルムフェスティバル2019で観客賞と審査員特別賞受賞を受賞した本作。主演のケリー・オサリバンは、「レディ・バード」(2017)の女性の描き方に触発されてこの自伝的な脚本を執筆した。これが初長編作品となる監督のアレックス・トンプソンは実生活でのケリーのパートナーで、彼女のたっての願いで監督を引き受けたそうだ。観客を魅了するフランシス役のラモナ・エディス=ウィリアムズはオーディションで選ばれ、現在はスケートに夢中だという。
監督:アレックス・トンプソン 脚本:ケリー・オサリバン 出演:ケリー・オサリバン(ブリジット)、ラモナ・エディス=ウィリアムズ(フランシス)、チャリン・アルヴァレス(マヤ)、リリー・モジェク(アニー)、マックス・リプシッツ(ジェイス)、ジム・トゥルー=フロスト(アイザック)ほか
映画「セイント・フランシス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「セイント・フランシス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「セイント・フランシス」解説
この解説記事には映画「セイント・フランシス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
セイント・フランシスのネタバレあらすじ:起
34歳・ウェイトレスのブリジットはパーティで知り合った年下のジェイスとその日のうちにベッドをともにします。
朝起きるとあちこちにブリジットの血が。どうやら夜の間に生理になったようです。ジェイスと笑いながらチェックするブリジットでしたが、友だちに紹介されたナニー(子守り)の面接のためあわててでかけます。
治安の良い住宅街に暮らすアニーとマヤはレズビアンのカップル。マヤの出産のため、夏の間だけ6歳のフランシスのナニーを募集しているふたりはカトリック信者。いまはそれを信仰していないブリジットはちょっと居心地の悪さを感じます。いきなりフランシスとふたりきりにされたブリジットは、打ち解けることができないまま帰路につきます。
何日も経ってから採用の連絡を受けたブリジット。喜んで仕事にでかけますが、わがままなフランシスは思ったとおりに事が運ばないと「ママじゃない。助けて!」と叫んで警官が出動する騒ぎに。その夜、身体の異変を感じたブリジットは妊娠検査薬を買って試してみます。結果は陽性。ブリジットはすぐにジェイスに伝え、産むつもりはないとはっきり言います。
次の仕事の日。フランシスを連れて図書館に来たブリジットですが、中絶をめぐってジェイスとメールをしていてフランシスへの対応がおろそかに。トイレに行って戻ってくると、フランシスがブリジットのバッグの中身を広げ「生理中なの?」と大きな声を出します。
いたたまれず外に出たブリジットは、フランシスの乗ったベビーカーを乱暴に扱い彼女を落としてしまいます。帰宅してマヤに謝っていると赤ん坊(フランシスの弟ウォーレス)が泣き出し、マヤはそちらにかかりきりになってしまいます。ブリジットは少し寂しそうなフランシスの傷の手当をするのでした。
セイント・フランシスのネタバレあらすじ:承
ジェイスは病院についてきました。中絶費用も全額出すと言いますがブリジットは半分だけもらい、病院で出された経口中絶薬を家で飲みます。いろいろと世話を焼いてくれるジェイスを遠ざけトイレで吐くブリジット。
そのうち下から出てきた血の塊のようなものをジェイスに見せ、これで中絶は成功したのか同意を求めますが確信は持てません。そのうちジェイスは寝てしまいますが、ブリジットは朝まで一睡もできませんでした。
フランシスをギター教室に連れていったブリジットは講師のアイザックに興味を持ち、彼に近づくためギターを買います。アイザックはフランシスには才能があり、ジョーン・ジェットみたいだと言ってきました。
帰り道でジョーン・ジェットが誰なのか聞かれたブリジットは、いつも家父長制に怒っている人だと説明します。そして家に戻るとふたりできつめの化粧をしてロックバンドごっこをするのですが、帰宅したマヤに叱られてしまいます。
ある日ブリジットは両親と公園で待ち合わせをして一緒にウォーキングをします。娘の友だちのSNSをチェックしている母は、結婚や出産について希望を言ってきますがブリジットは不機嫌そうに返事をするだけです。そして夕方には少し涙ぐみながらハグして別れました。
再びギター教室。フランシスはすっかりギターに興味を失い、ブリジットが熱心に習っています。その帰り道、フランシスはスケートを習いたいと言いますが、ブリジットはお金がかかるし大変だと否定的です。
ふたりが家に帰ると泣き止まないウォーレスに育児ノイローゼ気味のマヤ。ブリジットが代わって抱っこするとすぐに泣き止みマヤは複雑な表情を浮かべます。
セイント・フランシスのネタバレあらすじ:転
ジェイスの家で食事しているブリジット。隣室ではジェイスの親友チャドがゲームに興じています。その夜、眠れないブリジットにジェイスが読み聞かせをしてあげるといって読み始めたのは彼の日記…。中絶で感じた気持ちをつづったそれを聞いてブリジットはウンザリ。チャドにも中絶のことを話したと言われ怒って寝てしまいます。
翌朝、ブリジットが目覚めるとジェイスは食べ物を買いに出かけています。トイレで生理用品を詰まらせてしまったブリジットは、外でチャドが待っていることもありパニックに。結局チャドが詰まりを直してくれて、ちょうど戻ってきたジェイスにいたたまれない気持ちをぶつけてブリジットは出ていきます。
その後ブリジットはアイザックの個人レッスンを受け、酒も入りふたりはキスをしていい感じに。でもそのときブリジットのスマホにジェイドから連絡が入ります。アイザックは反対方向だからとさっさと帰ってしまい、ブリジットは車を置いて歩いて帰ります。
酔って眠ってしまったブリジットは翌朝寝坊してマヤからの電話で起こされます。車がないので走って仕事に向かい、マヤは予約していた病院へでかけます。ふたりの子どもを預かったブリジットですが、フランシスがウォーレスをあやしながら眠ってしまい、その間シャワーを浴びてようやくさっぱりします。
別の日。ブリジットが仕事にやってくると隣人のシェリルが息子のヘンリーを連れて遊びに来ていました。ヘンリーはちょっと乱暴な男の子でフランシスに気があるようです。なんとシェリルはブリジットと大学時代をいっしょに過ごしており、一年で中退しその後定職についていないブリジットのことを下にみてメイドのように扱います。
そんなシェリルの振舞いにヤキモキするマヤ。シェリルは自分の家から息子のための食べ物を持ってくるようブリジットに指示します。ついてきたフランシスといっしょに準備していると誤ってニンジンを落としてしまいました。それをそのまま黙って食べさせ、ブリジットとフランシスは顔を見合わせて笑うのでした。
次第に仲良くなってきたブリジットとフランシス。スケート、プール、海…と夏を満喫しています。
あるとき、ふたりが家に戻ってくると中からマヤとアニーの言い争う声が聞こえます。産後ウツ気味のマヤと彼女の浮気を疑うアニーは最近ケンカばかりしています。
そんな中、フランシスはヘンリーの家の話をします。シェリルは離婚をしており、その原因はヘンリーが習っていた空手の先生だというのです。離婚後ヘンリーは空手を辞めたそうで、「ママとマミー(マヤとアニー)が離婚したらスケートできなくなる?」とフランシスは心配そうに聞きますが、「離婚しないよ」とブリジットは答えます。
セイント・フランシスの結末
ついにブリジットはアイザックと一夜をともにしますが、避妊は女性がするべきと考えている彼はコンドームをつけることをいやがります。結局うまくいかず、しかもブリジットの不正出血を見て彼は気分を害してしまいます。
ナニーの仕事中、考え事をしていてフランシスから目を離してしまったブリジット。その間にフランシスは池に落ちてしまい、あわててブリジットは家に戻りますがマヤに「親に過ちは許されない」と本気で怒られてしまいます。
その後また出血してしまったブリジットはマヤにシャワーと服を借り、出血が続いていることを話すとマヤも尿もれに悩んでいると打ち明けます。悩みを共有し距離の縮まったふたりは、その夜おこなわれる花火大会に子どもたちを連れていっしょに行くことにしました。
会場に着くとすぐにウォーレスが泣き出し、適当な場所がないのでマヤはベンチで授乳を始めます。すると隣のベンチにいた母親が露骨に嫌な顔をして文句を言いにきました。隠しもせず授乳するなんて非常識、(自分の)子どもの前なんですよと怒る彼女に、子どもに多様な社会を見せることも必要、と冷静に応対するマヤ。
しかし彼女は感情的な発言をし、ブリジットは即座に反応して謝罪を求めます。そして機転を利かせ、空気を読んだフランシスとともにその場を収めるのでした。
このことでさらに親密さの増したブリジット、マヤ、フランシスが花火を楽しんで帰宅すると、そこには気持ちを拗らせたアニーが待っていました。マヤはふたりに「話さないで」と言って子どもたちを寝かしつけに2階へ。
しかしアニーは、慣れているはずの人種差別をさっき受けたこと、マヤがなぜ病院に行かないのか、ブリジットと浮気しているのではないか、自分の居場所はここにはないのか…など感情を吐露します。それを聞いたブリジットは泣き出し、カトリック信者の彼らに言えなかった自身の中絶について告白します。
2階から下りてきたマヤは泣いているブリジットに驚き、服を返すというブリジットに「あげる。スーパーヒーローみたい」と微笑むのでした。
夏の終わり、教会でウォーレスの洗礼が行われています。その祝いの席にブリジットも参加し、フランシスとふたりで教会の中で懺悔の真似事を始めます。神父役はフランシス。ブリジットは、結婚もせず定職にもついていない自分を卑下しますが、フランシスはマヤが責められたとき、逃げなかったのは立派だったと讃えます。
このひと夏の経験はフランシスに、そしてブリジットに何らかの変化をもたらしたようです。
フランシスは久しぶりにジェイスに電話をかけますがあいにく留守電…。ブリジットは中絶したときの気持ちを素直にメッセージに残しますが時間切れで保存できず、再度かけると「電話して」とだけ短く録音するのでした。
いよいよ新学期。ナニー、ブリジットの最後の仕事はフランシスを小学校に送ることでしす。教室に入る前、エールを送ったブリジットはフランシスの背中を見送り涙ぐんでいました。
しばらくしてからその場を離れると、教室からフランシスが飛び出してきました。彼女はブリジットに向かって「生理が来たら電話する!」と叫び、ブリジットはおかしくて笑ってしまうのでした。
以上、映画「セイント・フランシス」のあらすじと結末でした。
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