愛を乞うひとの紹介:1998年日本映画。主人公、照恵を演じた原田美枝子が鬼のような照恵の実母と幼少のトラウマと闘う母となった照恵を巧みに演じている。母と子の壮絶な愛憎劇と再生の物語。
監督: 平山秀幸 出演者:原田美枝子(山岡照恵/陳豊子)、中井貴一(陳文夫)、小池沼愛(照恵5歳時)、牛島ゆうき(照恵10歳時)、野波真帆(山岡深草)、ほか
映画「愛を乞うひと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛を乞うひと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
愛を乞うひとの予告編 動画
映画「愛を乞うひと」解説
この解説記事には映画「愛を乞うひと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛を乞うひとのネタバレあらすじ:起
山岡照恵は幼い頃に他界した父の遺骨を娘の深草と探す長旅に台湾へ向かいます。一方で照恵は過去のトラウマと向き合わなければなりませんでした。彼女は幼少期に実母、豊子かの壮絶な虐待から生き延びてきた「サバイバー(生存者)」だったのです。未だに過去の悍ましい記憶がフラッシュバックし、照恵の心を苦しめます。照恵の母、豊子は最初は夫である陳文夫と照恵の3人で暮らしていましたが、豊子の照恵に対する痛ましい暴力を見逃せない彼は娘を守ろうと、豊子の元から照恵を連れ出しました。雨降る中で豊子は怒りをぶつけます。「いっちまえー馬鹿野郎!」。父親が唯一怖い存在から自分を救い出そうとした記憶が照恵の中に強く残っていました。照恵父の死後、児童養護施設に引き取られますが、豊子が新しい夫と腹違いの弟の武則を連れて照恵を迎えに来ます。豊子は些細な事で照恵を殴打したり罵ったり、煙草の火を押し付ける、思春期真っ只中というのに義理父の前で服を脱ぐことを強要し、戸惑う照恵を棒で殴りつける・・・。照恵は生きた心地がしない日常生活を送っていました。最初は仲裁してくれた義理父も見て見ぬふりをし、彼女には本当の愛情をもって接してくれた人間などいなかったのです。
愛を乞うひとのネタバレあらすじ:承
実父の遺骨を娘と探す大人になった照恵。夫と死別した為に彼女はシングルマザーでもありました。照恵はある日、武則が詐欺罪で逮捕された事を深草に伝えます。伯父の事を何も知らない深草。そんなとき、深草は母親のおどおどした様子を不審に思い、「お母さんは嘘つき、私とお母さんは実の親子じゃないんじゃないの」とひねくれた言葉を唐突に照恵に投げつけたことで平手打ちを食らいます。このとき、照恵は自分が娘にしてしまった咄嗟の行為に困惑しますが、ニヤリと笑みがこぼれるのでした。それは、被虐待児だった照恵が受けてきた心の傷が歪んだ形となってあらわれてしまった瞬間です。当然、深草にも「こんな時に笑うなんて嫌な奴」と言われてしまいます。照恵は自分がやってしまったことに罪悪感と内に眠る母の遺伝子を感じ、何度も手を洗い直すのでした。照恵は翌日、学校に出掛けた深草にぶった事を謝ります。しかし、深草は母に似ずメンタルが強く、「謝らないでよ、お母さんのそうゆうとこ嫌い。しっかりしてよね」とさほど気にしていない様子でした。帰り道、自転車に乗る親子。照恵は深草に自分は良い母親かとほろ酔い気分で尋ねます。それは照恵の本音であり、葛藤でもあります。就職し、成人した照恵は豊子の元からついに逃げ出します。我慢の限界と自立心の芽生えでした。鬼のような形相で娘を追いかける母と生き延びる為に逃げてゆく娘・・・。母に捕まった時、武則が母を捕まえて照恵を逃がします。「いいよ姉ちゃん!行けって!」照恵はひたすら走り続けます。
愛を乞うひとのネタバレあらすじ:転
台湾で父の情報を得られなかった照恵。杉並区役所にて、ついに父のお墓の居場所が発覚しました。「母さんはお骨を探す旅に出たんじゃなくてお母さんを探していたんでしょ」深草の言葉にあの時、父が母の元から自分を連れて行った記憶が再び甦ります。「いっちまえー!馬鹿野郎!台湾でも何処へでもいっちまえ!死んじまえ!どうしたらいいの?これから先あんたなしでどうしたらいいのよ。あんた一人にしないで!怖いよ・・・怖いよ」。豊子は心に激しい空白と強い見捨てられ感を抱えていたのです。話は今に戻り、深草は照恵に「おばあちゃんに会いに行こう」と言います。実は深草は豊子のことを照恵に内緒で調べていたのでした。
愛を乞うひとの結末
美容院を一人で経営する老女、豊子。変わり果てても昔と変わらぬ母の強烈な存在感と大人になった今の自分と瓜二つの顔に照恵は怯みます。豊子は照恵の事が最初分からず、ごく普通の客として接します。照恵の髪を切った時、豊子は自分がかつて額につけた傷跡を見て目の前にいる客が実の娘だと気付きます。しかし、敢えて何事もなかったかのように冷たく振舞い、照恵は「いつまでもお元気で」と言って母との決別を果たしたのでした。照恵は深草に言いました。「あんたが生まれた時私は嬉しかった。幸せだった。だからもういいの。やっと母さんにさよならが言えたよ。おかしいでしょ、あんな酷い母親に可愛いよ、お前の事が可愛いよって言って貰いたかったなんて」。「可愛いよ。母さん」は母の気持ちを汲み取り、母を心から愛する深草の言葉に照恵は泣いてしまいました。台湾にて、照恵と深草は文夫が遺したサトウキビ畑で刈りをしています。2人の穏やかな親子の時間に相応しい澄み切った青空が広がっていて、照恵は空を見上げました。
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