墨東綺譚(ぼくとうきだん)の紹介:1992年日本映画。永井荷風の自伝的小説「墨東奇譚」を題材にした新藤兼人監督による文芸作品。老齢作家と娼婦お雪の出会いと別れが叙情的に描かれていきます。お雪を演じた墨田ユキの体当たりの演技が話題を呼びました。
監督:新藤兼人 出演者:津川雅彦(永井荷風)、墨田ユキ(お雪)、宮崎美子(お久)、井川比佐志(菊池寛)、杉村春子(荷風の母)、乙羽信子(安藤まさ)、ほか
映画「墨東綺譚(1992年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「墨東綺譚(1992年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「墨東綺譚(1992年)」解説
この解説記事には映画「墨東綺譚(1992年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
墨東綺譚のネタバレあらすじ:起
大正9年5月、作家の永井荷風は麻布に偏奇館と名付けた新居を構えました。荷風は日記「断腸亭日乗」に日々の暮らしを記しはじめます。
大正15年、荷風の母は50歳になった荷風の身の上を案じ、結婚を勧めますが、荷風は多少の不自由は感じても自由を捨てたくないと断ります。荷風は二度の結婚を経験していましたが、いずれも失敗に終わっていました。荷風は家庭に縛られることで自身の創作意欲が失われることを恐れていました。
荷風にはお歌というよく出来た妾がいましたが、そのお歌も国に帰り結婚してしまいます。色を好む荷風は銀座のカフェで知り合った女給のお久と関係を持ちますが、強欲なお久から連日のように金を無心されるようになり、ついには警察に世話になる始末になってしまうのでした。
墨東綺譚のネタバレあらすじ:承
昭和11年、58歳になった荷風は性欲の減退を感じるとともに、創作意欲も失いつつありました。ある日、あてもなく夜道を歩いていた荷風は色街玉ノ井に迷い込みます。突然の雨に見舞われ、傘を広げたところ、若い娼婦お雪から傘に入れて欲しいと頼まれます。
こうしてお雪と出会った荷風は彼女に誘われるまま部屋へ上がり、関係を持ちます。そして気立てのよいお雪を気に入った荷風は玉ノ井に足しげく通いはじめます。
お雪と女将のまさは荷風が色本の写真家だと思い込んでいますが、荷風は素性を明かさぬまま、玉ノ井を舞台にした小説を書き始めます。昭和12年日中戦争が始まるとまさの一人息子である悟の出征が決まります。お雪はまさに頼まれ悟の客になってあげるのでした。
墨東綺譚のネタバレあらすじ:転
常連客からお雪を正式な妻として迎えたいという申し出がありましたが、お雪はこの話を断ります。荷風を深く愛するようになっていたお雪は、いつか荷風と夫婦になれる日を夢見るようになっていました。
一方、お雪の期待を重荷に感じている荷風は玉ノ井を避けるようになり、劇場で踊り子たちと遊びに興じる日々が続いていきます。その後、荷風が久しぶりに玉ノ井に顔を出すと、お雪から借金を返し切ったら妻にしてもらえないかと頼まれます。のらりくらりとかわそうとする荷風でしたが、結局お雪の熱意にほだされ結婚の約束をしてしまいます。
お雪から報告を受けたまさは、潔く借金をチャラにしてあげるのでした。お雪は荷風が迎えに来るのを待ち続けます。しかしその後、荷風が玉ノ井に現れることはありませんでした。
墨東綺譚の結末
昭和20年、「断腸亭日乗」は29巻にまで達していました。ふとお雪を思い出した荷風は玉ノ井に向かおうとしますが、空襲警報が鳴り始めて足止めされます。3月10日の東京大空襲でした。火災によって偏奇館は全焼、大空襲は東京を焼き尽し、色町玉ノ井も失われてしまいます。
戦争が終わると、女将とお雪は米兵相手の娼館で逞しく生き延びていました。お雪は荷風が文化勲章を受け取ったという記事を目にし、彼が著名な作家であることを知りますが、まさは信じようとしないのでした。一方、荷風は千葉県市川市に移り住み、孤老の晩年を過ごしていました。
昭和34年4月30日荷風は吐血して倒れ、誰に看取られることもなく息を引き取ります。日記には吉原遊郭の程近く、遊女の投込み寺として知られる浄閑寺で眠りたいと記されていました。
以上、映画「墨東綺譚(ぼくとうきだん)」のあらすじと結末でした。
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