ストレイ・ドッグの紹介:2018年アメリカ映画。エリンはロス市警の刑事ですが、酒に溺れて同僚や娘からも嫌われています。そんな彼女のもとへ紫色に染まったドル紙幣が届きます。エリンは17年前の事件を思い出し、犯人と戦うことを決意します。『ストレイ・ドッグ』は、ニコール・キッドマンが刑事役を熱演しています。ストーリーはエリンの現在と回想シーンが交互に進み、事件の謎が解明されていきます。
監督:カリン・クサマ 出演:ニコール・キッドマン(エリン・ベル)、トビー・ケベル(サイラス)、タチアナ・マズラニー(ペトラ)、セバスチャン・スタン(クリス)、スクート・マクネイリー(イーサン)、ブラッドリー・ウィットフォード(ディフランコ)、ほか
映画「ストレイ・ドッグ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ストレイ・ドッグ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ストレイドッグの予告編 動画
映画「ストレイ・ドッグ」解説
この解説記事には映画「ストレイ・ドッグ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ストレイドッグのネタバレあらすじ:起・紫のドル紙幣の謎
ロサンゼルス市警の刑事エリン・ベル(ニコール・キッドマン)が犯罪現場に呼ばれます。エリンは現場の死体周囲に、紫色の染みのついたドル紙幣を見つけます。エリンは職場に帰ると、郵便が届いており、中には紫色のドル紙幣が入っていました。
エリンはFBI捜査官を訪ね、17年前の事件について話します。エリンは紫色のドル紙幣について、17年前の銀行強盗事件の犯人サイラス(トビー・ケベル)の使用した紙幣だと言います。捜査官は、その紙幣は17年前の紙幣と一致すると言います。捜査官はエリンに娘シェルビーのことを聞くと、エリンはシェルビーの父クリス(セバスチャン・スタン)を思い出します。
(エリンの回想)17年前、エリンはFBIの捜査官でした。事件の調査中にエリンは同僚のクリスと恋愛関係になります。そして、エリンはクリスと共に身分を隠して潜入調査としてサイラスのパーティーに参加します。サイラスは銀行強盗を計画します。
エリンは、サイラスの仲間で刑務所から釈放されたトビー(ジェームズ・ジョーダン)を訪ね、サイラスの居場所を聞き出そうとします。トビーは病気で寝ていますが、エリンにサイラスの居場所は教えません。トビーは、サイラスの仲間アルトゥーロ(ザック・ビーヤ)の居場所である教会を教えます。
(エリンの回想)エリンはクリスとの潜入捜査で、サイラス、トビー、アルトゥーロ、ペトラ(タチラニ・マズラニー)と酒を飲んでいます。エリンとクリスはサイラスたちから信用されます。
ストレイドッグのネタバレあらすじ:承・サイラスを探すエリン
エリンは酒場で酒を飲んでいると、娘のシェルビーの件で連絡を受けます。エリンは16歳のシェルビーがバーにいることがわかり、そこへ向かいます。エリンはシェルビーがジェイ(ボー・ナップ)という男といることに激怒し、怒鳴りつけます。しかし、シェルビーはエリンが嫌いで言うことを聞きません。
エリンは、別れた夫でシェルビーの育ての親であるイーサン(スクート・マクネイリー)を訪ねます。エリンはイーサンにシェルビーの教育について話します。しかしイーサンはエリンを相手にしません。エリンはシェルビーに会い、遊ぶのは止めて学校に行くようにいいます。しかしシェルビーは母が嫌いで、相手にしません。
エリンはアルトゥーロが働いてる教会を訪れます。しかし、アルトゥーロはエリンから逃げ出します。エリンはアルトゥーロを捕まえますが、彼はサイラスから隠れているといいます。アルトゥーロはエリンに、サイラスの仲間の弁護士のディフランコ(ブラッドリー・ウィツトフォード)を訪ねるようにいいます。
エリンがディフランコの自宅を訪れます。エリンはサイラスのことを聞きますが、ディフランコは答えません。そしてエリンはディフランコのボディガードに暴行されます。エリンは反撃し、ボディガードを倒します。エリンはディフランコに銃を向け、サイラスの居場所を聞きます。ディフランコは、サイラスの彼女ペトラが遊園地に行くとことを告げます。
ストレイドッグのネタバレあらすじ:転・エリンのサイラスとシェルビーへの執念
エリンは、ペトラを遊園地のメリーゴーランドで見つけ、尾行します。エリンは、ペトラが銀行で数人の強盗と会うのを目撃し、ロス市警に救援を頼みます。エリンは、駆けつけたロス市警の警官と共に、強盗と銃撃戦になります。ペトラは逃げますが、エリンは彼女を追います。そしてペトラを捕まえ、車に乗せます。エリンはペトラを自宅に連れ込み、彼女にサリナス逮捕のための協力を求めます。エリンはペトラの携帯を奪います。
(エリンの回想)エリンはクリスと関係を深め、シェルビーを妊娠します。
エリンはイーサンに会い「隠している金を渡すからシェルビーと引っ越して幸せに暮らしてほしい」と言います。しかしイーサンは、金の受け取りを拒絶します。エリンは、倉庫へ行き古いカバンを取り出します。エリンはカバンの中の金を取り出しますが、大半は紫色に染まっていて使えません。エリンは、使えそうなドル紙幣を持ち、ジェイに会います。エリンはジェイに金を渡し、シェルビーと縁を切ることを求めます。そしてジェイはシェルビーと縁を切ることに同意します。
ストレイドッグの結末:サイラスとエリンの対決
(エリンの回想)エリンとクリスは、サイラスの強盗計画を潜入調査中です。2人はサイラスと強盗計画の運転手役になることにします。そしてエリンはクリスに、強盗成功後は成功報酬として受け取る金を隠して、二人で暮らすことを求めます。
エリン、クリス、サイラス、ペトラ、アルトゥーロ、トビーたちは強盗を行います。しかしサイラスが奪った金の入ったカバンの中にあったダイパック(銀行強盗対策に銀行が紙幣束に忍び込ませる追跡用染料を含んだラジコン式焼夷弾)が炸裂します。怒ったサイラスは、紫色に染まったドル紙幣の束を持ち銀行に戻ります。クリスが戻り、FBIだと言ってサイラスを逮捕しようとしますが、クリスはサイラスによって射殺されます。
トビーはエリンたちの正体に気づきます。トビーはエリンの車に行き、エリンに銃をつきつけます。するとエリンの車はゴミ集積所に突っ込みます。エリンは金の入ったカバンをゴミ箱の中に隠します。エリンは警察に連絡し、トビー逮捕を求めます。
エリンはシェルビーと会いますが、シェルビーは彼女を責めます。シェルビーは、少女時代にエリンにキャンプに連れ出され、雪の中で遭難し怖い思いをしたことを話します。エリンはシェルビーに、クリスが父であることを話しますが、シェルビーは、イーサンが父だと言い張ります。エリンはクリスの死の真相を話し、彼の死は自分の責任だと話します。
エリンはペトラの携帯でサイラスからのメッセージを受け、サイラスの居場所を知ります。エリンはサイラスに会い射殺します。エリンは紫色のドル紙幣をサイラスの死体に置きました。
(冒頭のシーン)エリンは紫色のドル紙幣が置かれたサイラスの死体を見ます。エリンは彼氏で同僚のアンソニーに会い封筒を渡します。アンソニーは「封筒の中は?」と聞くと、エリンは「自分で考えて」と言います。封筒の中は、ペトラの連絡先と、紫色の紙幣が入ったカバンの隠し場所の鍵でした。
(エリンの回想)エリンは、クリスにFBIの仕事に疲れたことを話します。エリンは、強盗の成功報酬の金を受け取ることをクリスに求め、クリスは同意します。
エリンは、激闘で傷つき死んでいきます。彼女は昔、遭難した雪の中でシェルビーをおんぶする姿を思い出します。
以上、映画「ストレイ・ドッグ」のあらすじと結末でした。
ウイスキーやバーボンなどの洋酒(スピリッツ)やカクテルは複雑な味わいが格別でひとたび口にすると病みつきになる。苦みと辛さに加えてほんのりとした甘さが絶妙に入り混じる。事程左様に酒こそは甘くてほろ苦い人生の味がするのだ。この映画を観ていてふと、酒と人生の複雑な味わいを思い浮かべた。ニコール・キッドマンの渾身の演技が画面いっぱいに広がる。ニコール・キッドマンの外連味のない素の表情が人間の性(さが)を浮き彫りにして切ないくらいに美しかった。映画の中ではキッドマンはエリンそのものだった。エリンの化粧っ気のない乾いた素肌と、額に刻まれた深い皺に人間の真剣さと誠実さを受け取ったのである。つまりは人間の真の美しさを私はエリン(キッドマン)に再発見したということになる。過去と現在を巧みにラップさせたストーリー展開も良かった。心の中に深い闇を抱える女は自分が母親失格であることを誰よりもよく知っているのだ。エリンは悪党から何度も暴力を受けては苦痛に顔を歪めて倒れ込む。そしてその度に不屈の闘志を燃やして立ち上がる。肉体が受けた激痛やダメージは自分への罰であるとエリンは解釈していたのではないだろうか。激痛を甘んじて受けることが彼女にとっての唯一の救いだったのではないか。過去の過ちを悔い改める贖罪意識が満身創痍のエリンを奮い立たせていたのだ。それがなかったらエリンはとっくの昔に倒れて(挫折して)いたはずである。この映画のラストでセダンに乗ったエリンの虚ろな瞳がアップになる。セダンの外(下界)には青い空に囲まれた広大なる世界が何処までも広がっている。もはやエリンは自分の視力には頼らず心の目で世界を見つめようとしている。そしてとうとう、エリンが広大なる世界と同化して溶け込んだ所で映画は終わる。そう、彼女は死んだのではくて自分の望み通りに世界と同化したのだ。こう言う切ない大人のファンタジーをこの映画の世界に感じたのである。クライムサスペンスやハードボイルドとしても秀逸であり、また人間ドラマとしても誠に見事で(リアルで)見応えがあった。そして何より、この映画のニコール・キッドマンが最高なのであった。キッドマンの映画は全てが個性派揃い粒揃いであるが、ストレイ・ドッグはその中でも最高峰ではないかと思う。ニコール・キッドマンがこの映画に命を懸けて臨んだ矜持と女優気質とその心意気に私は心から敬意を表したいと思う。