インテリアの紹介:1978年アメリカ映画。ウディ・アレンによる初めてのシリアス・ドラマ。敬愛するイングマール・ベルイマン監督の画調を研究。その作品そっくりに仕上げている。モーリン・ステイプルトンが批評家協会の各賞を受賞し、その後のアレン作品で様々な俳優が助演賞を受賞する端緒となった。
監督:ウディ・アレン 出演:ダイアン・キートン(レナータ)、ジェラルディン・ペイジ(イブ)、E・G・マーシャル(アーサー)、クリスティン・グリフィス(フリン)、ほか
映画「インテリア」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「インテリア」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「インテリア」解説
この解説記事には映画「インテリア」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
インテリアのネタバレあらすじ:起
老年期に入った男が窓辺に立っています。妻との出会いを語る口調は、その富裕な様子とは裏腹に苦渋に満ちています。彼は企業弁護士のアーサー。その妻のイヴはインテリア・デザイナーで、高慢で自分勝手な性格の彼女は、人の思惑に構わず行動するので何かとトラブルの種を撒いていました。そしてある日、アーサーは娘たちとの朝食の席で、目の前にいる妻に対して別居を宣言します。自分が家庭の主のように振る舞う彼女にもう我慢ができなくなったのです。そしてアーサーが出てゆく前にイヴの方が家庭を去りました。
インテリアのネタバレあらすじ:承
すでに精神的に不安定になっていた彼女はこの別居によってその症状が悪化。そのわがままぶりに散々振り回されてきた娘達ですが、さすがに一人暮らしを始めた母親には同情し、色々と気遣いを示します。しかし、イヴの憂鬱はさらに深まり、ついにガズ自殺を図ります。未遂に終わりましたが、イヴの気持ちはずっと落ち込み続け、娘達の心配も収まりません。娘たち自身も夫やパートナーとの関係に悩みがあり、それはイヴへの気遣いとも絡んで事態を複雑化してゆきます。一方、アーサーの方はギリシャへの旅行に出かけ、そこで知り合った中年女性を連れて戻ってきます。
インテリアのネタバレあらすじ:転
パールという名のその女性は勝ち気そうですが常識的で、イヴとはまるで正反対のタイプでした。イヴが自殺未遂をおこしたことを知っても心配な顔を見せず、アーサーはパールとの再婚の意向を娘達に知らせます。やがてアーサーは書式での申請を行い、イヴと正式に離婚。パールと結婚します。あくまでイヴの側に立っていた娘たちはその結婚には反対でしたが、アーサーのたっての願いで夫たちと共に海辺の別荘での結婚式に出席。式後のパーティではアーサーとパールだけがはしゃいでいるだけで、娘たちはウンザリした表情です。
インテリアの結末
その夜、別荘の居間にいた娘の一人が忍び込んできたイヴとばったり顔を合わせます。そしてイヴは、もう明るくなり始めた別荘の目の前の海へゆっくりと歩いてゆき、そのまま溺れてしまいます。娘が彼女を救出しようとしますが、その甲斐もなく母親は死亡。葬式が行われますが、娘たちの胸には色々な気持ちが渦巻いていました。
才能のある姉と才能のない妹。完璧を求める母と、安らぎを求める父。
認められた妻と、認められない夫。
そこには様々な対立、複雑な人間関係がある。
そして、扱われているテーマは、死であり、美であり、才能であり、愛だ。
映画「アニー・ホール」を観た時、ウディ・アレンのセリフ「僕は、他の人達が苦しんでいるとき、一人だけ楽しむことはできないんだ—–」が、私の胸を刺した。
きっと、この人は、”真実の眼”を持っているに違いない—–その勘は当たっていた。
このウディ・アレン監督の映画「インテリア」において、彼の洞察力の鋭さ、真実を追い求める姿勢が、充分にうかがえる。
「一人のモーツァルトの影に百人のモーツァルトがいる」という言葉があるが、一人の才能のある、秀でた人間の側には、そのために苦しんだり、焦ったり、悩んだりする平凡な人間がたくさんいるのだ。
また、秀でた人間の側にも、真に理解してもらえないという、孤独感、苦しみがあるだろう。
しかし、いずれにしろ、人間というものは、たった一人で死んでいく運命にある。
そのとき、才能があるかないか、美しいか美しくないかなどということは、全く関係ないことだ。
あまりにも、近代的な自我が発達し、才能ある者への希求が強い現代において、もっとも単純で基本的なこのことが、案外、忘れられているのではないだろうか?
ウディ・アレンが、例の語り口で、「結局、死ぬときは皆一緒さ—–」と言っているのが、聞こえてきそうな気がします。