小さな巨人の紹介:1970年アメリカ映画。アメリカの開拓時代、両親を殺されインディアンに育てられた男の数奇な運命と闘いの日々を、年老いた男の回顧という形で描いた壮大な西部劇です。歴史上実際に起こった出来事も織り込まれています。
監督:アーサー・ペン 出演者:ダスティン・ホフマン(ジャック・クラブ)、ェイ・ダナウェイ(ペンドレイク夫人)、チーフ・ダン・ジョージ(オールド・ロッジ・スキンズ )、マーティン・バルサム(メリウェザー)、リチャード・マリガン(カスター将軍 )ほか
映画「小さな巨人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「小さな巨人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「小さな巨人」解説
この解説記事には映画「小さな巨人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
小さな巨人のネタバレあらすじ:起
1970年。今年121 歳になる老人ジャック・クラブ(ダスティン・ホフマン)は、ロサンゼルス在郷軍人病院の1室にて、歴史学者のインタビューに答えていました。今から110年前の1859年。ちょうど南北戦争が勃発する直前、当時10歳だったジャック(レイ・ディマス)はインディアンに両親を殺され、姉のキャロライン(キャロル・アンドロスキー)と共に落ち延びたところを、シャイアン族の戦士「見える影」(ルーベン・モレノ)に発見され保護されます。酋長の「オールド・ロッジ・スキンズ」(チーフ・ダン・ジョージ)はジャックらを快く迎え入れますが、襲われると思ったキャロラインは馬を盗んでいずこへと脱走し、取り残されたジャックは集落で育てられます。14歳になったジャックは、仲間を救うため対立する別の部族と闘い、酋長から「小さな巨人(リトル・ビッグ・マン)」という名を与えられます。
小さな巨人のネタバレあらすじ:承
シャイアン族として成長したジャックは、17歳の時に初めて騎兵隊と戦い、あわや殺されようとしたその時、思わず「ジョージ・ワシントン!」と叫びました。ジャックの白い肌を見た兵士は彼を保護し、ジャックは牧師に引き取られます。ジャックは若く美しいペンドレイク夫人(フェイ・ダナウェイ)と対面しますが、彼女の淫乱な素顔を見て愛想を尽かし、牧師の家を飛び出していきました。1874年、25歳になったジャックは、ペテン師の商人メリウェザー(マーティン・バルサム)と行動を共にしていました。ある夜、ジャックらはメリウェザーに恨みを持つ暴漢一味に襲われますが、その女ボスとは15年前に生き別れた姉キャロラインだったのです。ジャックは今や名うてのガンマンとなった彼女から射撃を教えてもらい、次第にその腕を上げていきます。伝説のガンマン、ワイルド・ビル・ヒコック(ジェフ・コーリー)とも知り合いますが、自分に人殺しはできないことを悟ると姉と決別、ガンマンを辞めて雑貨商に転身します。ジャックはスウェーデン出身の女性オルガ(ケリー・ジーン・ピータース)と結婚、ささやかな幸せを得ますが、相棒に騙されて破産してしまいます。
小さな巨人のネタバレあらすじ:転
ジャックの人生の転機となったのは、偶然に立ち寄った第7騎兵隊の司令官カスター将軍(リチャード・マリガン)との出会いでした。カスター将軍から西部に行くよう勧められたジャック夫妻でしたが、途中でインディアンに襲撃され、妻オルガは連れ去られてしまいます。ジャックは必死で妻の行方を追いますが何も手掛かりはつかめず、妻を探すために騎兵隊の偵察員になります。しかし、ジャックはカスター将軍の騎兵隊がかつて自分が育ったシャイアンの集落を襲撃する様に遭遇します。かつて自分と姉を助けてくれた「見える影」はこの戦いで命を落とし、ジャックはその娘「日の光」(エイミー・エクルズ)を助けて新たな妻に迎えます。その1年後、シャイアン族は政府の指定したワシタ地区に強制移住を余儀なくされ、ジャックはかつての妻オルガと再会します。しかし、オルガは既にシャイアン族の男と再婚していました。やがてジャックと「日の光」の間には男の子が生まれますが、再び集落を襲ってきた第7騎兵隊によりジャックは「日の光」と生まれたばかりの子を惨殺されます。俗に言う「ワシタ川の虐殺」です。酋長を連れて脱出したジャックはカスター将軍に復讐を誓います。
小さな巨人の結末
人生に絶望し、酒浸りになっていたジャックは、高い崖の上から身を投げようとしていたちょうどその時、行進するカスター将軍と第7騎兵隊の姿を目撃し、復讐のため再び偵察員に志願します。カスターは部下の反対を押し切り、ジャックは戦略上裏目を見通すバロメーターだとして、敢えてジャックを雇います。そしてジャックの思惑通り、カスター将軍と第7騎兵隊はインディアンの罠に嵌り、後に「リトルビッグホーンの戦い」と呼ばれる壮絶な戦いに巻き込まれていきます。この戦いで騎兵隊の兵士は次々と死んでいき、最後はカスターも絶命し、第7騎兵隊は全滅します。ジャックは重傷を負いますが、かつて命を救った仲間に助けられます。ジャックはその後はシャイアン族と共に暮らしました。そして1970年。インタビューを終えたジャックは歴史学者を帰し、一人きりになって物思いにふけるのでした。
「小さな巨人」は、ダスティン・ホフマンが驚くべきメーキャップで演じた、101歳の老インディアン(?)のおしゃべりによって、この映画は始まります。
監督は、「俺たちに明日はない」で、”アメリカン・ニューシネマ”時代をリードする存在となったアーサー・ペン。
彼の思い出話によって展開されるこの西部劇は、カスター将軍、ワイルド・ビル・ヒコック、シッティング・ブル、クレイジー・ホースなどのお馴染みの人物たちが、賑やかに登場してくれます。
だが、カスター将軍の偏執狂的な描き方など、まさに西部劇というジャンルが、とてもシラケてしまった時代の産物という他ありません。
また、牧師の貞淑な妻が、欲求不満気味の浮気妻であったり、ビル・ヒコックも臆病な卑怯者であったりと、全く新しい視点で様々なエピソードを描いていくことで、”西部劇の神話”を次々と崩していくのです。
映画の夢、少年の夢の西部劇が、音を立てて崩壊していくような感傷的な気分になってしまいます。
奇妙な運命のいたずらによって、ダスティン・ホフマン演じる主人公は、白人社会と、インディアン社会を行ったり来たりしなくてはならなくなるのです。
白人でも、インディアンでもない、どちらでもない哀しみを生きる彼は、まるで場違いなところに放り込まれた”道化”といった感じです。
そのどちらでもない人間を通して、アメリカという国の矛盾が浮かび上がってくると思うのです。