エム・バタフライの紹介:1993年アメリカ映画。デヴィット・ヘンリー・ホアンによる戯曲『M.バタフライ』を映画化。文化大革命が吹き荒れる60年代の中国を舞台に、悲劇的な愛を描いたドラマ作品。1964年、北京のフランス大使館に派遣された外交官ガリマールは、美しい京劇の舞台女優ソン・リリンに熱烈な恋をする。ソンは慎ましく従順で、ガリマールが思い描く「東洋の女性」そのものだった。ソンを深く愛していくガリマールだったが、彼女には驚愕すべき秘密が隠されていた。実話を基にした、人間ドラマの傑作。
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ジェレミー・アイアンズ(ルネ・ガリマール)、ジョン・ローン(ソン・リリン)、バルバラ・スコヴァ(ジーン・ガリマール)、イアン・リチャードソン(トゥーロン大使)、アナベル・レヴェントン(フロー・ベイデン)ほか
映画「エム・バタフライ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エム・バタフライ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
エム・バタフライの予告編 動画
映画「エム・バタフライ」解説
この解説記事には映画「エム・バタフライ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エムバタフライのネタバレあらすじ:運命的な恋
舞台は1964年、文化大革命前夜の中国、北京。フランス大使館では情報員の横領がはびこり、それを調べるため会計係ルネ・ガリマールが赴任して来ました。
ある夜会でオペラ『蝶々夫人』を観劇した彼は、主演の歌姫ソン・リリンに一目で心を奪われてしまいます。ガリマールは早速ソンに声を掛け絶賛しましたが、彼女の反応は冷ややかでした。『蝶々夫人』を美しいと感じるのは、西洋人が東洋人を無意識に見下しているからだと指摘するソン。確かにガリマールは、東洋人は西洋人に憧れを抱き、従属することを望むと思い込んでいるステレオタイプの帝国主義者でした。
ソンは本物の演劇を見たいなら、自身が出演する京劇を見に来るよう言います。ソンのことが頭から離れないガリマールは、わざわざ京劇の劇場にも足を運びました。控えめで従順なソンは、ガリマールにとってイメージ通りの「東洋の女性」です。そんな彼女にますます惚れ込んだガリマールは、積極的なアプローチを続けました。
そんな折、ガリマールは熱心な仕事ぶりを買われ、副領事に昇進します。仕事でなかなか会えない間も、ソンからは会いたいという熱烈な手紙が届いていました。そして久しぶりに彼女の家へ行ったガリマールは、ついに肉体関係を結びます。ソンは、中国の女性は慎みが大事だと言って決して裸体を見せませんでした。
エムバタフライのネタバレあらすじ:衝撃の秘密
ガリマールは精力的に仕事をこなし、今後の中国との付き合い方や、ベトナム戦争についての考えも大使のトゥーロンに語ります。一方、ソンの家には中国共産党の同志チンがやって来ました。
ソンは彼女に、ベトナム戦争に関するアメリカの情報を詳しく伝えます。ソンはスパイ活動を行っていました。同志チンはソンに目をやり、「あの男がいないのに 女装なんかして」と吐き捨てます。驚くべきことに、ソンは男性だったのです。彼は女装をして手に入れた情報を中国当局に流すことで、文化大革命の粛清から逃れていたのでした。
ソンが女性であることを疑いもしないガリマールは、夜に酒に酔って家に押しかけ、裸を見せろと命令します。ソンは妊娠したと嘘をついてその場を誤魔化しました。ガリマールは大喜びし、ソンを永遠に愛すると誓います。ソンは出産のため故郷に戻ると言い、別れを惜しむガリマールの前から姿を消しました。
エムバタフライのネタバレあらすじ:別れ
それからしばらくして、ソンは赤ん坊を抱いてガリマールのもとを訪れました。赤ん坊は同志チンに頼んで手配して貰った男の子です。すっかり騙されたガリマールは、妻と別れソンと結婚することを決意しました。
しかしそこに現れた兵士によって、ソンと赤ん坊は連行されてしまいます。ソンは文化大革命の名のもと、強制労働を課せられ財産も没収されてしまいました。更にガリマールは仕事上の判断ミスを問題視され、失意の中中国を去ることになります。
エムバタフライのネタバレあらすじ:真実を前にして
1968年、パリ。妻とも離婚し、1人侘しい生活を送るガリマールはソンを忘れられずにいました。そんなある日、思いがけずソンが訪ねて来ます。ガリマールは再会を喜び、変わらぬ愛を告げました。しかし息子が中国当局に押さえられているとソンから聞かされ、深い悲しみに沈みます。
彼はソンの勧めで機密文書を扱う郵便配達員になりました。そこで知り得た情報を、息子のためにソンに渡し続けます。やがて情報局に嗅ぎつけられ、ガリマールはスパイ容疑で捕まり裁判を受けることになりました。
裁判当日、証言台に立ったのは、短髪で背広姿のソンでした。彼の本当の姿を知ったガリマールは、あまりのことに言葉も出ません。法廷がガリマールの勘違いに戸惑いと嘲笑を隠せない中、ソンは全てを正直に語りました。有罪判決の後、2人は護送車の中で向き合います。「君は別人だ」と顔を背けるガリマールに、ソンは服を脱いで全裸になりました。
その姿は間違いなく男性です。ソンはガリマールの足元に跪き、「あなたのバタフライよ」と変わらぬ愛を期待しました。しかしガリマールは「会いしたのは お前の幻 完ぺきな幻 それも崩れた」と拒絶し、ソンは涙を流します。
エムバタフライの結末:マダム・バタフライ
ソンは中国に送還され、ガリマールは刑務所に収容されました。ガリマールは特別にお粉や紅、鬘を取り寄せて貰い、囚人達の前で一人芝居を始めます。顔は白く、目の周りと唇は真っ赤に塗り、いつか見た京劇のソンのように化粧するガリマール。
彼は彼自身がイメージする「東洋の女性」になっていきます。愛のために身を擲ち、名誉ある死を遂げる、蝶々夫人のような女性へと。ソンに全ての愛を捧げた彼は、正に蝶々夫人でした。
化粧を施したガリマールは言います。「わたしは――ルネ・ガリマール またの名を――マダム・バタフライ」と。囚人達の拍手を浴びながら、ガリマールは小さな鏡を握り締めます。そのまま喉を切り裂いて自殺し、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「エム・バタフライ」のあらすじと結末でした。
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