スローターハウス5の紹介:1972年アメリカ映画。第二次世界大戦時の“ドレスデン爆撃”をモチーフとしたカート・ヴォネガットの同名小説を映画化したSF作品です。大戦に従軍していたひとりのアメリカ兵が過去・現在・未来をタイムトラベルするうちに様々なことを経験していきます。
監督:ジョージ・ロイ・ヒル 出演者:マイケル・サックス(ビリー・ビルグリム)、ロン・リーブマン(ポール・ラザロ)、ユージン・ロッシェ(エドガー・ダービー)、シャロン・ガンズ(バレンシア・ビルグリム)、ヴァレリー・ペリン(モンタナ・ワイルドハック)ほか
映画「スローターハウス5」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スローターハウス5」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「スローターハウス5」解説
この解説記事には映画「スローターハウス5」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スローターハウス5のネタバレあらすじ:起
アメリカ人のビリー・ビルグリム(マイケル・サックス)はタイプライターで自らの半生を振り返る記事を書いていました。ビリーには人知れず特殊な能力がありました。それは自分の意志とは関係なしに時間を超越してタイムトラベルをすることが可能で、過去・現代・未来、あらゆる世界を自由自在に飛び回ることができるのです。ある時、ビリーはいつの間にか第二次世界大戦にてヨーロッパ戦線に従軍するアメリカ兵としてタイムワープしており、家の外では訪ねてきたビリーの娘バーバラ(ホーリー・ニア)とその夫スタンリー(ゲイリー・ウェインスミス)が心配してその名を呼び続けていました。その頃、たまたま道に迷っていたビリーは二人のアメリカ兵、ラザロ(ロン・リーブマン)とウェアリー(ケヴィン・コンウェイ)に遭遇、あわやドイツ兵に間違えられて暴行されそうになったところを本物のドイツ軍に捕まってしまい、捕虜として監獄に収容されました。
スローターハウス5のネタバレあらすじ:承
気が付くと、ビリーは自宅で結婚したばかりの妻バレンシア(シャロン・ガンズ)と戯れていました。しかし程なくしてビリーはまたしても戦場に送られ、今度は収容所に護送されるための列車に乗せられました。ビリーに足を踏まれたウェアリーはやがてその足が腐り出し、ビリーに恨み節を言いながら死んでいきました。親友ウェアリーの死にラザロはビリーへの復讐を誓いました。一方、ビリーは終戦後に興した事業が成功、自社ビルを建てるまでに至っていました。しかし、ビリーはまたしても戦時中に飛ばされ、今度は捕虜収容所で元教師だという兵士のダービー(ユージン・ロッシェ)と出会いました。正義感の強いダービーは執拗にビリーに対して嫌がらせや暴力を振るうラザロからビリーを助け、二人はすっかり仲良しになりました。ビリーは今度は結婚1年後の幸せな時期に飛ばされました。ちょうど息子ロバートが産まれた頃で、愛犬を連れて散歩をしていたビリーは湖畔で空を飛ぶ謎の円盤型の物体を目撃しました。その後もビリーは戦時中と戦後を行き来し、ダービーと友情を深めると共に、成長したロバート(ペリー・キング)が隠し持っていたエロ本や映画でポルノ女優のモンタナ(ヴァレリー・ペリン)の存在を知りました。
スローターハウス5のネタバレあらすじ:転
再び戦時中に戻ると、捕虜たちはドレスデンの収容所“スローターハウス5”へ移送されることになり、捕虜とドイツ軍との橋渡し役となるリーダーにはラザロを抑えてダービーが就任しました。しかし、ビリーはまたしても戦後に飛ばされ、バレンシアとバーバラに見送られながら、義父のマーブル(ソーレル・ブーケ)とモントリオール出張に向かう飛行機に乗り込みました。しかし、家族らの背後にスキーマスクを被った男たちを目撃、すぐさま飛行機を止めるようパイロットに要求しましたが聞き入れられず、飛行機は離陸直後に爆破炎上して墜落、ビリーはスキーマスクの男に助けられて病院に搬送されました。事故の知らせを聞いたバレンシアはすぐさま病院に車を走らせましたが、途中で事故に遭い命を落としました。しかし、ビリーが目の当たりにしたのは、未曽有の大空襲により跡形もなく廃墟と化したドレスデンの街でした。その後、ビリーはベトナム戦争の時代に飛ばされ、立派な軍人になったロバートがベトナムへ派兵されるのを見送りました。
スローターハウス5の結末
ビリーは愛犬と共に、かつて目撃した謎の円盤型飛行物体に連れ去られてしまい、トラルファマドールという惑星に連行されました。そこにはモンタナも連れてこられており、打ち解け合った二人はやがて愛し合うようになっていきました。しかしその矢先、ビリーはまたしても空襲後のドレスデンに飛ばされ、他の捕虜たちと共に瓦礫撤去や死体処理に従事させられました。そんな時、妻がお気に入りだという人形を見つけたダービーはドイツ兵に連行されて射殺されてしまい、止めに入ったビリーも撃たれてしまいます。その瞬間、ビリーは未来に飛ばされ、自宅を訪れたバーバラ夫妻にトラルファマドール星のことを語り、そして自らの死期についても口を開きました。そして時は流れ、ビリーはフィラデルフィアでトラルファマドール星や自らの体験について講演を開き、「演説が終わるとわたしは殺されるだろう。死は怖くない。そして生きる、トラルファマドール星人のあいさつをしましょう。永遠につながり、抱きしめている。こんにちは。さようなら。」と語ったその時、ラザロに狙撃されて死亡しました…。気が付くと、ビリーはトラルファマドール星に飛ばされていました。モンタナとの間には子供が産まれ、ビリーは我が子に“ビリー”と名付けました。
この映画「スローターハウス5」は、現代アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット・ジュニアが、1969年に発表した彼の戦争中の体験に基づく、半自伝的なSF小説の映画化作品だ。
そして、この作品は、人生の不条理、戦争の残酷さが、時にはアイロニーを込めて、ファンタスティックに描かれているのです。
このジグソー・パズルのような複雑な構成の原作を、「明日に向って撃て!」「スティング」の名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督が、類まれなる卓抜した演出で映像化した傑作だと思う。
原作の小説は私の愛読書の1冊ですが、この原作小説は、複雑な構成をとっていますが、映画もまたその構成に沿い、過去、現在、未来や場所を超えて自在に飛び交っていると思う。
第二次世界大戦に出征し、戦後は実業家として成功、一見平凡な生活を送るビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)。
だが彼は、時空を超えて自由に過去・現在・未来を行き来できる超能力を持っていた。
しかも、彼が常に立ち戻るのは、第二次世界大戦中に、遭遇したドレスデンの無差別攻撃。
そこでの悲痛な体験が彼の人生を決定したのだ。
子供の頃、父親からプールに突き落とされ、無抵抗主義ゆえに水の中に沈んだビリー・ピルグリム。
若い日に見た野外劇場の踊子。ベルギー戦線でドイツ軍の捕虜となり、屠殺場(スローターハウス)へ移送される途中、凍傷にかかったアメリカ兵の足を踏み、それが原因で彼を死なせ、これを目撃したラザロ(ロン・リーブマン)につきまとわれることになる。その後、ドレスデンの収容所が連合軍の空襲を受け、町は一変したが、彼は助かったのだった——–。
戦後、事業家の娘ヴァレンシア(シャロン・ガンズ)と結婚し、家まで贈られて優雅な生活を送り、中産階級の一員として大成功したのだった。
ヴェトナム戦争に出征した息子が、立派な兵士となり、ビリーは冷ややかに見つめるのだった。
飛行機が山に激突し、ビリーは重傷を負い、妻は半狂乱の末、車の衝突で死んでしまう。
そして、ビリーもラザロに射殺され、二百億後年のかなたのトラルファマドア星で、若き日に野外劇場で見た女モンタナ(ヴァレリー・ペリン)と戯れている。
時間的な配列を追えば、このようになりますが、これを、時空を飛躍する悩みをタイプに打ち続ける彼を現時点に据え、大胆に配列しているのです。
むろんその核になっているのは、戦場での悲痛な体験であり、その体験を重く背負った主人公の姿なのだ。
だが、未来における彼は、光明の中にいる。
そのあたりに、過去に取り憑かれながら、光明の未来を追うジョージ・ロイ・ヒル監督の共通の主題が見い出されるような気がします。
また、この映画の音楽はバッハの「ブランデンブルク協奏曲」などをグレン・グールドの編曲により使用していて、実に素晴らしかったと思う。