ソルジャーブルーの紹介:1970年アメリカ映画。1864年11月29日に起きた「サンドクリークの大虐殺」をあつかった西部劇。先住民に拉致された白人女性が先住民を代弁する。映画の終盤の騎兵隊によるシャイアン族無差別殺戮の目をそむけたくなる残忍さ。
監督:ラルフ・ネルソン 出演者:キャンディス・バーゲン(クレスタ・リー)、ピーター・ストラウス(ホーナス・ガント)、ドナルド・プレザンス(カンバー)、ジョージ・リヴェロ(まだら狼)、ボブ・キャラウェイ(マクネアー中尉)
映画「ソルジャーブルー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ソルジャーブルー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ソルジャーブルー」解説
この解説記事には映画「ソルジャーブルー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ソルジャーブルーのネタバレあらすじ:起・シャイアン族による馬車襲撃
捕えられて二年間シャイアン族と共に生活した白人女性、クレスタ・リーが集落を抜け出す。白人世界に帰還した彼女には騎兵隊士官の婚約者がいた。婚約者のいる砦に向かう現金輸送馬車の責任者である主計官の大尉はしぶしぶ彼女を同乗させる。「シャイアンは現金など必要としないからこの馬車は安全」という騎兵隊兵士たちの意見にもかかわらず、主計官は馬車の側衛を出させる。二人の側衛の一人はホーナス・ガント二等兵だった。 ホーナスと馬を並べていた側衛の兵士が突然顔を撃ち抜かれる。襲撃しないはずのシャイアン族が襲撃してきた。兵士たちは撃ち殺され、刺殺され、焼き殺される。逃げのびたのはホーナスとクレスタだけだった。襲撃のリーダーは酋長のまだら狼。彼はシャイアン族の集落ではクレスタの夫であった。
ソルジャーブルーのネタバレあらすじ:承・カイオワ族と遭遇
二人の男女は砦を目指して歩み始めるが、男の前で下着を脱ぎ、死者の持ち物を平気でもらっていき、21人の兵士の犠牲を悼むよりも失った帽子を惜しむクレスタをホーナスは嫌う。クレスタも頭の固い兵士であるホーナスを制服の色にちなんで「ソルジャーブルー」と呼ぶ。しかし、旅を進めるうちに、互いの身の上、人となりがわかってくる。 靴下の片方を失くしたホーナスはクレスタが止めるのをきかずに靴下をさがし始める。だがそれを拾ったのはカイオワ族の男であった。二人はカイオワ族に囲まれる。クレスタが交渉してカイオワ族の一人がホーナスと決闘をすることになる。ホーナスは辛うじて決闘に勝利し、カイオワ族の男たちは立ち去る。寒い夜、クレスタはホーナスとくっついて寝ることにする。
ソルジャーブルーのネタバレあらすじ:転・悪徳商人カンバー
二人は白人の馬車をみつける。それは商人のカンバーのものだった。ホーナスはカンバーの話に疑問をもつ。本当はこの男は先住民に銃を密売しているのではないか。ホーナスに問いただされてクレスタはシャイアンの集落でカンバーに会ったことがあることを白状する。シャイアン族はカンバーから武器を入手するのに必要な現金のために現金輸送馬車を襲撃したのだった。ホーナスは馬車にたくさんの銃が隠されているのを発見したが、カンバーにみつかり、クレスタと共に手足を縛られる。しかし、カンバーが食料にする動物を撃ちに出かけたすきにホーナスはクレスタをしばる縄をかみ切る。シャイアン族の生き方に共感しているクレスタは、シャイアン族が自分たちの身を護るための武器を入手するのを妨げたくないので、ホーナスの手を縛られたままにしておくが、ホーナスは縛られた手を使って馬車に放火し銃を爆破する。 音を聞きつけて引き返したカンバーによって撃たれて負傷したホーナスを連れてクレスタは逃げ、洞穴に隠れる。洞穴でクレスタは薬草を使ってホーナスの傷を治療し、二人は愛し合う。
ソルジャーブルーの結末:大虐殺
まだ歩けないホーナスを残して、クレスタが先に砦に行き馬と食料をもってくることにする。まだら狼から愛情の印に贈られた首飾りをホーナスの枕元に置いて。だが、砦の指揮官はホーナス救出に兵士を直ちに出すことを拒否する。再会した婚約者のマクネアー中尉によると、騎兵隊はシャイアン族の村を襲うことが決まっているのだ。クレスタは騎兵隊の馬を拝借して、危機を伝えるためにシャイアン族の集落に行く。彼女の帰還は大歓迎を受ける。一方、無理に洞穴から出たホーナスは馬を見つける。シャイアン族襲撃に向かう騎兵隊に合流する。しかし、クレスタにまだら狼を説得させるというホーナスの提案は拒否される。集落の目の前に騎兵隊が集結した。まだら狼はクレスタの提案にしたがい、アメリカ合衆国国旗と白旗を掲げて北軍を出迎えるが、それを無視して砲撃が開始される。シャイアン族の男たちも奮戦したが、戦いは結局騎兵隊の勝利に終わる。そして集落への襲撃が始まる。多くの女子供が撃ち殺され、首をはねられ、レイプされる。シャイアン族に同行するクレスタと、虐殺に抗議したせいで鎖につながれたホーナスは逆の方向に向かって惨劇の跡を去っていくが、別れ際にクレスタにホーナスは首にまいた、彼女から贈られた首飾りを示す。人々が去り、おびただしい数の墓標が残された。
この映画「ソルジャー・ブルー」は、1864年のコロラド州サンドクリークで、600人のシャイアン族が、騎兵隊によって虐殺された史実を、忠実に映画化した問題作だ。
白人の都合のいいように解釈されて来た、”西部開拓史”を、「野のユリ」「まごころを君に」のラルフ・ネルソン監督は、ラスト15分間の凄絶な残虐シーンの中で、痛烈に告発しているのです。
人間の歴史に戦争はつきもので、そして戦争にジェノサイドはつきものです。
アメリカ合衆国の建国史における恥部とも言える、シャイアン族虐殺事件である、サンドクリークの虐殺を、スクリーンにリアルに、そして怒りを込めて繰り広げた、ショッキングな映画、それがこの「ソルジャー・ブルー」だ。
こんな映画を作ってしまったら、”西部劇”も、もうお終いだよ、というくらい衝撃的な西部劇映画なのです。
かつてのアメリカ映画の西部劇では、インディアンが敵役となって、バタバタと倒されていく映画を数多く観てきた私にとって、この映画を初めて観た時の”カルチャー・ショック”は、言葉では言い表せないくらい、衝撃的なものでした。
特に、この映画の白眉とも言える、ラストのクライマックスの騎兵隊による凄絶な虐殺シーンも驚きでしたが、キャンディス・バーゲンが演じる若い白人娘の役柄も、それまでの西部劇では、ほとんど見かけないものでした。
インディアンにさらわれた白人の娘は、”悲惨”でなければならなかったのですが、彼女は大違いです。
インディアンの文化の”良き理解者”となり、白人の非に対する”激しい告発者”となっているのです。
一方、ピーター・ストラウスが演じる若き騎兵隊員のホーナスは、父をインディアンに殺されたので、インディアン憎しに凝り固まっています。
そんな”違った視点”を持った二人が、インディアン虐殺の”目撃者”となるのです。
そして、これを契機にホーナスは、自らの過ちを知り、反逆罪で捕らわれることになります。
この見るも無残な虐殺シーンは、現在から見たら158年前の生々しい再現であると同時に、公開当時のヴェトナム戦争におけるソンミ村虐殺の、同時代ドキュメントでもあったのだと思います。