ビーチ・バム まじめに不真面目の紹介:2019年アメリカ映画。フロリダの楽園、キーウエスト島の詩人ムーンドッグは妻ミニーの資産で毎日飲み歩き女遊びを繰り返しています。しかしミニーの死により、彼は資金源を失い遺産も管理され、無一文の生活を送ることになります。アルコール中毒の彼はなんとか本を書き上げて一流作家であることを証明しようとします。『ビーチ・バム』は、渚の酔いどれ詩人ムーンドッグの自由気ままな生き方をマシュー・マコノヒーが素晴らしい演技を見せ、フロリダの美しい海と共に描かれます。ジミー・バフェットらミュージシャンも出演し素晴らしい音楽が楽しめます。
監督:ハーモニー・コリン 出演:マシュー・マコノヒー(ムーンドッグ)、スヌープ・ドッグ(ランジェリー)、アイラ・フィッシャー(ミニー)、ステファニア・ラヴィー・オーウェン(ヘザー)、ジミー・バフェット(ジミー・バフェット)、ジョナ・ヒル(出版社社長)、ザック・エフロン(フリッカー)、マーティン・ローレンス(イルカ船の船長)、ほか
映画「ビーチ・バム まじめに不真面目」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ビーチ・バム まじめに不真面目」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ビーチ・バム まじめに不真面目の予告編 動画
映画「ビーチ・バム まじめに不真面目」解説
この解説記事には映画「ビーチ・バム まじめに不真面目」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ビーチバムまじめに不真面目のネタバレあらすじ:起・フロリダの遊び人の詩人ムーンドッグ
詩人のムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)は、フロリダ州キーウエストのバーを飲み歩く有名人です。ムーンドッグは本を書いてはいますが、毎晩飲み歩くことに生きがいを感じているようです。バーの客は彼が現れると歓声で迎えます。
ムーンドッグは妻ミニー(アイラ・フィツシャー)から電話を受け、娘ヘザー(アイラ・フィツシャー)が結婚するということを聞きます。彼は娘の年齢すら覚えておらず、彼女の婚約者が嫌いな様子ですが、とりあえずマイアミのミニーの家まで行くことにします。
ミニーはマイアミの大豪邸に暮らし、ムーンドッグの資金は彼女から得ているようです。彼は出版社の社長ルイス(ジョナ・ヒル)とゴルフをし、ルイスは彼が本の執筆よりも遊びに熱心なことに呆れながらも会話を楽しみます。
ムーンドッグはヘザーの結婚式に遅れて到着してスピーチをします。そして夫となるフランクの股間をつかむという奇行にでます。ヘザーは母ミニーに、ムーンドッグのおかしな行動や自由すぎる生き方について話し合います。
ビーチバムまじめに不真面目のネタバレあらすじ:承・妻ミニーの死と本の執筆
ムーンドッグは結婚式の司会者で親友のランジェリー(スヌープ・ドッグ)とドラッグを吸います。ムーンドッグはランジェリーとミニーがキスしているのを目撃しますが、気にしない様子です。
パーティ後、ミニーとムーンドッグは港でダンスをして楽しみます。二人がドライブをしていると交通事故に遭います。ムーンドッグは無事でしたがミニーは致命傷を負います。病院のベッドでムーンドッグはミニーと最後の別れをします。
後日、ミニーの葬儀が行われます。ムーンドッグはミニーの弁護士と話し合い、彼女の遺産相続について話し合います。遺産はムーンドッグが半分、ヘザーが半分を引き継ぐことになり、ヘザーはムーンドッグの遺産を管理することになります。遺言により、ヘザーはムーンドッグが小説を書き上げて一人前であることを証明すれば遺産を与えると書かれてあります。
ムーンドッグはヘザーに会うものの、彼女の夫フランクはムーンドッグが嫌いで、喧嘩別れします。ムーンドッグは相変わらず酒を飲み、マイアミをうろつき、最後はヘザーの家に行きピアノを壊すなど大暴れ。警察に逮捕されます。
ビーチバムまじめに不真面目のネタバレあらすじ:転・ムーンドッグの自由な人生
ムーンドッグは裁判所で、刑務所かリハビリセンター行きの選択を迫られ、リバビリセンター行きを選びます。
ムーンドッグは更生しようと、そこで真面目な生活を送ります。しかし、そこで出会ったドラッグ・アルコール中毒のフリッカー(ザック・エフロン)という男と意気投合し、結局リハビリセンターを脱走します。ムーンドッグとフリッカーはマイアミに行き、酒場やパーティで女性たちと遊びまくります。二人は散々遊んだ後に、別れることにします。
ムーンドッグは港へ行くと、古い友人であるイルカ船の船長(マーティン・ローレンス)に会います。二人は釣りをして楽しみ、酒を飲みます。船長とムーンドッグは観光客の家族を見ると「イルカを見せてやる」と言って家族をフロリダ沖へ連れて行きます。
船が沖へ出ると、イルカの大群らしき姿が現れます。船長は海へ飛び込もうと言いますが、家族は恐怖を感じます。船長が一人で海へ飛び込むと、それはイルカでなくサメでした。船長はサメに襲われて足を噛み切られます。
ムーンドッグはランジェリーと再会します。二人は友人たちと船で海に出かけます。船上で友人のジミー・バフェットの音楽を聴きながら、ムーンドッグはランジェリーとミニーの思い出話をします。ミニーはランジェリーとセックスをしたものの「ミニーは自分を愛していたかわからない」とランジェリーは語ります。
ビーチバムまじめに不真面目の結末:ムーンドッグの幸せな生き方
警察は、麻薬の所持でランジェリーの逮捕に来ます。ムーンドッグとランジェリーは家から逃げ出し、ドラッグを持って飛行機でキーウエストに向かいます。飛行機のパイロットは「自分はほとんど目が見えない」と言いますが、ムーンドッグは気にしません。
ムーンドッグとランジェリーはキーウエストに到着。ムーンドッグが繁華街へ行くと、飲み屋の常連客から歓迎されます。最終的に彼は本を書き上げ、出版社社長は本の内容に満足します。
ムーンドッグの本は「ビーチ・バム」と名付けられ、高く評価されてピューリッツァー賞を獲得します。授賞式に異様な衣装でカクテルを片手に現れたムーンドッグは、聴衆を唖然とさせます。彼はミニーとの思い出を表した詩を読み上げます。
ヘザーは離婚し、管理していたムーンドッグへの遺産を彼に与えることにします。ムーンドッグは遺産である現金を船に積み、海へ行き最高の気分です。彼は花火を眺め、遺産で手に入れた現金に火をつけ酒を飲みます。現金の入った袋が舞い散り、友人たちはその現金をつかみます。
ムーンドッグは一人で小さなボートに乗り、最高の気分でカリブ海に消え去るのでした。
以上、映画「ビーチ・バム まじめに不真面目」のあらすじと結末でした。
この映画はアルコール依存症や薬物常習者の世界観で描き切った狭義の意味でのエポックメイキングな作品であり一種のカルトでもある。60年代のヒッピームーブメントやカウンターカルチャーの流れは、現代のリベラリストによって受け継がれ一部のセレブやアーティストの間で持て囃されている。所構わず騒ぎ立て乱痴気騒ぎに明け暮れる。当の本人たちはご機嫌なのだが、周りの人間にとっては甚だ迷惑でしかない。「芸術至上主義」が正にその典型で、究極のエピキュリアンは悲惨な事故でさえ陳腐なアートに変えてしてしまう。モラルやコモンセンスは不毛で、何でもありの世界こそが快楽主義者の理想郷なのだ。マシュー・マコノヒーの迫真の演技は神懸っていて、これはまさしく映画史に残る極めてレアなものである。まるで何かが彼に降臨してそこからインスピレーションを得ているようさえみえるのである。「ビーチ・バムまじめに不真面目」は究極の刹那主義/快楽主義をヴィヴィッドでブリリアントな映像で撮り切った画期的な作品なのである。心地よく感じる人もいればひたすらに不快感を覚える人もあるだろう。好みがハッキリ分かれる映画ではある。裸の女性たちのダンスやアクロバットの数々、亜熱帯リゾートのキーウエストでの海辺のカクテルの誘惑。これはオッサンたちの夢であり究極の楽園でもあるのだ!快楽主義や刹那主義に批判的であったとしても、余命が僅かならば今を思いっ切り楽しむのもあり?っと、「一瞬!」そう思わせるくらいに説得力のある脚本がとても面白い。私はこの映画を観て「ルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンド」の世界観に浸っていた。バイセクシュアルやドラッグなどが混在する文化と価値観のカオスこそがルー・リードのサイケデリックな世界であった。彼等もまた、文学的で芸術的な詩を書いていた。還暦を過ぎた今もプログレッシブロックや前衛芸術に傾倒しているのでこの映画の意味は痛いほど良く分かる。かつて仕事でボン・ジョヴィのリハーサル(2000年7月20日大阪ドーム)にも立ち合ったし、今まで多くのミュージシャンと接して来たが「ぶっ飛んだ奴ら」も決して少なくはなかった。人はみな経済的な裏付けや裕福な友人の支えが無ければ一介のホームレスに過ぎない。マコノヒーが演じるムーンドッグと言う「クソッタレ」は類稀なる変人であり誠に気高い「聖人」でもある。ムーンドッグも私たちも所詮は「永遠のナルシスト」なのである。自己満足できる人間だけが夢の続きを見ることが出来るのだ。「ビーチ・バムまじめに不真面目」は我々に美しいイリュージョンに彩られた白日夢を見せてくれたのかも知れない。