グッバイガールの紹介:1977年アメリカ映画。ニール・サイモンが当時結婚していたマーシャ・メイソンのために書き下ろしたロマンチック・コメディ。主演のリチャード・ドレイファスは当時最年少の30歳でアカデミー賞主演男優賞を受賞した。
監督:ハーバート・ロス・出演:リチャード・ドレイファス(エリオット)、マーシャ・メイソン(ポーラ)、クィン・カミングス(ルーシー)、ほか
映画「グッバイガール」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「グッバイガール」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「グッバイガール」解説
この解説記事には映画「グッバイガール」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
グッバイガールのネタバレあらすじ:起
場所はマンハッタン・ダウンタウン。バスに乗って帰宅したポーラと8歳の娘ルーシーは、同居人のトニーが出ていった事を置き手紙で知ります。トニーは俳優で、イタリアで仕事が見つかったというのです。トニーと結婚する予定でいたポーラは涙にくれます。やがて一人の男が部屋を訪ねてきます。トニーから部屋を譲り受けたというエリオットです。思ってもみない状況にポーラは戸惑い、彼を追い返そうとしますが、契約をたてにエリオットは強引に侵入。ポーラは仕方なく彼を受け入れ、ルーシーの部屋を明け渡します。トニーと同じ売れない役者のエリオットは夜中にギターを爪弾き、香を焚いては何か呪文のような文句を唱え始める変人で、ポーラたちを困らせます。
グッバイガールのネタバレあらすじ:承
「リチャード三世」のオフ・ブロードウェイでの上演で、タイトルロールを演じることになったエリオットですが、そのマザコン・ゲイの演出家の新解釈が不満でした。ポーラも元々舞台のダンサーで、仕事に戻ろうとしますがうまくゆきません。同じ部屋にいても疎遠だった2人。しかし偶然スーパーで会ったことで一緒に買物を始めます。そのとき、ポーラはひったくりにあって無一文になってしまいます。そんな彼女に無理矢理お金を渡すエリオット。
グッバイガールのネタバレあらすじ:転
ポーラは生活のためにコンパニオンをやり始め、エリオットの方は「リチャード三世」の初日を迎えます。しかし、演出家が「ママに褒められた」と喜ぶだけで、芝居は酷評で打ち切りに。エリオットはバイトを始め、キャバレーの用心棒になりますが、すぐにお払い箱になってしまいます。客に殴られて傷ついたエリオットの世話をするポーラ。2人は自分たちがお互いに好意を抱き始めている事に気づきます。
グッバイガールの結末
翌日、エリオットは屋上で食卓をしつらえてポーラを迎え、2人はそのまま一緒に夜を過ごします。ルーシーも母親と彼の交際を歓迎。しかし、幸せもつかの間、エリオットが映画に出ることになり、部屋を離れることに。またお別れか、と落胆するポーラですが、やがてエリオットから電話がかかります。撮影場所であるシアトルまで一緒に来ないかというのです。ポーラはとりあえず断りますが、彼が戻ってくることを確信します。
「グッバイガール」感想・レビュー
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このハーバート・ロス監督の「グッバイガール」は、観終わった後、実に爽やかな気分にさせてくれる、”ニール・サイモン喜劇”の真骨頂を見せてくれる、そんな素敵な、素敵な映画なのです。
チョッピリ哀しくて、チョッピリ甘くて、チョッピリおかしい—-。そう、メチャクチャにおかしいのではなく、チョッピリおかしいところがいいんですねえ。
ドタバタではなく、人情の機微をついたおかしさだから、大笑いではなく、クスッとくるおかしさなのです。
だが、そのクスッは心の奥底に分け入ったものなので、”爽やかな余韻”といったものが残るのです。
“人生はお芝居だ”と、なぜか役者ばっかり愛してしまう女。そして男は役者として成功すると同時に出ていってしまう。愛する事と傷つく事がいつもワンセット—-。
そんな気は強いが愛らしい女性ポーラを、マーシャ・メイスンが素敵に好演。
それにリチャード・ドレイファスが演じるおかしな男を通して、時代の空気を生き生きと再現していて、実に見応えのあるウェルメイドな素晴らしいドラマになっていると思います。いつも男にグッバイされてばかりいる子連れの女性が、遂に逃げない恋人を獲得するまでのハッピーエンド・コメディ—-。
脚本のニール・サイモンは、気のいい女性の悲哀と売れない役者の軽妙なやりとりを、マーシャ・メイスンとリチャード・ドレイファスの出演を念頭に置いて書いたと言われるだけあって、彼らの名演を引き出す事に成功した、よく練り込まれた素晴らしい脚本だと唸らされます。
そして、リチャード・ドレイファスが主演するシェークスピア劇の「リチャード三世」がゲイであったという新解釈や、演出家が極度のマザコンであったというような描写がありますが、それはニール・サイモンの当時流行っていた、”アングラ文化”への嫌味なのかも知れません。
なお、この映画は1977年度の第50回アカデミー賞の最優秀主演男優賞(リチャード・ドレイファス)、同年のゴールデン・グローブ賞でコメディ/ミュージカル部門の最優秀作品賞・主演男優賞・主演女優賞(マーシャ・メイスン)、最優秀監督賞(ハーバート・ロス)・脚本賞、LA映画批評家協会賞の最優秀主演男優賞、1978年度の英国アカデミー賞の最優秀主演男優賞を、それぞれ受賞しています。
思い切り泣いて笑える、完璧な作品。
脚本のニールサイモンさんは、この手の作品を書かせたら天下一品。
そして主演の2人はもちろん、子役も含め、キャラクターが本当に生き生きしてる!
ヒロインのポーラは男運が悪くて憎めない。そんなママを応援するルーシー。
幸せになってほしいなあ。
こういう感情移入できる作品は大好きです。