この森で、天使はバスを降りたの紹介:1996年アメリカ映画。罪を背負った女性が小さな田舎町で人生をやり直すヒューマン・ドラマ。傷害致死の罪で5年服役していたパーシーは、ギリアドという小さな村に移り住む。住み込みで働く食堂の女主人が店を売りたがっていると知り、作文コンテストの開催を提案した。これをきっかけに排他的な村に徐々に馴染んでいくパーシー。しかし彼女は誰にも言えない悲しい秘密を抱えていた。1996年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞。
監督:リー・デヴィッド・ズロトフ 出演者:アリソン・エリオット(パーシー・タルボット)、エレン・バースティン(ハナ・ファーガソン)、マーシャ・ゲイ・ハーデン(シェルビー・ゴダード)、ウィル・パットン(ネイハム・ゴダード)、キーラン・マローニー(ジョー・スパーリング)ほか
映画「この森で天使はバスを降りた」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「この森で天使はバスを降りた」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
この森で天使はバスを降りたの予告編 動画
映画「この森で天使はバスを降りた」解説
この解説記事には映画「この森で天使はバスを降りた」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「この森で天使はバスを降りた」のネタバレあらすじ:よそ者と閉鎖的な田舎町
舞台はアメリカ、メイン州。傷害致死の罪で5年服役しているパーシー・タルボットは、観光局で真面目に働いていました。刑期を終えた彼女が向かったのは、森に囲まれた小さな田舎町、ギリアドです。インディアンの伝説で最も美しい土地と称賛されていたこともあり、自然の中で人生をやり直そうと考えていました。パーシーがバスから降りた時、既に周囲は夜の闇に包まれていました。
刑務官から連絡が入っているはずの保安官事務所へ行きますが、まさかこんな寂れた田舎町に若い女性が来ると思っていなかった保安官は、何の準備もしていません。そこで小さな食堂「スピットファイア・グリル」を営むハナ・ファーガソンにパーシーを預けることにしました。ハナは口が悪く無愛想な老女ですが、根は優しいためパーシーを住み込みで雇います。
翌朝から早速店に出ることになったパーシー。ところがギリアドの人々は非常に排他的で、突然やって来たパーシーに悪意ある目を向けます。無遠慮な視線と陰口に腹を立てたパーシーは、自分から5年間服役していた前科者だと暴露しました。その話は村中に一気に広まり、期待を裏切られたパーシーはどんどん不貞腐れてしまいます。特にハナの甥で不動産屋を営むネイハム・ゴダードは強烈な猜疑心をパーシーに向けてきました。
一方、パーシーに一目惚れした村の青年ジョー・スパーリングは夜のドライブに誘います。しかし質問攻めのジョーにパーシーは激怒し、結局すぐ帰宅することになりました。家に入ると、ハナが床に倒れて苦しんでいました。元々腰痛を抱える彼女は、乗っていた椅子から足を踏み外して怪我をしてしまったのです。パーシーはジョーと協力し、急いでハナを病院へ連れて行きました。
翌日、ハナはギプスをした状態で帰宅します。パーシーはジョーに礼を言い、態度を軟化させました。手助けが必要になったハナは、しばらくパーシーに世話と店を任せることにします。それに異を唱えたのはネイハムでした。彼はパーシーがハナを階段から突き落としたと邪推しているのです。ハナはネイハムの意見を馬鹿馬鹿しいと突っぱねました。その日からパーシーがキッチンとホールの仕事を一手に引き受けることになりますが、これまでファストフードで育ってきた彼女はまともに料理出来ません。
怒涛の1日を終え、ぐったりしたパーシーが就寝前に何かすることはないかとハナに尋ねると、彼女は少し挙動不審になりました。そして気まずそうに、事務室に大きな麻の袋があるので、それに缶詰を入れて裏庭の切株に置いて欲しいと言い出します。パーシーは不思議に思いながらも言われた通りにしました。
「この森で天使はバスを降りた」のネタバレあらすじ:作文コンテスト
翌日。パーシーがキッチンで悪戦苦闘していると、ネイハムの妻シェルビーがやって来ます。彼女はネイハムに店を手伝うよう命令されていました。悲惨な料理を見るに見かねたシェルビーがキッチンを担当し、パーシーはホールに出ます。息ぴったりのコンビネーションで1日を乗り切った2人。パーシーはシェルビーの料理を称賛しますが、彼女は自信が無さそうに俯いてしまいました。日頃からネイハムに馬鹿だまぬけだと言われているシェルビーは、自信を失って自己主張もほとんど出来ないのです。
夜、切株に麻袋を置いたパーシーは隠れて様子を窺っていました。すると森から謎の男が現れます。パーシーを見つけた彼はすぐに森へ逃げてしまいました。パーシーは缶詰以外に欲しい物はないかと叫びますが、返事はありません。パーシーとシェルビーは良き友情を育んでいました。
常連客とも会話出来るようになった頃、パーシーはハナが店を売る気でいると知ります。訳を尋ねると、シェルビーは少し言いにくそうに経緯を教えてくれました。ハナにはイーライという息子がいました。村中から信頼を寄せられ、誰からも好かれる村の英雄だったそうです。しかし志願してベトナム戦争に出征して以来、彼は村に戻りませんでした。それからすぐに夫を亡くしたハナは、2、3年して店を売却したいとネイハムに頼みました。しかし田舎町の古い食堂に買い手はつかず、気付けば10年も経ってしまったそうです。
その話を聞いたパーシーは、店を賞品にして作文コンテストを開催してはどうかと提案しました。観光局で働いていた時聞いた話で、ホテルが売れずに困っていた人が開いたコンテストは大成功したそうです。シェルビーを通してハナも興味を持ったので、パーシーは大まかな流れを説明しました。まず締め切りを決めた後コンテストの告知を行い、参加者を募ります。参加者には食堂が欲しい理由を作文にして送って貰い、優勝者にスピットファイア・グリルを譲るというコンペ形式。申込金は全てハナの手に入るので、上手くいけば売るよりよほど儲かります。ハナはコンテスト開催を決意し、パーシーとシェルビーも手伝うことになりました。
メイン州の観光局で働くパーシーの友人にも協力して貰った結果、アメリカ中の新聞がコンテストを取り上げます。シェルビーは大喜びで、パーシーを古びた教会へ誘いました。村に牧師がいないため、誰もこの教会には寄り付かないそうです。1人になりたい時ここに来ているというシェルビーは、パーシーにも同じことを勧めました。
「この森で天使はバスを降りた」のネタバレあらすじ:「母親」の悲しみ
パーシーはジョーの家にも招待され、たくさんの樹木に感動します。彼女は森の生活に憧れを抱いていました。ジョーも嬉しそうですが、残念ながら金にはならないと肩を竦めます。夜、ジョーとの仲をシェルビーにからかわれたパーシーは、「子ども」という単語に表情を硬くしました。そして川底に沈んだインディアンの赤ん坊の物語を話し出します。母親がどうなったかは分からないけれど、子どもと一緒に死ねるならその方が良いと悲しそうに笑いました。パーシーは夜に現れる謎の男をジョニー・Bと呼ぶことにして、森に入っては一方的に話しかけます。ジョニー・Bは姿こそ現さないものの、次第にパーシーを受け入れ始めました。
そんな折、ついにコンテスト参加者から続々と作文が届きます。噂はあっという間に村中に広まり、住人達はまた陰口を叩き始めました。するとハナは住人に作文を配り、そんなに気になるなら審査に協力しろと言います。実際、ハナだけでは手が回らないほどの作文が届いていました。はじめは困惑した村人達も真剣に読むようになり、村に活気が出てきます。ハナは以前よりも生き生きし始め、シェルビーも明るくなっていきました。その変化が気に入らないのはネイハムです。彼は村が盛り上がるほどパーシーへの疑いを深くしていきました。
夜、パーシーはジョーに誘われて森に入ります。そしてこの森を舞台に、製薬会社とのプロジェクトが始まるかも知れないと教えられました。パーシーは喜びますが、ジョーから結婚を申し込まれると途端に顔を曇らせ断ります。子どもを産めないからだと話したパーシーは、もっと良い女性がいるとジョーを抱きしめました。朝方、パーシーは森へ入りいつものようにジョニー・Bを探します。彼は自分の隠れ家にパーシーを誘導し、その頭にそっと手を乗せました。
パーシーが帰宅すると、怒りに震えるハナが待っていました。どうやらジョニー・Bと関わろうとすることに怒っているようです。生きる希望を失ったと叫び、困惑するパーシーの頬を叩くハナ。するとパーシーも「少なくともあなたは息子を殺した訳でも赤ん坊を死なせた訳でもないわ」と怒鳴り返して部屋に引きこもってしまいました。
「この森で天使はバスを降りた」のネタバレあらすじ:ネイハムの企み
夜、ネイハムはパーシーがどんなに狡猾な人間かシェルビーに力説します。シェルビーが呆れるのを見て怒ったネイハムはいつものように彼女を馬鹿にしました。しかし自信を取り戻したシェルビーは、今のネイハムはイーライがいた頃にそっくりだと強く言い返します。ネイハムは人気者だったイーライに嫉妬し、強烈な劣等感を抱いていました。そしてイーライと同じように、ネイハムに出来ないことをやってのけるパーシーが気に入らないのだと。ネイハムは苛々しながら家を飛び出します。彼は作文コンテストについて、パーシーが金儲けのために提案し、その金を盗もうと企んでいると信じて疑いませんでした。そこで盗まれる前にと、食堂に忍び込んで金庫を開け、近くにあった麻袋に金を入れてしまいます。何も知らないパーシーはいつものように麻袋に食糧を入れ、裏庭へ向かいました。
翌朝、シェルビーが食堂に顔を出すと、金がなくなったことに気付いたハナが泣いていました。そしてタイミングが悪いことに、喧嘩したままだったパーシーも姿を消していたのです。金とパーシーが消えたという噂は村中に広まり、捜索隊が集められます。ネイハムは自分がしたことには口を閉ざし、パーシーが金を盗んだと主張しました。それに激怒したのはシェルビーです。証拠も無しにパーシーに罪を着せるなら離婚すると宣言。ネイハムは怯みつつも、昨夜パーシーが裏庭で誰かを待っているようだったと嘘をつきました。
シェルビーがもしやと思い教会へ行ってみると、パーシーが1人で座っています。彼女は憔悴した様子で自分の罪を語り始めました。パーシーは9歳の時、母親の再婚相手にレイプされました。母親が守ってくれないまま虐待は続き、ついに16歳の時妊娠します。パーシーは歓喜して子どもにジョニー・Bと名付け、その誕生を心待ちにしていました。しかしある夜、泥酔した義父に酷い暴力を振るわれ胎児は死亡してしまいます。そしてパーシーは絶望の中義父を殺害しました。
真実を知ったシェルビーはパーシーを慰め、今村で起こっている騒動を説明します。もちろんパーシーに心当たりなどありません。そこに保安官が現れ、話を聞くだけだと約束して事務所にパーシーを連行しました。遅れて事態を知ったジョーは慌ててスピットファイア・グリルに駆け込みます。ネイハムの証言から、パーシーがハナの金を盗んで森にいる相棒に渡したというストーリーが出来上がっていました。
村の男達は銃を手に森へ入っていきます。それを知ったハナは激しく動揺し、急いでパーシーに会って助けを求めました。ジョニー・Bを助けられるのはパーシーしかいないと考えたのです。ハナもジョニー・Bに会うため長年努力してきましたが、彼は姿を見せてくれませんでした。しかしパーシーなら、と涙を流して縋り付きます。
「この森で天使はバスを降りた」の結末:天使が遺した変化
ハナの協力で事務所から逃げ出したパーシーは森へ入り、ジョニー・Bを探します。川の向こうに彼の姿を見つけたパーシーは、「逃げて!」と叫びながら強引に川を渡ろうとしました。しかし川の流れは速く、パーシーは溺れてしまいます。ジョニー・Bは急いで助けようとしますが、そこに銃を持ったネイハムが現れ動くと撃つと脅しました。その間にパーシーはどんどん流され、ついに姿が見えなくなります。
ジョニー・Bが倒れているパーシーを発見した時にはもう手遅れでした。ジョニー・Bの顔を見て微笑んだパーシーは、そのまま息を引き取ります。近付いて来たネイハムは、ジョニー・Bを見て「イーライ」と呟きました。ジョニー・Bの正体は、ハナの息子イーライだったのです。
その後、村でパーシーの葬儀が執り行われました。悲しみに顔を伏せる村人の前で、ネイハムは金庫から金を取ったのは自分だと告白します。ジェルビーは驚愕し、ハナは目に涙を浮かべました。
コンテストの締め切り日、憔悴したハナの前にイーライが現れます。親子は手を握り合って再会を喜びました。それからしばらくして、作文コンテストの優勝者クレアがギリアドにやって来ました。彼女はシングルマザーで、赤ん坊を背負いバスに乗って到着します。ハナは彼女を歓迎し、村人に紹介しました。そこに排他的な空気は無く、皆が笑顔と拍手で迎えます。ハナが食堂へクレアを案内し、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「この森で天使はバスを降りた」のあらすじと結末でした。
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