この世界に残されての紹介:2019年ハンガリー映画。第二次世界大戦の終戦後、ソ連の影響下にあったハンガリーを舞台に、ナチスのホロコーストを生き延びた42歳の医師と16歳の少女との心の交流を描いたヒューマンドラマです。本作は第92回アカデミー賞の国際長編映画賞ショートリストに選出されています。
監督:バルナバーシュ・トート 出演者:カーロイ・ハイデュク(アラダール・アルド・ケルネル)、アビゲール・セーケ(クララ・ヴィーネル)、マリ・ナジ(オルギ)、カタリン・シムコー(エルジ)、バルナバーシュ・ホルカイ(ペペ)ほか
映画「この世界に残されて」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「この世界に残されて」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
この世界に残されての予告編 動画
映画「この世界に残されて」解説
この解説記事には映画「この世界に残されて」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
この世界に残されてのネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦が終わった直後の1948年、ハンガリーの首都ブダペスト。身寄りのない16歳の少女クララ・ヴィーネル(アビゲール・セーケ)は大叔母のオルギ(マリ・ナジ)に引き取られ、二人暮らしを送っていました。ナチスによるホロコーストで両親と妹を失ったクララは、未だに家族はまだ生きていると信じており、周囲に対して心を閉ざしたままでした。
そんなある日、生理不順を患ったクララは婦人科医のアルドことアラダール・ケルネル(カーロイ・ハイデュク)の診察を受けることになりました。42歳になるアルドは病院とユダヤ人会の孤児院、そして待ち人の誰もいない自宅アパートを行き来する日々を送っていました。
治療を受けたクララはその後無事に生理が来たため、わざわざアルドの住むアパートまで報告に訪れました。アルドはクララを疎ましく思いつつも、ひとまず彼女を自宅に招いてお茶を飲ませることにしました。クララは亡き家族を思い、「生きていることは不幸。私は取り残された」と悲観に暮れました。クララはアルドには心を開き、クララに抱きつかれたアルドはほんの一瞬動揺しながらも彼女を優しく受け止めました。
この世界に残されてのネタバレあらすじ:承
アルドとクララはこの時以来、すっかり打ち解け合って会話を交わすようになっていきました。そんなある時、アルドとクララは外で抱き合っていたところをオルギに見られ、あらぬ誤解を招いてしまいました。そこでアルドはオルギと話し合いを持ち、オルギは思い切ってアルドにクララのもう一人の保護者になってほしいと懇願しました。アルドは快く引き受け、それからというものクララは週の半分をアルドの家で過ごすという半同居生活がスタートしました。
クララはアルドに付き添われて勉強したり、一緒に映画館に足を運んだりとアルドと一緒に過ごす時間が増えていきました。クララはいつしかアルドに泣き父の面影を重ね、アルドもまた彼女との日々を過ごすうちに一人暮らしの時には感じ得なかった充実感を感じ始めていました。しかし、クララはどうしても学校生活に馴染むことが出来ずにいました。そんなある日、クララは高熱を出して寝込んでしまいました。アルドはこれが久しぶりの再会となる旧友の小児科医ピシュタ(ルカッツ・アンドール)にクララを診てもらうことにしました。
ある夜、ベッドに寝転がりながら化学の本を読んでいたクララは、塩化水素4つと酸素2つが化合すると酸素が水素と融合して水となり、塩素2つが残されることを見つけました。クララはこのことを四人家族に例えて話してみたのですが、それを聞いたアルドは黙ったままトイレに籠ってしまいました。クララが心配して駆け寄ると、ようやくトイレから出てきたアルドは「私たちは塩素か?」と問いかけました。
この世界に残されてのネタバレあらすじ:転
翌日、アルドはクララに置き手紙を置いて外に出ました。手紙には棚の中にある古いアルバムを見るよう書かれてあり、そのアルバムはアルドにとっては未だに辛すぎて見れないものでした。クララがそのアルバムを見てみると、そこにはアルドの妻や子供二人の写真がありました。クララはアルドもまた自分と同じようにホロコーストによって家族を失ったことを知り、その場に泣き崩れました。このことにより、互いの心の傷を知ったクララとアルドは以前にも増してかけがえのない存在となっっていきました。
しかし、折しも時代はスターリン率いるソ連の影響がハンガリーにも影を及ぼしていました。人々は共産党の監視下に置かれ、クララとアルドは公園で二人きりでいるところを学校教師で共産党員のヴィダーク(ヴェロニカ・ヴァルガ)に見られてしまい、あらぬ関係を疑われてしまいました。やがてようやく学校になじめるようになってきたクララはアルドの心配をよそにダンスパーティーにも行くようになり、パーティーの席で男子学生のペペ(バルナバーシュ・ホルカイ)と知り合いました。一方のアルドも、婚約者を戦争で失った女性エルジ(カタリン・シムコー)が診察に来たのをきっかけに彼女のことを気にするようになっていきました。
クララがいつものようにパーティーに行った夜、アルドの元をピシュタが訪ねてきました。ピシュタは自分の家族を守るために共産党に入っており、周辺人物の身辺を洗うよう命じられたことを告げました。その人物のリストにはアルドも含まれていたのです。
ある日、クララはペペと一緒に映画を観に行きました。その夜、アルドのアパートで就寝していたクララは、向かいの部屋の住民が強制突入してきた警察や共産党員に連行されていったことに気付き、怯えてアルドに抱きつきました。アルドはクララの抱きつき方が以前のものとは異なることに気付き、咄嗟に彼女を離してソファに寝かせました。この日以降、アルドはこれまでひとつのベッドに寝ていたクララと一緒に寝ることを止めました。
翌朝、アルドはクララに、エルジと再婚するかもしれないとほのめかしました。これまでアルドを父のように慕っていたクララは嘆き悲しみ、オルギは「その方が彼のためよ」とクララを慰めました。アルドはエルジと、クララはペペと、それぞれ新しい相手との新たな人生を模索し始めていました。
この世界に残されての結末
時は流れて1953年。オルギの誕生パーティーにクララ、エルジ、そしてアルドらが集いました。そこに遅れて現れたペペがテレビをつけてみると、スターリンが死去したとのニュースが流れていました。アルドやオルギはその報道に疑いを抱きましたが、ペペとクララはこれでソ連の影響力が弱まり自由になれると満面の笑顔を浮かべました。
一同はオルギを囲んで祝杯を上げましたが、アルドは酒を飲むすぐにトイレに向かってしまいました。心配したクララがどうかしたのかと声をかけましたが、アルドは「何でもない」と必死で本心を隠していました。
これでアメリカに行けると喜ぶクララとペペを見て、アルドは悲しげな表情を浮かべていました。
以上、映画「この世界に残されて」のあらすじと結末でした。
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