脱出の紹介:1972年アメリカ映画。ジョン・ブアマン監督の異色作。都会人の傲慢さと、彼らが自然の過酷さと人間の残酷さに直面して野性に目覚めてゆく様子を描く。全裸のネッド・ビーティが男たちにレイプされる場面は有名。
監督:ジョン・ブアマン 出演:ジョン・ヴォイト(エド・ジェントリー)、バート・レイノルズ(ルイス・メドロック)、ロニー・コックス(ドリュー・ボーリンジャー)、ネッド・ビーティ(ボビー・トリップ)、ほか
映画「脱出」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「脱出」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「脱出」解説
この解説記事には映画「脱出」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
脱出のネタバレあらすじ:起
ジョージア州北部にある森林地帯。そこにカヌーを乗せたジープが数台やって来ます。小さな村に着くと、楽しげにジープを降りる男たち。エド、ルイス、ボビー、ドリューの4人、いずれも都会に住んでいます。ダム建設で渓谷が見られなくなる前にそこをカヌーで下ろうという計画でした。都会人の彼らは準備にかかりながら、そこで出会う地元の人間への軽蔑を口にします。
脱出のネタバレあらすじ:承
川下りが始まります。カヌーは2台。エドとボビー、そしてルイスとドリューという組み合わせです。やがてエドたちが休憩のために岸に上がると、そこにいたのがショット・ガンを持った地元の男たち。彼らは見慣れないよそ者に敵意を見せ、ショット・ガンで脅しながら、森の奥へとエドとボビーの2人を追いやります。そしてエドが見ている前でボビーは全裸にされ、男たちの1人にレイプされてしまうのです。次はエドの番となった時、こっそり近づいていたルイスが持参したアーチェリーの矢でレイプした男を殺害。他の男たちは逃げ出します。この行為を警察に知らせるかどうかで4人の間で口論となりますが、ルイスの意見が勝ち、死体を地面に埋めてしまいます。
脱出のネタバレあらすじ:転
なおも川下りを続けますが、突然ドリューが川に転落。それに慌ててカヌーは2隻とも岩にぶつかり、ルイスも足の骨を折ってしまいます。地元民が復讐を企てていると知った彼らは川を離れて森に隠れます。夜を森のなかで過ごし、翌日の朝。ライフルを持った男をエドが発見。慣れない腕でアーチェリーの矢を発射し、何とかその男を倒します。エドとボビーはその死体を川に沈め、見つからないように処置。そしてやがてドリューの死体も発見します。その死体も仕方なく川に沈める3人。
脱出の結末
下流の目的地にようやくたどり着いた彼らは警察に連絡し、ルイスを病院へ。ドリューの死についても事故死だと保安官に説明しますが、彼は信じません。しかし、証拠も見つからないために、エドとボビーはそのまま解放されます。一生この秘密を守ろうと誓い合う2人。エドはそれから悪夢を見始め、そこでは人間の腕が湖面から浮かび上がります。
この映画「脱出」は、4人の男たちが川下りの冒険に出発するが、次々と恐ろしい出来事に遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる、鬼才ジョン・ブアマン監督による異色のサスペンスの傑作だ。
原始VS文明、神秘主義、儀式性、そして水の持つ象徴性が映像に氾濫する、暴力映画の異色作でもあり、そして、この映画は1972年度の全米興行でも大ヒットし、アカデミー賞では、その年の「ゴッドファーザー」や「キャバレー」といった錚々たる作品と並んで、作品賞、監督賞にもノミネートされていて、現在も我々映画好きの間で、不滅の人気を誇るカルト・ムービーの傑作でもあるのです。
アトランタに住む4人のビジネスマンが、ジョージア州の山奥を流れる激流をカヌーで川下りしようとする。それは、この川はいずれはダム建設で消える運命にあり、その前に自然の荒々しさを体験しておこうという冒険心からのものだった。
4人ともちょうど中年の入り口にさしかかった頃で、彼らにとって恐らく、これが最後の若々しい冒険にするつもりで、4人は互いに冗談を言い合いながら、元気に川下りに出発したのだが——–。
詩人ジェームス・ディッキーのベストセラー小説「わが心の川」を鬼才ジョン・ブアマンが監督。
「ポイント・ブランク」の暴力描写と「太平洋の地獄」の孤立した人間の心理描写をうまく融合させ、力感溢れるサスペンス・アドベンチャーに仕上げていると思う。
通常の冒険映画は、男たちが様々な試練を乗り越えて、より強い成熟した男へと成長していくのに対し、この映画は男たちが危機に遭えばあうほど、自らの弱さ、醜さをさらけ出し、孤立していくという逆のベクトルを持っているのだ。
この4人の男を演じるのは、ジョン・ヴォイト、バート・レイノルズ、ネッド・ビーティ、ロニー・コックス。
そして、4人を襲う山男のひとりに、クリント・イーストウッドの映画の悪役として知られるビル・マッキニーが扮し、強烈な印象を残しているのも見逃せない。
楽しいものになるはずだった川下りが、山の中に住む密造酒造りの男たちと遭遇したことで、一転してグロテスクな様相を帯び始めてくるのだ。
この山男たちによる襲撃、暴行、そして洋弓による殺人、死体遺棄、カヌーの転覆、仲間の死—-、陽気でイノセントだった男たちが次第に泥沼に入り込んでいく。
それは、ちょうどヴェトナム戦争当時のアメリカの社会そのものをも思わせる。
この映画、はじめはサム・ペキンパーが作りたがったというのも、わかるような気がします。
カラーに白黒を混ぜたような暗い画調を作り出した、名カメラマン・ビルモス・ジグモンドのカメラも出色の出来だ。
彼は「ギャンブラー」「ディア・ハンター」と、”湿った画面”を映し出すのがうまい人だが、この映画でもその才能をいかんなく発揮していると思う。
なお、この映画の冒頭で、ロニー・コックスが山奥の少年と掛け合いで演奏するギターとバンジョーのデュエット「デュエリング・バンジョー」は、グラミー賞を受賞している名曲だ。