ブエノスアイレスの夜の紹介:2001年アルゼンチン,スペイン映画。トラウマのせいで異性と触れ合えないカルメンは、ある若い男の声に恋をした。しかし真実は彼女が固く閉ざしたはずの過去に繋がっていた。衝撃的な結末が切ない作品。
監督フィト・パエス 出演:セシリア・ロス(カルメン)、ガエル・ガルシア・ベルナル(グスタボ)、ルイス・シエンブロウスキー(アレハンドロ)、ドロレス・フォンシ(アナ)、カローラ・レイナ(ロクサーナ)、エクトル・アルテリオ(カルメンの父)、チュンチューナ・ヴィラファーネ(カルメンの母)、リト・クルス(ベルトリーニ海軍大佐)ほか
映画「ブエノスアイレスの夜」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ブエノスアイレスの夜」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ブエノスアイレスの夜」解説
この解説記事には映画「ブエノスアイレスの夜」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ブエノスアイレスの夜のネタバレあらすじ:留守番電話の男の声に恋をした
父親の心臓病悪化のためカルメンはスペインからアルゼンチンに帰国した。しかし父親の主治医が自分に好意を抱くアレハンドロなのが気に入らない。父は弁護士をしているアナを介し財産分与を始め、カルメンは帰国を喜ぶ家族に滞在用に二週間だけアパートを借りたと告げる。
友人のロクサーナに電話をすると、知らない若い男の声で留守番電話に繋がれた。声の主、広告のモデルをしているグスタボの父親は元軍人で、出来上がったポスターで露出が過ぎる、家の面汚しだと叱り彼のアパートを去った。アレハンドロの好意に見向きもせず、父親の延命を頼んだカルメン。そんな二人の前で、看病をしていた妹のアナが失神して倒れてしまった。見立てでは彼女は妊娠しているかも知れない状態だった。ベッドで休むアナは、彼にカルメンの夫のことを聞くと従兄弟マルコスだと言う。カルメンの過去をいぶかしむアナは車で尾行し始める。財産分与の書類にサインしていたカルメンは、自分に譲渡されたとある物件が売却されていなかったことを怒り、父の病床を訪れる。そこはカルメンが夫と住んでいて、夫がトラックに轢かれて死んだ場所だった。
ブエノスアイレスの夜のネタバレあらすじ:壁越しの逢引
愛人仲介業者のロクサーナは、留守電の声は彼女の弟子のグスタボだと話した。カルメンは彼女に、自分にその弟子を紹介してくれるように頼んだ。壁越しにセックスをするカップルに支持を出し、二人の声を聞きながらカルメンは自慰に耽り、済むと、お金はキッチンにあるから次は女無しで来るようにとグスタボに言った。そして一人でやって来た彼に、彼女は壁越しに官能小説を読ませ自慰をした。件のアパートをアナと訪れたカルメンは、そこに軍が来て銃を発砲し、自分は逮捕され十ヶ月監禁されたと語った。壁の逢引の最中にうっかり頭を打ってしまったカルメン。その音に、グスタボは彼女に大丈夫かと声をかける。素に戻ったカルメンは一度怒ったものの、彼に何か歌ってとねだり火曜日に会いたいと約束した。カルメンのアパートから、グスタボが出てくるのを見つけたアナは。恋人と勘違いしてアレハンドロ医師に報告した。すると、医師はカルメンが恋に落ちることも出来ないし、セックスもトラウマで出来ないはずだと答えた。彼は彼女監禁されていた隣の独房にいて、自殺するなと声をかけていたのだとアナに話した。ロクサーナにパーティー出るように言われたグスタボが頼んだ日に会えないということを知ると、見捨てないで、パーティーに行かないでと言い募る。結果、パーティーを欠席したグスタボはロクサーヌには恩知らずだと怒れたと話した。カルメンはいつもの二倍出すから、帰っても構わないと告げる。しかしグスタボはそれまでとは違うロマンチックな恋愛小説を読んで聞かせ、泣き始めた。彼が出て行ったと思ったカルメンが、隣の部屋への入ると、物陰から出てきたグスタボにキスをされた。予期せぬ事態に、翌日マドリッドへ帰る仕度をするカルメンは、母から延期を言い募られても拒否。その夜、かかってきた電話を取らないでいると、留守電に切り替わり、グスタボから外の公衆電話からかけている、会いたいから出てきて欲しいと電話口で彼は言った。外に出てきたカルメンに、触れるのも見るのもダメだと言うカルメンに夢中なのだと告白するグスタボ。雨の中出てきた彼女を自宅まで送っていった。帰宅すると父は死んでいた。
ブエノスアイレスの夜のネタバレあらすじ:アレハンドロが気付いた真実
葬式の夜、雑誌でアナはグスタボを見つけアレハンドロにそれを見せると、彼は軍人の息子だから、過去に軍に逮捕されたカルメンの恋人になる事はありえないと言う。渡された記事を読むアレハンドロに、アナは中絶するかも知れないと相談する。そんな彼女に、彼は、カルメンは逮捕時に妊娠していて独房で出産し、彼女は死産だというが、本当は男児の赤ん坊を見たし、泣き声も聞いたと話す。そして思い当たったアレハンドロは、グスタボの父親には子供がおらず、刑務所生まれの子供を引き取っていたことを突き止める。グスタボと夜に会う約束をしたカルメンはアナに、22歳の彼は刑務所にいた年頃で、一緒にいると自分は一人じゃ無いと感じると話した。ロクサーナにクビにされたグスタボはモデルをやめて、漁師になって稼ぎマドリッドに行くと夢を語り、どんな町なのか、なぜ移ったのかカルメンに聞いた。カルメンは退屈な町、昔の話はしたくないと口を閉ざす。そんな彼女にグスタボは、励ました。カルメンにとって前向きな彼と別れるのは辛かった。グスタボのアパートを訪ねたアナは、カルメンと寝たか尋問し、手切れ金を出すとまで言う。承服できないグスタボは、寝たと答え、彼女と別れなければならない理由と証拠を求めた。アナは生前のマルコスとカルメンの写真を渡し、人妻だと言った。それを夜に訪れたカルメンに問いただすと、夫は既に死んでいて、グスタボと出会い自分は生き返ったと彼女は告白した。夜中にベッドからおきだしたカルメンを、耳鳴りに混じった子供の泣き声と銃声のトラウマが襲う。次いで起きたグすタボはカルメンが浴室で自殺を図っている所を見つけ、アレハンドロ医師によって病院で救命措置を行い一命を取り止めた。
ブエノスアイレスの夜の結末:けして悪いラストではない
アレハンドロはグスタボの血液を遺伝子研究所に送った。結果は99.9%で親子。それを伝えられたグスタボは嘔吐し、故郷へ向かった。そこでは彼を育てた両親が迎え入れてくれた。朝から父親と釣りに出たグスタボは、父に農場を譲ろうと提案される。それに対して、彼はどの名前で権利書にサインすればいいのか問うと、父はベルトリーニでと言う。苗字は父親の苗字でいいのか問い正すと、息子が真実を知ってしまったと悟った父は、去るのが怖くて話せなかった、息子が欲しかったが授からなかったと語った。その言い争いをしているうちに、グスタボは父が携帯していた拳銃で撃ち殺してしまう。アナは自分探しの旅と称し、ここには住めないと言ってアレハンドロと出て行った。時が経ちグスタボが入れられた刑務所の面会に行くカルメンにアナは付き添った。刑務所内の庭で差し入れのやり取りをしていると、他の囚人たちがカルメンとグスタボをジロジロと見てきた。母と息子の面会がそんなに珍しいのかと言って彼らを一蹴するカルメンに、グスタボは泣きつき、カルメンはその様子に、悪い結末ではないわと言った。
ブエノスアイレスの夜のレビュー・感想:悪い結末ではないと言うカルメンの言葉
カルメンはグスタボと自分の関係の結末を、けして悪い結末であるとは言っていない。実の息子と関係を持ってしまったという罪悪感よりも、死産したと思っていた(おそらく思い込んでいた)息子が生きていて、何の因果か出会うことが出来たという事実の方が、母親としてのカルメンには大きかったのだと思う。マルコスについての描写はほとんど無いが、電話の声や成長した息子の姿にかつての夫の面影を重ねていたかもしれないのならば、他者の助言がなく後も彼女本人はどこかで気づいていて、突発的な自殺を図るほどのトラウマの発作の引き金になったとも仮定できる。恋人から親子へ変わったカルメンとグスタボの関係は、最後の刑務所のシーンではっきりとする。中盤に恋人として対峙している時と、ラストで息子として対峙している時とでは親密さの意味合いが異なることがはっきり見て取れる。
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