スミス都へ行くの紹介:1939年アメリカ映画。アカデミー賞では原案賞のみの受賞に終わったが、キャプラ監督の代表作のひとつとして有名な作品。最後の24時間を越える演説シーンは名場面で、いわゆる牛タン戦術の代表的な描写として知られる。
監督:フランク・キャプラ 出演:ジェームズ・ステュアート(スミス)、ジーン・アーサー(サンダース)、クロード・レインズ(ペイン上院議員)、エドワード・アーノルド(ジム・テイラー)、ガイ・キビー(ホッパー州知事)、ほか
映画「スミス都へ行く」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スミス都へ行く」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「スミス都へ行く」解説
この解説記事には映画「スミス都へ行く」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スミス都へ行くのネタバレあらすじ:起
とある州で上院議員が在任中に死亡したという知らせが議員らの間に報じられ、その後釜となる人物の選出を迫られていたホッパー州知事(ガイ・キビー)は、議員のペイン(クロード・レインズ)、経済界の大物で政治をも牛耳るテイラー(エドワード・アーノルド)の決定を待っていた。
ペインとテイラーは、計画が進行中のダム建設の件で癒着しており、その計画のための法案を通すには自分たちに都合のよい人間である必要があった。しかし、2人が挙げた人物はテイラーの子分だと言って市民委員会から猛反対を食らい、ホッパーは委員会とテイラーの板挟みになる。
家に帰った彼は、子供たちから後任の候補として少年警備隊の隊長スミス(ジェームズ・ステュアート)の名を告げられる。山火事の消火にもあたった勇敢な人物で、彼の出している新聞は州の子供たち皆が読んでおり、子供たちに絶大な人気を誇っているのだという。
当初は子供の戯言と取り合わずにいたホッパーだったが、テイラーと市民委員会、どちらの押す候補かで悩んだ末にどちらも選べなかった彼は、意を決して後任にスミスを当てることを決意する。
相談もせずに勝手にスミスを担ぎだしたことにテイラーは激怒するが、子供に人気なら親の票も見込め、何より政治に無知ならおとなしく従うだろうと言うホッパーに、ペインも賛同、ワシントンでも問題なくスミスを操作できると聞いてテイラーも同意する。
スミス都へ行くのネタバレあらすじ:承
選出されたことに戸惑いながらも新上院議員となったスミスは、ペインらとともにワシントンに向かう。スミスの父が親友クレイトンだったと知ったペインは、スミスに親近感を覚え、彼にかつての親友の面影を見ていた。クレイトンはジャーナリスト、ペインは弁護士として社会の悪と戦っていたが、クレイトンはその敵によって命を絶たれたのだった。
ワシントンに到着し、新聞記者たちの囲み取材を受けたスミスは、真実が歪められ面白おかしく書き立てられたことに腹を立て、記者らを次々と殴りつけて記者クラブまで乗り込んで行く。しかし、逆に記者たちから政治に無知なスミスはお飾りにすぎないと言われて我に返り、自分が議員でいる理由がないとペインに相談する。
そこで彼は、以前から切望していた子供のためのキャンプ場作りの法案を出してみては、とアドバイスされ、やる気を起こす。
スミスの田舎者ぶりに呆れる秘書のサンダース(ジーン・アーサー)は、渋々法案のための素案作りを手伝っていたが、彼の真っすぐな愛国精神と故郷の美しさを語る様子に態度を軟化させる。
しかし、キャンプ場の予定地を聞いた途端、彼女の筆が止まる。そして議会でスミスが法案の内容を読み上げるのを微笑ましく聞いていたペインは、その予定地を聞いて顔をこわばらせる。それは彼らが計画していたダムの予定地だったのだ。
スミス都へ行くのネタバレあらすじ:転
ダム建設の法案提出にスミスを立ち会わせないために、ペインらは彼が想いを寄せていたスーザンを使って、その日の議会を欠席させる。そのやり口に嫌気が刺したサンダースは、スーザンとのデートに浮かれたスミスにダム法案の真相を暴露し、事務所を去っていく。
驚いた彼はすぐさまペインにテイラーとの癒着を問い質しに行くと、その知らせを受けたテイラーはスミスを呼びつけて懐柔を試みる。ペインも20年に渡って自分の言いなりになっていると聞かされたスミスは、尊敬していたペインの変貌に失望する。
翌日、提出されたダム法案に思い切って意義を唱えようとしたスミスを遮り、ペインが、スミスのキャンプ場計画は自身の利益を得るためだったというでっちあげの不正を理由に彼の除名を求める。それは不正に屈しないスミスを、彼の父と同じ目に遭わせないためのペインの苦渋の決断でもあった。
不正についての調査が行われる中、偽の証言、証拠によって追い込まれていったスミスは、全てに絶望し無力感に打ちのめされて故郷へ戻ることを決意する。しかし、サンダースから普通の人の代表として不正を正し信念を貫くよう励まされた彼は、彼女とともにペインやテイラーに立ち向かうための作戦をたてて、翌日の議会へ臨む。
スミス都へ行くの結末
議会で除名について採決がなされようとした時、スミスが発言の権利を得て演説を始める。一旦発言権を得ればそれを譲らない限り発言の権利を有するという規定をサンダースから教えられた彼はそれを行使し、自身への不正のでっちあげやダム建設の不正、テイラーの脅しやペインらとの癒着などを訴え続ける。
そんな彼の様子を議長は愉快そうに見つめ、記者らは大物に戦いを挑んだスミスの行動に湧くが、その間にもテイラーはマスコミやありとあらゆる機関に圧力をかけてスミス潰しにかかる。
テイラーの妨害によって一切の報道がされていないことを知ったサンダースは、スミスが発行している新聞を使うことを思い立つ。彼の母や少年らの活躍によって発行、配られた新聞を読んだ多くの市民がスミスを支持するようになるが、テイラー側の妨害は執拗に続いていた。
23時間が経過し、彼の体力も限界に達していた。そこへ、ペインが州の人々の意見だといってスミス追放を要求する5万もの電報を突きつける。それを見たスミスは絶望し、目をそらすペインに失った大儀を説き、絶対に屈しないと告げると、ついに力尽き意識を失う。
その姿に良心の呵責に耐え切れなくなったペインは、自らとテイラーの不正を認め、スミスは戦いに勝利するのだった。
以上、映画「スミス都へ行く」のあらすじと結末でした。
この映画「スミス都へ行く」を撮ったフランク・キャプラ監督は、イタリアからの移民として渡米し、アメリカン・ドリームを体現したサクセス・ストーリーの人物だと思う。
彼ほどアメリカという国の民主主義的な伝統を信じ、同時にアメリカとアメリカ人を信頼した人はいないだろうと思う。
考えてみれば、彼が監督した作品は、人間の信頼を謳い上げ、理想主義的なデモクラシーの賛歌がほとんどだ。
この作品の他にも、「オペラハット」「我が家の楽園」そして、代表作とも言える「或る夜の出来事」などがありますね。
地方政界のボスたちの策略により、むりやり上院議員に祭り上げられた、純真な田舎の青年スミス(ジェームズ・スチュアート)は、誠心誠意、人々のために尽くそうとするが、憧れる女性記者(ジーン・アーサー)からも冷やかされ、絶望しかけたり、特権をおびやかされそうになった先輩議員にはハメられそうになるのだった。
それを知った彼は、政治に絶望し、一度は帰郷を決意するが、次第に愛し合うようになっていた女性記者の励ましで、民主政治実現のために、政治腐敗を告発する決心をして議場へやって来る。
そして、この利権とつながった政治屋(クロード・レインズ)たちを相手に、スミスがラストで、エンドレスな大演説をするシーンがクライマックスであり、実に感動的だ。
「チャップリンの独裁者」に勝るとも劣らない迫力十分の長丁場。
このシーンには、フランク・キャプラ監督の社会正義への思いが、ケレン味なしに出ていると思いますね。
演説をやめた瞬間に、理想は雲散霧消するとの設定なので、だから、スミスは体力、気力の限界まで頑張り抜くんですね。
そして、その彼の熱心さにやっと良心を回復する俗物政治屋。
政治とは、政治思想や政策と同時に、政策を立案する人間の質によって決まるのだということを、観ている我々に教えてくれる。
確かに、このラストはある意味、甘いと言えば甘いし、出来過ぎでもあるような気がする。
だが、フランク・キャプラ監督の”善意の哲学”から見るなら、こうあるべきなのだ。
とにかく、演出の力と作品の持つ力というものを、強く感じるのです。
また、スミスを演じた主演のジェームズ・スチュアートは、フランク・キャプラ監督の信じる民主主義を具現化できる俳優として、これ以上はないというくらい、最も理想的なキャスティングだと思いますね。