セイントの紹介:1997年アメリカ映画。変装を得意とし、キリスト教聖人を偽名に騙る盗賊、通称セイント。彼はロシアの実業家から依頼され、新エネルギーに関する方程式を盗み出す事になった。しかし実業家の狙いは政府転覆と支配であり、セイントは科学者と共にその陰謀に巻き込まれていく。主人公が幾つもの人物に変装し、華麗に盗みを働く同名ドラマをリメイクしたクライム・アクション映画。
監督:フィリップ・ノイス 出演:ヴァル・キルマー(サイモン・テンプラー)、エリザベス・シュー(エマ・ラッセル)、ラデ・シュベッジア(イワン・トレティアック)、ヴァレリー・ニコラエフ(イリア・トレティアック)、ヘンリー・グッドマン(レフ・ボトビン)ほか
映画「セイント」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「セイント」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
セイントの予告編 動画
映画「セイント」解説
この解説記事には映画「セイント」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
セイントのネタバレあらすじ:第1幕
教会の孤児院で育った少年ロッシは、厳しい神父に常に反抗していました。手先の器用な彼を、皆は魔術師サイモンと称えますが、本人は騎士サイモン・テンプラーを自称します。そんなある日、彼は思いを寄せる女の子に会いに女子寮忍び込みますが騒ぎが起き、女の子を転落死させてしまいました。そして年月が過ぎ、サイモンはモスクワに居ました。サイモンは自分の吹き込んだイワノビッチなる人物のテープを聴きながら、彼に成り切って行きます。トレティアックガス会社の社長イワンは壇上に招かれ、政治家や軍人達の前で、現政権を批判する過激な演説を始めます。彼の護衛であり息子のイリアは、退屈そうにして席を外しました。彼は階段の踊場で麻薬を吸おうとした時、何者かが侵入した痕跡を見つけます。サイモンは、ビルの警備システムを誤魔化し奥まで侵入し金庫を開けて、あるマイクロチップを盗み出していました。そこをイリアに見付かります。サイモンは50万ドルで手を打たないかと取引を持ちかけますが、彼は銃を抜きます。サイモンは仕方が無くチップを床に落とします。そしてそれを拾いに来たイリアに殴り掛かりました。揉み合いになり、サイモンは逃げ出します。警備システムも作動し、イリアに追われサイモンは屋上に逃げ込みます。追い詰められたサイモンは、徐に屋上から飛び降りました。しかしその下にはトラックがあり、彼は見事にその荷台の幌に落下します。サイモンは人込みに紛れ、まんまと逃げ切りました。孤児院を出たサイモンは、国際手配される程の大泥棒になっていました。男女コンビの専従捜査官が彼を付け狙いますが、常に上手を取り、捜査網を潜り抜けてきました。サイモンはチップを引き渡し、取引を終了させます。彼は仲介人に5000万ドル貯めたら引退する事を宣言します。そんな彼に、高額の前金を約束した依頼が舞い込みます。依頼人はトレティアック親子でした。サイモンは変装して親子に会います。しかしイリアはサイモンを見抜いていました。親子は、イギリスの科学者が完成させたという常温核融合の数式を盗み出す依頼してきました。サイモンは高額の成功報酬を吹っかけましたが、親子はあっさり承知しました。親子は去っていくサイモンを見て、殺すには惜しいと口にします。
セイントのネタバレあらすじ:第2幕
オックスフォード大学で研究を続けるエマの講義にサイモンは潜り込みます。心臓が弱い彼女は薬を飲みながら、水から膨大なエネルギーが生み出せる理論は完成したが、実現はまだ不可能だと説きます。サイモンはエマの身辺を調査します。彼女の部屋も忍び込みますが、数式はまだ頭の中にしか存在しないと判断しました。そこで彼は彼女の行動心理を解析し、たぶらかすためにトーマス・モアの出番だと判断しました。情熱的な架空の芸術家トーマスに化けたサイモンはエマに接触し、二人はすぐに親密になります。二人は芸術やお互いの事を話し合います。サイモンは彼女を父親譲りの立派な人物だと誉めますが、エマは彼を何かから逃げていると見抜いて見せました。ですが彼女にとっては、その影が魅力に映ったようです。食事中、サイモンは核融合の数式を書き留めているメモを、エマが持ち歩いている事を確認します。しかし彼は、エマに情が移ってしまいました。サイモンはトレティアックに報酬の釣り上げを行って諦めさせるようにします。ですがトレティアックは、それも飲み、情が移ったのを見透かしたかのように裏切ったら彼女を殺すと脅してきました。一晩エマの部屋に泊まったサイモンですが、朝彼女が起きた頃には姿を消していました。数式を書いたメモの代わりに、サイモンの許してくれというメモだけが残されていました。盗み出したメモを写真に収め、サイモンは躊躇いながらもトレティアックにそれを送信します。それを見たトレティアックのお抱え科学者ボトビンは、夢を実現したかのように賞賛します。サイモンは金を要求しますが、イワンは式が不完全だといって金を出し渋ります。その間、サイモンの発信場所を逆探知していたイリアが彼の所へ向かっていました。サイモンは引き延ばしに気付き、間一髪逃げ果せる事が出来ました。エマは専従捜査官からサイモンの正体を聞かされ、彼は聖人を騙るという特徴を教えられます。その頃モスクワでは、トレティアック親子は酒場で酒を楽しんでいました。イワンがVIP席に入ると、同じ顔の男が現れます。もう一人はサイモンの変装でした。彼はイワンを脅し、報酬を振り込ませて立ち去りました。
セイントのネタバレあらすじ:第3幕
サイモンがホテルの戻ると、エマが聖人の名を追ってやって来ていました。エマは、金の為に数式を盗んだサイモンを責め、欲しければ只で上げたのと言い放ちます。サイモンはエマに式が不完全だと言われた事を話すと、彼女はその人物を張り倒せと憤ります。そんな言い合いをしている二人を警察が取り囲み逮捕しました。警察はトレティアックの手先で二人を彼等の所へ護送します。ボトビンは式が未完成だと訴えていたのでした。しかしサイモン達はあっさりと護送車を抜け出していました。逃げながらエマは、自分が狙われる理由が判らないと悩みますが、すぐに式がバラバラだという事に思い至ります。二人は深刻な燃料不足に陥って、貧富の差が深刻なモスクワを逃げ回ります。彼等は、地下組織的美術品窃盗団の助けを借り、アメリカ大使館を目指します。地下道を進み、サイモン達は大使館の目の前にあるマンホールまで辿り着きました。大使館前は、エネルギー問題のデモ隊が集まっており、一瞬即発でした。そこにイリアがやって来て、大使館前で待ち伏せて居ました。サイモンは自分が騒ぎを起こして囮になり、エマを大使館に駆け込ませました。騒ぎで大火傷を負った息子を尻目にイワンは、ボトビンが方程式を組み立てられず、このままで折角の切り札が使えない事を思案していました。そこで彼は、使えないなら使えないという事を利用する手に出ます。イワンは、敵対している大統領に常温核融合の理論を高額で売りつけます。彼は、その理論が未完成であり、それに大金を使った事を理由に失脚させる事を考えていました。それを変装したサイモンが盗聴し、知り得ます。大使館のエマは、デモ隊が興奮して居る為、脱出する事になっていました。そこに変装したサイモンがやって来て、数式のコピーを渡し、解くよう頼み込まれます。エマは本物のメモを返してもらえない事に不服を感じますが、正しい事に使うと約束されて数式を組み立て始めます。サイモンはエマに、三つの奇跡が必要だと呟きました。
セイントの結末
サイモンは更なる盗聴で、トレティアックの行っている不正の証拠を手に入れます。そしてエマから届けられた数式をボトビンに見せ、それが正しいという事を証明するよう彼を惑わします。更にサイモンは、窃盗団からクレムリンへの地下道の図面を買い、忍び込みます。彼は大統領と接触し、これから起こる事を話、あえて非難を受けて欲しいと頼み込みました。そこに軍がやって来て、大統領を拘束します。黒幕は勿論トレティアック親子でした。イワンは大勢のデモ隊が集まる広場に行き、大統領は新エネルギー開発に無駄な支出をしたと弾劾し、それをテレビ中継させます。そして、ボトビンに作らせた融合炉の試作品を使い、それが偽物だと聴衆に訴えかけ、装置を作動させました。その時、サイモンの言う奇跡その1が起きます。融合炉は正常に作動し、一瞬でしたが核融合で発生した光が広場を照らし出しました。それを見た聴衆は、大統領を称え始めます。状況が一転したトレティアック親子は逃げ出そうとします。そこでサイモンの言う奇跡その2が起きました。軍はトレティアック親子を逮捕、大統領に指揮権が戻りました。エマは、専従捜査官の二人からその後にサイモンから接触があったかどうかを聞かれます。彼女は接触していないという事を言うとそのまま開放されます。刑事達は彼女がサイモンに惚れていると見抜いていました。エマは、サイモンから送られてきた地図に従い、口外の屋敷に向かいます。その屋敷に入り、机を見ると、彼女のメモが並べられていました。そこにサイモンが現れます。二人は再会を喜び、愛される事を確認したサイモンは、三つ目の奇跡だと喜びました。一夜を共にし、朝サイモンが起きると、エマは居ませんでした。しかし彼女は、セイントを模したピンバッチと、理論を世界中に公表するという書置きを残していました。講演会場に現れたエマを、変装したサイモンが祝福にやってきます。彼は、また会える事を約束しました。二人の捜査官は講演会場でサイモンの姿を捜します。男の捜査官の横、変装したサイモンが座ります。男の捜査官は気付きませんでしたが、女の捜査官がそこにサイモンがいる事に気付き、相棒にサインを送ります。ですが、サイモンは一足先に逃げ出します。警官達が彼を追いますが、悔しがる彼等の横をサイモンは車で通り掛り、逃げ切って見せました。その後、孤児院にトレティアックの口座から多額の寄付が送られ、核融合の理論は世界中に公表されます。ボトビンはラッセル基金を設立、聖人の奇跡が広がって行きます。
以上、映画「セイント」のあらすじと結末でした。
この映画「セイント」は、もともとロジャー・ムーアが1960年代にTVドラマに主演していた人気シリーズの映画化作品。
バットマン、ジム・モリソン、エルヴィス・プレスリーなどを演じ、意外な変身趣味を見せ付けてきた、ヴァル・キルマーが、12人の聖人の名を使い分ける怪盗に扮した冒険アクション映画なんですね。
そして、この作品では主人公セイントの生い立ちから始まる物々しさで、ジェームズ・ボンドみたいな冒険アクションを繰り広げてくれます。
暗い少年時代を経て、世界を股にかける大泥棒になったセイントことサイモン・テンプラー。
彼がソ連崩壊の混乱に乗じてロシア皇帝になろうと計画している石油王イワンとその息子の所へ、機密文書を盗みに入ったのが縁で、権力を握る決め手となる低温核融合の方程式をオックスフォードの女性科学者エマ(エリザベス・シュー)から盗もうとして恋に落ちてしまう。
そして、イギリスからモスクワへセイントを追ってきたエマが、危機に陥るのを防ごうと大活躍、最後に見事にイワン父子の鼻をあかすというお話で、その間に野暮ったいオヤジから謎めいた芸術家の青年まで、聖人たちの名前を借りて、クルクルと変装してみせるヴァル・キルマーの演技が、観ていて実に楽しめる。
その軽いテイストの一方で、いかにも寒そうなロシア・ロケによる映像が、重厚なサスペンスを醸し出していると思いますね。