8 Mile(8マイル)の紹介:2002年アメリカ映画。超大物ラッパー、エミネムが自ら主演する半自伝的作品です。ラッパーとして成功を夢見る白人青年とその仲間たちの青春を描いています。
監督:カーティス・ハンソン 出演者:エミネム(ジミー・スミスJr./B.ラビット)、ブリタニー・マーフィ(アレックス)、キム・ベイシンガー(ステファニー・スミス)、クロエ・グリーンフィールド(リリー・スミス)、メキ・ファイファー(デヴィッド・“フューチャー”・ポーター)ほか
映画「8 Mile」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「8 Mile」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
8 Mile(8マイル)の予告編 動画
映画「8 Mile」解説
この解説記事には映画「8 Mile」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
8 Mile(8マイル)のネタバレあらすじ:起
1995年のアメリカ・ミシガン州デトロイト。この地で栄えていた自動車産業も衰退していました。デトロイトには都市と郊外を隔てる境界線、通称「8マイル・ロード」があります。この道は富裕層と貧困層、そして白人と黒人とを分ける格差の象徴となっています。貧しい白人青年のB.ラビットことジミー・スミスJr.(エミネム)の夢は、いつの日かラッパーとして成功を収め、8マイルの向こう側の貧困や犯罪とは無縁の世界へ行くことです。恋人と別れ、アパートを追い出されたラビットは、母のステファニー(キム・ベイシンガー)が住むトレーラーハウスに転がり込みますが、母の恋人グレッグ(マイケル・シャノン)とは折り合いが悪く、殴り合いの喧嘩に発展することも。ある日、ラビットは勤め先の鉄板プレス工場で、アレックス(ブリタニー・マーフィ)というウエイトレスの女性と出会います。アレックスは将来モデルなるという夢を持っていました。
8 Mile(8マイル)のネタバレあらすじ:承
ラビットの才能を買っているフューチャー(メキ・ファイファー)ら仲間たちは、先日のラップバトルで何もできなかったラビットのために、一緒に駐車場でのラップの練習に付き添います。みんながラビットのラップに盛り上がっていたところに、ラップバトルのチャンピオンであるパパ・ドック(アンソニー・マッキー)がいちゃもんをつけに来ます。ラビットの仲間のチェダー(エヴァン・ジョーンズ)が応酬して一触即発となりますが何とかその場は収まります。ある日、ステファニーはトレーラーハウスから立ち退きを命じられ途方に暮れます。そこにグレッグが現れ、ラビットとまたもや取っ組みあいの喧嘩となります。ラビットは、仲間たちと共にパパ・ドックにバトルを仕掛けようとしますが、チェダーは誤って銃を暴発させて自分の足を撃ってしまい入院します。ラビットは時たまチェダーの見舞いに行ったり、退院後も松葉杖をつくチェダーを見守ったりしました。
8 Mile(8マイル)のネタバレあらすじ:転
ラビットは職場の人たちを前にラップを披露、大絶賛を受けているところにアレックスがやってきます。アレックスはラビットのラップを称賛してくれました。一方のアレックスは芸能関係者のウィンク(ユージン・バード)と接触し、モデルへの夢に向けて前進していました。ある時、ラビットはアレックスがウィンクと情事に及んでいる様を目撃してしまい、絶望と嫉妬のあまりウィンクに殴る蹴るの暴力を振るいます。その晩、ウィンクは報復のため仲間を引き連れてラビットを襲撃します。
8 Mile(8マイル)の結末
ステファニーはビンゴゲームに勝利してお金をもらい、立ち退きは回避されます。いつものように工場で真面目に働くラビットの前にアレックスが現れ、モデルへの道が開けてニューヨークに行くことになったので別れを告げると、ラビットにラップバトルに出て欲しいと頼みます。ラップバトルに出るつもりのなかったラビットでしたが、2、3時間だけ同僚に仕事を代わってもらい、ラップバトルの会場のクラブに向かいます。仲間たちが見守る中、ラビットは予選を勝ち進み、いよいよ決勝戦で因縁の相手パパ・ドックと対決します。以前のラップバトルではラビットは緊張のあまり何もできませんでしたが、今日は違いました。駆けつけたアレックスも見守る中、ラビットは圧巻のパフォーマンスを見せつけて会場を大いに沸かし、圧倒されたパパ・ドックは何もできなくなり、遂にラビットは優勝を勝ち取ります。ずに舞台を去ります。一大勝負を終えたラビットは、再び工場に戻っていきました。
「8 Mile」感想・レビュー
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人気ラッパーエミネムの半自伝映画なのですが、とにかくカッコイイです。所々にエミネムらしいウィットに富んだネタが散りばめられており、エミネム好きな人も知らない人も楽しめる映画です。今はかなり多くの人の心を打つような曲をリリースしていますが、このころのエミネムは特にお騒がせもので、それをファンが待ち望んでいたところもあるのでしょうがかなり辛辣なディス曲ばっかりでした。この映画はエミネムのそう言った心の底の原点を露呈させるような作品で一度観たらファンになっちゃうかもです。
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デトロイトの貧しい白人家庭出身の孤独な青年。
昼間は工場で働き、恵まれたラップの才能を仲間にも披露するが、大一番でチャンスをものに出来ないでいた彼が、自らの出自や胸のうちにある怒りを克服し、周囲に才能を知らしめていくというのが、このカーティス・ハンソン監督、エミネム、キム・ベイシンガー出演の映画「8 Mile」だ。頭の回転が早く、機知とユーモアに富んでいなければ、ラップなんて出来やしないことをまざまざと思い知らされる。
この作品の見せ場の一つになっているラップバトルで、エミネム演じる主人公が繰り出す言葉は、ことごとく韻を踏み、耳に心地よいリズムを刻みながら、機知に富んだ豊富な語彙で相手を揶揄し、強烈に皮肉ってみせる。
それに対する相手は、単純で汚い言葉で憎悪と嫌悪を撒き散らすだけで、英語を聞き流しているだけでも、まるで安ウイスキーのようで不快なのだ。
しかし、それにしても、実に驚いた。
「ゆりかごを揺らす手」や「激流」などのサスペンスでその名を知らしめ、フィルム・ノワールの傑作「L.A.コンフィデンシャル」でその名声を決定的にしたカーティス・ハンソン監督が、ユニークで味わい深いコメディドラマ「ワンダー・ボーイズ」の次に選んだ題材が、カリスマ性が高く気難しそうなスーパースター、エミネムを主演に据え、彼の半自伝的内容だという触れ込みの「企画もの」に挑み、尚且つ、鮮烈で繊細な、普遍性を持った青春映画として第一級の作品に仕上げてくるとは、全く想像がつかなかった。ジャンルを問わず、的確にドラマを抽出してみせるカーティス・ハンソン監督の懐の広さと深さは、まさに驚嘆すべきものだ。「ワンダー・ボーイズ」でも光っていた、ポップで現代的なセンスと音楽への造詣の深さが、「映画」というものに、あまり興味のないと思われる、ポップスター、エミネムのファンをも落胆させない「音楽映画」としても、この作品を完成度の高いものにしていると思う。
そして、カーティス・ハンソン監督の驚くべきところは、ジャンルを超越するだけではなく、「L.A.コンフィデンシャル」でオスカーを受賞した後、活躍の機会に恵まれなかったキム・ベイシンガーを再度起用し、息子と同世代の愛人を連れ込む絵に描いたようなホワイトラッシュの母親を演じさせ、彼女の演技者としての実力を万人に再認識させて見せるかと思えば、ブリタニー・マーフィーから愛らしさとアバズレ感の同居した危うい魅力と、悲しいくらいの浅はかさに満ちたキャラクターを引き出しても見せる。
主演のエミネムについて言えば、もちろん自己を投影しやすい役柄であるから、差し引いて考えなくてはならないとしても、要求される”複雑で繊細な感情表現”を、純粋でありながら狂気を孕んだ瞳と、しなやかで細身の体全体で見事にこなしていて、俳優としての限りない可能性を垣間見せ、単なるスターの余技ではないことを、その演技をもって主張しているようだ。
実力派の脇役に囲まれて沈まず、浮き立たず、映画のトーンに忠実に溶け込んで見せたことは、実に見事としか言いようがない。
また、映画のエンディングに流れるエミネム自作のオリジナル曲も、普段の曲に比べると歌詞のトーンがよりポジティブであることも含めて、非常に生の感情がこもった力作であると同時に、映画の内容やテーマをストレートに表現した、近年にない最高の主題歌だったのではないかと思う。
この映画をエミネム好き、ラップ好き、ストリート文化フォロワーたちだけのものにしておくのは、非常にもったいない。”真摯な青春映画”として、先入観なしに、もっと幅広い人々に観られてしかるべき傑作だと思う。
とにかくエミネムがカッコいい。いや、カッコいいのは終盤のみで、それまではモジモジ、マゴマゴしたパッとしないにーちゃん。緊張のあまり吐いたり、ステージに立つも何にもできずバカにされてそのまま退場するなど、今の姿からは想像できないヘタレっぷり。そして今は亡きブリタニー・マーフィーの可愛いこと!キム・ベイシンガーもダメ母を頑張って演じてます。仲間や同僚とのやりとりも人情味があって良いけど、だからこそラストの切なさがグッときます。