逃走迷路の紹介:1942年アメリカ映画。ヒッチコック作品ではお馴染みの巻き込まれ型のサスペンス劇。戦時中だったことで日本では当時フィルムが輸入されず、製作から37年経った1979年にようやく劇場公開された。
監督:アルフレッド・ヒッチコック・出演:ロバート・カミングス(バリー・ケイン)、プリシラ・レイン(パット)、ノーマン・ロイド(フライ)、オットー・クルーガー(トビン)、ほか
映画「逃走迷路」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「逃走迷路」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「逃走迷路」解説
この解説記事には映画「逃走迷路」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
逃走迷路のネタバレあらすじ:起
カリフォルニア州のグレンデール。軍需工場の扉が開き、仕事を終えた工員たちが群れを作って出てきます。その中には、バリーと友人のケンもいました。ケンがよそ見をして1人の工員を倒してしまい、謝るのですが、無愛想なその男はさっさとその場を離れます。男はその時封筒や紙幣を落としており、バリーはその様子に疑惑を覚えます。封筒によれば男の名前はフライでした。間もなく工場で火災が発生。ケンが消化器で火を消そうとしましたが、なぜか炎が激しくなり、ケンは焼死します。消化器にはガソリンが仕込んであったのです。ケンに消化器を渡したのはバリー。そしてバリーにはフライが手渡しました。
逃走迷路のネタバレあらすじ:承
捜査の結果、消化器の件でバリーが疑われ、警察が来ますが、彼は間一髪逃げ出します。バリーはフライが犯人だと確信し、自らその犯行を暴こうと決心。フライが落とした封筒に、ディープスプリング牧場とあったのを思い出し、そこへ向かいます。牧場の主人・トビンはフライなど知らない、と言うのですが、バリーは偶然フライからの電報を見つけ、彼がソーダシティにゆく事を知ります。トビンはバリーがお尋ね者だと知り、警察へ通報。バリーは逮捕されます。しかし刑事の隙を見て橋から川へ飛び込み、なんとか逃亡。山の中を彷徨ううち、盲目の作曲家マーティンの山小屋に隠れるのです。マーティンはバリーの無実を信じてくれますが、ちょうどそこへ訪ねてきた姪のパットは別でした。パットは彼を警察に引き渡すつもりで一緒に車に乗り込み、山を下ります。しかし途中で車が故障。彼らは偶々やってきたサーカス団のトラックに乗り込むと、共にソーダシティへ。パットはバリーの行動を見てその無罪を信じ、身の証を立てるのに力を貸すことになります。
逃走迷路のネタバレあらすじ:転
ソーダシティはゴーストタウンで誰も見当たりません。2人がある小屋に入ると、そこには通信機などが備え付けてありました。間もなく男が2人やってきます。パットを別の部屋に隠れさせると、バリーが1人で対応。彼らはバリーが仲間だと信じ、ニューヨークへ連れていきます。隠れていたパットの方もバリーが彼らの仲間だと信じてしまい、逃亡。しかし結局悪漢たちに捕まってしまいます。ニューヨークのある邸宅で再会した2人ですが、そこにいたトビンのせいでバリーの正体も暴かれ、囚われの身に。しかし火災警報器を鳴らすことで脱出。戦艦の進水式が今日行われることを知り、それがテロの目標だと判断します。
逃走迷路の結末
式の会場であるキアニーヤードでフライを見つけたバリーは彼と格闘。何とかテロを阻止するのです。パットの方も自力で拘束から逃れ、警察でバリーと合流。警察署からフライも逃走し、フェリーに乗って自由の女神像へ。パットだけがそれを尾行します。彼女は電話で警察に連絡。警官たちとともにバリーも自由の女神像へ。彼は像の頂上へフライを追い詰めます。しかし、足を滑らせたフライは手すりを越えて宙吊りに。バリーは助けようとしましたが背広が破れてしまい、フライは落下してしまうのです。
“ヒッチコック監督の名人芸が堪能出来る、追われ型の逃亡サスペンスの傑作「逃走迷路」”
この映画「逃走迷路」は、サスペンス・スリラーの神様アルフレッド・ヒッチコック監督が第二次世界大戦中の1942年に発表した作品で、無実の男が警察に追われながらも、真犯人を突き止めるという、ヒッチコック監督お得意の”追われ型の逃亡サスペンス”の会心作です。
航空会社で働くバリー・ケイン(ロバート・カミングス)は、ふとした事からナチ破壊工作の殺人事件に巻き込まれ、無実の罪で追われる事に—-という意表をつく大胆なストリー展開が、逃走劇の面白さに拍車をかけていきます。とにかく、手に汗にぎる、まさにスリルとサスペンスのつるべ打ち。
アメリカ西海岸の軍需工場で、謎の火災と殺人事件が発生し、無実の罪で追われるケインは、警察と外国のスパイの手を逃れながら、大西部からニューヨークへと真犯人を探して行きます。
真っ白い壁にもくもくと黒煙が上る、冒頭のショッキングな発端。赤ん坊とプールを使ったトリック・ショット。
そして、キラキラと映画を映しているスクリーンの前、銃をぶっ放している犯罪者の影がダブるという、華麗で斬新な映像テクニック。
やがて、スパイの本拠の大邸宅でのパーティの最中に連れ込まれた、主人公のケインと恋人は、踊りながら脱出しようとしますが—-。
とにかく、映画の一場面、一場面が、凝りに凝ったヒッチコックタッチのオンパレードで、映画の楽しさ、面白さを、ヒッチコック監督の名人芸で十二分に堪能させてくれます。
そして、映画のラストシーンは、映画史上あまりにも有名な、自由の女神像の手にぶら下がってのハラハラ、ドキドキのアクション—-。
現在では観光客は女神像の冠のところまでしか登れませんが、この映画の製作当時は、右手に掲げているたいまつのところまで登れたそうですが、追うケインと追われる犯人は、そのたいまつの外側に出ます。
犯人が落ちそうになり、危うく女神の指の外側に左手でぶら下がり、ケインが犯人を救おうとして手を差し伸べ、ようやく袖をつかむが、袖は腕の付け根にある縫い目のところから破れ、遂に犯人は海に向かって墜落して行きます。
このシーンの海へ落ちて行く男の姿をカメラを固定させたまま、真上から撮る見事なショット—-。
ヒッチコック監督は高所からの転落の演出にもさまざまなバリエーションをもたせていて、見事の一言に尽きます。
このシーンでの音楽も無く、音さえも無い、この数分間はまさしく胸が痛くなる程のスリルと緊張感に満ち溢れています。
いったいどうやって撮影したのかと思われる、じっくり観てもよくわからない凄いカットです。
ヒッチコック映画でのお約束とも言える、ワンカットだけ自身の姿を見せる場面もご愛敬の、まさにヒッチコック監督こそは本当の映画の魔術師なのです。