マンハッタン無宿の紹介:1968年アメリカ映画。ニューヨークを舞台に、一匹狼の保安官代理と凶悪犯の攻防を描く。クーガン保安官代理は囚人リンガーマンをアリゾナへ護送するため、ニューヨークまでやって来た。しかし故郷とは異なる都会のルールに順応出来ず、独断専行で突っ走った結果リンガーマンを逃がしてしまう。クーガンは孤立無援となっても尚リンガーマンを追い続ける。「ダーティハリー(1971)」の原点ともなったハードボイルド・アクション作品。
監督:ドン・シーゲル 出演者:クリント・イーストウッド(クーガン)、リー・J・コッブ(マッケルロイ)、スーザン・クラーク(ジュリー)、ドン・ストラウド(リンガーマン)、ティシャ・スターリング(レニー・レイヴン)ほか
映画「マンハッタン無宿」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マンハッタン無宿」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「マンハッタン無宿」解説
この解説記事には映画「マンハッタン無宿」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マンハッタン無宿のネタバレあらすじ:田舎の一匹狼
舞台はアメリカ、アリゾナ州。保安官代理クーガンはあちこちにガールフレンドをつくる一方、仕事では一匹狼を貫く少々乱暴な男です。上司は彼の素行に頭を痛めつつ任務を言い渡します。ニューヨークの刑務所に入っている凶悪犯リンガーマンを、裁判のためアリゾナまで護送せよという命令でした。早速旅立ったクーガンはニューヨーク市警を訪ね、マッケルロイ警部補と面会します。リンガーマンの引渡しはすぐに行われる予定でしたが、彼は現在刑務所病院に入っているので退院まで待てと言われてしまいます。憮然とするクーガンでしたが、そこで保護観察官ジュリーに目を留めます。美しい彼女に惹かれたクーガンは猛烈なアタックを開始。強引に彼女のアパートまで一緒に帰りますが、結局口説き落とすことは出来ません。クーガンは渋々近くのホテルに部屋をとることにしました。
マンハッタン無宿のネタバレあらすじ:独断専行の失態
クーガンは再びマッケルロイにリンガーマンの引渡しを頼みますが、退院を待つしかないの一点張りで追い出されてしまいます。クーガンは刑務所病院に向かい、マッケルロイの名を勝手に使ってリンガーマンを強引に退院させます。ところが空港でクーガンはリンガーマンの仲間に殴られ昏倒してしまいます。リンガーマンの恋人レニー・レイヴンのさしがねでした。結局リンガーマンを逃がしてしまい、病院に運ばれたクーガンはマッケルロイから叱責を受けます。リンガーマンの件から降りるように命令されますが、クーガンは1人でもリンガーマンを追う決意を固めていました。
マンハッタン無宿のネタバレあらすじ:上手くいかない捜査
病院を出たクーガンはリンガーマンの母親を訪ねます。しかしこれといった情報は得られません。更に勝手な捜査を繰り広げるクーガンにニューヨークの捜査官達は大激怒。マッケルロイはこれ以上邪魔をするなら公務執行妨害で逮捕すると警告します。その騒ぎを聞いていたジュリーがクーガンを心配して声をかけました。彼女の部屋へ招かれたクーガンはリニーについて尋ねます。偶然にもジュリーはリニーの保護観察官でした。クーガンはジュリーがキッチンに入った隙に部屋を調べ、リニーの情報を入手します。
マンハッタン無宿のネタバレあらすじ:リニーの罠
盛り場でリニーを見つけたクーガンはリンガーマンの居所について尋ねます。彼女がクーガンを案内したのはビリヤードバーでした。そこにリンガーマンの姿はなく、彼の仲間が集まっています。まんまとリニーの罠にはまったクーガン。数人を昏倒させますが、数で押され殴り倒されてしまいます。そこへパトカーのサイレンが近付いて来ました。クーガンも含め、動ける者は皆逃げ出します。マッケルロイは店内に落ちていたクーガンの帽子を見つけ、渋い顔をしました。明朝、リニーから事情を聞いたというジュリーが激怒してクーガンのホテルにやって来ます。苛立ったクーガンは怒りに任せてリニーの部屋へ向かい、彼女を暴力で脅して今度こそリンガーマンの元へ案内させます。クーガンに気付いたリンガーマンはバイクで逃走。クーガンも通行人からバイクを奪い追いかけます。
マンハッタン無宿の結末:アリゾナへ
散々逃げ回ったリンガーマンはクーガンに引き倒されますが、諦めずに走って逃げ出します。そこへマッケルロイを乗せたパトカーが到着して逃げ道を塞ぎました。来た道を戻ったリンガーマンはクーガンに殴り倒され、連行されていきます。引渡しは退院が決まってからだと念を押すマッケルロイに、クーガンは「今度は大人しく待ちますよ」と答えました。後日、退院したリンガーマンをヘリに乗せアリゾナへ向かうクーガン。見送りに来たマッケルロイが帽子を返します。遅れて現れたジュリーは離陸するヘリにいつまでも手を振っていました。次第にジュリーの姿が小さくなり、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画マンハッタン無宿のあらすじと結末でした。
“クリント・イーストウッドとドン・シーゲル監督が初めてコンビを組み、後のダーティハリー・シリーズのきっかけとなった作品「マンハッタン無宿」”
この映画「マンハッタン無宿」は、アリゾナで人を殺しニューヨークで逮捕された男を引き取るため、生まれて初めて大都会ニューヨークを訪れたアリゾナの田舎の保安官補クーガン(クリント・イーストウッド)は、複雑な警察機構に業を煮やし、独断で病院へ乗り込み、LSD中毒で入院中の犯人を強引に連行してしまいます。
しかし、空港で犯人の仲間に襲われ彼を奪取されて、クーガンの怒りが爆発。
アリゾナの荒野を駆ける勢いそのままに足で、オートバイで、摩天楼の街を駆け巡り、遂に犯人を逮捕するのです。
このアリゾナの田舎の保安官補クーガンは、アリゾナでは腕利きだが、ニューヨークでは単なるおのぼりさんにすぎず、茶色のスーツを着て、テンガロン・ハットをかぶり、ブーツを履いた野暮なウエスタン・スタイルは、市民たちから好奇の目で見られます。
中には、露骨にからかう者もいて、彼らは口を揃えて「テキサスか?」と尋ねます。
すると、そのたびにクーガンはうんざりしたような顔で「アリゾナだ」と応えるという、このシーンには思わずニヤリとしてしまいます。
とにかく、このクーガン、からかわれても、馬鹿にされても、眉ひとつ動かさず、平然とアリゾナの荒野で犯人を追い詰めた時と同じやり方で、黙々と自分流の捜査を推し進めて行くのです。
そして、犯人を護送の途中、不覚にも逃げられたという屈辱に耐える事は、西部男の誇りが許さないのか、ニューヨーク市警の警部(リー・J・コッブ)に、「ここでは君はひとりの市民にすぎないのだ。さっさと、OK牧場へ帰れ」と、冷やかし半分の言葉を投げられても、彼は頑として受付けず、あくまでも、たったひとりで勝手知らないニューヨークの街を歩き回って、犯人の行方を追いかけるのです。
それは、警官としての職業意識とも言えるし、犯罪者への怒りとも言えるかも知れません。
しかし、ドン・シーゲル監督が、この映画で一貫して描くのは、”これこそ西部男の誇りであり、血と汗を流して未開の大地を開拓した人々の血を受け継いだ男の生き方なのだ”という事なのです。
そこが、この作品の醍醐味でもあり、いかにもドン・シーゲル監督らしい、ひねりの効いた演出だなと強く感じました。
一連のマカロニ・ウエスタンで国際的スターになったクリント・イーストウッドの個性を、大都会の追跡劇に生かそうとした試みは大成功を収め、この映画をきっかけに、あの映画史に残る”刑事もの”の傑作「ダーティハリー」シリーズは誕生したとも言えるのです。