ぼくと魔法の言葉たちの紹介:2016年アメリカ映画。ピュリッツァー賞受賞歴を持つジャーナリスト、ロン・サスカインドによる原作「ディズニー・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと」を映像化したドキュメンタリー。サスカインドの息子で、幼い頃から自閉症のため話すこともままならないオーウェン。彼が唯一夢中になれるのはディズニー映画だったが、ある日サスカインドは、オーウェンが映画のセリフを全て暗記し、セリフで自分を心のうちを伝えようとしている事実を知り驚く。第89回アカデミー賞で、長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた感動作。
監督:ロバート・ロス・ウィリアムズ 出演者:オーウェン・サスカインド、ロン・サスカインド、コーネリア・サスカインド、ウォルト・サスカインド、ギルバート・ゴットフリード、ローゼンブラット医師ほか
映画「ぼくと魔法の言葉たち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ぼくと魔法の言葉たち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ぼくと魔法の言葉たちの予告編 動画
映画「ぼくと魔法の言葉たち」解説
この解説記事には映画「ぼくと魔法の言葉たち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ぼくと魔法の言葉たちのネタバレあらすじ:起
アメリカ・マサチューセッツ州ケープコット。現在23才の青年、オーウェン・サスカインドの幼少時代のホームビデオが回っています。撮影したのは母親のコーネリア。ビデオに映る幼いオーウェンは、父親のロンや兄のウォルトと一緒にはしゃいだり笑ったり、やんちゃで元気いっぱいの男の子です。この頃ロンは30代で、ウォールストリート・ジャーナルの記者として成功。一家の毎日は、まるで絵に描いたように幸福だったのです。しかしオーウェンが3才の頃、状況は一変します。夜眠らなくなり、運動能力が低下し、言葉が理解できなくなったのです。専門医の診断結果は広汎性発達障害。オーウェンの場合は自閉症でした。このままいけば話すことすら困難になる。そう聞いた両親は絶望のどん底に突き落とされます。のちに言葉を話さなくなったオーウェンでしたが、ある日、ディズニー映画「リトルマーメイド」でアリエルが人間になる場面を見ていた時、ふと何かをつぶやきます。「Just your voice」。それを聞いたロンは、これは声を失ったという息子の訴えなのだと気づきます。この出来事からロンとコーネリアは、どんなことをしてでもオーウェンを自閉症から救出しようと決意するのです。
ぼくと魔法の言葉たちのネタバレあらすじ:承
オーウェンのディズニー映画を愛する気持ちは、23才になった今でも変わりません。自ら通う障害者の学校で「ディズニー・クラブ」を結成し、生徒みんなでディズニー映画を鑑賞。鑑賞後、それぞれが感想を語り合います。彼らにとってディズニー映画は、人生の意味を教えてくれる教材なのです。オーウェンとディズニー映画の深いつながりについて、ロンが回想します。それはウォルトの9才の誕生日。ほとんど口をきかなかったオーウェンが、驚くべきことを言ったのです。「大人になると魔法が消える」。オーウェンは大好きな「ピーターパン」の映画を通じて、子供から大人になるという現実を理解していました。そこでロンは「アラジン」に出てくる悪役のオウム、イアーゴのパペットを持ち、イアーゴになりきって話しかけてみました。するとオーウェンはすらすらと自分の気持ちを語ります。オーウェンは映画のセリフで話していました。「アラジン」だけでなく、これまで見たディズニー映画の登場人物すべてのセリフを暗記していたのです。家族は一緒にディズニー映画を見ることで再び絆を取り戻しました。諦めない時は「ヘラクレス」、友達がほしい時は「ジャングルブック」など、ディズニー映画を通してオーウェンの心に語りかけたのです。
ぼくと魔法の言葉たちのネタバレあらすじ:転
学校の卒業式を2週間後に控えたオーウェン。卒業後は親元を離れ、一人暮らしに挑戦するのです。同じ自閉症のエミリーが、オーウェンの初めてのガールフレンドです。一人暮しも恋愛も、オーウェンにとって全く未知の世界です。不安を口にする心細げなオーウェンに、コーネリアは心配のあまり涙ぐみます。数日後、学校で最後の「ディズニー・クラブ」が開かれました。そこに素晴らしいゲストが登場します。「アラジン」の悪役、ジェファーの声優を務めたジョナサン・フリーマンです。ロンから手紙を受け取り、オーウェンに会いに来たのです。さらにはオーウェンの大好きなオウム、イアーゴの声優ギルバート・ゴッドフリードまで現れて、生徒達は大喜び。ジョナサンとギルバートは役になりきり、みんなを大笑いさせます。「夢みたいだ」と、オーウェンの顔が輝きました。ロンは再び回想します。支援学級のある小学校に通っていた頃、オーウェンはひどいいじめを受けてしまいます。オーウェンは地下室にこもり、ひたすら絵を描きます。ロンがスケッチブックを見ると、そこにはディズニーの脇役ばかり描かれていました。「僕はヒーローじゃない。脇役だ」と言うオーウェン。自らを「脇役達の守護神」とし、ヒーローを探す脇役達の物語を創作。タイトルは「迷子の脇役達の国」です。ディズニーの脇役達が息子を支えているのよと、コーネリアが言います。一方、現在26才の兄、ウォルトは悩んでいました。将来、老いた両親と弟の両方の面倒を見なければならない。厳しい現実を見つめ、覚悟を決めているウォルト。「誕生日はつらくなる」と、正直な気持ちを打ち明けます。
ぼくと魔法の言葉たちの結末
卒業式を終え、念願の一人暮らしを始めたオーウェン。部屋にはディズニー映画のビデオがずらり並んでいます。しかしやはり母親が恋しいのか、夜1人で見る映画は「バンビ」です。ウォルトは、オーウェンとエミリーの関係を心配しています。ディズニー映画に、キス以上の関係など描かれないからです。肉体面では立派な成人である弟に、キス以上のやり方をアドバイスするのは大変なことです。ところがエミリーは、「距離を置きたい」という理由でオーウェンに別れを告げます。落ち込み、混乱するオーウェンは、「なぜ人生はつらい痛みや悲しいことばかりなの?」と母親に尋ねます。そんな中、オーウェンにフランス行きの話がもちあがります。パリで行われる自閉症の会議で、スピーチすることになったのです。スピーチの文章に困り果てるオーウェンですが、ロンは助け舟を出さず、自分の言葉で書きなさいとアドバイスします。結果、スピーチは大成功に終わります。オーウェンは自身のいじめ経験を語り、ディズニー映画「ノートルダムの鐘」の主人公、カジモドに自分を例えたのです。会場にスタンディングオベーションが起こります。アメリカに戻ったオーウェンは、久しぶりにウォルトと再会します。オーウェンはエミリーとの別れを乗り越え、ひとつ大人になっていました。ウォルトは弟の成長を喜びます。その後、オーウェンは地元の映画館で働くことになります。今も息子の将来を案じるコーネリアですが、一方ロンは、失敗や挫折を経験するべきだと考えています。オーウェン自身は、自分の子供時代はもう終わったとわかっています。「でも大丈夫」と言い、映画館のスクリーンを笑顔で見つめます。
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