嘆きのテレーズの紹介:1952年フランス映画。おとなしく夫に従順なテレーズが不倫の恋に落ちたため、そのつもりではなかったのに夫を殺す羽目になり、目撃者に脅迫され、義理の母に無言の責めを受ける苦悩を描いた作品です。
監督 :マルセル・カルネ 出演:シモーヌ・シニョレ、ラフ・ヴァローネ、ローラン・ルザッフル、ジャック・デュビー、シルヴィーほか
映画「嘆きのテレーズ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「嘆きのテレーズ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「嘆きのテレーズ」解説
この解説記事には映画「嘆きのテレーズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
嘆きのテレーズのネタバレあらすじ1
幼い頃から一緒に育った従兄と結婚して布地を扱うお店を経営する義理の母と同居するテレーズは息子を溺愛する母と夫に従順な妻でした。夫とその母はテレーズの気持ちなど考えず、家政婦のように家事と店の手伝いをさせておけば満足しているものと考えていました。 夫が酔って帰ってきた時に送ってくれた知人とテレーズは人目に恋におち、この知人はたびたびテレーズのところへ訪ねてくるようになりました。
嘆きのテレーズのネタバレあらすじ2
粗野ではありますが、男性的なこの知人はこそこそと逢引を重ねることを嫌い、きちんと離婚して自分と結婚して一緒に暮らすことをテレーズに提案します。夫と義理の母に育ててもらった恩があるテレーズはそう簡単に別れ話を持ち出すことができず、苦悩しますが、幸せにかけらもないような日々に嫌気がさし、夫に別れを切り出します。 夫は半狂乱になり、泣いたりすかしたりしてテレーズの決心を変えさせようとします。それが無駄だとわかるとパリに連れ出して監禁してしまえば愛人と連絡もとれなくなると考えて、パリに一緒に旅行に行けば別れることを承知してもいいともちかけます。
嘆きのテレーズのネタバレあらすじ3
テレーズはその言葉を信じて寝台列車に乗って夫と2人でパリに出かけますが、不審に思った愛人はこの列車に乗り込んでいました。テレーズと愛人が話し込んでいるのを見た夫は二人をひどくののしり、かっとなった愛人が夫を列車から突き落としてしまいます。 夫の遺体を確認したテレーズはなんとか愛人をかばおうとします。が、目撃していた同乗者がいました。この同乗者は家までやってきて警察には通報しないかわりにお金を要求します。この脅迫者はもしもこの恐喝で自分の身に何が起こるかわからないと考えて手紙を用意していました。
嘆きのテレーズの結末
ホテルのメイドの少女に「6時までに自分が戻らなかったらこの手紙をポストに投函してほしい」と言い残してお金を受け取りに出かけます。 テレーズと愛人は工面したお金を渡して、脅迫から逃れようとするのですが、脅迫者はお金を受け取った直後に車にひかれて死んでしまうのでした。何もしらないホテルのメイドはテレーズ達の殺人について書かれた警察あての手紙を投函してしまうのでした。
暗闇の中で、青白い炎が妖しく燃えている。
マルセル・カルネ監督の「嘆きのテレーズ」は、そんな映画だ。
炎はヒロイン、テレーズの女の情念。決して赤々と燃えあがることはない。
病弱の夫と、その夫をまるで赤子のようにいたわり、可愛がる老いた姑にはさまれ、テレーズの日々は、暗い。
その中でも情念の炎は、チロチロと燃えていた。
貧弱な夫とは比べものにならない頑強で逞しい肉体を持ったローランの出現で、炎は勢いを得た。
おそらくは、生まれて初めての燃えあがりだったのだろう。
だが、テレーズはそれを赤く燃えあがらせることはできない。
彼女は、それほどに幸せに恵まれていなかったのだ。
逞しい男の腕に抱かれ、官能に酔いながらも暗く無表情なシモーヌ・シニョレの顏がそのことを物語っている。
そして、炎の燃えあがりが、やがて不幸へと結びついてゆくだろうことも、無表情さは語っている。
初めて燃えあがった炎を消すまいと、彼女は夫に離婚を迫るが聞き入れられず、パリの親戚に預けられることになる。
その途中、夫は、後を追ってきてローランと争い、列車から転落死する。
そのショックで姑は、半身不随となりローランとの仲も冷たくなってしまう。
燃えあがった炎は、再びしぼんでいく。
だが、ローランを愛したということで、テレーズにはそれなりの幸福感も残っただろうに、列車で同室だった男のゆすりという思いがけない事態が発生し、かぼそい炎は大きくゆらぎ、そしてさらに、映画にとっては実に素晴らしいが、テレーズにとっては、まことに悲痛な幕切れとなるのだった。
暗く、重く、陰惨な環境にあったがゆえに、いっそう青白く、鬼火のように燃えたテレーズの”女の情念の炎”を、マルセル・カルネ監督はリアリストの本領をいかんなく発揮して的確に描写してゆく。
一点たりともゆるがせにはしていない”緊迫と緊張の映像世界”に、ただただ魅せられてしまった傑作中の傑作だ。