アフリカン・ドクターの紹介:2016年アメリカ映画。ザイール出身でフランスの医科大学を卒業したセヨロは独裁政権の国に戻るより子供たちの教育のためにもフランス国籍が欲しい。医科大学の卒業パーティーに医者をスカウトに来た片田舎の無医町の町長に、セヨロは自ら家族を連れて定住すると売り込むが、そこはアフリカより田舎の、無学の人たちが多く住む小さな町で、初めて黒人を見る人たちから冷たい仕打ちに合う。妻も子供たちも苦しんだが、産気づいた女性を助けたことで、町民からの信頼を徐々に得られるようになり、軌道に乗ったように見えたが、彼の存在が疎ましい次の町長候補に邪魔をされる。実話に基づく話。
監督: ジュリアン・ランバルディ 出演: アイサ・マイガ、ジャン=ブノワ・ユジョー、ジョナサン・ランベール、バイロン・レブリ、ほか
映画「アフリカン・ドクター」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アフリカン・ドクター」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アフリカン・ドクターの予告編 動画
映画「アフリカン・ドクター」解説
この解説記事には映画「アフリカン・ドクター」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アフリカンドクターのネタバレあらすじ:起
時は1975年。リール医科大学の卒業パーティーで卒業を祝う白人たちの中に1人黒人がいる。仲間には「ザイールに帰るのか?」と聞かれるが、彼は「エリートが権力を握る国なんてごめんだ。フランス国籍がほしい。」と答える。
その少し前に、モブツ大統領の弁護士をしている親戚から、大統領が主治医になってほしいと言っていると伝えられるが、それを断った。そのパーティーに、毎年医者をリクルートに来る、パリより北にある田舎町の町長が今年もやってきた。あまりに田舎で、誰もその町に医者として赴任してくれないのだ。
セヨロ・ザントコという名のその黒人は、自らその町長に売り込みに行く。町に黒人が住んだことがないんだ、と難色を示すが、セヨロは「私が最初の黒人になります」と意気込む。話が決まって、国の家族に電話をする。パリに移住できると勘違いした妻は有頂天になる。サッカーを続けたいという娘にもフランスでも続けられるさ、と言う。下の息子は友達と別れたくないと言う。しかし、子どもたちの教育のためと強く思っているセヨロは、この話を押し切る。
ボロいバスで到着したところは見渡す限り農地のものすごい田舎。そこへ町長が迎えに来る。突然の雨の中、街の中心部に徒歩で行く。侵略に耐えた11世紀の教会も残っている。一家は庶民的な家と、往診にとポンコツの車をあてがわれる。
アフリカンドクターのネタバレあらすじ:承
妻はヒステリックに「なぜこんなところに来たのか」と叫ぶ。セヨロは「フランスでの就労許可が出たんだ、いずれパリで開業もできる」と答える。翌日子どもたちを学校に送る車の中、「お前たちはフランスで教育が受けられラッキーなんだぞ」と話す。教育は重要だ、特に黒人には、と。「なぜ黒人には教育が重要なの」と素直に聞く息子に応えられないセヨロと妻。
校庭で楽しそうに遊ぶ白人の子どもたち。校長はセヨロの妻と一緒にやってきた娘シヴィと息子カミニに好意的だ。黒人の姉弟に気づいた白人の子どもたちは奇異な目で見たり、指をさしたり、笑ったりする。校長は「そんな態度は許しません」と大声で言う。
一方診療所についたセヨロは白衣を着て、聴診器を置き準備する。町長の紹介で来たという妊婦が来るが、セヨロが黒人であると知って「触らないで」と帰っていく。電話がきて農場に往診に出かけるが、セヨロを見て銃を発砲する農民。夕食の食卓で母国語を話す息子に、フランスにいるんだからフランス語を話せと厳しく言うセヨロ。誰も来ない診療所。皆隣町の医者に行くのだ。町長が訪ねてくる。そこに町会議員で次期町長候補のラヴィーンもやってくる。
この町に医者が招かれたのは、次の町長選のためだと聞かされる。セヨロの車がエンストしたところに通りかかった農民が唯一理解を示してくれる町民だった。彼に、町民の信頼を得たければ町民と過ごすんだ、と、町で唯一のバーに連れてこられる。ダーツに興じるセヨロ。だんだん友達が出来ていく。町の老人の荷物を持ってあげたりもする。しかしなかなか患者は来ない。
日曜日に道を家族で遊んでいると戦没者を追悼する人々の群れに遭遇する。静かなその場所に、にぎやかに車が乗りつける。ブリュッセルに住むセヨロ一家の親戚たちだった。ひと時をセヨロ家で過ごし、ブリュッセルに帰っていく。バーでの交流を続けるセヨロは、ちょっとした会話の中で医療的なアドバイスを行い、遊び仲間の信頼を得ていく。「胸がチクチクする」という男性が、翌日診療に来ることになる。彼が最初の患者だ。
一方、セヨロの妻アンは、寂しさから国際電話をかけすぎて、ものすごい電話料金の請求が来るが、セヨロにはだまっている。最初の患者は、診察料を請求すると、金を払うなら別の医者にかかると言う。ベッドに座って落ち込むセヨロ。アンは彼を励ます。ベッドサイドに置かれた電話料金の請求書に気づくセヨロ。こんな金を払えるわけないと、大ゲンカになる。
町のみんなが診療所に来るように、まずは町議会の人たちが診療所を訪れてほしいと、セヨロは議会を訪れる。ラヴィーンは「せっかくフランスで学んだのだから、母国で役立てろ」と言う。町長に財政援助を願い出るが、そんな金はないと言われる。
アフリカンドクターのネタバレあらすじ:転
金がなく、家じゅうのろうそくを集めて暖を取るザントコ一家。セヨロは、バーに連れて行ってくれた男性の農場を手伝うようになる。町のサッカーチームの試合を見ているシヴィとカミニ。カミニはそこで、ひどい皮膚炎で全身が赤い湿疹に覆われたシルヴィという女の子に会う。
毎日朝早くから遅くまで働き、牛の臭いがする夫を不審に思い、ある朝アンは彼を追いかける。愛人でもいるのかと思ったのだ。しかし、実は家計のために農場を手伝っていることを知る。セヨロを雇ってくれた農民ジュノーは、バーに行き、そこにいる連中に「我が家の新しい従業員セヨロに祝福を。この町は愚か者を産む産出力に富む。来年作物を植えたらバカが良く育つぞ」と嫌味を言う。
ある日セヨロが家に帰ると、カミニが友達のシヴィを連れてきていた。彼女の肌を見たセヨロは、リサーチを行い、彼女の皮膚病を治してやる。ある日、雪が降り、雪を初めて見る子どもたちは大興奮。外で遊びすぎて、家族は全員熱を出す。ベッドで熱を測りながらも楽しそうな子供たち。クリスマスにアフリカからも親や親せきが集まってきた。セヨロに大統領の主治医の話を持ち掛けた親戚もいる。そのことが妻のアンに知れて、親戚の前で大ゲンカが始まる。「俺は堕落したくなかった。子どものためだ」と言うセヨロ。結果的には、妻に「病院が軌道に乗ってもこの町を出る」と親戚の前で約束させられる。
親戚一同クリスマスの礼拝に出かける。厳かな雰囲気で「きよしこの夜」が歌われているが、アフリカ仕込みのゴスペル調で歌い始める黒人たち。一人は立ち上がって歌っている。だんだんそのノリに合わせていくオルガン奏者。困ったような神父。楽しそうにそれを見る白人の子ども。立ち上がって拍手をする校長。皆になじもうとしていたのに、と怒るセヨロ。そこへ妻が産気づいていると町民が駆けつけてくる。
以前一旦診療所に来たが、触らないでと帰って行った彼女だ。彼女の夫の協力を得て、大変だったが無事出産できる。謝る産婦。新生児がバーでお披露目され、バーは祝賀モード。アンも誇らしげにセヨロとダンスをする。町民はセヨロを「先生」と呼び始める。診療所に一気に人が押し寄せるようになり、今度は多忙すぎるようになる。学校の体育の授業でサッカーがあり、シヴィの才能が見いだされる。体育教師の知人のサッカーチームのコーチがシヴィを見に来る。
アフリカンドクターの結末
病院が軌道に乗り、町長夫妻と食事をするザントコ夫妻。アンは「ブリュッセルに引っ越すかもしれない」と嬉しそうに語るが、町長はもうすぐフランス国籍がもらえるから引き続き働くようにと朗らかに返す。アンは怒ってしばらく家を出ていく。「考え直さないなら、ときどきこうなるわよ」と言い残して行く。セヨロは「仕事と家事の両方は無理だ」と言うが、アンは容赦なく出ていく。
仕事をしているセヨロの元に、ラヴィーンの策略で警察が来て、逮捕状を渡す。町長が警察に掛け合う。セヨロは孤児なので出身国の証明がフランス国籍取得には必要なのだと言う理由だった。それがないと仕事をしてはならないと言う。数週間は仕事ができない状況となる。オフィスを片付けるセヨロ。クリニックに新しい医師がやってくる。自暴自棄になるセヨロだったが、牛に追いかけられてまだ生きたいことに気づく。
セヨロと子供たちは、サッカーの試合を見に来る。観客席に座っていたと思ったシヴィがサッカー選手として登場し、大活躍をする。皆がシヴィを応援する。町民たちはこれでマイナーリーグに行けると大歓声。公衆電話からシヴィの活躍を妻に伝える。
町長選挙の日、現職かラヴィーンか。誰も選挙などに行かない町だが、セヨロの説得で町民が選挙に行こうと思うようになる。選挙の前、小学校で子どもたちの劇があった。その劇は、子どもたちが作ったもので、ラヨロ一家が来てからの町の様子だった。カミニがラヨロ役をして、妊婦のお産を助けるところからシヴィのサッカーでの活躍、ラヨロの逮捕、すべてを描いたこの劇を見て、町民たちはラヨロ一家への好意を厚くする。キスを交わすラヨロと妻。ここからは大人になったカミニの回想録となる。
この劇のおかげで町民は請願書を出してラヨロのフランス国籍取得が可能となった。忙しくなった病院の秘書を妻のアンが務めるようになり、夫妻は生涯この町に尽くした。
ある夜中にかかってきた往診の電話で、車で出かけたラヨロは交通事故で帰らぬ人となる。ラヨロの葬儀には大勢の人が訪れた。次々に墓地に来る人々。懐かしい顔。彼の死後、アンはブリュッセルに移り、シヴィはブリュッセルで開業、カミニはコメディアンとなった。
以上、映画「アフリカン・ドクター」のあらすじと結末でした。
奥さんのセリフが面白い。
田舎の現実が生々しく描かれている。