巴里の屋根の下の紹介:1930年フランス映画。サイレント映画全盛期からトーキー映画黎明期にかけて名声を博したルネ・クレール監督。自身初のトーキーです。サイレント映画の繊細な映画表現を残しながら、画面には登場人物たちのセリフが加わります。その繰り返しのリズムは導入部から幕引きまで変わりません。撮影にかかわった人たちが相当おもしろがっている。そんなシーンが随所に見られます。時代表現も瑞々しく、フランス映画らしいエスプリに富んだ、映画史に残る傑作です。
監督:ルネ・クレール 出演者:アルベール・プレジャン(アルベール)、ポーラ・イレリ(ポーラ):ガストン・モド(フレッド)、エドモン・T・グレヴィル(ルイ)ほか
映画「巴里の屋根の下」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「巴里の屋根の下」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
巴里の屋根の下の予告編 動画
映画「巴里の屋根の下」解説
この解説記事には映画「巴里の屋根の下」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
巴里の屋根の下のネタバレあらすじ:起
下宿屋とアパートの屋根が軒を接するパリの裏通り。♪20歳の春、花咲き乱れる春♪愛し合うふたりには最高の時♪春風香る青き大地♪・・。街の賑わいを相手に街角歌手のアルベールがいつもの歌声を響かせています。♪イヤと言いつつ、身をゆだねるニニ♪その日、勝利の女神はいつものように♪パリの屋根の下、愛にほほ笑む・・♪
そこは多くの人が行き交う四つ辻です。裏町から繁華街へ向かう曲がり角。アルベールは、チラシ配りがするように、目が合った人たち、立ち止まる人たちへ楽譜を手渡します。彼は楽譜を売って稼ぎにします。それが彼の生活を支えます。手渡した楽譜と硬貨1枚を交換し、歌の世界に浸る喜びを、共に声高らかに分かち合います。
アルベールと歌声を共にする男女の輪の中にはスリもいます。美女もいます。お爺ちゃんお婆ちゃんもいます。もちろん、みんな顔見知りです。アルベールは、その人たちの普段の生活や仕事ぶりをよく知っています。だから深入りすることなく、お互いの距離を保ちます。けれども時折、糸がもつれ合うことがあります。すると、小さな事件に発展します。
巴里の屋根の下のネタバレあらすじ:承
酒の店で少し酔っていたアルベールは、近所の娘ポーラをテーブル席に見つけます。ポーラは人目を惹きます。男たちが好む、いわゆるそそるタイプの女です。本人もそのことを十分に意識しています。アルベールは友人のルイと相談してポーラに声をかけることにしました。けれど、街の乱暴者のフレッドがポーラと同席しています。
そこへフレッドの情婦が現れます。長身で男前のフレッドは、腕っ節の強さもあって、女を手玉に取ります。多くの女がフレッドになびくのも無理ありません。しかし初心なポーラのプライドは、ほかの女の存在を許しません。女同士を鉢合わせたフレッドは迂闊でした。「デリカシーのない男はご免!」とポーラは席を蹴って行ってしまいます。
アルベールにはもってこいの条件です。友人のルイは先に帰って、いまはいません。しょげるポーラをアルベールは慰めます。ふたりはその後、夜道をどのくらい歩いたでしょう、時刻はすでに翌日を迎えています。ポーラの下宿まで来たアルベールは甘い言葉を囁きます。繰り返し、繰り返し相槌を求めますが、ポーラは「ノン」「ノン」と受けつけません。
「よし分かった、おれは帰る」と背を向けたアルベールを今度は慌ててポーラが追ってきます。ハンドバッグから部屋の鍵が紛失していて、ポーラは部屋へ入れません。ふたりは夜道をまたさまようことになりました。いつもなら、もうとっくに寝ている時間です。歩き疲れたのか、とうとうポーラはアルベールの部屋で一夜を過ごす覚悟を決めました。
巴里の屋根の下のネタバレあらすじ:転
一夜を期待するアルベールと非接触を維持するポーラ。服を脱がずにベッドに横たわるポーラのかたわらで、リビドーを抑えきれないアルベール。男の牙を運動神経でかわすポーラ。獲物を前にもて余すアルベール。ふたりの一進一退の攻防は明け方まで続き、ポーラの防戦がアルベールの拙攻に勝利して幕を下ろすことになりました。
早朝。ポーラは帰宅の準備を終えますが、「家へ帰りたくない」と言い出します。どうやら一夜、何らかのきっかけでアルベールへ親愛の情が芽生えています。夜を徹した攻防で敗戦処理を余儀なくされたアルベールでしたが、“女心”の変化に驚きます。何はともあれ、「俺を好きなら」と、アルベールも一転してポーラに対しぞんざいな態度をとりだします。
横柄に振る舞うアルベールがポーラには男らしいと映り、ふたりは仲を深めます。結婚を合意した日、ポーラがアルベールのアパートを訪ねると、手錠をかけられ、連行される彼の姿がありました。ポーラは動転しますが、アルベールも実際のところ、わけが分かりません。友人から預かった手荷物が盗品だと分かって・・。逮捕されることになりました。
巴里の屋根の下の結末
ポーラは、すぐにアルベールの友人のルイを訪ねます。アルベールのいない間は、少なくともルイの世話になろうと思案しています。ふたりはアルベールの留守の間に深い仲になりますが、ルイは、ポーラへのアルベールの恋心を知らず、ポーラもルイのもとでは、アルベールから結婚を申しこまれていたなどと口にしません。
時日が経ち、盗みの疑いを晴らしたアルベールが街へ戻ってきます。恋焦がれていた「ポーラはどうしただろう?」。しかしその頃、ポーラはルイに夢中で、痴話喧嘩が絶えなくなっています。ルイの女好きにヤキモチを焼き、その足でフレッドに口説かれるとフレッドに従いて行きます。ポーラは蜜とミツバチのように花の甘い香りに目がないようです。
アルベールと再会したポーラは彼にすがります、「踊って」。しかしまず、フレッドから彼女を引き剥がさなければなりません。女をめぐる対決。怖い相手だと知りながら、アルベールはならず者たちの中へ踏みこみます。アルベールは劣勢です。そこへ現れたのがルイ。暗闇に銃声が響きます。駆けつけた警官を見て、皆一斉に散って行きました。
アルベールもルイもポーラのもとへ逃げこみます。ポーラに祝福されたアルベールは有頂天になりますが、腑に落ちません。ポーラがルイを愛おしく抱きしめているからです。ルイもまたアルベールの怪訝な顔を見返します。ポーラの「女心」に振りまわされる男たち。謎が解けた翌日、アルベールは、また四つ辻に立って歌声を響かせています。♪♪♪。
以上、映画「巴里の屋根の下」のあらすじと結末でした。
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